東京にいる董事が台北へ来られなくても、会社が董事会をビデオ会議で開き、その董事がビデオで参加すれば自ら出席したものとみなされます。台湾の公司法第205条第2項の扱いです。定款に定めがあれば他の董事に代理を頼む方法もあります。株式を公開発行していない会社では、定款の定めと董事全員の同意がそろえば、実際には集まらずにその回の議案を書面で議決することもできます(第205条第1項・第5項・第7項)。
日本の企業グループに属する台湾の股份有限公司(株式会社)に、董事が3人いるとします。台北にいる1人は総経理を兼ね、残る2人は東京本社とバンコクの拠点で働いています。株式は公開発行していません(架空の例です)。来月の董事会には、東京とバンコクの2人が台湾へ行けません。
出発点は「親自出席」
第205条第1項の本文は「董事會開會時,董事應親自出席。」です。董事会が開かれるとき、董事は自ら出席しなければなりません。同じ項のただし書は、定款に他の董事が代理できると定めた場合を例外にしています。ビデオでの参加と要件を満たす書面での議決は、それぞれ第2項と第6項により自ら出席したものとみなされます。
ビデオで参加した董事は、自ら出席したものとみなされます
会社が来月の董事会をビデオ会議で開き、東京の董事がビデオで参加すれば、その董事は自ら出席したものとみなされます。第205条第2項が定める参加方法です。台湾へ移動する必要はありません。
第2項の文言には、定款の定めを求める部分がありません。代理を扱う第1項ただし書と、書面での議決を扱う第5項が、いずれも定款を要件として書いているのとは対照的です(第205条)。接続する国は問いません。
会社が董事会をビデオ会議で開き、董事もその会議にビデオで参加する必要があります。会議後にバンコクの董事が賛否を伝えただけでは、第205条第2項によるビデオ参加にはあたりません。
他の董事に代理を頼むとき
他の董事に代理を頼むなら、まず会社の定款を確かめます。第205条第1項ただし書は、定款に他の董事による代理を認める定めがある場合に限り、自ら出席する原則の例外を認めています。台湾子会社の担当社員も、東京本社の部長も、この会社の董事でなければ代理人にはなれません。
定款に代理の定めがあっても、それだけでは足りません。第205条第3項により、委託する董事は会議のたびに(每次)委託書を出し、その会議の召集事由について授権の範囲を列挙しなければなりません。1年分の会議を1通の委託書でまとめて任せるやり方は、「毎回」という文言と合いません。東京の董事は来月の会議の召集事由を一つずつ確かめ、その会議のためだけの委託書を用意することになります。議題が二つなら委託書にも二つを書き、それぞれどこまで任せるのかを示す、という具合です。親会社で使い慣れた委任状の書式を流用するなら、召集事由ごとに授権の範囲を書き込める形になっているかを先に見ておくと、会議の直前に慌てずに済みます。
台北の総経理に代理を頼む場合、人数にも制限があります。第205条第4項は、代理する董事が受けられる委託を1人分に限っています。東京とバンコクの2人がそろって台北の総経理に委託書を送る場合を考えてみます。2人分は受けられません。どちらか1人は、別の方法を探すことになります。ビデオで参加する董事は代理人を通さないので、この上限とは関係がありません。
集まらずに書面で議決権を行使する
董事全員の同意を条件として、その回の董事会の議案を書面で議決し、実際には集まらない方法を定款に定めることもできます(第205条第5項)。その条件がそろえば、董事会を開いたものとみなされ、書面で議決権を行使した董事も自ら出席したものとみなされます(第6項)。
定款が書面での議決を認めていても、台北の総経理と海外の董事2人、合わせて3人全員がこの方法に同意する必要があります。1人でも同意しなければ、この方法は使えません。定款に定めがない場合も、3人の同意だけでは第205条第5項の要件を満たしません。第6項の効果は第5項の場合に限られるため、董事同士がメールで意見をやりとりしただけで董事会を開いたことにはなりません。
株式を公開発行している会社(公開發行股票之公司)では、この方法は使えません。第205条第7項が適用を外しているのは「前二項」、つまり第5項と第6項です。ビデオでの参加(第2項)と代理出席(第1項から第4項まで)は、この除外の対象に入っていません。株式を公開発行していない先ほどの会社なら、定款の定めと全員の同意がそろったとき、書面での議決も選択肢になります。
来月の董事会に向けて
三つの方法を第205条の項ごとに並べると、次のようになります。
| 方法 | 定款の定め | そのほかの要件 | 株式を公開発行している会社 |
|---|---|---|---|
| ビデオでの参加(第2項) | 文言上は求められていない | 董事会をビデオ会議で行い、董事がその会議にビデオで参加 | 第7項の除外の対象ではない |
