台湾で日本人が警察の取調べや逮捕を受けたら:通訳、弁護人、24時間の壁、帰国の制限
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台湾で日本人が警察の取調べや逮捕を受けたら:通訳、弁護人、24時間の壁、帰国の制限

約9分

台北に出張中の会社員が、居酒屋で隣の客と口論になり、相手を押した拍子に転倒させてけがをさせた(架空の例です)。店員が通報し、到着した警察官はその場で身柄を押さえ、派出所へ連れていきます。本人は中国語がほとんど分かりません。帰国便は翌日です。その後の手続は、台湾の刑事訴訟法が細かく決めています。

現行犯は誰でも逮捕できる

現行犯は誰でも令状なしに逮捕できます(第88条)。犯罪の実行中か、実行直後に発覚した場合が現行犯で、追いかけられている人や、身体や衣服に犯罪の痕跡がある人も現行犯として扱われます。冒頭の例で警察官が令状を見せなかったとしても、それ自体は手続違反ではありません。

もう一つ、令状のない逮捕があります。第88条の1の緊急拘提です。重大な嫌疑があって逃亡のおそれがある場合などに限られ、警察官が執行したときは事後に検察官が拘票(令状)を発付し、発付されなければ釈放されます。この条文は、拘提のときに本人と家族へ弁護人を選任できることを告げるよう求めています。

取調べの前に告げられる四つのこと

取調べの前に告げられることは四つあります(第95条)。どの犯罪のどの罪名で疑われているか。黙秘でき、自分の意思に反して述べる必要がないこと。弁護人を選任できること。自分に有利な証拠の調査を求められること。弁護人がいない被告が「弁護人を選任した」と告げれば、本人が続行に同意しない限り、取調べはそこで止まります。

言葉が通じないときは第99条の出番です。言語が通じない被告には通訳を介して取り調べ、必要なら文書での質問や陳述も認められます。裁判の段階では法院組織法第98条が同じことを定めています。ただし同法第99条により訴訟の文書は中国語で作られ、外国語は参考として付記されるにとどまります。調書に署名する前に、通訳を通して自分の述べたとおりに書かれているかを確かめる場面は、ここで生じます。

夜の取調べにも制限があります。警察官による夜間の取調べは、第100条の3が原則として禁じています。夜間とは日没後から日の出前までで、本人が明示的に同意した場合、夜間に逮捕されて人違いでないかを確かめる場合、検察官や裁判官の許可がある場合、急迫の場合が例外です。深夜に「今すぐ話せば早く帰れる」と言われても、同意しなければ取調べは朝まで待つのが条文の建前です。

24時間以内に検察官が決める

身柄は長く警察には置けません。警察官が現行犯を逮捕したときは、第92条第2項により、すぐ検察官のもとへ送ります。第93条は、拘提または逮捕から24時間以内に、検察官が取調べをしたうえで、羈押(勾留に当たる身柄拘束)の必要があると考えれば裁判所に請求し、請求しないなら釈放しなければならないと定めています。釈放する場合でも、具保(保証金)、責付(身元引受け)、限制住居(住居制限)を命じることができます。

24時間の数え方にも例外があります。この24時間には、第93条の1が定める算入しない時間があります。外国人に関係が深いのは二つで、弁護人を選任すると言ってその到着を待っている時間(上限4時間)と、通訳の到着を待っている時間(上限6時間)です。夜間に取調べができない時間や、護送中の時間も算入されません。つまり、通訳が来るまで取調べは始まらず、その待ち時間の分だけ身柄の拘束は長引くことになります。

決めるのは裁判官です。第101条は、嫌疑が重大で、逃亡のおそれ、証拠隠滅や共犯・証人との口裏合わせのおそれ、または最低刑が5年以上の重い罪でそうしたおそれがあると相当の理由で認められ、羈押しなければ追訴や審判が著しく困難な場合に限って羈押できるとしています。住所が台湾にない外国人は「逃亡のおそれ」を指摘されやすい立場にありますが、第101条の2により、事由があっても羈押の必要がなければ裁判官は保証金や住居制限で済ませることができます。

繰り返すおそれを理由にした羈押は第101条の1が別に定めていて、その対象には刑法第185条の3の飲酒運転、詐欺、窃盗、傷害などが含まれます。同じ罪を繰り返すおそれを示す事実があれば、飲酒運転でもこの条文による羈押が検討されます。

期間はどうか。羈押された場合は第108条が定めていて、捜査中は2か月、延長は1回で2か月までです。裁判中は3か月で、罪の重さに応じて延長回数に上限があります。第110条により、本人や弁護人はいつでも保証金を積んで羈押の停止を裁判所に求められます。保証金は第119条により、不起訴処分や判決の確定などで具保の責任がなくなれば、没収されていない限り返還されます。

弁護人はいつでも、家族からでも選べる

弁護人はいつでも選任できます。警察の調査を受けている段階でも同じです(第27条)。第2項が重要で、配偶者、直系の親族、三親等内の傍系血族、家長や家族は、本人とは独立に弁護人を選任できます。本人が留置されていて動けなくても、日本にいる家族が台湾の弁護士に依頼すれば、その弁護士は弁護人として動けます。

