台湾で期間の定めのある建物賃貸借を公証したら、判決なしに何を執行できるか
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台湾で期間の定めのある建物賃貸借を公証したら、判決なしに何を執行できるか

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賃貸借契約書の「直接強制執行を受ける」という一文だけでは、その契約書を執行名義にはできません。台湾の公証法(公證法)第13条が認めるのは、当事者の請求で公証人が作成した公証書にその文言があり、対象の法律行為も第1項各号に該当するときの執行です。建物の賃貸借では、期間を定めて満了時に返す建物と、一定数量の金銭の支払が問題になります。

台北に赴任した日本人社員が、2年の期間を定めて部屋を借りることになりました。契約の直前、大家さんから「公証人のところで契約書を作りたい」と言われました(架空の例です)。草案には満了日、その日に部屋を返すという一文、約定の金額、そして直接強制執行を受けるという記載が入っています。退去と金銭の支払が同じ紙に並んでいます。署名する前に知っておきたいのは、この公証書が後でどこまで執行に使えるのかという点でしょう。

公証人が作った公証書であることが出発点です

第13条第1項の柱書は、当事者の請求により公証人が同項各号の法律行為について作成した公証書に、「直接強制執行を受ける(應逕受強制執行)」旨の記載があるとき、その証書に基づいて執行できると定めています(第13条)。条件は三つです。公証人の作成した公証書であること、法律行為が各号のいずれかにあたること、そして直接強制執行の記載があることです。当事者同士で署名した契約書に同じ文を写しても、公証人が作成した公証書にはなりません。文言が同じでも、作成した人と文書の性質が違います。

建物の賃貸借に直接かかわるのは第1号と第3号です。第13条第1項の残る二つは、特定の動産の給付と、耕作・建築以外の目的で借り、期間満了時に返す土地を扱います。

なぜ判決が要らないのでしょうか。強制執行法第4条第1項は、強制執行の根拠になる「執行名義」を列挙しています。第1号が確定した終局判決、第4号が公証法の規定により強制執行できる公証書です。公証書は判決とは別の執行名義です。ただし、どんな公証書でもよいわけではなく、公証法第13条の条件を満たす部分に限られます(公証法第13条第1項)。

返還と支払の両方を一通の公証書に記すことはできます。ただし、それぞれが公証法第13条第1項の該当する号を満たし、直接強制執行の文言もその義務に及ぶ必要があります。そうした部分については、公証書が強制執行法第4条第1項第4号の執行名義になるため、貸主は先に本案判決を得ずに執行を求められます。

満了時の建物の返還

建物の返還については、第13条第1項第3号が、建物その他の工作物を借りる期間を定め、満了時に返すことを対象にしています。賃貸借でも使用貸借でも、この二つの条件が必要です(公証法第13条第1項第3号)。架空の2年契約も、公証書に満了時の返還義務が書かれていて初めてこの号に合います。「契約が終わったら返す」とだけ書き、期間を定めていない草案なら、そこから見直します。

家賃を滞納しただけで、期間満了前の返還をこの公証書で執行できるわけではありません。途中解約による返還や期間の定めのない賃貸借は、第3号の文言に含まれません(公証法第13条第1項第3号)。

執行を始める時期にも決まりがあります。強制執行法第4条第2項は、執行名義に条件・期限が付く場合、または債権者の担保提供が必要な場合、それぞれ条件の成就・期限の到来・担保の提供後に限って執行を始められると定めています。建物の返還も同じです。期限前にはできません。家賃の支払期が先に来たとしても、返還義務の期限まで早まるわけではありません。

金額の決まった金銭

金銭の支払については、第1号が、金銭その他の代替物または有価証券の一定数量を給付する法律行為を対象にします(公証法第13条第1項第1号)。公証書に金額が定まっていても、直接強制執行の記載がその支払に及ばなければなりません。支払日が決まっていれば、強制執行法第4条第2項により、その日が来てから執行を始めます。

退去後に初めて算定する修繕費はどうでしょうか。公証書を作る時点で金額が定まらないなら、第1号の「一定数量」には当てはまりません(公証法第13条第1項第1号)。将来の損害に触れた文言があっても、金額が未定なら同じです。途中解約(関連する記事)や敷金(押金)の精算は別の問題です。

