机の上に広げた証券の取引残高報告書と電卓、ボールペン
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台湾の証券会社の営業担当者が口座を勝手に動かしたら:日本人投資家と投保中心の調処

約6分

架空の情景

100万台湾ドル。台湾の投保中心が「少額」として特別な調処手続を用意している請求額の上限です。この範囲なら、証券会社が話し合いの席に来なくても手続は止まりません。

少額調処の方案と10日の期限

帰任の準備中に、調処方案が書留で届くこともあります。期限は送達から10日です。同意できなければ、この不変期間内に書面で伝えます。黙っていれば、方案どおり調処が成立したものとみなされます(証券投資人及期貨交易人保護法第25条の2、調処辦法第13条の2)。不同意を出した後、改めて決まった期日に正当な理由なく欠席した当事者がいても、結果は同じです(保護法第25条の2第2項)。

この方案は、少額事件で相手方が期日に来なかったときに出ます。申立てを受けると、投保中心は証券会社の意向を聞かずにすぐ期日を決め(調処辦法第13条の1)、正当な理由なく欠席されれば、調処委員が申立人の求めか職権で方案を出せます(第25条の1)。この送達に公示送達は使えません(同条第3項)。帰任の前後なら、書留を受け取る住所を先に決めておくことになります。

100万台湾ドルを超える事件では、先に証券会社の意思が問われます。期限内に応じると答えなければ、調処を拒んだものとみなされます(調処辦法第13条)。被害者が多数なら、投保中心が20人以上の授権を受けて自らの名義で訴える団体訴訟もあります(第28条)。発行会社の虚偽の財務報告は別の記事で扱いました。

申立ての費用は1人1件1,000台湾ドル。相手方の拒否や不成立なら戻ります(投保中心の調処Q&A)。証券会社への事前の苦情は要りません。第23条第1項の不受理事由にも、調処辦法第12条の差戻し事由にも、苦情を経ていないことは含まれていません。対象は証券会社などとの有価証券の売買などをめぐる民事の争いで(第22条)、国籍は問われません(第4条)。第一審の口頭弁論が終わるまでは、訴訟中でも申し立てられます(同項第4号)。裁判所の核定を受けた調処は、確定判決と同じ効力を持ちます(第26条)。

評議を選ぶなら

評議の決定に証券会社が従う義務は、上場株の受託売買なら12万台湾ドルまでです。事前に同意した金融機関は、この額以下の決定を受け入れなければなりません(金融消費者保護法第29条)。信託や派生商品、全権委託投資など告示に列挙された商品では120万台湾ドルです(金融監督管理委員会2022年3月18日告示)。申し立てる前に証券会社への苦情が必要で、会社の回答か30日の期限を待ち、その日から60日以内に申し立てます(第13条)。評議の成立から90日以内に申請して裁判所の核可を受けると、評議書は確定判決と同じ効力を持ちます(第30条第1項、第4項)。専門投資家は対象外です(第4条第1項第2号)。

判決に出てくる金額と、責任の分かれ目

金額から見ます。2023年4月の台湾高等法院判決(111年度重上字第962號)で、顧客が営業担当者個人の口座に送った代金は、半年で11回、424万5,640台湾ドルでした。担当者の返済53万6,780台湾ドルを除くと370万8,860台湾ドル。証券会社はその7割、259万6,202台湾ドルの範囲で連帯責任を負いました。無断で売られた株は、顧客が446万7,600台湾ドルを返すのと引き換えに返還を命じられ、現金配当72万6,330台湾ドルの支払いも加わりました。少額の線をはるかに超える事件です。

なぜ7割なのか。送金の部分に3割の過失相殺(民法第217条)がかかったからです。受渡代金は自分の決済口座に入れる約定があり、長年の取引経験があれば会社に問い合わせて確かめられた、と判決は見ました。無断売却の部分には過失相殺を当てはめていません。証券会社が責任を負ったのは、担当者の行為が職務と関係し、会社も監督を尽くしたと証明できなかったからです(民法第188条)。2020年3月の無断売却も、勤務時間中に支店のコンピューターから行われていました。担当者には詐欺と背任でそれぞれ懲役1年10月の刑が確定し、証券会社の上告は2024年5月に最高法院が退けました(裁定)。

2023年9月の判決(111年度金上字第3號)は、請求額が約352万米ドルの事件です。顧客は、銀行員時代から付き合いのある担当者に通帳・印鑑・ネット取引のパスワードを預け、米国上場ETFの運用を任せていました。高等法院は、証券会社に移る前からの個人的な委任であり、口座開設契約や取引残高報告書(対帳単)にも預けないよう繰り返し書かれていたとして、会社の責任を否定しました。第二審判決で、その後の記録は裁判書検索に見当たりません。

対帳単の日付と2年の時効

不法行為の損害賠償請求権は、損害と賠償義務者を知った時から2年で消滅します(民法第197条)。いつ知ったのか。962号事件では、証券会社が2020年4月6日に発送した3月分の対帳単を、顧客が翌日受け取ったことは争いのない事実です。顧客は、そこで初めて無断売却を知ったと主張しました。調処の申立てで時効は中断しますが、取下げ・不受理・不成立で終われば中断しなかったものとみなされます(第24条)。

帰任後も口座を残すなら

帰任後も台湾株を持ち続ければ、華僑及外国人投資証券管理辦法でいう「境外外国人」です(第3条)。国内の代理人と保管機関が必要になり(第16条、第17条)、金融監督管理委員会の別段の定めがない限り、信用取引はできません(第21条)。駐在中の「境内外国人」なら投資範囲は原則として制限されず、口座は台湾証券取引所への登記を経て開きます(第4条第4項、第10条、第19条)。

台湾にいるうちに、月ごとの対帳単と送金の控え、担当者とのメッセージを手元にそろえておけば、帰国後の苦情や調処の裏付けになります。台湾の弁護士は、苦情申立書や評議・調処の申請書の作成、調処期日への代理出席、刑事告訴や民事訴訟を引き受けられます。昊鼎国際法律事務所への相談はwei@hoveringlaw.com.twで受け付けています。台北事務所は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2、台中事務所は40453 臺中市北區館前路19號6樓之1です。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月22日

よくある質問

台湾に駐在中、居留証で証券口座を開きました。トラブルになったら台湾の人と同じ手続を使えますか。
使えます。調処を申し立てる証券投資人(証券投資人及期貨交易人保護法第4条、第23条)にも、評議を求める金融消費者(金融消費者保護法第4条)にも、国籍の要件はありません。ただし、専門投資家として扱われている顧客は金融消費者から外れます。投保中心の書面通知は書留で届くため、確実に受け取れる住所を申請書に書く必要があります。
少額事件の調処では、証券会社が欠席するとどうなりますか。
請求額100万台湾ドル以下の少額事件では、相手方が正当な理由なく期日に来なければ、調処委員が調処案を出せます(第25条の1)。送達から10日の不変期間内に書面で異議を出さなければ、その案で調処が成立したものとみなされます(第25条の2)。裁判所の核定を受けた調処は、確定判決と同じ効力を持ちます。
営業担当者にネット取引のパスワードを渡して任せていました。損失は証券会社に請求できますか。
事情によって結論が分かれます。営業担当者が勤務中に支店のシステムで無断売却した事件では、証券会社の連帯責任が確定しました。顧客自身が契約書の警告に反してパスワードを渡し、個人的に運用を任せた事件では、第二審が証券会社の責任を否定しています。全権委託を受けることや、顧客の印鑑・通帳を預かることは、業務人員の禁止行為です(証券商負責人與業務人員管理規則第18条第2項)。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。