架空の情景
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台湾で知人の会社の「名前だけの代表」を引き受けたら、登記に名前がある間に負うもの

約6分

架空の情景

経営には一切関わらなくていい、名前を貸してくれるだけでいい。台湾で知り合った人にそう頼まれて会社の董事を引き受けたら、何を背負うことになるのでしょうか。

名前だけの董事という区分は、台湾の会社法にはありません。有限公司と股份有限公司では、董事がそのまま公司負責人です(公司法第8条第1項)。名前を貸すだけのつもりでも、就任を承諾すればその人が董事です。

実際に動かしている人がいても

頼んできた知人が会社を実際に動かしているなら、その人が責任を負うのではないか。そう期待したくなるところです。公司法第8条第3項は、董事でないのに実質的に董事の業務を行い、または人事・財務・経営を実質的に支配して董事を指揮する人にも、董事と同じ民事・刑事・行政罰の責任を負わせています。

ただ、この条文の主語は「董事でない者」で、登記上の董事についてはここで何も定めていません。第1項で負責人とされた名義人の立場は、そのまま残ります。

組み立ての違いは、日本の会社法と並べると見えてきます。日本の会社法第429条第1項は、役員等が職務を行うについて悪意または重大な過失があったとき、第三者に生じた損害の賠償責任を負わせます。台湾の公司法第23条第2項は、負責人が会社の業務執行で法令に違反し他人に損害を与えたとき、会社と連帯して賠償すると定めます。負責人の範囲と責任の全体像は台湾の会社負責人の責任で扱いました。

有限公司なら、もう一つ気をつける点があります。董事は行為能力のある股東(出資者)の中から選ばれます(公司法第108条第1項)。頼まれた人は、出資者としても名前が載るのです。股款が実際には払い込まれていないのに登記の申請書類で全額払込みと示した場合や、登記後に股款を股東に戻した場合、負責人はそれぞれ5年以下の有期徒刑などに処され(第9条第1項)、会社や第三者の損害をその股東と連帯して賠償します(同条第2項)。

会社の口座に他人のお金が流れたとき

いちばん重い問題はここです。会社名義の口座が詐欺や違法賭博の資金を受け、すぐに別の口座へ移す流れに使われていたらどうなるか。

洗錢防制法第2条は、特定犯罪の所得を隠したりその出所を偽ったりすること、国による調査や没収を妨げること、他人の特定犯罪の所得を受け取り、持ち、使うことなどを洗錢(資金洗浄)としています。刑罰は第19条第1項にあります。洗浄した財物が1億台湾元以上なら3年以上10年以下の有期徒刑、1億台湾元未満なら6月以上5年以下の有期徒刑で、どちらも罰金が併科されます。

名前を貸した人が自分で送金していなくても、他人の犯罪を手助けした幇助犯として問われることがあります(刑法第30条)。幇助犯の刑は正犯より軽くすることが「できる」と定められているだけで、必ず軽くなるわけでもありません。

「何も知らなかった」という説明はどう扱われるのでしょう。刑法第13条第2項は、犯罪にあたる事実の発生を予見し、それが起きても本意に反しない場合も故意とみなします。捜査と裁判では、口座の通帳や印鑑、ネットバンキングの認証手段を誰が持っていたか、報酬を受け取ったか、入出金を見ていたかといった事情が、この予見の有無を考える材料になります。

口座の受け渡しそのものにも規定があります。洗錢防制法第22条第1項は、自分または他人が金融機関に開設を申し込んだ口座を他人に渡して使わせることを、一般の商取引・金融取引の慣行に合う場合や、親族・友人間の信頼関係その他の正当な理由がある場合を除いて禁じています。違反すると、まず警察から告誡(警告)の処分を受けます(同条第2項)。対価を約束した場合や受け取った場合、渡した口座が合計3つ以上の場合、警察の処分から5年以内に繰り返した場合は、刑罰の対象になります(同条第3項)。刑は3年以下の有期徒刑・拘役、または100万台湾元以下の罰金で、併科もあります。個人の口座を貸した場合の扱いは台湾で口座を貸した日本人の刑事責任にまとめています。

会社自体も無関係ではいられません。代表者や従業員が業務として第19条から第22条の罪を犯せば、行為者のほかに会社にもその罪の罰金の10倍以下の罰金が科されます(第23条第1項)。ただし、代表者が犯罪の防止に尽力していた場合は除かれます。

捜査を受けていることと、有罪であることは違います。台湾では、有罪の判決が確定するまで被告人は無罪と推定されます(刑事訴訟法第154条)。

すでに警察や検察から呼ばれているなら

検察官の呼出しで身分が「被告」(台湾では起訴前の被疑者もこう呼ばれます)なら、取調べの前に、罪名、黙秘できること、弁護人を選べること、有利な証拠の調査を求められることが告げられます(刑事訴訟法第95条)。警察で被疑者として聞かれるときも、この規定が準用されます(第100条の2)。中国語が十分にわからなければ、通訳を付けて取り調べることになっています(第99条)。裁判所の訴訟文書については、法院組織法第99条が「我國文字」、つまり中国語で作ると定め、参考に必要なときは使われた外国語を付記するとしています。

洗錢防制法第23条第3項には、捜査とすべての審判で自白し、所得があれば全部を自ら納めた場合に刑を軽くする規定もあります。自白するかどうかは事実と証拠を見たうえで決めることで、この規定だけを理由に選ぶものではありません。刑事事件の出国制限中に一時帰国できるかは刑事事件で出国制限中の外国人被告人で扱っています。

