「契約書を電子化すれば、台湾の印花税(印花稅)は考えなくてよい。」この前提を裏づける財政部の解釈は、2026年10月6日時点で見つかっていません。電子契約について確認できた財政部の解釈は1件だけで、政府調達の電子契約を課税対象の文書として扱う内容です(財政部各稅法令函釋檢索系統)。
課税範囲そのものは狭く、印花税法第1条により台湾(中華民國領域)内で作成(書立)された文書だけが対象です。そのうえで第5条が定める4種類の文書にしかかかりません。名前は日本の印紙税と似ていますが、課税文書も税率も台湾の印花税法が独自に定めています。
対象は4種類の文書
2026年10月時点の印花税法(2002年5月15日最終改正)第7条の税率は次のとおりです。
| 文書 | 税率・税額 | 納める人 |
|---|---|---|
| 金銭の受取書・領収書(銀錢收據) | 金額の0.4%(入札保証金の受取書は0.1%) | 作成者 |
| 請負契約書(承攬契據) | 金額の0.1% | 契約当事者または作成者 |
| 不動産の典売・譲受・分割の契約書 | 金額の0.1% | 契約当事者または作成者 |
| 動産売買契約書(買賣動產契據) | 1件12台湾元 | 契約当事者または作成者 |
動産売買の12台湾元は、条文上は「四元」と書かれています。第3条がこの法律の金額の単位を「國幣」とし、1992年7月17日公布の換算条例第2条が「元」を新台湾ドルの3倍に換算すると定めているため、財政部の税務ポータルは1件12台湾元と案内しています。
請負契約書とは、一方が相手方のために一定の仕事を完成させる契約書のことで、第5条第4号は工事の請負、印刷の請負、委託加工を例に挙げています。表題では決まりません。見積書や納品書を契約書の代わりに使えば、その性質に応じた税率がかかります。一つの文書に税率の違う性質が混ざっていれば、高い方の税率で計算します(第13条第1項・第3項)。
装置の販売と据付を1通にまとめると
台湾子会社が台湾の顧客に製造装置を1,500万台湾元で販売し、据付と調整を300万台湾元で請け負う場面で考えます(架空の例です)。1通の契約書にまとめると、売買と請負の性質が混ざるため、合計1,800万台湾元の全額に0.1%がかかり、1万8,000台湾元です。売買契約と据付契約を分ければ、12台湾元と3,000台湾元で合計3,012台湾元になります。差は1万4,988台湾元です。財政部税務ポータルの節税案内も、エレベーターの購入と据付を例に、契約を分ける方法を紹介しています。
これは1通あたりの金額です。同じ文書を2通以上作って当事者が1通ずつ持つときは、各通に印花税票を貼る必要があり(第12条)、双方がそれぞれ自分の持つ契約書について責任を負います(税務ポータルの問答実例7)。顧客が持つ1通にも、同じ額がかかる計算です。
いつ、どの方法で納めるのか
第8条第1項は、文書を作成した後、交付または使用する時に印花税票を貼るよう定めています。履行の有無は問いません。作成・交付した契約書を後で解約しても、納めた印花税は還付されません(問答実例8)。金額が日本円や米ドルで書かれている場合は、交付・使用の時点で政府が定めるか認める為替レートにより台湾元に換算して計算します(第17条)。
納め方は三つです。
- 郵便局で印花税票を買って貼り(税務ポータル)、税票と文書の境目に印を押して消印します(第10条)。
- 税額が大きく貼るのに向かない場合は、税務機関が発行する納付書(繳款書)で納めます(第8条第1項)。税務ポータルによれば、工商憑證などの電子証明書を使ってオンラインで納付書を発行でき、納付を証する部分を契約書に貼ります。
- 文書が多い会社は、所在地の税務機関の承認を受けて、まとめて納付(彙總繳納)できます(第8条第2項)。2か月を1期とし、1月・3月・5月・7月・9月・11月の15日までに自ら税額を計算して納付し、同じ期限までに総繳申報表を提出します(印花稅彙總繳納辦法第5条)。
統一発票、小切手の受取書、支店との文書
子会社が発行する統一発票(統一發票)には、受取書としての印花税はかかりません。第5条第2号ただし書が、営業発票の性質を兼ねる受取書を課税対象から外しているためです。統一発票と営業税については台湾子会社の営業税と統一発票で取り上げました。代金を小切手や手形で受け取り、受取書にその名称と番号を書けば、印花税票は不要です。50万台湾元を現金で受け取って書いた受取書なら、0.4%の2,000台湾元がかかります(節税案内)。
本店と支店の間で使われ、対外的な権利義務を生じない文書は免税です(第6条第3号)。子会社はここに入りません。施行細則第5条は「轉投資」の性質を持つ独立の組織を分支機構とみなさないと定めています。新竹市稅務局の説明資料も、親会社と子会社はそれぞれ独立した法人なので、課税文書を交わせば印花税を納めると説明しています。支店と子会社の違いは台湾進出:子会社と支店の違いをご覧ください。
東京で先に押印した契約
日本の親会社が東京で先に押印し、台湾子会社が台北で署名した契約はどうなるでしょうか。台湾で作成された文書になります。財政部の1985年2月9日付解釈(台財稅第11750號函)は、外国企業と結ぶ技術サービス請負契約について、どちらが先に署名しても台湾の会社が台湾で署名する以上、台湾で作成された文書として印花税票を貼るべきだとしています(財政部各稅法令函釋檢索系統)。
