台湾子会社は台湾の法律で設立する別の会社で、日本の親会社とは別に契約し、債務を負います。一方の台湾支店は日本の会社そのものの一部で、支店の契約と債務は日本の本店に帰属します。この違いが、出資者の受け入れ方、利益を日本に戻すときの税金、台湾から撤退するときの手続まで、順に効いてきます。
子会社は別の法人、支店は本店の一部
会社法第1条は、営利を目的として同法に基づいて組織・登記・設立された社団法人を会社としています。子会社は自分の名義で事務所を借り、取引先や従業員と契約し、訴訟の当事者になります。親会社が役員を選び経営方針を決めていても、二つの会社が法律上一つになるわけではありません。
有限公司にするか股份有限公司にするかで、株主の責任の書き方が条文上分かれます。前者の株主は出資額を限度に、後者の株主は引き受けた株式の金額を限度に、会社に対して責任を負います(第2条、第99条、第154条)。
外国会社は、支店の登記をしなければ、外国会社の名義で台湾で営業できません(第371条)。登記をせずに営業した行為者には刑事罰があり、行為者が民事責任も自ら負います。支店を置くときは、営業に使う資金を割り当て、台湾での責任者を指定します(第372条)。この資金は本店が台湾の営業のために割り当てたお金で、支店の資本金という扱いにはなりません。登記の後に責任者がこの資金を本店に戻したり、本店が引き揚げるのを放置したりすると、5年以下の有期徒刑を含む刑事罰の対象になり、責任者は外国会社と連帯して第三者の損害を賠償します(同条第2項・第3項)。
| 項目 | 台湾子会社 | 台湾支店 |
|---|---|---|
| 法的地位 | 台湾法で設立する別の法人 | 日本の会社の一部で、別の法人格はない |
| 出資者 | 株主構成を決められる | 株式・持分がなく、出資者を加えられない |
| 契約と債務 | 原則として子会社に帰属 | 日本の本店に帰属 |
| 台湾での資金 | 資本金として払い込む | 営業資金として割り当て、本店に戻すと刑事罰の対象 |
| 撤退 | 解散と清算 | 支店登記の廃止と清算 |
出資者を迎える予定があるかどうか
株式がないので、支店には台湾の取引先を出資者として迎えられません。台湾のパートナーと共同で事業を始めたい、将来は追加の投資家を入れたい、従業員に株式で報いたい、という計画があるなら、子会社のほうが設計の余地があります。議決権の配分、取締役の選任、追加出資、持分の譲渡、事業をやめるときの扱いを、定款と株主間契約で決めておけるからです。
上場も同じ理屈です。支店は株式を発行する会社ではないので、台湾の証券市場に上場する主体にはなれません。
半導体の部品や材料を扱う会社が、代理店、支店、子会社のどれで台湾に入るかを業界の事情に即して比べる場合は、半導体部品企業が台湾市場に進出するときも参考になります。
台湾での税金は同じ、利益の戻し方で差が出る
事業を台湾で続ける限り、子会社も支店も営業税と営利事業所得税を納めます。営業税の税率は、法律上5%を下限、10%を上限とする範囲で行政院が定めることになっており(加値型及非加値型営業税法第10条)、原則として2か月ごとに申告します(第35条)。営利事業所得税は20%です。課税所得が年12万台湾元を超えると全額にかかります。ただし納税額は、12万台湾元を超える部分の2分の1が上限です(所得税法第5条第5項第2款)。対象は、費用や欠損金を差し引いた課税所得です。
差は、利益を戻すときに出ます。
子会社が日本の親会社に配当すると、台湾の国内法では配当額の21%が源泉徴収されます(各類所得扣繳率標準第4条)。日本と台湾の間には、公益財団法人交流協会(現在の日本台湾交流協会)と亜東関係協会(現在の台湾日本関係協会)の間で結ばれた所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための取決め(日台民間租税取決め)があります。その第10条第2項は、配当の受益者が日本の居住者であれば、台湾で課す税額は配当額の10%を超えないとしています。日本の会社だというだけで、自動的に10%になるとは限りません。確かめるのは、親会社が配当の受益者であること(第10条第2項)と、取決めの特典を受けることを主たる目的とする取引ではないこと(第26条)などです。配当の前に、この点を整理しておきます。
