架空の情景
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台湾の住宅ローン、据置期間のあとで返せなくなったら:保証人・連帯債務者・競売と更生

約7分

架空の情景

台湾の銀行は、自宅用の住宅ローンで借主に連帯保証人を求めることを法律で禁じられています。十分な担保を取っていれば、保証人そのものも求められません(銀行法第12条の1)。では、台湾人の配偶者のローン書類に日本人が署名した欄は、何だったのでしょうか。

利息だけを払う据置期間(寬限期)が終わると、元金の返済が加わります。毎月の支払いは一気に増えます。返せなくなったとき、署名が「保証人」なのか「共同借款人」なのかで、銀行が誰に、どの順番で請求できるかが変わります。

保証人なのか、連帯債務者なのか

契約書の肩書きが「保証人」なら、民法上は順番があります。一般の保証人は、銀行が借主の財産に強制執行をして、それでも回収できなかったという段階になるまでは、支払いを拒めます(民法第745条)。この権利を放棄していたり、借主の財産が債務に足りなかったりする場合などは、拒めません(第746条)。

冒頭の銀行法第12条の1には続きがあります。保証人を立てた場合も保証額には上限を設け、請求はまず借主に対して行い、足りない分は、保証人が複数いれば各保証人に均等に請求するのが原則です。執行名義を得るためや保全手続のためであれば、この順番によらないことも認められています。

署名欄が「共同借款人」だった場合はどうでしょうか。順番はありません。複数の人が同じ債務を負い、各自が全部を払うと明示していれば連帯債務です(民法第272条)。銀行は一人にでも全員にでも、同時にでも順番にでも、全部または一部を請求できます(第273条)。夫婦の間では、法律や契約に別の定めがなければ半分ずつの負担となり(第280条)、自分の分を超えて払った人は相手の負担分と、その免責の日からの利息を求償できます(第281条)。

銀行に返済条件の見直しを求めるとき

据置期間の延長や返済年数の組み直しは契約の変更なので、銀行が応じなければ変わりません。すでに返済できない、またはそのおそれがある人には、消費者債務清理条例(消費者債務清理條例)の手続があります。更生や清算を申し立てる前に、最大の債権金融機関へ返済方法の協議(前置協商)を書面で求めるか、住所地・居所地の裁判所または郷鎮市区の調解委員会に調停を申し立てます(第151条)。財産・収入の状況説明書と債権者・債務者の一覧を添えます。使えるのは、5年以内に営業活動をしていないか、月平均の売上が20万台湾ドル以下の小規模な営業だけをしていた自然人です(第2条)。

住宅ローンは事情が違います。金融監督管理委員会銀行局の前置協商の説明は、自用住宅の借入れを協議の対象に含めつつ、担保のある債権は原則として元の契約どおりに履行し、難しければ担保を持つ金融機関と別に話し合うとしています。最大債権銀行がまとめるのは、その結果を踏まえた無担保債務の返済案です。協議や調停を求めた後にどこかの債権金融機関が強制執行を申し立てたり、執行の延期に同意しなかったりすると不成立とみなされます。成立すれば、責めに帰すべきでない事情で履行が難しくなった場合を除き、更生や清算は申し立てられません(第151条第6項・第7項)。裁判所の調停が不成立に終わった日から20日以内に更生か清算を申し立てると、調停の申立てがその申立てとみなされます(第153条の1)。

更生で自宅を残す仕組み

日本の民事再生法には、住宅資金貸付債権について再生計画に「住宅資金特別条項」を定められる仕組みがあります(民事再生法第198条)。台湾の更生計画にも、自用住宅借款特別条項という近い発想の条項があります。ただ、使えるかどうか、期間や利息の扱いがどうなるかは、台湾の条例の条文で判断することになります。

前置協商で住宅ローンが元の契約のまま残るなら、自宅を守る手段はこの条項です。債務者は自用住宅ローンの債権者と協議して、更生計画に特別条項を置くことができます。例外が一つあります。その家にほかの担保権者がいて、その人が更生計画に反対しているときは置けません(第54条)。

協議が整わない場合については、第54条の1が二つの返し方を用意しています。債務者は期限の利益喪失の約定に縛られず、どちらかを選びます。一つは、未返済の元本、到来済みの利息、更生開始前に生じた違約金(元本の年2%以内の部分)の合計を、もともとの最終返済期日までに毎月均等に返す方法です。もう一つは、更生計画の最終返済期までは元本の利息だけを払い、その後に同じ合計を毎月均等に返す方法です。利息はいずれも当初の約定利率で計算します。それでも難しければ、履行期限をさらに最長6年延ばせます。

更生計画の返済期間は原則6年以内で、この特別条項を置けば8年まで延ばせます(第53条)。

更生そのものには限界もあります。手続が始まると債務者に対する訴訟や強制執行は始めることも続けることもできなくなりますが、担保権や優先権のある債権は例外です(第48条第2項)。抵当権を持つ銀行は、更生中でも競売を進められます。申し立てられるのは、担保も優先権もない元本・利息の合計が1,200万台湾ドル以下の債務者です(第42条)。