立会いもできます。弁護人は第245条第2項により、検察官や警察の取調べに立ち会い、メモを取り、意見を述べることができます。同条第6項は、捜査中の取調べの日時と場所を、急迫の場合を除いて弁護人に通知するよう求めています。逮捕後の面会は第34条が定めていて、捜査中に拘提・逮捕された被告との面会や通信は制限できません。ただし面会は1時間以内、1回に限られ、その時間も24時間の計算から除かれます。羈押後の面会は、証拠隠滅などの事証がない限り制限されません。

国選弁護はどうでしょうか。裁判所が弁護人を付ける制度は、第31条により、最低刑が3年以上の事件や裁判長が必要と認めた事件などで、裁判の段階で弁護人がいない場合に行われます。捜査段階で自動的に弁護人が付く仕組みは、身心障害や原住民の場合などに限られているため、外国人の多くは自分か家族で弁護人を探すことになります。

帰国できるかは「限制出境」の有無で決まる

逮捕と出国禁止は別です。出国を止めるのは第93条の2の限制出境・出海で、嫌疑が重大で、一定の住居がない、逃亡のおそれがある、証拠隠滅のおそれがあるといった場合に、検察官や裁判官が命じます。最高刑が拘役または罰金のみの軽い事件では命じられません。処分は書面で、理由と期間、不服申立ての方法が記載され、遅くとも6か月以内に通知されます。

上限があります。期間は第93条の3により、捜査中は8か月を超えられず、延長するには検察官が裁判所に請求します。1回目の延長は4か月、2回目は2か月までで、延長は2回が上限です。第93条の6は、保証金や住居制限を命じられる場面では出国制限も併せて命じられ得ると定めています。釈放されたからといって、そのまま空港へ向かえるとは限らない理由はここにあります。

制限がなければ帰国できます。ただし第71条の伝票(呼出状)が届いたのに正当な理由なく出頭しなければ、第75条により拘提されることがあります。帰国後に連絡が取れる住所と、台湾側で書類を受け取る弁護人を決めておくことが、事件を放置しないための実際的な手当てです。

日本台湾交流協会ができること、できないこと

台湾で領事業務を担う日本台湾交流協会は、安全情報のページで、日本人が加害者になった場合の支援範囲を明記しています。できることは、勾留中の日本人との面会や連絡(本人の希望による)と、家族との連絡の支援です。できないこととして、釈放や減刑の要求、弁護士費用・保釈費用・訴訟費用の負担や貸付け、取調べや裁判での通訳・翻訳が挙げられています。同じページは、早期の解決を望むなら専門の弁護士を選任するよう勧め、各事務所の緊急連絡先一覧にある「日本語によるサービスが提供できる法律事務所リスト」を参照するよう案内しています。

通訳は刑事訴訟法第99条に基づいて捜査機関側が手配します。協会は付けません。弁護人を誰にするかも本人と家族の選択です。協会に連絡しておく意味は、家族が状況を把握し、面会と連絡の経路を確保することにあります。

取調べや逮捕を受けた本人やその家族は、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)に日本語で連絡できます。逮捕の日時と場所、どの警察署・地検にいるか、告げられた罪名、帰国便の予定が分かれば、出国制限の見込みも含めて最初の対応を検討できます。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日(台湾時間)。

  • 刑事訴訟法 第27条、第31条、第34条、第71条、第75条、第88条、第88条の1、第92条、第93条、第93条の1、第93条の2、第93条の3、第93条の6、第95条、第99条、第100条の3、第101条、第101条の1、第101条の2、第108条、第110条、第119条、第245条(2026年5月13日改正)
  • 法院組織法 第98条、第99条(2026年5月13日改正)
  • 日本台湾交流協会「安全情報」 3(2)加害者となった場合

よくある質問

中国語が分からないまま取調べを受けることはありますか?
刑事訴訟法第99条は、言葉が通じない被告には通訳を付けて取り調べると定めています。通訳の到着を待つ時間は、検察官が羈押を請求するまでの24時間に算入されません(6時間が上限)。調書は中国語で作られるので、署名の前に通訳を通して内容を確かめます。
日本にいる家族が弁護士を頼むことはできますか?
できます。第27条第2項は、配偶者、直系の親族、三親等内の傍系血族などが本人とは別に弁護人を選任できると定めています。弁護人は警察や検察官の取調べに立ち会え(第245条第2項)、逮捕後の面会は捜査段階でも制限されません(第34条第2項。ただし1回1時間以内)。
逮捕されたら、しばらく日本に帰れなくなりますか?
逮捕と出国制限は別の処分です。検察官や裁判官が第93条の2により限制出境・出海を命じた場合、捜査中は原則8か月まで、裁判所の許可で延長されます。保釈(具保)や住居制限が付いたときも、第93条の6により出国制限が併せて命じられることがあります。処分がなければ出国は制限されませんが、呼出しに応じないと拘提の対象になります。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。