支店に配当はありません。財政部の解釈(1987年、台財稅第7586738號)は、外国会社の台湾支店は本店の支店にすぎず、台湾での利益は本店の利益の一部なので、台湾で営利事業所得税を納めた後は利益分配の問題は生じず、台湾の支店が源泉徴収する必要はないとしています。もっとも、支店と本店の間で利息、使用料、サービスの対価をやり取りする場合は、それぞれの支払について源泉徴収の要否を別に見ることになります。
利益を台湾に残す場合にも差が出ます。営利事業は、当年度の利益から法定盈餘公積の積立てなどを差し引き、翌会計年度の終わりまでに分配されなかった部分について、5%の営利事業所得税が加算されます(所得税法第66条の9)。財政部の税務案内によると、総機構が台湾国外にある営利事業、つまり外国会社の台湾支店は、この未分配利益の計算と申告をしなくてよいとされています。台湾で再投資する資金をしばらく貯めておきたい子会社では、この5%も計算に入れておくことになります。
| 税目 | 台湾子会社 | 台湾支店 |
|---|---|---|
| 営業税 | 法定の範囲(5%以上10%以下)で行政院が定める税率、原則2か月ごとに申告 | 同じ |
| 営利事業所得税 | 課税所得が年12万台湾元超なら原則20% | 台湾の営業に帰属する所得に同じ税率 |
| 日本への利益の戻し方 | 配当に21%の源泉徴収。日台民間租税取決めの要件を満たせば10%まで | 支店の利益の送金に源泉徴収は不要(財政部解釈) |
| 未分配利益への上乗せ | 5% | 計算・申告の対象外 |
日台民間租税取決めと恒久的施設
拠点を置かずに取引する場合はどうか。子会社も支店も置かずに日本の会社が台湾と取引する場合、事業の利得は、台湾にある恒久的施設を通じて事業をしていない限り、日本でだけ課税されます(取決め第7条第1項)。線引きは第5条にあります。
恒久的施設には、支店、事務所、工場、事業の管理の場所が含まれます(第5条第2項)。台湾支店を登記すれば、通常は恒久的施設があることになり、支店に帰属する利益には台湾で課税されます。建設や据付けの工事とその監督は6か月を超えると、従業員などを通じた役務の提供は、一つまたは関連するプロジェクトについて12か月の間に合計183日を超えると、恒久的施設に当たります(同条第3項)。日本の本社から技術者を長く台湾の客先に派遣するときは、この日数の管理が効いてきます。会社の名で契約を結ぶ権限を台湾で繰り返し使う代理人がいれば、その代理人の活動について恒久的施設があるとされます(同条第5項)。独立の地位を持つ代理人(同条第6項)や、準備的・補助的な活動だけの場合(同条第4項)は除かれます。
一方、台湾子会社を支配しているという事実だけでは、子会社が日本の親会社の恒久的施設になることはありません(同条第7項)。利子と使用料についても、受益者が相手側の居住者であれば、源泉地で課す税額はそれぞれ10%までです(第11条第2項、第12条第2項)。
責任はどこまで及ぶか
支店は本店の管轄を受ける分支機構で(会社法第3条第2項)、別の法人ではありません。そのため、支店の債務は本店の債務です。本店の名義で支店責任者が結んだ賃貸借、売買、雇用、借入れの義務は本店が負い、台湾に割り当てた営業資金の範囲に限られません。
契約と債務は、子会社なら原則として子会社にとどまります。ただ、株主が会社という法人の地位を濫用し、会社が特定の債務を負って弁済が著しく困難になり、事情が重大で必要があるときは、その株主が弁済の責任を負います(会社法第99条第2項、第154条第2項)。銀行や家主に求められて親会社が保証していれば、その保証の責任も別に残ります。子会社の董事長や経理人を引き受ける駐在員個人の責任は、台湾子会社の董事長・経理人になったらで詳しく扱っています。
設備投資の税額控除
設備投資には税額控除があります。産業創新条例第10条の1の対象は、最近3年以内に環境保護、労働、食品安全衛生の法律に重大な違反がない会社または有限合夥です。期間は5年です。2025年1月1日から2029年12月31日までです。この間に、自社で使う新品のスマート機械、5G、サイバーセキュリティ、AI、省エネ・炭素削減の設備や技術へ、同じ課税年度で合計100万台湾元以上20億台湾元以下を投資すると、営利事業所得税の控除を受けられます。支出の5%までをその年に控除するか、3%までを3年間控除するかを選び、各年度の控除はその年の営利事業所得税額の30%が上限で、他の投資控除と合わせる場合は合計で50%が上限です(同条第2項)。対象は「会社または有限合夥」で、投資計画について中央の主管機関の専案核准を受ける必要があります。支店で投資する場合にこの要件をどう満たすかは、投資の前に確かめておく点です。
