同じグループの会社から頼まれた貸付でも、株主関係だけで資金を出すことはできません。台湾の公司法第15条第1項は、会社の資金を株主やほかの者に貸すことを原則として禁じ、会社間または会社と行號の間に業務上の取引(業務往來)がある場合と、短期の資金融通(短期融通資金)が必要な場合を例外にしています。
日本の企業グループが台湾に会社を二つ持っています。販売を担うA社には使い道のない現預金がたまり、同じグループの持株会社B社がA社の株式を保有しています。どちらも台湾で設立された股份有限公司で、株式は公開発行しておらず、日本本社の社長が両社の董事を兼ねています(架空の例です)。B社から資金を貸してほしいと頼まれ、社長は「同じグループなのだから、A社が貸せばよい」と考えています。送金はまだです。
B社が株主でも、それだけでは貸せません
第15条第1項の本文には、「公司之資金,除有左列各款情形外,不得貸與股東或任何他人」とあります。列挙された場合を除き、会社の資金を株主にもほかの者にも貸してはならないという規定です。B社がA社の株主である事実は、貸付の根拠になりません。株主は、条文が貸付を禁じる相手として明記しているからです。日本本社がグループの資金を一体として管理していても、A社が貸すには第1号か第2号に当たる事情が要ります。
同じグループに属することや、オーナーが同じことも、各号には挙げられていません。B社が株主ではない兄弟会社でも「任何他人」に含まれます。持株関係を示す組織図だけでは、貸付の根拠にはならないのです。
それでは、A社は何を根拠に貸すことになるのでしょうか。B社も台湾の会社ですから、A社からB社への貸付は、同じ項の第1号と第2号のどちらに当たるかで判断されます。どちらに当たるかによって、確かめる事実も、金額の上限の有無も変わってきます。
第1号:業務上の取引がある場合
第15条第1項第1号は、会社間または会社と行號の間に業務上の取引がある場合を挙げています。取引の最低額や継続期間は、この号には書かれていません。提出すべき書類も列挙されていません。割合の定めもなく、40%という数字は第2号にあります。ただ、第1号が金額を問わず貸付を認めている、と読むこともできません。
A社とB社の間に、実際の業務上の取引はあるでしょうか。第1号を検討する際の問いです。B社がA社の製品を仕入れているなら、契約書や会計記録に残るその取引が出発点です。株式を持つだけの持株会社であれば、両社の間にほかの取引があるかを確かめます。組織図に載っているのは出資関係で、取引の記録ではありません。
第2号:短期の資金融通が必要な場合と純資産の40%
2026年10月時点の第15条第1項第2号は、会社間または行號との間で短期の資金融通が必要な場合に貸付を認め、その融資金額は貸す側の企業の純資産(淨值)の40%を超えてはならないと定めています。基準になるのは、貸す側であるA社の純資産です。B社の財務状況で計算する上限ではありません。A社の純資産がいくらなのかは、貸付を決める前にA社の財務資料で確かめておくことになります。
数字を当てはめてみます。A社の純資産を5,000万台湾ドルと仮定します(架空の数字です)。第2号の40%の上限によれば、この号を根拠にした貸付は2,000万台湾ドルを超えられません。B社の希望額が3,000万台湾ドルなら、上限を1,000万台湾ドル上回ります。このままの金額では、第2号を根拠にできません。
では、金額を2,000万台湾ドルまで減らせば足りるのでしょうか。第2号には二つの条件が並んでいます。短期の資金融通が必要であること、そして純資産の40%という金額の上限です。金額を上限内に収めても、資金融通の必要がなければこの号には当たりません。減額で満たせるのは二つ目の条件だけです。
「短期」を何日、何か月と数えるかは、第2号に書かれていません。貸付を検討するA社は、B社がいつまで資金を必要とし、何を原資に返済する予定かを確かめます。貸付条件にその事情を残しておけば、短期融通の必要性を説明する材料になります。特定の書類を作る義務が同号に書かれているわけではありません。
例外に当たらない貸付をしたときに責任を負う人
公司負責人が第1項に違反したとき、その者は借主と連帯して返還の責任を負います(第15条第2項)。A社の責任者個人が負う責任です。先の例でA社が例外に当たらない貸付をしたなら、貸したお金を返す責任をB社と第1項に違反したA社の責任者が連帯して負うことになります。会社に損害が生じたときは、その責任者が損害賠償の責任も負います。二つの責任は成立の条件が違います。返還の責任は違反があれば生じ、損害賠償の責任は会社に損害が生じたときに生じます。
