架空の情景
← コラム一覧へ台湾の刑事訴訟コラム台湾法律情報

GMOのFX自動売買サーバー不正アクセスを台湾から見る:台湾在住者の告訴期限と、業者に請求するときの準拠法

約6分

架空の情景

GMOインターネットは10月21日、FX自動売買にも使われる「お名前.com デスクトップクラウド」に第三者の不正アクセスがあったと公表しました。影響の可能性があるサーバーは26,739件。同社は全プランのサーバーを順次停止し、利用者にはサーバー内に保管したIDやパスワードの変更を求めています。

TBS NEWS DIGの10月25日の報道は、被害を訴える男性の取引履歴から、意図しない取引でわずか2秒の間に約416万円が失われていたと伝えています。ハッカー集団とみられる者は「24時間で約77億円相当の口座を破壊」と声明を出していますが、これは攻撃者側の主張です。毎日新聞の同日の記事によると、GMOは全利用者に一律5,000円の見舞金を支払い、取引所などが返金に応じない場合も不正取引による損失の全額を支払うとしています。

報道からは、台湾在住の利用者が含まれているかどうかはわかりません。ただ、日本のVPSと日本の口座で自動売買を続けたまま台湾で暮らす人にとっても、無関係な話ではありません。同じことが台湾在住者に起きたら、台湾の法律では何が問題になるのでしょうか?

補償の約束と、規約で決まる部分

今回はGMO自身が補償を表明しています。補償の対象・条件・手続は、その発表と利用規約に沿って進むことになります。問題は、補償の対象外とされた損失が残る場合や、VPS業者とFX業者のどちらが責任を負うのか争いになる場合です。

準拠法を決めるのは台湾の渉外民事法律適用法です。第20条は、契約から生じる債権について当事者が選んだ法律を適用します。日本の業者の規約が日本法を指定していれば、台湾の裁判所でも出発点は日本法です。選択がなければ契約と最も関係の深い法律により、同条は契約を特徴づける債務を負う当事者の行為時の住所地法をその法律と推定しています。不法行為として請求するなら第25条の不法行為地法が原則です。

管轄は別に考えます。台湾の民事訴訟法第2条第3項は、外国法人に対する訴えを台湾にある主たる事務所・営業所の所在地の裁判所に置いています。台湾に拠点のない日本企業が相手なら、規約の管轄条項と日本の裁判所での手続がまず現実的な選択肢になります。

台湾で刑事告訴するときの6か月

他人のアカウントとパスワードを無断で入力するなどしてコンピュータに侵入すれば台湾刑法第358条、他人の電磁的記録を無断で取得・削除・変更して損害を生じさせれば第359条の罪に当たります。法定刑はそれぞれ3年以下と5年以下の懲役・拘役または罰金(30万台湾ドル以下と60万台湾ドル以下、併科あり)。どちらも第363条により告訴乃論の罪です。日本の親告罪に近く、告訴がなければ処罰できません。

期限は短めです。刑事訴訟法第237条は、告訴権者が犯人を知った時から6か月以内と定めています。起算点は被害に気づいた日ではありません。犯人を知った日です。

資金が攻撃者側の口座へ移された場合には、不正な指令の入力で財産を取得する第339条の3のコンピュータ詐欺(7年以下の懲役(70万台湾ドル以下の罰金を併科可)、未遂も処罰)が問題になり、こちらは告訴乃論ではありません。

攻撃者が海外にいても、刑法第4条は行為か結果の一方が台湾域内にあれば台湾域内の犯罪とします。日本のVPSに置いた自動売買プログラムが乗っ取られた場合、侵入されたのは日本のサーバーで、損失が出たのも日本の口座かもしれません。台湾に住む利用者の側で結果が生じたといえるかどうかは、事案ごとの判断になります。告訴は書面でも口頭でもよく、検察官か司法警察官に対して行います(刑事訴訟法第242条)。示談と告訴の取下げの関係は、傷害事件を例にした示談後の告訴取下げの期限で扱いました(告訴乃論の罪に共通する規定です)。

日本の登録は、台湾の許可の代わりにならない

日本でFX業者が業務を行うには、金融商品取引法第29条による内閣総理大臣の登録が必要です。台湾で暮らしながらその業者と取引を続けると、今度は台湾側の条文が問題になります。期貨交易法第105条は、主管機関の許可を受けていない者に期貨交易を委託することを誰に対しても禁じています。利用者も対象です。違反には第119条第1項第1号で12万〜240万台湾ドルの過料があります。ただし、台湾へ移る前に開いた口座にどう適用されるかを金融監督管理委員会が説明した資料は見当たらず、商品と取引の仕方で結論が分かれ得ます。

外国の期貨商が台湾で営業するには台湾政府の認許と主管機関の許可が要り(第56条)、外貨証拠金を扱うレバレッジ取引業者(槓桿交易商)には第80条の許可が要ります。日本の登録は、この許可の代わりにはなりません。FXが期貨交易に入るのは、第3条が価格の一定割合を払って後日差額を決済する「槓桿保證金契約」を含めているためで、金融監督管理委員会も2020年5月28日のプレスリリースで外貨証拠金取引をこの法律の期貨交易と位置づけました。

許可のない海外の証券プラットフォームを通じた取引は証券投資人及期貨交易人保護法や金融消費者保護法の保護を受けない、と金融監督管理委員会は2023年9月8日のプレスリリースで注意を促しています。それでも、不正アクセスの被害者として告訴できることに変わりはありません(刑事訴訟法第232条)。

台湾の弁護士には、告訴状の作成と証拠の整理、業者の規約にある準拠法・管轄条項の検討、補償の対象外となった損失の請求先の検討、そして取引自体が期貨交易法に触れるかどうかの確認を依頼できます。刑事事件のご相談はwei@hoveringlaw.com.twへ。昊鼎国際法律事務所の台北事務所は台北市大同区承徳路一段35号7階の2(臺北市大同區承德路一段35號7樓之2)にあります。

補償で埋まらない損失が残ったとき、次に読むことになるのは利用規約の準拠法と管轄の条項です。

出典

確認日:2026年10月26日

よくある質問

資金が攻撃者側の口座へ移されていた場合も、告訴の6か月の期限が関係しますか。
不正な指令の入力などで財産を取得した場合は、台湾刑法第339条の3のコンピュータ詐欺(7年以下の懲役(70万台湾ドル以下の罰金を併科可)、未遂も処罰)が問題になります。この罪は第363条の告訴乃論の罪に含まれていないため、犯人を知った時から6か月という告訴期間(刑事訴訟法第237条)の制限を受けません。期間の対象になるのは、不正アクセス(第358条)や電磁的記録の改変(第359条)などの告訴乃論の罪です。
業者が補償を約束していても、台湾の弁護士に相談する意味はありますか。
補償の範囲と条件は業者の発表と利用規約で決まります。台湾の渉外民事法律適用法第20条は、契約上の請求について当事者が選んだ法律を優先します。補償の対象外とされた損失や、別の業者の責任を検討するときに、規約の準拠法・管轄条項と台湾での手続を合わせて確認できます。
日本で登録されたFX業者なら台湾で使っても問題ありませんか。
日本では金融商品取引法第29条の登録が必要ですが、外国の期貨商が台湾で営業するには、台湾政府の認許と主管機関の許可が別に要ります(期貨交易法第56条、外貨証拠金の業者は第80条)。利用者側にも、許可を受けていない者への期貨交易の委託を禁じる第105条があり、違反には第119条で12万〜240万台湾ドルの過料が定められています。日本の登録は台湾の許可の代わりにはなりません。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。