日台夫婦の財産はどちらの法律で決まるか:法定財産制と剰余財産の分配
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日台夫婦の財産はどちらの法律で決まるか:法定財産制と剰余財産の分配

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日本人の夫と台湾人の妻が、台北で12年暮らした末に離婚することになりました。夫名義の台湾の預金と会社の株式、妻名義の新北市のマンション、夫が日本に残していた預金があります(架空の例です)。これを二人でどう分けるかは、日本の民法と台湾の民法のどちらで決まるのでしょうか。

答えは二つの事情で変わります。結婚前後に二人が書面で何を決めていたか。そして、二人がどこに住所を持っているか。台湾の裁判所が準拠法を決めるときは、台湾の渉外民事法律適用法に従います。日本の裁判所で争う場合に準拠法をどう決めるかは、日本側の規則で別に確認する必要があります。

書面の合意、共通の本国法、共同の住所地

台湾の渉外民事法律適用法第48条(涉外民事法律適用法)は、夫婦の財産制を次の順で決めます。

最初に見るのは、夫婦が書面で合意した法律です。選べるのは夫か妻の一方の本国法か住所地法に限られ、日台夫婦なら日本法か台湾法、あるいはどちらかが第三国に住所を持っていればその国の法律も選べます。

合意がないか、合意が無効なときは、夫婦に共通の本国法によります。日台夫婦には、これがありません。そこで次の段階、共同の住所地の法律に進みます。冒頭の例のように二人とも台北に住所があれば、台湾法です。住所が決め手です。夫が東京、妻が台北というように住所が分かれていれば共同の住所地もなく、最後の段階として、婚姻関係と最も密接な地の法律によります。条文は何を基準に最も密接と見るかを挙げていないため、事案ごとの判断になります。

国籍や住所が一つでない場合の扱いも決まっています。台湾籍の妻が日本国籍も持っているなど、一方に複数の国籍があるときは、関係が最も密接な国籍の法律がその人の本国法になります(第2条)。妻にとって最も密接なのが日本国籍だと判断されれば夫婦に共通の本国法があることになり、共同の住所地より先に日本法が出てきます。住所が複数あるときは関係が最も密接な住所、住所が分からないときは居所の法律によります(第4条)。台北と東京を行き来している夫婦では、この判断が結論を分けることがあります。第48条は、国籍や住所をいつの時点で見るのかを書いていないので、結婚後に住所を移した夫婦ではこの点も確認が要ります。

不動産については例外があります。所在地の法律が不動産について特別の定めを置いているときは、上の順番は適用されません(第48条第3項)。

準拠法が外国法でも、台湾の取引相手には台湾法

夫婦財産制が外国法で決まる場合でも、夫婦が台湾にある財産について善意の第三人と取引したときは、その第三人に対する夫婦財産制の効力は台湾法によります(第49条)。取引の相手は守られます。日本法で夫婦財産を決めていても、台湾のマンションの買主にまでその取り決めを持ち出せるとは限りません。

台湾法が適用されるときの法定財産制

台湾民法では、夫婦は結婚の前でも後でも、契約で約定財産制を選べます(第1004条)。契約は書面で(第1007条)、登記しなければ第三人に対抗できません(第1008条)。結んでいなければ、法定財産制です(第1005条)。財産制の契約を結んだ覚えのない夫婦は、こちらに当たります。

法定財産制では、夫と妻の財産は婚前財産と婚後財産に分かれ、それぞれが自分のものとして持ちます(第1017条)。婚前か婚後か証明できない財産は婚後財産と、どちらのものか証明できない財産は共有と推定されます。結婚中に婚前財産から生じた利息などの果実は、婚後財産とみなされます。管理や処分もそれぞれが自分の財産について行います(第1018条)。

離婚で分けるのは「剰余」の差額

法定財産制が終わるとき、例えば離婚のときに使われるのが、第1030条の1の剰余財産分配です。夫と妻それぞれについて、いま残っている婚後財産から結婚中に負った債務を引き、その残り(剰余)の差額を半分ずつに分けます。相続などで無償で得た財産と慰謝料は計算に入りません。