| 他の董事による代理(第1項ただし書、第3項、第4項) | 必要 | 代理人は他の董事、会議ごとの委託書と召集事由ごとの授権範囲、代理人1人につき委託は1人分まで | 第7項の除外の対象ではない |
| 書面での議決権行使(第5項、第6項) | 必要 | 董事全員の同意、その回の董事会の議案、実際には集まらない | 適用されない(第7項) |
東京とバンコクの2人は、何から確かめればよいのでしょうか。最初に開くのは現在の定款です。代理出席と書面での議決についての条項があるか、あるならどのような文言かを見ます。次に董事の名簿と、会議の当日にそれぞれがどこにいるかです。誰がビデオで入り、誰が委託書を書くのか、あるいは書面での議決にするのかを早めに決めておけば、委託書や同意書を整える時間がとれます。日本の本社で稟議が必要なら、その日数も見込んで準備します。会議後は、議事録に各董事の参加方法が正確に記録されているかを確かめます。
董事会の招集や決議に必要な人数は別の規定の問題で、決算の承認・董事の任期については株主が一人の台湾子会社、決算を誰が承認し、董事の任期はいつ終わるか、役員個人の責任については台湾子会社の董事長・経理人になったらをご覧ください。
代理を定款で認めていれば、バンコクの董事がビデオ会議で行う董事会にビデオで参加し、東京の董事は召集事由ごとの授権範囲を記したその会議だけの委託書を、同じ会社の董事である台北の総経理に送ることも考えられます。一方はビデオ参加、もう一方は第205条に基づく代理です。代理も書面議決も定款に定めがなければ、同条の下では、台湾に来て自ら出席するか、会社がビデオ会議で行う董事会にビデオで参加することになります。
台湾の弁護士に依頼できること
台湾の弁護士には、会社の現在の定款と董事の構成をあわせて読み、来月の会議で第205条のどの方法が使えるかを整理してもらえます。代理出席を選ぶなら、その会議の召集事由ごとの授権範囲を記した委託書の作成や確認、1人の董事が2人分の委託を受けることになっていないかの確認を依頼できます。書面での議決を選ぶなら、董事全員の同意と各董事の書面による議決権行使を残す記録の準備を任せられます。会議のあとには、誰がビデオで参加し、誰が委託し、誰が書面で議決権を行使したかを議事録が正確に記しているかの点検も頼めます。決議が有効かどうかは、会議の記録全体と、招集や決議に関する他の規定まで見なければ判断できないため、委託書1通やビデオ接続の記録だけで結論を出すことはしません。
ご相談は、昊鼎国際法律事務所(台北市大同区承徳路一段35号7F-2)へのメール(wei@hoveringlaw.com.tw)で受け付けています。現在の定款、董事の名簿、次の董事会の召集事由を添えてお送りください。
参考にした公的資料
確認日:2026年10月16日(現行条文)
よくある質問
- 東京にいる董事がビデオで台湾子会社の董事会に加われば、出席したことになりますか。
- 董事会をビデオ会議で行い、その董事が会議にビデオで参加すれば、自ら出席したものとみなされます。[公司法第205条第2項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=J0080001&flno=205)は定款の定めを求めていません。会議後に意見を送るだけではビデオ参加になりません。招集手続や決議に必要な出席・賛成の数は別の問題です。
- 董事ではない台湾子会社の社員に委任状を渡して、代わりに出席してもらえますか。
- できません。定款に代理の定めがあり、代理人は同じ会社の他の董事でなければなりません。委託する董事は会議ごとに召集事由についての授権範囲を記した委託書を出し、代理する董事が受けられる委託は1人分までです([第205条第1項・第3項・第4項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=J0080001&flno=205))。
- 会議を開かずに書面で議決権を行使しても、董事会を開いたことになりますか。
- 定款にその方法が定められ、董事全員が同意すれば、実際には集まらずにその回の董事会の議案について書面で議決権を行使できます。その場合は董事会を開いたものとみなされ、書面で行使した董事も自ら出席したものとみなされます。いずれかの要件が欠ければこの効果はなく、株式を公開発行している会社にも適用されません([第205条第5項~第7項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=J0080001&flno=205))。決議に必要な賛成の数は別の問題です。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



