台湾の会社が中国の会社にノウハウを許諾するだけで、台湾では経済部の許可が必要な「技術合作」になります。工場を建てる話に限りません。
根拠は台湾地区与大陸地区人民関係条例(両岸人民関係条例)第35条第1項です。台湾地区の人民・法人・団体その他の機関は、経済部の許可を得て大陸地区で投資または技術合作を行うことができ、対象は禁止類と一般類に分かれます。そして大陸地区での投資・技術合作の許可弁法(在大陸地區從事投資或技術合作許可辦法)第4条は、技術合作を「専門技術、特許権またはコンピュータプログラムの著作財産権を、大陸地区の人民・法人等に直接または間接に譲渡または許諾すること」と定義しています。
日系の台湾子会社はどこに立つか
日系の子会社であっても、台湾の会社法に基づいて設立・登記されていれば台湾の法人です(会社法(公司法)第1条)。中国の顧客に制御ソフトの使用を許諾する契約を子会社が結ぶなら、この許可の対象として検討することになります。では、日本本社が直接契約すれば台湾の許可とは無関係でしょうか。第4条の文言は「直接または間接に」です。台湾子会社が開発した技術やソフトが本社を経由して中国側に渡る形なら、契約書の許諾者欄に本社の名前があるというだけで、対象外とは言い切れません。
手続は、申請書類をそろえて先に許可を受けるのが原則です(許可弁法第6条)。許可後も、技術合作を始めてから6か月以内に開始日を(第8条第3項)、中止したら2か月以内にその旨を(第10条第1項)届け出ます。
許可なしの場合の制裁は同条例第86条にあります。一般類は5万~2,500万台湾ドルの過料です。禁止類では、停止命令に従わないか再び違反すると、行為者が2年以下の懲役などに問われ、法人の場合は行為の責任者が処罰されます。
本社から預かった図面を中国の外注先へ
日本本社の金型図面や配合データを子会社が預かり、中国の外注先に試作を頼む場面も考えておく必要があります。この図面の所有者は本社で、子会社は使わせてもらっている立場にすぎません。
許諾の範囲について、台湾の営業秘密法第7条は、地域・期間・内容・方法を当事者の約定に委ね、許諾を受けた者が所有者の同意なく第三者へ再許諾することを禁じています。中国の外注先に図面を渡すことは、この再許諾に当たる可能性があります。
そこで効いてくるのが許諾書です。本社が子会社に出す許諾書に「中国の外注先に試作のため開示してよい」という一文があるかどうかで、同意があったかどうかの説明が変わります。外注先の名前、渡す図面の範囲、使ってよい期間まで書いてあれば、後から範囲を争われたときの材料になります。書面がないまま渡すと、どこまでが許された範囲だったのかを説明しにくくなります。
許された範囲を超えて複製・使用・漏えいしたうえで、自己や第三者の不法な利益を図る意図、または所有者に損害を与える意図があれば、第13条の1第1項第2号の罪です(5年以下の懲役または拘役、100万~1,000万台湾ドルの罰金の併科も可能)。急ぎの試作で図面を回しただけだったのか。そこが争点になりえます。中国で使用する意図まで加われば、第13条の2により1年以上10年以下の懲役、300万~5,000万台湾ドルの罰金の併科も可能です。社員が業務として行えば、会社にも同じ条の罰金が科されます(第13条の4)。代表者が防止に力を尽くしていた場合は除かれます。
顧客から預かった図面が混じっていたら、どうなるでしょうか。所有者は台湾の顧客、つまり第三者です。第13条の3が告訴を要件としているのは第13条の1の罪だけで、第13条の2は含まれていません。顧客と和解しても、刑事手続が止まるとは限らないということです。
国家核心関鍵技術に当たる場合
行政院が公告した国家核心関鍵技術の営業秘密なら、国家安全法第3条と第8条が加わり、大陸地区で使用する意図による侵害は3年以上10年以下の懲役です。法人への罰金もあります。台湾籍の技術者を中国の工場へ送る計画なら、人の移動の規定も関わります。台湾に戸籍のある「台湾地区人民」(同条例第2条第3号)のうち、政府の委託・補助・出資が一定基準に達する国家核心関鍵技術の業務に就く人は、在任中も、終了・離職から3年未満の間も、大陸地区に入るのに審査会の許可が要ります(第9条第4項第6号。違反は第91条第3項で200万~1,000万台湾ドルの過料)。台湾のTSMC資料をめぐり、国家安全法の国家核心関鍵技術の規定が適用された判決(第一審)とその読み方は、台湾の国家安全法と「国家核心関鍵技術」で取り上げました。