被害者から賠償を求められる可能性

刑事事件とは別に、お金を取られた被害者が民事で賠償を求めることがあります。民法第185条は、共同で他人の権利を侵害した数人に連帯して賠償させ、幇助した人も共同行為者とみなします。会社の業務執行で法令に違反した負責人には、先に触れた公司法第23条第2項の連帯責任もあります。口座提供者に対する賠償請求の考え方は台湾で渡した口座に詐欺の被害金が入ったらで扱いました。

税金の滞納と出国制限

税金の刑罰については、稅捐稽徵法第47条第2項が、登記上の負責人と実際に業務を担う人が違うとき、実際に業務を担う人を基準にすると定めています。出国制限を定める同法第24条第3項には、同じような定めは置かれていません。

その第24条第3項によれば、営利事業の確定した欠税と罰鍰が合計200万台湾元以上(行政救済の終結前は300万台湾元以上)になると、財政部は移民署に出国制限を求めることができ、営利事業ならその負責人の出国も制限できます。相当の担保を提供した場合や、税務機関が同条第1項第1款前段または第2款の保全措置(財産の移転・設定を禁じる通知、仮差押え)を取っていない場合は適用されません。誰が対象になるかと解除の条件は台湾子会社の税金滞納と出国制限で詳しく書きました。

辞任届を出しても登記は自動では変わりません

取引先や金融機関が会社の登記を調べれば、そこにはまだ自分の名前が出てきます。辞任届を出した後でも同じです。登記事項が変わっても変更登記をしていなければ、その変更を第三者に対抗できないからです(公司法第12条)。

期限は、変更から15日以内です(公司登記辦法第4条)。申請するのは会社の側です。経済部商業発展署のFAQは、董事の辞任による解任登記を、会社を代表する負責人が申請書・辞任の証明書類・変更登記表をそろえて出すと説明しています(商工行政諮詢系統FAQ)。期限を守らなかったときに1万から5万台湾元の罰鍰を受けるのも代表する負責人で、改善されなければ繰り返し科されます(公司法第387条)。

辞任そのものは、本人の意思でできます。公司法第192条第5項により股份有限公司と董事の関係には民法の委任の規定が適用され、民法第549条第1項は当事者がいつでも委任を終了できるとしています。会社に不利な時期に辞めた場合は、損害賠償の問題が残ることもあります(民法第549条第2項)。

難しいのは、自分が唯一の董事、つまり会社を代表する人そのものだった場合です。辞めた後は、申請する人がいません。会社がどうしても動かないときに残るのが、委任関係がないことの確認を求める訴えです(民事訴訟法第247条)。すぐに確認判決を受ける法律上の利益が要件で、その有無は事案ごとに判断されます。辞任届が会社に届いた日付を証明できるかどうかも、この段階で効いてきます。

台湾の弁護士に依頼できること

弁護士の仕事は、名前が今どこに残っているかを確かめるところから始まります。会社の登記事項と股東の記載を確認し、辞任届を届いた日付が残る方法で送り、会社に解任登記を求めます。会社が動かなければ、確認の訴えを準備します。警察や検察から呼び出しを受けた段階なら、取調べへの同行と供述の準備、起訴された場合の弁護、被害者からの民事請求への対応を引き受けられます。まだ返事をしていないなら、定款や口座の管理方法を見たうえで、断る書面を一緒に作ることもできます。刑事事件のご案内と会社・投資のご案内もご覧ください。ご相談はwei@hoveringlaw.com.twへ。昊鼎国際法律事務所の台北事務所は台北市大同区承徳路一段35号7階の2(臺北市大同區承德路一段35號7樓之2)にあります。

有限公司の董事を引き受けた人は、股東(出資者)としても登記に載っています(公司法第108条第1項)。董事を辞めても、出資者としての名前はそれだけでは動きません。

参考資料

確認日:2026年10月28日。

よくある質問

名前を貸しただけで、会社の業務には関わっていません。それでも台湾で責任を問われますか。
問われることがあります。公司法第8条第1項は有限公司と股份有限公司の負責人を董事と定め、名前だけの董事を外す規定はありません。第8条第3項は実際に会社を動かす人にも董事と同じ民事・刑事・行政罰の責任を負わせますが、登記上の董事の責任を免除する文言はありません。刑事責任については、犯罪にあたる事実を予見しながらそれでも構わないと思っていたか(刑法第13条第2項)が争点になり、有罪が確定するまでは無罪と推定されます(刑事訴訟法第154条)。
捜査の段階で認めれば、刑は軽くなりますか。
洗錢防制法第23条第3項は、同法第19条から第22条までの罪について、捜査とすべての審判で自白し、所得があればその全部を自ら納めた場合に刑を軽くすると定めています。口座を渡した罪(第22条)もこの範囲に入ります。さらに、それによって資金洗浄の財物の全部が差し押さえられたり、ほかの正犯や共犯が見つかったりした場合は、刑が減軽または免除されます。捜査と各審級のすべてで自白していることが条件です。
会社が税金を滞納すると、名義上の代表者も出国できなくなりますか。
稅捐稽徵法第24条第3項は、営利事業の確定した欠税と罰鍰が合計200万台湾元以上(行政救済の終結前は300万台湾元以上)のとき、財政部が移民署に出国制限を求め、その負責人の出国を制限できると定めます。相当の担保を提供した場合などは適用されません。誰が対象になるかの考え方と解除の条件は、税の出国制限を扱った別の記事にまとめています。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。