台湾に支店も事務所もない日本の会社でも、台湾にいる個人にゲーム内アイテムや月額制のサービスを販売し、その年間売上が60万台湾元(NT$)を超えると、台湾で営業税(營業稅。付加価値税にあたる税)の税籍登記をして、自社で申告・納付する義務を負います。48万台湾元として知られてきた基準は、2025年4月7日に60万台湾元へ引き上げられました(財政部の2025年4月7日の発表)。
買い手が個人か事業者かで、納める人が変わります
営業税法(加值型及非加值型營業稅法)第6条第4号は、営業人の一つとして「外國之事業、機關、團體、組織,在中華民國境內無固定營業場所,經由網際網路或其他數位方式銷售電子勞務予境內自然人」を挙げています。台湾域内に固定の営業場所を持たず、インターネットその他のデジタル方式で、台湾域内の個人(境內自然人)に電子サービス(電子勞務)を販売する外国の事業者という意味です。第2条の1は、この事業者自身を納税義務者としています。
買い手が台湾の事業者である取引では、納税義務者は買い手です(第2条第3号)。第36条第1項は、買い手が「於給付報酬之次期開始十五日內,就給付額依第十條所定稅率,計算營業稅額繳納之」と定めています。報酬を支払った期の次の期が始まってから15日以内に、支払額に税率を掛けた税額を買い手が納める仕組みです。買い手が第4章第1節の方式で税額を計算する営業人で、購入したサービスを課税事業だけに使う場合は、納付が免除されます(同項ただし書)。
| 区分 | 台湾の個人への販売 | 台湾の事業者への販売 |
|---|---|---|
| 納税義務者 | 外国の販売者 | 購入した台湾の事業者 |
| 販売者の税籍登記 | 年間売上が60万台湾元を超えたとき | 登記基準に数えない売上 |
| 申告・納付 | 販売者が2か月ごと | 買い手が支払いの次の期の開始から15日以内 |
| クラウド発票 | 販売者が発行 | 発行不要(中区国税局の2026年7月10日の案内) |
「電子サービス」と「台湾域内の個人」の範囲
施行細則第4条の1は電子サービスを、ダウンロードしてパソコンやモバイル端末に保存して使うもの、ダウンロードせずにインターネット上で使うもの、その他インターネットやデジタル方式で提供されるものと定義しています。財政部の跨境電子勞務交易課徵營業稅規範(2025年4月7日改正。以下「規範」)は、オンラインゲーム、広告、動画の視聴、音声配信、映画・ドラマ・音楽などのコンテンツを例に挙げています。クラウド型のソフトウェアやオンライン講座は例示にないため、この定義に当たるかをサービスごとに確かめることになります。
買い手が台湾域内の個人に当たるかどうかも、規範の第2点が定めています。基本となるのは、台湾に住所または居所がある個人です。購入に使った端末の設置場所が台湾域内である場合、携帯電話番号の国番号が886である場合、請求先住所・支払口座・IPアドレス・SIMの情報から台湾域内の個人と判断できる場合も含まれます。
年60万台湾元の基準と税籍登記の手続
第28条の1は、年間売上が一定の基準を超える第6条第4号の営業人に税籍登記(稅籍登記)の申請を義務づけ、基準額は財政部が定めるとしています。財政部は2025年4月7日にこの基準を48万台湾元から60万台湾元に改め、それより前に年間売上がすでに48万台湾元を超えていた事業者は改正前の基準で登記するよう示しました。数えるのは台湾域内の個人に販売した電子サービスの売上です(規範第3点)。財政部稅務入口網(税務ポータル)のQ&A資料は、前年度または当年度の売上が基準を超えれば登記が必要だと説明しています(問11)。
申請は、税務ポータルの境外電商課稅專區からオンラインで行います。本国の主管機関が発行した設立・登記の証明書類について、現地の政府機関、裁判所、台湾の在外公館などによる認証または公証を受けたうえで提出し、英語以外の外国語で作成された書類には英語または中国語の訳文を添えます(稅籍登記規則第14条)。日本語の書類には訳文が必要です。
自社で申請することも、台湾に居住する個人、または台湾に固定の営業場所を持つ事業者・機関・団体を報税代理人(報稅之代理人)に選ぶこともできます。代理人に委託するときは、代理人の所在地を管轄する税務機関の許可を受けなければなりません(第28条の1第1項・第2項)。自社で申請する場合の管轄は財政部臺北國稅局です(稅籍登記規則第12条、Q&A資料の問15)。
税率5%、2か月ごとの申告
第10条は営業税の税率を5%以上10%以下の範囲で行政院が定めるとしており、財政部は電子サービスに適用される税率を5%と案内しています(2025年5月14日の発表)。登記の対象となる事業者は、売上額にこの税率を掛けて税額を計算し、売上がない期も含めて、2か月を1期として次の期の開始から15日以内に申告・納付しなければなりません(第36条第3項、第35条第1項)。申告期限は1月・3月・5月・7月・9月・11月の各15日です(施行細則第38条の1)。
例えば、東京の動画配信会社が自社サイトで台湾の個人会員から1年間に税込みで126万台湾元を受け取ったとします。課税されるサービスの価格は営業税を含めて定めなければならず(第32条第2項)、売上額(銷售額)にはその取引の営業税を含めません(第16条)。売上額は126万÷1.05=120万台湾元、税額は120万×5%=6万台湾元です。売上額が60万台湾元を超えているので、登記の対象になります。
価格を円や米ドルで決めている場合は、申告対象期間の末日に臺灣銀行が公表する即期買入匯率(スポットの買入レート)の終値で台湾元に換算し、このレートがない通貨は現金買入のレートを使います。税金は台湾元で納め、送金で納めるときの送金手数料は事業者の負担です(施行細則第32条の2、規範第5点)。台湾の事業者から受け取った仕入れの証憑に記載された税額は、その仕入れを台湾域内の個人向けの電子サービス販売だけに使った場合に控除できます(施行細則第38条の3、規範第5点)。