双方とも国外で署名した場合について、台中市政府地方稅務局は、国外で作成した請負契約は課税範囲に入らないと案内しています(2024年9月20日更新)。他方で台北市稅捐稽徵處は、租税上の利益を得るために国外での締結を選び、法形式を濫用して印花税を免れたときは、納税者権利保護法に基づき租税回避として課税するとしています(2026年1月21日更新)。
電子契約について確認できたこと
冒頭で触れた解釈は、財政部の2015年7月9日付解釈(台財稅字第10404573930號令)です。政府機関が政府電子調達システムで落札業者と電子署名により締結した政府調達の電子契約は、台湾で作成された文書にあたり、印花税法に従って扱うとしています(同システム)。台北市稅捐稽徵處も、この解釈を根拠に、政府機関との電子契約には印花税を納めると案内しています(2022年2月18日更新)。
民間企業同士の契約はどうでしょうか。財政部の解釈検索システムに収められた印花税の解釈集(2022年版)には、電子メールや電子署名による契約を免除する解釈も、課税するとした解釈もありません。どちらとも言い切れない状態です。電子署名で結ぶ金額の大きい請負契約は、所轄の地方税務機関に事前に確かめておくと安心です。
貼らなかったときの罰則
罰則は倍数で決まります。印花税票を貼らなかったり不足したりすると、不足分を貼ったうえで、その税額の5倍から15倍の罰鍰(行政上の罰金)が科されます(第23条第1項)。消印がない、または規定に合わない消印の場合は税票額の5倍から10倍、はがして再使用すれば20倍から30倍です(第24条)。まとめて納付する場合に期限を過ぎると、3日ごとに1%の滞納金がかかり、30日を過ぎれば強制執行に加えて、情状により滞納税額の1倍から5倍の罰鍰です(第23条第2項、稅捐稽徵法第20条)。第三者の通報(檢舉)や調査の前に自ら申告・納付すれば罰鍰は免除され、補った税額には利息がつきます(稅捐稽徵法第48条の1)。
親会社との契約の組み方や署名の場所で扱いが分かれそうなときは、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)に契約の種類と署名の経緯をお知らせください。
印花税を納めた文書は、権利義務が消滅した後も2年間保存しなければなりません(第4条)。2027年3月31日に権利義務がすべて終わる契約書であれば、保存は2029年3月31日までです。
参考にした公的資料
- 台湾 印花税法(印花稅法、2002年5月15日最終改正)第1条、第3条、第4条、第5条、第6条、第7条、第8条、第10条、第12条、第13条、第17条、第23条、第24条
- 印花税法施行細則(印花稅法施行細則、1979年2月13日最終改正)第5条
- 印花稅彙總繳納辦法(1988年8月12日最終改正)第5条
- 現行法規所定貨幣單位折算新臺幣條例(1992年7月17日公布)第2条
- 稅捐稽徵法(2021年12月17日最終改正)第20条、第48条の1
- 財政部税務ポータル(財政部稅務入口網)地方税節税手冊:貳、印花稅的課徵(2026年8月26日更新)、伍、印花稅之節稅方法(2026年8月26日更新)、柒、印花稅問答實例(2026年4月9日更新)
- 財政部各稅法令函釋檢索系統:台財稅第11750號函(1985年2月9日)、台財稅字第10404573930號令(2015年7月9日)
- 臺北市稅捐稽徵處 1999常見問答:電子契約(2022年2月18日更新)、双方とも国外で締結した契約(2026年1月21日更新)
- 臺中市政府地方稅務局国外で締結した請負契約(2024年9月20日更新)
- 新竹市稅務局「印花稅實務暨網路申報」(2025年12月作成)
確認日:2026年10月6日
よくある質問
- 日本の親会社と結ぶ業務委託契約にも、台湾の印花税はかかりますか。
- その契約が一定の仕事の完成を約束する請負契約書(承攬契據)にあたり、台湾子会社が台湾で署名すればかかります。財政部の1985年2月9日付解釈(台財稅第11750號函)は、外国企業との技術サービス請負契約について、どちらが先に署名しても台湾の会社が台湾で署名する以上、台湾で作成された文書にあたるとしています。親会社と子会社はそれぞれ独立した法人なので、本店・支店間の内部文書の免税も使えません。税率は契約金額の0.1%です。
- 電子署名で締結した契約は、印花税が免除されますか。
- 2026年10月6日時点で、民間企業同士の電子メール・電子署名による契約を免除するとした財政部の解釈は確認できません。確認できたのは、政府電子調達システムで電子署名により締結した政府調達契約を台湾で作成された文書とした2015年7月9日付の解釈(台財稅字第10404573930號令)だけです。民間の電子契約に課税するとした解釈も見当たらないため、個別の契約は所轄の地方税務機関に確認するのが確実です。
- 統一発票を発行していれば、受取書の印花税は不要ですか。
- 印花税法第5条第2号は、営業発票の性質を兼ねる受取書と、受取書の性質を兼ねる営業発票を、課税対象の金銭受取書から除いています。そのため統一発票に0.4%の印花税はかかりません。同じ取引の請負契約書や売買契約書には、別に印花税がかかります。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