撤退の手続も違う
撤退するときは、支店なら登記の廃止を申請します。廃止の前に負った責任や債務は、廃止によって免れません(会社法第378条)。主管機関が職権で登記を廃止する場合も、債権者の権利と外国会社の義務には影響しません(第379条)。台湾の支店がすべて廃止されたときは、台湾での営業から生じた債権債務を清算し、残った債務は外国会社が支払います。清算人は、外国会社が別に指定しなければ、台湾での責任者か支店の経理人です(第380条)。
一方の子会社は、株主の決議による解散、清算人の選任、債権債務の整理、残余財産の分配という会社の清算手続を踏みます。手続の流れと、残った資金を日本に送るまでの段取りは、台湾子会社の解散登記後、残余財産を送金できるまでと台湾会社を終了する際の資本金と会社財産の処理にまとめています。
決める前に並べておくこと
市場を試す短い進出なのか、現地のパートナーと長く続ける事業なのかで、向いている形は変わります。出資者を迎えるか、利益を台湾で再投資するか日本に戻すか、本店がどこまで責任を引き受けるか、撤退するときに誰が清算を担うかを、同じ表に並べてみると判断がしやすくなります。いったん支店で始めて後から子会社に移す場合は、契約の相手方の同意、従業員の移籍、許認可や資産の移転が伴うので、名称を変えるだけでは済みません。
決め手は二つです。出資者を迎える予定があるか、利益をいつ日本に戻すか。事業内容、出資者の構成、台湾での人員と取引の流れがわかる資料を添えて、昊鼎国際法律事務所(曾雋崴弁護士、wei@hoveringlaw.com.tw)へご連絡ください。初回相談は1時間NT$3,000で、オンラインでも受け付けています。
日本側の会計・税務の扱いは、この記事の範囲外です。そこは日本の専門家の領分です。台湾側の扱いと突き合わせてから、形を決めてください。
参考にした公的資料
- 会社法 第1条、第3条、第2条、第99条、第154条、第371条、第372条、第378条、第379条、第380条(民国114年12月26日改正版)
- 加値型及非加値型営業税法 第10条、第35条
- 所得税法 第5条、第66条の9
- 各類所得扣繳率標準 第4条
- 財政部 外商在我國境內分公司之盈餘課稅釋疑(台財稅第7586738號)
- 財政部税務入口網 未分配利益の申告が不要な営利事業(2814)
- 産業創新条例 第10条の1
- 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め(日本語) 第5条、第7条、第10条、第11条、第12条
確認日:2026年10月6日(台湾時間)
よくある質問
- 台湾支店に台湾人や台湾法人を出資者として迎えることはできますか?
- できません。支店は外国会社の一部で、支店そのものに株式や持分はありません。台湾の取引先と共同で出資したいなら、台湾子会社を設立して株主構成を決めることになります。
- 台湾子会社が日本の親会社に配当すると、台湾でいくら源泉徴収されますか?
- 台湾の国内法では、総機構が台湾国外にある営利事業への配当には21%が源泉徴収されます(各類所得扣繳率標準第4条)。日台民間租税取決め第10条は、配当の受益者が日本の居住者である場合、台湾で課す税額を配当額の10%までとしています。要件を満たすかどうかは、親会社の居住性や受益者であることを基に確かめます。
- 台湾支店の利益を日本の本店に送ると、配当として源泉徴収されますか?
- 財政部の解釈(1987年、台財稅第7586738號)は、外国会社の台湾支店の利益は本店の利益の一部で、台湾で営利事業所得税を納めた後は利益分配の問題は生じず、支店が源泉徴収する必要はないとしています。ただし、支店と本店の間の利息や使用料などの支払は、支払ごとに扱いを確かめます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