競売の流れと、その前に売るという選択

延滞が続くと、銀行は抵当権者として、家の所在地の裁判所に競売を申し立てます(民法第873条、非訟事件法第72条)。競売を許可する裁定は、それ自体が執行名義になります(強制執行法第4条第1項第5号)。抵当権者が抵当物の競売を申し立て、裁判所が強制執行を許可した裁定、というのが条文の書き方です。

売却代金がローン残高に届かなかったら、どうなるのでしょうか。借金は残ります。ただ、この裁定で執行できるのはその家です。給与や預金など、ほかの財産に執行するには、銀行は支払命令(民事訴訟法第508条)や判決といった執行名義を別に得ます。それでも執行できる財産がなければ、裁判所は銀行に1か月以内に財産を調べて報告させ、見つからなければ「財産が見つかったときに改めて執行する」ための証明書(憑證)を渡します(強制執行法第27条)。

保証人にとっても、ここが分かれ目です。借主の財産が債務に足りないことになれば、保証人は第745条の抗弁を出せません(第746条第3号)。

値下がりは段階的です。最低価格は鑑定人の評価をもとに裁判所が決めます(第80条)。買い手がつかず、銀行も引き取らなければ、20%以内で値を下げて再競売し、それでも売れなければ下げた価格からさらに20%以内で下げます(第91条・第92条)。二度下げても売れず、銀行がなお引き取らないときは、10日以内に公告し、3か月のあいだ同じ条件で買う人を待ちます(第95条)。

競売になる前に自分で売る道もあります。抵当権がついていても家は売れ、抵当権は新しい所有者のもとにそのまま残ります(民法第867条)。買主にとっては負担なので、実際には売買代金でローンを返し、抵当権を抹消する日と金額を銀行と擦り合わせることになります。

離婚で、銀行との関係は変わるのか

一方の名義だけのローンを、離婚の際に相手が引き受けると約束しても、債権者である銀行が承認しなければ、銀行に対しては効力がありません(第301条)。新しい債務者が銀行と直接引受契約を結ぶ方法は第300条に定められています。連帯債務者として署名していれば、離婚協議書に「ローンは夫(妻)が払う」と書いても夫婦間の負担が決まるだけで、銀行は第273条により誰にでも全額を請求できます。

夫婦の間の清算は別の話です。夫婦はそれぞれ自分の債務を返すのが民法の原則で、一方が自分の財産で相手の債務を払えば、婚姻中でも返還を求められます(第1023条)。家庭の生活費から生じた債務の連帯責任については配偶者の借金と家庭生活費で扱いました。台湾民法の法定財産制が適用される夫婦なら、その財産制が終わるときの剰余財産の分配で、婚姻中に負ったローンの残高を婚後財産から差し引いてから差額を分けます(第1030条の1)。日台夫婦の財産にどちらの法律が適用されるかは日台夫婦の財産と準拠法で扱っています。

台湾の弁護士には、保証書とローン契約を読んで保証人か連帯債務者かを確かめること、前置協商の申入書や調停申立書の作成、更生計画の自用住宅借款特別条項の設計、競売手続への対応、離婚協議書のローン負担条項の起案を依頼できます。民事事件のご相談はwei@hoveringlaw.com.twへ。昊鼎国際法律事務所の台北事務所は台北市大同区承徳路一段35号7階の2(臺北市大同區承德路一段35號7樓之2)にあります。

保証人として署名したのなら、保証書に第745条の権利を放棄する文言があるかどうかで、銀行が請求に来る順番が変わります。

参考資料

確認日:2026年10月27日。

よくある質問

妻の住宅ローンの保証人になっています。銀行はいきなり私に請求できますか。
一般の保証人であれば、銀行が借主の財産に強制執行をして、それでも回収できなかったという段階になるまでは、支払いを拒めます(民法第745条)。ただし、この権利を放棄した場合や借主の財産が足りない場合などは拒めません(第746条)。また銀行法第12条の1は、自用住宅の融資で連帯保証人を求めることを銀行に禁じ、保証人がいる場合もまず借主に請求し、不足分を保証人に請求するよう定めています。署名した書類が連帯債務者としての契約であれば、この順番はありません。
競売で家が売れたら、残りのローンはなくなりますか。
なくなりません。ただ、抵当物の競売を許可する裁定は、その家を競売にかけるための執行名義です。銀行がほかの財産に執行するには、支払命令や判決などの執行名義を別に得ます。それでも執行できる財産がなければ、裁判所は強制執行法第27条により、財産が見つかったときに改めて執行するための証明書(憑證)を債権者に交付します。
日本に帰国すれば台湾の銀行への債務は終わりますか。
日本に戻っても、台湾の銀行への債務はなくなりません。台湾に預金や不動産を残していれば、銀行は判決などの執行名義を得てそこに執行できます。まだ執行名義のない銀行は、送達を日本で行う必要があるときは支払命令を使えず(民事訴訟法第509条)、訴訟で判決を求めることになります。離婚協議で配偶者が払うと決めても、連帯債務者である限り銀行は民法第273条に基づき誰にでも全額を請求でき、債務を配偶者に引き受けてもらう約束も銀行が承認しなければ銀行には効力がありません(第301条)。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。