台湾の会社法第23条第1項は、会社の負責人に忠実義務と善良な管理者の注意義務を課し、これに違反して会社に損害を与えたときは損害賠償責任を負うと定めています。負責人自身の利益と会社の利益がぶつかる取引や、社内手続を経ずに進めた関係者取引は、忠実義務違反が争われやすい場面です。
第2項は第三者との関係です。負責人が会社の業務を執行する中で法令に違反し、他人に損害を与えたときは、その他人に対して会社と連帯して賠償責任を負います。債権者が会社に契約上の支払を求める請求と、法令違反を理由に負責人個人も被告に加える請求とでは、必要な要件が違います。
負責人に当たる人
会社法第8条によると、有限公司と股份有限公司の負責人は董事です。經理人・清算人・臨時管理人、さらに股份有限公司の発起人・監察人・検査人・重整人・重整監督人も、職務執行の範囲内では負責人です。会社が解散して清算に入れば、清算人が清算事務の範囲で負責人の立場に立ちます。清算手続そのものは会社の解散と清算で扱っています。
同条第3項は、董事に就いていない人にも及びます。董事ではないのに実質的に董事の業務を執行している人、または会社の人事・財務・業務経営を実質的に支配して董事の業務執行を実質的に指揮している人は、董事と同じ民事・刑事・行政罰の責任を負います。ただし、政府が経済発展や社会の安定など公益のために、自ら指名した董事を指揮する場合には適用されません。
日本などの親会社が指名し、台湾子会社の董事として登記された人も、台湾の会社法上は負責人です。親会社の指示に従ったという事情だけで第23条の義務を免れる規定はありません。
誰が誰に請求するのか
第1項の損害賠償請求権は会社の権利で、会社が負責人に請求します。会社が動かない場合には、会社法第214条の株主代表訴訟があります。股份有限公司では、発行済株式総数の1%以上を6か月以上継続して保有する株主は、書面で監察人に対し、会社のために董事を訴えるよう請求できます。監察人が請求の日から30日以内に訴えを提起しないときは、その株主が会社のために訴えを提起できます。
第2項では、損害を受けた第三者が会社と負責人を共同被告にできます。第三者は、負責人による会社業務の執行、その中での法令違反、損害、因果関係を主張・立証しなければなりません。会社が代金を支払わなかったという結果だけでは、これらの要件を満たしません。
消滅時効
第23条第2項に基づく請求の消滅時効は、最高法院民事大法廷の112年度台上大字第1305號裁定により、民法第197条第1項が適用されます(司法院の報道資料、2024年7月26日公表)。損害と賠償義務者を知った時から2年、不法行為の時から10年です。法定の特別責任として民法第125条の一般時効15年を適用していた従来の判例(76年台上字第2474號)の見解は採られませんでした。いつ損害と賠償義務者を知ったかは事実認定の問題なので、起算点は事案ごとに確認します。
責任を判断する資料
董事会議事録、契約書、会計帳簿、メールや決裁の記録があってはじめて、義務違反や法令違反の有無、誰が意思決定に関わったかを判断できます。台湾に渡航せずに手続を進める方法は海外から台湾の弁護士に依頼するをご覧ください。
ご相談の際は、会社の登記資料、董事会資料、損害の明細をお送りください。
昊鼎國際法律事務所・曾雋崴(Wei Tseng)弁護士:wei@hoveringlaw.com.tw、103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2。
参照した公式資料
確認日:2026年10月2日
よくある質問
- 董事長だけが負責人ですか。
- いいえ。会社法第8条により、股份有限公司の負責人は董事です。經理人、清算人、監察人なども職務執行の範囲内では負責人です。名刺の肩書だけでなく、登記・選任の根拠・実際の執行を見ます。
- 会社が契約債務を払えないとき、負責人個人が必ず払いますか。
- いいえ。第2項は業務執行が法令に違反して他人に損害を与えた場合の連帯責任です。会社の単なる債務不履行だけでは足りません。資本・会計・清算に関する他の条文上の責任は別に検討します。
- 第2項の請求は何年以内ですか。
- 最高法院民事大法廷(112年度台上大字第1305號)は民法第197条第1項(損害と賠償義務者を知った時から2年、不法行為の時から10年)を適用すると判断しています。起算点は事案ごとに確認します。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



