架空の情景
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会社が手配した通訳人が事件にかかわる同僚だったら 台湾の取調べで替えられるか、何を記録に残せるか

約6分

架空の情景

工場の設備事故をめぐって、日本人の製造課長が台湾の警察署に呼ばれました。付き添ってきた通訳人は会社が手配した人で、事故の日に同じラインにいた台湾人の同僚です。中国語のできない課長には頼れる相手でしょう。ただ、その同僚も事故の経緯を知る立場にいます(ここまで架空の例です)。

訳すのがその人でかまわないのか。替えてほしいと言えるのか。刑事訴訟法の答えは、聴取するのが警察か、検察官・裁判官かで分かれます。

警察署で、同僚の通訳を断れるか

言葉が通じない被疑者には通訳人が付きます。第99条がそう定め、警察の聴取にもこの章の規定が準用されるからです(第100条の2)。誰を通訳人にするかまでは、第99条は書いていません。

拒否の申立てという手続も、警察段階の条文には見当たりません。通訳人の宣誓と拒否は「鑑定及び通訳」の節に置かれ、第211条がそれを通訳人に準用しています。第100条の2が警察に持ち込むのは、被告の訊問の章だけです。通訳人の身分や本人との関係を確かめるよう定めた法務部の注意事項も、宛先は検察機関です。

申し出ること自体はできます。警察が別の通訳人を呼ぶことになれば、逮捕されている場合、到着を待つ時間は6時間まで逮捕後24時間に数えず、その間は聴取もしません(第93条の1第1項第6号・第2項)。

手元に残るのは調書です。第41条は、警察が作る調書にも準用されます(第43条の1)。通訳人が宣誓しなかったときは、その事由を調書に書かなければなりません。作成した調書は読み聞かせるか閲覧させ、誤りがないかを尋ねます。本人や立ち会った弁護人が加除・変更を求めれば、その陳述が付記されます。

付記してもらう中身は、具体的なほど後で使えます。通訳人が事故の日に同じラインにいた同僚であること、別の通訳人を求めたこと、訳が違うと感じた箇所。弁護人が立ち会っていれば、閲覧を手伝い、記載の誤りについて意見を述べられます(同条第2項)。署名の扱いと訂正の残し方は、調書を日本語通訳で確認するときで詳しく書きました。

地検に移ると、通訳人との関係が問われる

事件が地検に送られ、検察官の前でも同じ同僚が訳すことになったとします。ここからは手順が増えます。法務部の検察機関の通訳使用に関する注意事項第7点は、当事者や関係者が通訳人を連れてきたとき、検察官が選任前にその人の身分、通訳能力、取調べを受ける人との関係を確かめ、ほかの受訊問者の意見も聞くよう求めています。

代わりの候補もいます。高等法院などは、日本語などを中国語に通訳できる人を特約通訳の候補として登録します(法院特約通訳約聘辦法第3条)。検察の側でも、高等検察署が日本語を含む言語別の候補者名簿を置いています(特約通訳名簿要点第2点・第8点)。

拒否を申し立てる道も開けます。第211条で準用される第200条により、当事者、つまり検察官・自訴人・被告(第3条)は、裁判官の忌避事由を理由に通訳人を拒めます。忌避事由には、被害者本人であることや被告・被害者の配偶者・一定の親族であることといった関係(第17条)と、職務の執行に偏りのおそれがあると認めるに足りる事情(第18条第2号)があります。ただし、同じ事件の証人であることだけでは拒否の理由にならず(第200条第1項ただし書)、現場にいた同僚なら、ほかの事情を偏りのおそれとして示せるかが問題になります。通訳が終わった後は、原則としてもう拒めません。理由が後から生じたか、後から知ったときだけ例外です。

検察官が自ら訊問するときは、通訳人は宣誓もします。鑑定人は鑑定の前に、公正かつ誠実に行う旨の結文で宣誓しなければならず(第202条)、通訳人なら公正で誠実な通訳を誓うことになります。宣誓のうえで事件の重要な点を偽って訳せば、刑法第168条により7年以下の有期懲役です。同条が挙げる場面は裁判所の審判と検察官の捜査で、警察の聴取は入っていません。地検でも検察事務官(檢察事務官)が聴取する場合は、法院組織法第66条の3第2項により司法警察官とみなされ、警察と同じ扱いになります。

訳のずれは、録音で後から確かめる

同僚の訳が課長の日本語からずれていなかったか。それは録音で確かめられます。第100条の1は取調べの全過程を連続して録音するよう求め、必要なら録画もします。調書の記載が録音・録画と食い違う部分は、緊急の事情を調書に記載した例外を除き、証拠にできません。起訴されれば、弁護人は記録と証拠物を閲覧・複製できます(第33条)。

台湾の弁護士に依頼できること

弁護人の選び方や、日本台湾交流協会ができること・できないこと(取調べでの通訳は在外公館がしないと外務省のパンフレットも書いています)は、台湾で日本人が取調べや逮捕を受けたらにまとめました。

警察署に呼ばれた段階から、台湾の弁護士に依頼できます。通訳人が事件とどうかかわるかを聴取の前に確かめ、立ち会った聴取では通訳への異議を調書に付記させ、終わった後は調書を録音・録画と照らし合わせます。地検に送られれば、名簿の通訳人を求め、理由があれば拒否を申し立てます。日本の本社やご家族との連絡も任せられます。刑事事件の取扱いは刑事事件のページに載せています。ご相談はwei@hoveringlaw.com.twへ。昊鼎国際法律事務所の台北事務所:103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2。

同僚が訳した警察署での聴取を後から確かめるとき、手がかりになるのはその日の調書の付記と録音です。

参考にした資料

確認日:2026年10月26日。

よくある質問

会社が手配した通訳人が、事件にかかわる同僚です。警察署で替えてもらえますか。
刑事訴訟法第99条は言葉が通じない人に通訳を付けると定めていますが、誰を通訳人にするかまでは書いていません。宣誓と拒否を定めた「鑑定及び通訳」の節は警察の聴取に準用されないため(第100条の2)、拒否の申立てという手続もありません。同僚であることや別の通訳人を求めたことは、第41条と第43条の1により、調書に付記するよう求めることができます。
地検でも同じ同僚が通訳人になると言われました。拒否できますか。
検察官・裁判官の前では、第211条により第200条が通訳人に準用され、当事者は裁判官の忌避事由(第17条・第18条)を理由に通訳人を拒否できます。同じ事件の証人であるだけでは理由になりません(第200条第1項ただし書)。会社などが連れてきた通訳人については、検察官が選任前に身分や本人との関係を確かめるとされています(法務部の注意事項第7点)。
宣誓していない警察段階の通訳を、後から争う材料は何ですか。
調書に付記された異議(第41条第3項)、通訳人が宣誓しなかった事由の記載(同条第1項第2号)、取調べ全過程の録音です。第41条は第43条の1で警察にも準用されます。調書と録音・録画が食い違う部分は、緊急の例外を除いて証拠にできません(第100条の1)。起訴後は、弁護人が記録と証拠物を閲覧・複製できます(第33条)。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。