発票の発行も義務です。統一發票使用辦法第7条の1第2項は、第6条第4号の営業人はクラウド発票(雲端發票)を発行して買い手に交付しなければならないと定めており、税務ポータルの告知は、遅くとも2020年1月1日から発行するよう求めています。
アプリストアなどのプラットフォームを通じた販売
規範の第4点は、買い手から代金を受け取るのが誰かで扱いを分けています。ゲームやアプリのように物理的な使用場所のないサービスを、他の外国事業者のプラットフォーム上で販売する場合、販売者が自分で代金を受け取るなら、販売者が登記・申告の対象で、プラットフォームが販売者から受け取る手数料は台湾の営業税の課税範囲に入りません。プラットフォームが代金を受け取るなら、プラットフォームが買い手から受け取った全額について申告・納付し、販売者がプラットフォームから受け取る金額は課税範囲の外です。
登記や申告をしなかった場合
2026年10月時点の条文では、税籍登記をしなかった営業人に対し、税務機関は期限を定めて登記を求めるほか、3,000台湾元以上30,000台湾元以下の過料(罰鍰)を科すことができ、期限を過ぎても登記しなければ回数ごとに科すことができます(第45条)。登記をしないまま営業した場合、申告期限を30日過ぎても申告も納付もしない場合、売上を少なく申告した場合や売上の申告漏れがあった場合は、税額を追徴されるほか、漏れた税額の5倍以下の過料が科され、営業停止を命じられることもあります(第51条第1項)。
申告が遅れると、30日以内であれば2日ごとに納付税額の1%の滯報金(1,200台湾元以上12,000台湾元以下)、30日を超えると査定された納付税額の30%の怠報金(3,000台湾元以上30,000台湾元以下)が加算されます(第49条)。報税代理人が期限内に申告・納付を代理しなかったときは、代理人に3,000台湾元以上30,000台湾元以下の過料が科されます(第49条の1)。
法人の所得税と台湾の拠点は別の問題です
営業税とは別に、台湾源泉の所得に対する営利事業所得税については、財政部の外國營利事業跨境銷售電子勞務課徵所得稅作業要點(2023年10月13日改正)が定めています。日台民間租税取決めにおける恒久的施設(PE)の考え方は、台湾で働く半導体技術者の税務で取り上げました。台湾で納めた営業税やこの売上を日本の申告でどう扱うかは、日本の税理士にご確認ください。
台湾に支店や事務所などの固定の営業場所を設けると、営業を始める前に通常の税籍登記をしなければならず(第28条)、その登記を終えた日から15日以内に、外国の電子サービス事業者としての登記について抹消を申請します(稅籍登記規則第17条第3号)。拠点の形による違いは、台湾進出:子会社と支店の違いをご覧ください。
台湾の個人向け売上が基準に近づいている場合や、登記の対象になるか判断がつかない場合は、昊鼎国際法律事務所へメール(wei@hoveringlaw.com.tw)で、販売しているサービス、決済の経路、直近1年の台湾向け売上をお知らせください。この記事は一般的な説明であり、個別の事案の結論は取引の仕組みと税務機関の判断によって変わります。
参考にした公的資料
- 台湾 営業税法(加值型及非加值型營業稅法、2025年5月28日最終改正)第2条、第2条の1、第6条、第10条、第16条、第28条、第28条の1、第32条、第35条、第36条、第45条、第49条、第49条の1、第51条
- 営業税法施行細則(2024年12月17日最終改正)第4条の1、第32条の2、第38条の1、第38条の3
- 稅籍登記規則(2022年8月8日最終改正)第12条、第14条、第17条
- 統一發票使用辦法(2024年12月12日最終改正)第7条の1
- 財政部 跨境電子勞務交易課徵營業稅規範(2025年4月7日改正)、外國營利事業跨境銷售電子勞務課徵所得稅作業要點(2023年10月13日改正)
- 財政部の発表:登記基準を48万元から60万元へ(2025年4月7日)、クラウド発票と買い手による納付(2025年5月14日)、中区国税局の案内(2026年7月10日)
- 財政部稅務入口網 境外電商課稅專區 營業稅專區、境外電商課稅制度介紹(Q&A資料を掲載、2025年5月14日更新)
確認日:2026年10月6日
よくある質問
- 台湾の営業税の登記基準は48万台湾元と聞きましたが、今も同じですか?
- 2025年4月7日からは60万台湾元です。台湾の財政部が同日に基準を改め、それより前に年間売上がすでに48万台湾元を超えていた事業者は改正前の基準で登記するよう示しています。数えるのは、台湾域内の個人に販売した電子サービスの売上です。
- 台湾の会社にだけクラウドサービスを提供しています。当社も台湾で税籍登記が必要ですか?
- 営業税法第28条の1の登記義務は、台湾域内の個人に電子サービスを販売する外国事業者を対象にしています。買い手が台湾の事業者である取引は、同法第36条第1項により、買い手が報酬を支払った期の次の期の開始から15日以内に税額を計算して納めます。
- アプリストア経由で販売している場合、誰が台湾の営業税を申告しますか?
- 財政部の規範は、買い手から代金を受け取るのが誰かで扱いを分けています。外国のプラットフォームが代金を受け取る場合は、プラットフォームが受け取った全額について申告・納付し、販売者がプラットフォームから受け取る金額は台湾の営業税の課税範囲に入りません。販売者が自分で代金を受け取る場合は、販売者が登記・申告の対象です。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



