架空の情景
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「出金には審査料が必要です」と言われた投資サイト USDTで送ったお金と、受け取った少額出金の行方

約6分

架空の情景

その審査料を払えば、本当に残高は戻ってくるのでしょうか。台湾の法令を見る限り、投資サイトに出金審査料や税金の前払いを納めなければならない義務はありません。税金なら課すのは税務機関です。それでも迷うのは、画面にはまだ大きな残高が表示されていて、払わなければすべて失うように感じるからでしょう。

台湾の詐欺被害の仕組みは、その残高を見ていません。追いかけるのは、実際にどの口座やウォレットからどこへお金が動いたかです。

台湾の取引所から送ったUSDT

新竹に駐在する日本人エンジニアは、SNSの投資グループで紹介されたFX・暗号資産の取引サイトに、台湾の暗号資産取引所で買ったUSDTを4回に分けて送りました。画面の残高は入金額の3倍になり、出金を申し込むと「マネーロンダリング審査の保証金」を求められます(架空の例です)。

まず問題になるのは、USDTがいまどこにあるかです。指定アドレスが台湾の仮想資産サービス事業者のアカウントで、USDTがまだそこに残っていれば、通報を受けた事業者はその分を保全(圏存)します(金融機構及提供虛擬資產服務之事業或人員防制詐欺犯罪危害應遵循事項辦法、以下「詐欺犯罪防止遵守事項弁法」第48条)。警察は保全から48時間以内に、そのアカウントを警示扱いにするか保全を解くかを事業者に伝えます。通知がなければ保全は解除されます。

届出の入口は、銀行だけではありません。営業時間内に取引所へ直接出向いて被害を告げれば、事業者は本人確認と送金の情報を確かめ、切結書(被害の申述書)を書いてもらって165番(詐欺相談専用電話)に電話させます。警察は2時間以内に来て届出を受理します。カスタマーサポートに連絡しただけなら、事業者は165番への電話を案内するにとどまります(第46条)。

USDTがすでに引き出されていたり、海外のアドレスへ移っていたりしたらどうでしょう。台湾側の事業者は、その事実を最初に通報した警察に回答します(第45条第3項)。足取りの記録は警察に残りますが、台湾の保全はそこで止まります。

海外に出た分と国際刑事司法互助

差押え、財産の処分禁止、没収裁判の執行、犯罪収益の返還。国際刑事司法互助法で相手国に求められる協力には、これらが含まれます(国際刑事司法互助法(國際刑事司法互助法)第6条)。

要請するのは被害者ではありません。原則として法務部が外交部を通じて出します(第30条)。条約があれば条約、なければ同法により(第2条)、互助は相互主義が前提です(第5条)。相手国が応じるかどうか、いつ応じるかは台湾側では決められません。被害者の側でできるのは、取引ハッシュ(TxID)、送金先アドレス、取引所の名前、日時と数量を一覧にして捜査機関に渡すことです。

届出の金額は、保全の上限です

日付、数量または金額、送り先。送金を1件ずつこの形で書き出しておくと、届出の場でそのまま使えます。保証金や「税金」として送った分も、もちろん入ります。

理由ははっきりしています。同じ事件で各機関が保全できる総額は、警察の通報額か、被害者が切結書に書いた金額が上限です(第30条第1項、第48条第1項)。最初の入金だけを届け出ると、その後の送金は保全の根拠を欠きます。台湾の銀行口座から送った分なら、銀行の窓口でも同じように切結書と165番の手続ができます(第28条)。

少額の「利益」を受け取っていたら

最初に少額の「利益」を台湾の銀行口座で受け取っていた場合は、もう一つ気をつける点があります。そのお金がほかの被害者の送金が通った口座から振り込まれていれば、追跡の連絡が自分の口座まで届くかもしれません。第27条は、警示口座の被害金がほかの口座へ移っていれば銀行が受取機関に通報し、受取機関もさらに先を調べるよう定めています。通報を受けた口座の金額は第30条で保全され、警察が48時間以内に警示にするか解除するかを伝えます。

警示口座になると、その口座の取引はすべて止まり、同じ名義人のほかの口座もキャッシュカードやネット振込が使えなくなります(預金口座及び不法・異常取引管理弁法(存款帳戶及其疑似不法或顯屬異常交易管理辦法)第3条第2号、第5条、期限は第9条)。その後の流れは「台湾の銀行口座が「警示帳戶」になったとき」に、取引所のアカウントが止まった場合は「帰国前に台湾の暗号資産取引所で出金が止まったとき」にまとめています。チャットの履歴と入出金の記録は、自分も被害者だと説明する材料になります。

