「日本から送っているうちは、台湾の登記も営業税も関係ない」。台湾のECモールに出店する日本の事業者がそう考えるのには、それなりの理由があります。一件ずつ日本から直送しているかぎり、大筋では当たっているからです。
外れるのは三つの場面です。台湾で人を雇うとき、日本の会社の名前で台湾から売るとき、そして在庫が台湾の倉庫に入ったときです。
台湾で人を雇うとき
検品や返品の受付を台湾で誰かに任せると、雇用主の問題が出てきます。日本から担当者を送る場合、外国人は法律に別段の定めがない限り、雇用主が申請した許可なしに台湾で働けません(就業服務法第43条)。誰が雇用主として申請するのか。そこが先です。
現地スタッフを採れば、保険と退職金がついてきます。費用は毎月です。5人以上を雇う会社や行号の労働者は、雇用主を投保単位として労働保険に加入し、在職中の外国人も含まれます(勞工保險條例第6条第1項第2号・第3項)。雇用主は毎月、対象となる労働者のために退職金を労働保険局の個人口座へ積み立てます(勞工退休金條例第6条第1項)。対象は労働基準法が適用される本国籍の労働者と、外国人なら台湾に戸籍のある国民と結婚して居留許可を得た人や永住許可を得た人などです(同条例第7条)。
日本の会社の名義のままでは、台湾で業務を営めません
台湾で人を雇う主体を考えると、日本の会社のままでよいのかという問いに行き着きます。会社法(公司法)第371条第1項によれば、外国会社は支店(分公司)の登記をしなければ、外国会社の名義で台湾国内で業務を営むことはできません。
罰則の相手は行為者です。1年以下の有期徒刑、拘役または15万台湾ドル以下の罰金(併科あり)が定められています。行為者は民事責任も自ら負い、2人以上いれば連帯します(同条第2項)。台湾の倉庫に在庫を置き、日本の会社の名前で台湾の消費者に売り続ける形は、この条文に照らしてどう説明するかを避けて通れません。
支店か子会社か
販売を台湾で続けるなら、候補は支店か子会社です。
支店を置く外国会社は、台湾での営業資金を別に用意し、台湾での負責人(代表者)を指定します(会社法第372条第1項)。登記の後に負責人がその資金を本社へ戻したり、本社が引き揚げるのに任せたりすると、その負責人本人が5年以下の有期徒刑などの対象になります(同条第2項)。必要書類は経済部商業発展署の案内にまとめられています(外國公司設立在臺分公司應附文件及注意事項)。
子会社を設けると、手続の入口が変わります。外国人投資条例第4条は、外国の法人が台湾の会社の株式や出資を持つことを「投資」と定め、投資人は投資申請書と投資計画を主管機関に出して核准を受けます(第8条第1項)。主管機関は、書類がそろってから1か月以内、他の機関の権限にかかわるときは2か月以内に決めることになっています(同条第3項)。投資審査と登記住所の順番は台湾会社設立の投資審査と登記住所で、子会社と支店の責任と税の違いは台湾子会社と台湾支店の違いで、辦事處の税務上の扱いは台湾の駐在員事務所の税金で扱いました。
台湾の倉庫から出た注文は「台湾国内の販売」です
在庫を台湾の物流倉庫に移すと、税の見え方が変わります。営業税法(加值型及非加值型營業稅法)第4条第1項は、引渡しに運送が伴う貨物について、発送地が台湾にあれば台湾国内の販売と定めています。注文を受けたのが日本のサーバーでも、条文が見るのは荷物がどこから出たかです。ここからは売り手自身の問題です。
国内で売る者は営業人です。第6条は営業人に、外国の事業者が台湾に持つ固定営業場所を含めています(第3号)。営業人の本店とその他の固定営業場所は、営業を始める前にそれぞれ所轄の稽徴機関で税籍登記をする決まりです(第28条)。
では、物流会社の倉庫に在庫を預けているだけで、日本の会社の固定営業場所になるのでしょうか。条文はそこまで書いていません。倉庫契約の内容と、受注・出荷の指示を誰が出しているかを示して、所轄の国税局に確かめる場面です。
直送の営業税を払うのは、原則として台湾の買い手です
日本から直送を続ける注文は、どうでしょうか。営業税は、台湾国内での販売だけでなく貨物の輸入にもかかります(営業税法第1条)。輸入貨物について納税義務を負うのは収貨人または持有人で、その営業税は税関が代わりに徴収します(第2条第2号、第41条)。
財政部の税務入口網も、越境ECの輸入を同じように整理しています。収貨人または持有人が営業税の納税義務者で、税額は課税価格に関税・貨物税などを加えた額の5%、それを税関が代わりに徴収するという説明です(網路交易應注意事項(進口))。この形なら、日本の出店者が台湾の国税局に営業税を申告する場面はありません。手続は税関と買い手の間で完結します。