執行を担うのは裁判所の民事執行処です

貸主が公証書を持っていても、自分で借主を退去させる権限を得るわけではありません。強制執行法第1条第1項は、民事の強制執行を地方法院とその分院の民事執行処(民事執行處)が扱うと定めています。同条第2項によれば、執行には公平で合理的な方法を用い、債権者、債務者とその他の利害関係人の権益に配慮しなければなりません。執行の目的に必要な限度も超えられません。

承継人と占有者、そして借主が争う道

公証書の効力が及ぶのは、署名した当事者だけではありません。公証法第13条第2項は、作成後にその法律行為について当事者の承継人(繼受人)となった人と、当事者または承継人のために請求の目的物を占有する人にも効力を認めます。部屋にいるというだけで、その人が条文に当てはまるとは限りません。公証書の作成後にその法律行為について地位を承継したのか、誰のために目的物を占有しているのかが問題になります。

債務者、承継人または占有者は、公証書を強制執行できない事由があると主張して訴えを起こせます。訴えを受けた裁判所は、必要な場合に執行停止を命じることができます(公証法第13条第3項)。停止の申立人が担保を提供する意思を示したときは、裁判所は相当の担保額を定めて停止を命じなければなりません。提訴だけで執行は止まりません。裁判所の命令が必要です。第3項は、執行できない事由を列挙していません。借主が異議を述べたいときも、主張する事由と停止の申立てを分けて考えることになります。

署名前に、借主と貸主は賃貸借契約書と公証書の草案を並べて読めます。期間が定まっているか、その満了時に建物を返すのか、支払う金銭の数量が一定か。直接強制執行の記載がどの義務に及ぶかも確かめます。これらが公証法第13条第1項第1号・第3号で執行の範囲を分ける点です。中国語の草案が読めなければ、署名前に該当部分を訳してもらうこともできます。架空の日本人社員なら、借りる期間と返す時期に加えて、自分が支払うことになる金額と、そのうちどれに執行文言が及ぶかを読み取れる形にしておきたいところです。

台湾の弁護士に依頼できること

台湾の弁護士には、賃貸借契約書と公証書の草案を見せ、期間、満了時の返還、一定額の支払と執行文言の掛かり方を確認してもらえます。公証法第13条第1項第1号・第3号の範囲を外れる文言の修正も依頼できます。執行が始まった場合や予告された場合には、同条第3項の訴えを検討し、訴状や答弁を準備して、続く民事紛争で当事者を代理できます。公証書に署名しただけで、部屋が自動的に返るわけではありません。

昊鼎国際法律事務所は台北市大同区承徳路一段35号7F-2にあります。公証書についてのご相談は、wei@hoveringlaw.com.twへ、賃貸借契約書と公証書の草案、すでに届いている執行関係の書類を添えてお寄せいただけます。

参考にした公的資料

  • 台湾 公証法(公證法)第13条(法令全体の最終改正:民国108年(2019年)4月3日、現行条文を確認)
  • 台湾 強制執行法 第1条、第4条(法令全体の最終改正:民国108年(2019年)5月29日、現行条文を確認)
  • 公式英訳(文言の照合用):The Notary Act、The Compulsory Enforcement Act

確認日:2026年10月16日

よくある質問

公証していない普通の賃貸借契約書に「直接強制執行を受ける」と書けば、同じ効力がありますか?
その契約書だけでは執行できません。[公証法第13条第1項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0010010&flno=13)は、当事者の請求を受けた公証人が同項各号の法律行為について作成し、直接強制執行を受ける旨を記した公証書に基づく執行を認めています。当事者だけで署名した契約書は、その公証書ではありません。
期間の定めのある賃貸借を公証した場合、家賃の滞納があれば、その公証書ですぐに明渡しを執行できますか?
滞納しただけで満了前の返還を執行することはできません。[公証法第13条第1項第3号](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0010010&flno=13)は、期間を定めた建物を満了時に返す場合を扱います。[強制執行法第4条第2項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0010004&flno=4)により、期限付きの執行名義は期限到来後でなければ執行できません。別の支払額が一定数量として定められ、公証書の執行文言がその支払にも及ぶなら、支払期到来後に[公証法第13条第1項第1号](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0010010&flno=13)による執行の対象となり得ます。
公証書で強制執行が始まったら、借主は争う方法がありませんか?
争えます。[公証法第13条第3項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0010010&flno=13)により、債務者、承継人または占有者は、公証書を執行できない事由を主張して提訴できます。裁判所は必要があれば執行停止を命じることができ、停止の申立人が担保を提供する意思を示したときは、相当の担保額を定めて停止を命じなければなりません。提訴だけでは執行は止まりません。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。