「ほかの会員の入金を受け取ってほしい」と頼まれたら

審査を早めるためと言われ、ほかの会員の入金を自分の口座で受け取って指定先へ送るよう頼まれることがあります。受け取って送り直せば、洗錢防制法(マネーロンダリング防止法)第19条のマネーロンダリング罪として捜査される場合があります。

口座を貸すこと自体にも規制があります。同法第22条は、正当な理由なく自分の口座や仮想資産アカウントを他人に使わせることを禁じています。まずは警察の告誡(警告)処分ですが、対価の約束や受領があったとき、3つ以上の口座を渡したとき、告誡から5年以内に繰り返したときは、3年以下の懲役などの刑事罰の対象です。捜査を受けた段階では有罪と決まったわけではありませんが、ほかの被害者から賠償を求められる問題も別に出てきます(「台湾で渡した口座に詐欺の被害金が入ったら」)。

その後の手続

日本から台湾の口座へ送金した場合の告訴の進め方は、「日本から台湾の口座へ送金した後、台湾で告訴できるのか」にあります。告訴は代理人に委任できますが、検察官や司法警察官が必要と認めれば本人の出頭を命じられます(刑事訴訟法第236条の1)。

加害者側が起訴されれば、刑事裁判の中で附帯民事訴訟を起こす道があります(第487条)。詐欺の被害者が民事で賠償を求めるときは訴訟費用の納付が一時免除され、仮差押えの担保は請求額の10分の1を超えません(詐欺犯罪危害防制条例第54条)。判決で没収された財産は、裁判確定から1年以内に返還を申し立てる必要があります(刑事訴訟法第473条)。被告は判決確定まで無罪と推定され、第一審の判決には上訴もできます。

台湾の弁護士に頼めること

日本に戻った後の告訴の代理は、台湾の弁護士に任せられる仕事の一つです。そのほか、取引ハッシュと送金先アドレスの一覧づくり、取引所や銀行の窓口での届出の段取り、警察・検察での供述への同行、自分の口座が保全・警示されたときの説明資料、警示口座の残額返還や没収物の返還申立て、附帯民事訴訟と仮差押えも依頼できます。刑事事件全般の相談範囲は刑事事件のご案内をご覧ください。ご相談はwei@hoveringlaw.com.twへ。昊鼎国際法律事務所の台北事務所は台北市大同区承徳路一段35号7階の2(臺北市大同區承德路一段35號7樓之2)です。

新竹のエンジニアの手元で、いちばん役に立つのは4回分のTxIDと送金先アドレスを並べた一覧です。

参考資料

確認日:2026年10月27日。

よくある質問

台湾の取引所で買って送ったUSDTは、台湾の警察が止められますか。
送り先が台湾の仮想資産サービス事業者のアカウントで、まだそこに残っている分は、詐欺犯罪防止遵守事項弁法第48条により、通報を受けた事業者が保全(圏存)の対象にします。保全の総額は、警察の通報額か被害者が切結書に書いた被害額が上限です。海外の取引所や個人ウォレットへ移った分には台湾の保全・警示が及ばず、国際刑事司法互助法に基づく相手国への協力要請(第2条・第5条・第6条・第30条)によることになります。
取引所のカスタマーサポートに詐欺だと伝えれば、それで届出になりますか。
サポートへの連絡だけでは、警察への届出にはなりません。詐欺犯罪防止遵守事項弁法第46条第1項によれば、サポート窓口に連絡した被害者は、事業者から165番に電話するよう案内されます。営業時間内に取引所へ直接出向いた場合は、事業者が本人と送金の情報を確認し、切結書を書いてもらったうえで165番に電話させ、警察は2時間以内に来て届出を受理します(同条第3項)。
口座が警示になったら、いつまで止まったままですか。
預金口座及び不法・異常取引管理弁法第9条第1項により、警示の期限は通報の時から2年で、過ぎれば自動的に効力を失います。続ける必要があるときは、最初に通報した機関が期限前に改めて通報し、延長は1回・1年までです。期限の前でも、通報した機関の解除通報があれば銀行は制限を解きます(同弁法第10条)。名義人に疑問があれば、その機関に問い合わせます(同弁法第9条第2項)。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。