少額の荷物には免税の線があります。課税価格2,000台湾ドル以下の郵便小包と国際宅配便(快遞)は関税・貨物税・営業税がかかりませんが、たばこ・酒などは除かれ、同じ受取人や納税義務者が半年に6回を超えて免税を使うと、その後は適用されません(網路交易應注意事項(進口))。課税価格に何が入るか、税金を知らずに受取りを拒む買い手が出たときどうなるかは、越境ECで台湾の消費者に売るときの「関税と通関」の節で扱っています。
返品や事故のとき、台湾の消費者が向かう相手
消費者保護法では、商品の輸入を営業とする者も「企業経営者」です(消費者保護法第2条第2号)。そして商品を輸入した企業経営者は、その商品の設計・生産・製造者とみなされ、第7条の製造者責任を負います(第9条)。直送なら輸入するのは買い手ですが、在庫を台湾に入れるときに誰の名義で輸入したのか。名義が分かれ目です。製品事故が起きたときに消費者の請求がどこへ向かうかは、輸入の名義と、台湾で売主として表示されていたのが誰かによって変わり得るからです。
モールの側の形も確かめておく価値があります。財政部は国内取引の事例で、共同購入サイト(團購網)の運営には、商品を仕入れて売る形と、店舗から代理販売の手数料を受け取る形があると説明しています(網路交易案例說明(境內))。出店契約と注文確認画面で、売主として誰の名前が出ているか。返品の窓口もそこで決まります。
到着後7日以内の無条件解約(第19条)や表示義務も、同じ越境ECの記事に詳しく書きました。訴訟になれば、消費者は消費関係の発生地の裁判所に訴えることもできます(第47条)。
台湾の弁護士に依頼できること
台湾で最初の一人を雇う前の就業許可と雇用契約の整理から、雇用主となる支店か子会社かの比較、投資申請書・投資計画の作成、会社登記と税籍登記の代行までを、台湾の弁護士に任せられます。倉庫へ在庫を移す段階では、出店契約と物流倉庫の契約を読んで輸入者・売主として名前が出る場面を洗い出し、国税局への照会文を作ります。台湾の消費者や消費者団体から請求を受けたときの対応も依頼できます。ご相談は外国企業の台湾投資のご案内をご覧のうえ、wei@hoveringlaw.com.twへ。昊鼎国際法律事務所の台北事務所は台北市大同区承徳路一段35号7階の2(臺北市大同區承德路一段35號7樓之2)にあります。
物流倉庫との契約書に書かれた在庫の搬入開始日は、そのまま台湾での登記を考え始める日付になります。営業税法第28条が求めているのは、営業を始める前の税籍登記です。
参照した資料
確認日:2026年10月28日。
よくある質問
- 台湾で検品や返品受付のスタッフを雇うと、何が必要になりますか。
- 日本から社員を送って働かせる場合、法律に別段の定めがない限り、雇用主が申請した許可が要ります(就業服務法第43条)。現地で採用すれば、5人以上を雇う会社や行号の労働者は雇用主を投保単位として労働保険に加入し、在職中の外国人も含まれます(勞工保險條例第6条)。毎月の退職金積立て(勞工退休金條例第6条)の対象は、労働基準法が適用される本国籍の労働者や、台湾に戸籍のある国民と結婚して居留許可を得た外国人、永住許可を得た外国人などです(同条例第7条)。どの会社が雇用主として申請し加入するのかは、支店か子会社かの選択と結びつきます。
- 物流会社の倉庫に在庫を預けるだけでも、台湾で登記が必要になりますか。
- 台湾の倉庫から発送する販売は、発送地が台湾なので国内販売です(営業税法第4条第1項第1号)。外国会社が台湾に持つ固定営業場所は営業人となり(第6条第3号)、営業開始前に税籍登記をしなければなりません(第28条)。ただ、第三者の倉庫に在庫を置くことが固定営業場所にあたるかは条文に書かれていないため、倉庫契約と受注・出荷の実態を示して所轄の国税局に確かめることになります。会社法第371条の支店登記も同時に検討します。
- 駐在員事務所(辦事處)を置けば、台湾で販売できますか。
- 会社法第386条の辦事處は、台湾に支店を設けて営業する意思のない外国会社が代表人を派遣して置くものです。台湾国内で販売する拠点には向きません。販売するなら支店登記(第371条・第372条)か、外国人投資条例第8条の核准を得て子会社を設ける形を検討します。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