中国商務部の草案が加える逆向きのリスク
中国商務部条約法律司は10月26日、「保護中国商業秘密特別規定(征求意見稿)」を公表し、11月24日まで意見を募集しています(商務部の通知、中央社)。全10条の草案です。外国実体が国際経済貿易活動で中国の商業秘密を侵害し、中国の主権・安全・発展利益を害するか現実に脅かす場合に、商務部が輸出入や新規投資の制限、関係者の入国制限、就労許可・滞在・居留資格の制限や取消し、過料などの措置をとれるとしています。
中国の外注先の側に立つと、目を引くのは第9条です。第5条の措置を受けた外国実体と特別な事情でどうしても取引する必要がある中国企業は、事実と理由を示して商務部に申請し、同意を得ることになっています。その外国実体を、草案第3条は外国の企業、その他の組織、個人とだけ定めています。日本本社はこれに当たりますが、台湾子会社が含まれるかは文言からは確認できません。
本社と台湾子会社の間の許諾書は、台湾の弁護士と一緒に作ることができます。中国の外注先の名前、渡す図面の範囲、使ってよい期間をどう書くか。本社が中国の会社と直接ライセンス契約を結ぶ形でも経済部の許可が要るのか、要るなら申請と届出をどう進めるか。顧客から預かった図面が混じっていたときの扱いや、捜査・告訴が始まったときの対応も依頼できます。知的財産分野のご相談はwei@hoveringlaw.com.twへ。昊鼎国際法律事務所の台北事務所は台北市大同区承徳路一段35号7階の2(臺北市大同區承德路一段35號7樓之2)にあります。
NDAと秘密管理の実務は材料開発契約のNDAと技術の共有にまとめています。本社と子会社の間の一枚の許諾書が、中国の外注先へ渡した図面の扱いを説明する最初の資料になります。
参考資料
確認日:2026年10月27日。
- 台湾地区与大陸地区人民関係条例(臺灣地區與大陸地區人民關係條例)第2条
- 同条例第9条
- 同条例第35条
- 同条例第86条
- 同条例第91条
- 在大陸地區從事投資或技術合作許可辦法 第4条
- 同弁法第6条
- 同弁法第7条
- 同弁法第8条
- 同弁法第10条
- 営業秘密法(營業秘密法)第7条
- 営業秘密法第13条の1
- 営業秘密法第13条の2
- 営業秘密法第13条の3
- 営業秘密法第13条の4
- 国家安全法(國家安全法)第3条
- 国家安全法第8条
- 会社法(公司法)第1条
- 中国商務部条約法律司「関于《保護中国商業秘密特別規定(征求意見稿)》公開征求意見的通知」(2026年10月26日、草案全文添付)
- 中央社「中國擬加強保護商業秘密 可禁外資進出口技術」(2026年10月26日)
よくある質問
- 台湾子会社が日本本社の図面を中国の外注先に渡すには、本社の同意が要りますか。
- 台湾の営業秘密法第7条第2項は、許諾を受けた者は営業秘密の所有者の同意がなければ第三者に再許諾できないと定めています。本社が所有者で子会社が許諾を受けている関係なら、中国の外注先に使わせることは再許諾に当たる可能性があり、本社の同意を書面で残しておくのが安全です。許諾の地域・期間・内容・方法は当事者の約定によります(同条第1項)。
- 許可を得ないまま中国の会社と技術協力を始めてしまったら、どうなりますか。
- 両岸人民関係条例第86条により、一般類なら5万~2,500万台湾ドルの過料に加え、期限を定めた停止・是正命令が出されることがあり、期限までに是正しなければ連続して処罰されることがあります。禁止類なら同じ過料に加えて期限を定めた停止命令が出されることがあり、従わないか停止後に再び違反すると行為者に2年以下の懲役などの刑事罰があります。許可弁法第7条は、是正を命じられた一般類について、期限内に申告または許可申請をするよう処分書に記載すると定めています。
- 中国の商業秘密特別規定は、日本企業にも適用されますか。
- 草案第3条は「外国実体」に外国企業、その他の組織または個人を含めています。ただし適用されるのは、国際経済貿易活動で中国の商業秘密を侵害し、かつ中国の主権・安全・発展利益を害するか現実に脅かす場合です。2026年10月26日公表の意見募集稿で、締切は11月24日、まだ施行されていません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