仮に、夫の剰余が1,000万台湾元、妻の剰余が200万台湾元だったとします。差額は800万台湾元で、その半分の400万台湾元を、妻が夫に請求できる計算です。もっとも、一方が婚姻生活に貢献や協力をしていなかったなど、平等に分けると不公平な事情があれば、裁判所は分配額を調整したり免除したりできます(同条第2項)。その判断では、家事労働、子の養育、家庭への協力の全体、同居と別居の期間、財産を得た時期、双方の経済力などが考慮されます(同条第3項)。

婚前の借金を結婚後の給料で返していたような場合は、補償済みでない限り、その分を婚後財産に戻して計算します。逆に婚前の預金で結婚中の借入れを返していれば、結婚中の債務として計算に入れます(第1030条の2)。結婚前から住宅ローンを抱えていた夫婦では、この調整で差額が変わります。

ここで基準日が要ります。財産の価値は、法定財産制が終わった時点で計算します。ただし判決で離婚する場合は、訴えを起こした時点が基準になります(第1030条の4)。株式のように値動きのある財産では、この基準日の違いが額を左右します。

この請求権には期限があります。差額があると知ってから2年、法定財産制が終わってから5年を過ぎると、時効で消えます(第1030条の1第5項)。日本に戻ってから話し合おうと考えているうちに期限が来ることもあるので、離婚の時期と合わせて意識しておく必要があります。

相手の財産が分からないとき

隠された財産はどうなるでしょうか。夫婦は、婚後財産について互いに報告する義務を負っています(第1022条)。相手が預金や株式の状況を明かさないとき、この義務が開示を求める根拠になります。

相手が分配を減らすために、法定財産制が終わる前の5年以内に婚後財産を処分していれば、その財産は残っているものとして加算されます(第1030条の3)。道徳上の義務を果たすための相当な贈与は除かれます。相手の財産では足りないときは、財産を受け取った第三人に対して、受けた利益の範囲で返還を求められます。有償で受け取った人に対しては、著しく不相当な対価で取得した場合に限られます。この第三人への請求も、知ってから2年、制度の終了から5年で消滅します。

日本法が準拠法になる場合と、離婚の条文との関係

二人が書面で日本法を選んでいた場合は、夫婦の財産は日本法で判断されます。書面の合意も共通の本国法もなく、共同の住所が日本にある場合も同じです。そのときは台湾民法の剰余財産分配の規定ではなく、日本法の制度が基準になり、その内容は日本の専門家に確認していただく必要があります。

なお、離婚そのものとその効力については、別の条文(第50条)が、協議時または訴え提起時の共通の本国法、共同の住所地法、最も密接な地の法律という順で準拠法を定めています。台湾民法は剰余財産分配を「夫妻財產制」の節の法定財産制の部分に置いていますが、離婚に伴う財産の分け方を第48条と第50条のどちらで考えるかは、個別の事案ごとに裁判所の判断を確認しながら主張を組み立てます。

準拠法の見当をつけるには、婚姻届の受理記録や戸籍の資料、二人の住所の経過がわかるものが手がかりになります。財産の一覧は、分かる範囲で構いません。どの法律が適用されるかの検討、台湾法による剰余財産分配の計算、相手方への開示請求の進め方は、昊鼎国際法律事務所が日本語でご相談を受けています。初回相談は1時間NT$3,000で、オンラインでも受け付けています。連絡先はwei@hoveringlaw.com.twです。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日(台湾時間)

よくある質問

日本人の夫と台湾人の妻で、ずっと台北に住んでいます。財産はどの国の法律で決まりますか?
書面で準拠法を選んでおらず、二人とも国籍が一つだけなら、共通の本国法がないため、共同の住所地法によります(渉外民事法律適用法第48条第2項)。二人とも台北に住所があれば台湾法となり、台湾民法の法定財産制と剰余財産分配の規定が適用されます。
相手が離婚前に預金を親族に移していました。取り戻せますか?
台湾法が適用される場合、相手方が分配を減らす目的で法定財産制の終了前5年以内に婚後財産を処分していれば、その財産は現存する婚後財産として加算されます(民法第1030条の3第1項)。相手の財産で足りないときは、受け取った第三人に対し、受けた利益の範囲で返還を求められることがあります(同条第2項)。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。