台湾の電力会社が発注した洋上風力発電所の工事で、日本のメーカーが違約金として工事代金から差し引かれた1億4580万1500台湾ドルの支払いを求めた訴訟は、2026年5月、台北地方法院で棄却されました。違約金をゼロまで減らすべきだという主張も通りませんでした。
準拠法は台湾法だった
この契約は第29条で準拠法を中華民国法としていました。契約から生じる債権関係は、成立も効力も当事者が選んだ法律によります(涉外民事法律適用法第20条第1項)。裁判所はこれに従い、台湾の民法で判断しています(114年度建字第141號、2026年5月15日)。
民法上、違約金は、当事者が別に定めない限り損害賠償の総額の予定とみなされます(第250条第2項)。減額の根拠は二つあります。約定の違約金が過大なときに裁判所が相当な額まで減らすことができるとする第252条と、債務の一部が履行されたときに、債権者がその一部履行で得た利益に照らして減らすことができるとする第251条です。
メーカーの三つの主張と、裁判所の答え
差し引かれた額の大部分は、検収で見つかった風車1基の歯車などの損傷について、修補が期限から225日遅れたことへの違約金でした。メーカーの主張のうち、三つを見ておきます。
一つ目は「損害がない」という主張です。発電所は全体として系統につながって発電しており、発注者に損害はないというものでした。裁判所は、損害賠償額の予定としての違約金は債権者に損害がなければ請求できないとしつつ、修補が遅れた225日の間、その1基が通常どおり発電できなかったことを損害と認めました。
二つ目は二重取りです。発注者は、保証した年間稼働率89%に届かなかったことを理由に、別の違約金も課していました。裁判所は、二つの違約金は根拠も範囲も違うとして、重複を認めませんでした。
三つ目が、第252条による減額です。ここで裁判所は最高法院の先例を引き、第252条は当事者が出した証拠をもとに裁判所が裁量で判断する権限を与えたもので、過大かどうかを職権で調べる義務まで負わせたものではない、としました。過大だという事実は、減額を求める債務者が主張し、立証しなければなりません。この判決は第一審で、判決送達後20日以内に上訴することができました。上訴の有無は、2026年10月22日時点の公開記録では確認できません。
減額が認められた例:1日1%から0.1%へ
では、減額が認められるのはどんなときでしょうか?台湾高等法院は2026年4月29日、米国企業向けの装置を製造する契約の遅延違約金を大きく減らしました(112年度重上字第684號)。条項は、遅延1日につき契約総額の1%を課し、そのうえ「すべての損害と増加費用を賠償する」と定めていました。この後半の文言から、裁判所は懲罰的違約金と判断しています。
請求額は4億4000万台湾ドル。遅れたのは技術文書の引渡しで、義務の一部にすぎず、文書の一部はすでに渡されていました。裁判所はこれを踏まえて1日0.1%に減らし、55日分、122万4011.25米ドル(1対30.8で換算して3769万9547台湾ドル)の支払いを命じました。供給側は2026年6月2日に第三審へ上訴しており、その結果は公開された裁判書では確認できません。
最高法院が求める順序
二つの判決の違いを整理する基準を示したのが、最高法院の2026年9月23日の判決です(115年度台上字第1386號)。裁判所はまず違約金の性質を決め、損害賠償額の予定なら債権者の実際の損害と逸失利益を主な基準に、懲罰的なものなら違反時の一切の事情を見て、過大かどうかを判断しなければなりません。
事件は防弾繊維10万メートルを4回に分けて納める国防調達で、第1・第4回分の4万メートルの納入が遅れ、第2・第3回分は発注者が契約を解除し、遅延違約金は契約総額の20%の上限、1400万台湾ドルに達していました。最高法院は、没収された履行保証金420万台湾ドルの性質を原審が決めておらず、一部納入で発注者が得た利益や実際の損害も検討していないとして、高等法院に差し戻しました。差戻し後の判決は、2026年10月22日時点の公開裁判書では確認できません。
差し引かれた代金を取り戻す訴訟の形
台北の事件でメーカーが求めたのは、差し引かれた工事代金(請負報酬)の支払いでした。最高法院の事件では、供給側が不当利得の返還(民法第179条)を求め、最高法院は第252条それ自体は請求権の根拠にならないと付記しています。減額は、代金の請求や返還請求の訴訟の中で主張することになります。
台湾の弁護士に頼めること
台湾の弁護士には、準拠法と管轄の条項を含めて契約を読み、違約金が損害賠償額の予定か懲罰的なものかを見極めるところから任せられます。発注者の実際の損害や一部履行で得た利益を示す資料を集め、差し引かれた代金の請求訴訟を起こすことも、逆に台湾の取引先に違約金を請求することもできます。昊鼎国際法律事務所の曾雋崴弁護士へはwei@hoveringlaw.com.twで連絡でき、事務所は台北(103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2)と台中(40453 臺中市北區館前路19號6樓之1)にあります。台北の事件で、差し引かれた額の大部分(1億3500万台湾ドル)について裁判所が損害の根拠にしたのは、修補が遅れた225日の間、風車1基が通常どおり発電できなかったことでした。
参照した公的資料
確認日:2026年10月22日
- 民法第179条、第250条、第251条、第252条。
- 涉外民事法律適用法第20条。
- 司法院裁判書検索:臺灣臺北地方法院114年度建字第141號判決(2026年5月15日、第一審)、臺灣高等法院112年度重上字第684號判決(2026年4月29日、第二審、第三審へ上訴)と同事件2026年6月8日裁定、最高法院115年度台上字第1386號判決(2026年9月23日、破棄差戻し)。
よくある質問
- 契約で台湾法を準拠法にしている場合、違約金の減額も台湾の民法で判断されますか。
- 契約から生じる債権関係の成立と効力は、当事者が選んだ法律によります(涉外民事法律適用法第20条第1項)。2026年5月の台北地方法院の事件でも、契約の準拠法条項に基づいて台湾法が適用され、違約金は台湾民法第250条と第252条に基づいて判断されました。
- 「発注者に損害はないから違約金はゼロにすべきだ」という主張は通りますか。
- 損害賠償額の予定としての違約金は、債権者に損害がなければ請求できないとされています。ただし台北地方法院の事件では、修補が225日遅れた間、風車1基が通常どおり発電できなかったとして損害が認められ、主張は退けられました。違約金が過大だという事実は債務者が主張・立証すべきだとも述べています(第一審判決です。上訴期間は判決送達後20日で、上訴の有無は公開記録で確認できません)。
- 性能保証の違約金も別に取られています。二重に取られているとは言えませんか。
- 同じ事件で日本のメーカーはそう主張しましたが、裁判所は、修補遅延の違約金(特定の1基の修補遅れが対象)と保証年間稼働率の違約金(系統に接続済みの風車全体の稼働率が対象)は根拠も範囲も違うとして、重複を認めませんでした。保証稼働率が100%ではなく89%だったことから、稼働率の違約金で修補遅延の損害をすべて填補できるわけではないとも述べています。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