公司負責人の範囲は第8条第1項・第2項で定められています。有限公司と股份有限公司では、董事がこれに当たります。經理人など第2項に挙げられた人も、職務の範囲内では公司負責人です。例の社長はA社の董事ですから、A社の公司負責人に含まれます。日本から指示し、自分で台湾の口座を操作していなくても、董事という立場は変わりません。
日本の親会社が台湾子会社に貸す逆方向の取引では、支払利息が別の問題となり、日本の親会社からの親子ローンと台湾子会社の支払利息で扱っています。
送金の前にA社が整理しておく事実
二つの例外を第15条第1項の文言どおりに並べると、A社が準備する事実は号ごとに変わります。
| 区分 | 第1号 | 第2号 |
|---|---|---|
| 条文の要件 | 第1号:会社間または会社と行號の間に業務上の取引があること | 第2号:会社間または会社と行號の間に短期の資金融通の必要があること |
| 条文に書かれた金額の上限 | 第1号に割合の記載なし | 第2号:貸す側の企業の純資産の40% |
| A社が整理する事実 | B社との間で実際に行われた取引 | B社が短期の資金を必要とする事情、A社の純資産 |
社長のいう「同じグループ」は、この表のどの欄にも入りません。B社への返事を急ぐ前にA社が見極めるのは、B社との間に実際の業務上の取引があるのか、なければB社に短期の資金が必要な事情があるのか、という点です。第2号に頼るなら、希望額の3,000万台湾ドルは、仮定した純資産から計算した40%の上限である2,000万台湾ドルを超えています。お金はまだA社の口座にあります。
台湾の弁護士に依頼できること
台湾の弁護士には、A社とB社の登記資料、株主構成、董事の名簿、取引記録を確認してもらえます。それらを踏まえ、今回の貸付が公司法第15条第1項第1号または第2号に当たるのか、どちらにも当たらないのかについて意見を求められますが、グループ関係だけで結論を出したり、結果を約束したりすることはできません。
A社がB社やほかの会社にすでに貸しているお金があれば、その内訳も確認の対象です。第2号を検討するなら、B社の資金計画から短期の資金融通が必要な金額と期日を確かめ、A社の純資産の計算と希望額を突き合わせます。資金が必要な事情と返済計画を反映した金銭消費貸借契約書や董事会議事録の案を作ることも、弁護士に依頼できます。
昊鼎国際法律事務所は台北市大同区承徳路一段35号7F-2にあります。送金前に相談する場合は、両社の登記資料、直近の財務諸表、B社からの借入れの依頼内容をメール(wei@hoveringlaw.com.tw)でお送りください。A社とB社の取引記録と、A社の純資産の資料が検討の出発点になります。
参考にした公的資料
確認日:2026年10月16日
よくある質問
- 同じグループで、当社の株主でもある台湾の会社になら、会社の資金を貸してもよいですか。
- グループ関係や株主であることだけでは認められません。[公司法第15条第1項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=J0080001&flno=15)は、会社の資金を株主にもそれ以外の誰にも貸してはならないとし、会社間または行號との間に業務上の取引がある場合(第1号)と、短期の資金融通が必要な場合(第2号)だけを例外にしています。第2号による貸付の金額は、貸す側の企業の純資産の40%を超えてはなりません。
- 純資産の40%という上限は、業務上の取引がある場合の貸付にも及びますか。
- [公司法第15条第1項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=J0080001&flno=15)の文言では、40%の上限は短期の資金融通を定めた第2号に書かれており、業務上の取引を定めた第1号には割合が書かれていません。ただし、第1号を根拠にするには、二つの会社の間に実際に業務上の取引があることが前提です。
- 例外に当たらないのに貸してしまったら、誰が責任を負いますか。
- [公司法第15条第2項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=J0080001&flno=15)により、第1項に違反した公司負責人は借主と連帯して返還の責任を負い、会社に損害が生じたときはその賠償責任も負います。有限公司と股份有限公司では董事が公司負責人であり、經理人など第8条第2項に挙げられた者も職務の範囲内では公司負責人です([第8条](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=J0080001&flno=8))。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



