2025年3月10日19時40分ごろ、桃園市楊梅区の台66線で、乗用車2台が西から東へ走っていました。道路は「快速公路」と呼ばれる自動車専用道路です。後ろの車は、ゆっくり走る前の車を追い越そうとしましたが、道を譲ってもらえず、ハイビームを点滅させました。すると前の車は、急ブレーキをかける事情がないのに、内側の追越車線で突然停止しました。後ろの車も止まらざるを得ませんでした。裁判所が犯罪事実として採用した、添付起訴状の記述です。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
前の車が追越車線に止まっていたのは、19時47分10秒から19時50分6秒まで。記載された時刻から計算すると2分56秒です。運転者は車を降り、後ろの車の窓ガラスをたたきました。その区間には街灯がなく、制限速度は時速90キロでした。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
この停車について、前の車の運転者は捜査段階で、相手を止めたこと自体は認めています。ただし、公共の危険を生じさせる意思は否定しました。相手にパッシングをされ、車も少なかったので、なぜあおるような運転をしたのか問いただそうとした、という説明です。一方、後ろの車の運転者は、前の車の急停止によって自分も急停車を強いられたと警察に話しています。起訴状では、後ろの車のパッシングを、道を譲るよう促す合図として記しています。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
理由を聞くための停車に、懲役3か月
桃園地方法院が2026年6月26日に言い渡したのは、台湾刑法185条1項の「妨害公眾往來安全罪」による有罪判決でした。公衆の通行の安全を妨げた罪で、刑は懲役3か月です。罰金に換える「易科罰金」の場合は、1日を1,000台湾元で換算するとしました。捜査段階の弁解とは異なり、被告人は裁判所の準備手続と審理では自白しており、事件は簡略化された刑事審理の手続である「簡式審判程序」で審理されています。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
判決は、ささいなことで追越車線に急停車し、通行の安全を深刻に損なった点を非難しています。その一方で、被告人が過ちを認め、反省していることも考慮しました。動機、生じさせた危険の程度、個人的な事情も含めて決めた刑です。自白すれば一律に何か月軽くなる、という計算を示した判決ではありません。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
1日1,000台湾元という金額は、交通違反の行政上の制裁金を示すものではなく、刑を罰金に換算する際の基準です。制度の背景となる台湾刑法41条1項は、法定刑の上限が5年以下の有期刑などで、言い渡された刑が6か月以下の有期刑または拘役の場合、1日につき1,000・2,000・3,000台湾元のいずれかで換算できると定めています。ただし、罰金への換算では矯正の効果や法秩序の維持が難しい場合は対象外です。同条は制度の説明として挙げるもので、今回の判決本文が条番号を明示しているわけではありません。台湾刑法41条1項
判決が示しているのは刑と換算基準までで、実際に罰金が納付されたかどうかは、この資料からは分かりません。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
ドラレコが捉えた、右側を通る車の動き
車が少なかったという説明だけなら、2台の間の口論にも見えるかもしれません。ところが、後ろの車のドライブレコーダーからは、周囲への影響が読み取れました。2台の右側の車線を通った27台が減速を強いられ、そのうち4台はハザードランプを点灯させています。起訴状は、映像とその検証記録を根拠に、この台数を示しています。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
ここでいう映像の検証、原文の「勘驗」を行ったのは検察です。証拠一覧には、後続車の録画ファイル、静止画10枚、2025年6月9日付の検証調書があります。裁判所は起訴状の犯罪事実と証拠を引用し、そこに法廷での自白を加えました。裁判官が別に映像を再生して一場面ずつ記録した内容は、この判決には載っていません。停車の開始・終了時刻は添付起訴状の犯罪事実欄に、27台の減速と4台の点灯は映像検証に基づく事実として記されています。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
証拠は映像だけではありません。前の車の運転者自身の供述や、後ろの車の運転者の説明に加え、道路管理機関からの2025年6月3日付の回答も挙げられています。その回答が裏付けたのは、現場が閉鎖型の快速公路であり、制限速度が時速90キロだったことです。道路の性質と見通し、そこへ実際に来た車の動きが、停車の危険を判断する材料になりました。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
車が少なくても、追突の危険は残る
台湾刑法185条1項は、道路や橋など公衆の通行に使われる設備を壊したり、ふさいだりする行為のほか、「他法」、つまりその他の方法で通行に危険を生じさせる行為も処罰します。法定刑は5年以下の有期刑、拘役、または1万5,000台湾元以下の罰金です。今回の3か月という刑は、この条文に基づいて言い渡されました。台湾刑法185条1項、臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
道路そのものを壊していなくても、車の動かし方によってこの条文の対象になる、ということです。添付起訴状は「他法」を、設備の損壊や閉塞以外でも、公衆の往来に危険を生じさせる方法を含むと説明しています。この事件では、車が高速で走る道路の追越車線に、相手の車をわざと止めさせました。夜間で街灯もなく、後方から来る車が停止車両に気づかなかったり、気づけなかったりすれば、追突し、生命・身体・財産を危険にさらす。検察は、こうした具体的な危険があるとして、運転者の弁解を退けました。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
さらに、27台が減速したことについては、通行をふさぐ「壅塞」にも当たると論じています。車が多くない時間帯だったとしても、現にほかの車は通っています。2台が停止している間、周囲の車にも対応を強いていました。裁判所自身も、追越車線への突然の停車が公衆の通行に危険を生じさせたと認定しています。衝突やけがの発生を有罪の理由に挙げた判決ではありません。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
窓をたたいた行為とは、判断が分かれている
添付起訴状では、窓ガラスをたたく行為や、車の周りでの撮影などについて、強制や脅迫の疑いも検討しています。ただ、検察は、ほかの車線を使ったり車から降りたりして離れることもできなくするほどの暴力・脅迫には達していないとして、強制罪の成立は認め難いとしました。撮影についても、それ自体を刑法上の脅迫とは扱っていません。さらに、問題とされた発言には具体的な内容の指摘や客観的な裏付けがなく、告訴人は検察の呼出しにも出頭しなかったと記されています。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
これは検察の説明であり、強制や脅迫について裁判所が別個に無罪を言い渡した、という意味ではありません。検察は、仮にこれらが犯罪となれば、起訴した通行妨害と法律上一罪の関係になるとして、別途の不起訴処分はしていません。判決の主文にあるのは、通行の安全を妨げた罪の有罪と、その刑です。窓をたたく行為なら常に処罰されない、と読むこともできません。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
この判決は、パッシングがいつでも許されると判断したものでも、車線内での停止をすべて同じ罪にしたものでもありません。今回は緊急に止まる事情がなく、相手を止める目的があり、夜の照明のない追越車線で、ほかの車にも減速を強いていました。行政上の制裁金、免許・ナンバープレートの処分、民事の賠償額は、この刑事判決では決めていません。また、判決を受け取ってから20日以内に同法院へ上訴書面を提出できる旨が記載されており、この資料だけで確定したとはいえません。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
この事件で危険を具体的に示したのは、当事者同士の説明に加え、右側を通った車の減速とハザードランプでした。この証拠評価からは、台湾で同じようなトラブルの録画を残す際、相手が止まった瞬間だけでなく、周囲の車が通過する間も含めて保存する意味が読み取れます。臺灣桃園地方法院115年度訴字第868號・2026年6月26日
出典
この記事は公開判決文と法令をもとに作成しました。資料確認日:2026年10月3日。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



