台湾で10万元以下の未払い金を訴えるとき:少額手続の費用、調停、控訴の制限
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台湾で10万元以下の未払い金を訴えるとき:少額手続の費用、調停、控訴の制限

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日本の少額訴訟は、60万円以下の金銭請求について原告が求めたときに使う手続です(日本の民事訴訟法第368条)。台湾の少額手続(小額程序)は仕組みが違い、10万台湾元以下の金銭などの支払を求める訴えであれば、原告が選ばなくても適用されます。2026年10月時点で第一審の裁判費(訴え提起の手数料)は1,500元、口頭弁論は1回で終わるのが原則です。その代わり、提訴するとまず調停が行われ、控訴の理由は法令違反に限られます。

例えば、台北に住む日本人のデザイナーが、台湾の会社から依頼されたロゴを納品して3か月たっても、報酬の9万元を受け取れていないとします。

少額手続になる請求、ならない請求

民事訴訟法第436条の8第1項は、金銭その他の代替物または有価証券の給付を求める訴訟で、請求の金額または価額が10万元以下のものに少額手続を適用すると定めています。報酬9万元の支払請求はこれに当たります。特定の物の返還や部屋の明渡しを求める訴えは、金額が小さくても対象になりません。

10万元を超える請求でも、50万元以下であれば、当事者が書面で合意して少額手続によることができます(第4項)。逆に、裁判所は少額手続が適当でないと判断すれば、職権で簡易手続(簡易程序)に切り替えることができます(第2項)。少額手続を使うために請求の一部だけを訴えることは認められず、残りについて別に訴えないと裁判所に述べた場合だけが例外です(第436条の16)。

簡易手続は、50万元以下の財産権に関する訴訟と、期間を定めた建物の賃貸借や交通事故の請求など、金額にかかわらず法律が挙げる類型に適用されます(第427条)。簡易手続の控訴には理由の制限がありませんが(第436条の1)、少額手続の控訴は法令違反を理由とする場合に限られます。

裁判費1,500元の内訳

第77条の13は、請求額のうち10万元以下の部分について1,000元、10万元を超え100万元までの部分について1万元ごとに100元と定め、1万元に満たない端数は1万元として計算します。実際に納める額はこれより多くなります。第77条の27が、各高等法院に、司法院の承認を得て元の額の10分の5まで加算することを認めているためです。高等法院は2025年1月1日から、10万元以下の部分に10分の5、10万元を超え1,000万元までの部分に10分の3を加算しています(司法院の2024年12月30日付発表)。司法院の裁判費一覧表(2026年10月6日確認)では、第一審は10万元以下が1,500元、それを超える部分が1万元ごとに130元です。

請求額第一審の裁判費計算
9万元1,500元10万元以下は定額
12万5,000元1,890元1,500元+130元×3(超過分2万5,000元は3万元として計算)
30万元4,100元1,500元+130元×20

訴訟費用は敗訴した当事者が負担し(第78条)、少額手続では裁判所が判決の中でその額まで確定します(第436条の19)。弁護士報酬は別です。民事訴訟法が弁護士報酬を訴訟費用の一部としているのは、裁判所が選任した弁護士(第77条の25)と第三審の弁護士(第466条の3)についての規定です。少額手続で自分が依頼した弁護士の報酬まで相手から回収できる前提で計算しないほうが安全です。

訴状を出す裁判所と書式

訴えは、被告の住所地を管轄する地方法院に提起します(第1条)。被告が会社であれば、主たる事務所または主たる営業所の所在地が基準です(第2条)。契約で債務の履行地を定めていれば、その地の裁判所にも提起できます(第12条)。ただし少額手続では、当事者の一方が法人または商人で、その側があらかじめ用意した約款に履行地や管轄裁判所の定めがあっても、その条項によって管轄は決まりません。双方が法人または商人である場合は別です(第436条の9)。

訴状には司法院が定めた表形式の訴状を使うことができ(第436条の10)、口頭で訴えを提起することもできます(第428条第2項。第436条の23で準用)。司法院の少額訴訟の案内は、被告の氏名・生年月日・住所と、契約書や領収書などの証拠の原本と写しを用意するよう説明しています。法廷では国語(中国語)が使われ、国語が分からない当事者の陳述は通訳が訳します(法院組織法第97条、第98条)。

提訴すると、まず調停が開かれます

50万元以下の財産権に関する争いは、訴えの前に裁判所の調停(調解)を経なければなりません(第403条第1項第11号)。少額手続の事件は、金額のうえではすべてこれに当たります。調停を申し立てずにそのまま訴えを提起した場合は、その訴えの提起が調停の申立てとみなされます(第424条)。調停が成立しなければ、当事者が期日の延期を求めない限り、裁判所は直ちに訴訟の弁論を命じます(第419条第4項)。成立した調停は訴訟上の和解と同じ効力を持ち(第416条)、訴訟上の和解は確定判決と同じ効力を持ちます(第380条)。

ほかの法定の調停機関で調停が成立しなかった場合や、相手方への通知を公示送達または外国での送達によらなければならない場合など、第406条第1項に当たる事情があるときは、調停を経る必要がありません。

少額手続の事件では、期日の5日前までに適法な通知を受けた当事者が正当な理由なく調停期日に出てこなければ、裁判所は、出席した当事者の申立てにより直ちに弁論を命じ、職権でその一方の弁論だけで判決をすることができます(第436条の12)。

口頭弁論は原則1回、判決書は主文だけのこともあります

裁判所は1回の期日で弁論を終えることを原則とし(第433条の1)、期日の通知書には、証拠物を持参し証人を同行するよう記載されます(第430条)。当事者の一方が出席しなければ、裁判所は職権で、出席した側の弁論だけで判決をすることができます(第433条の3。以上は第436条の23で準用)。

当事者が異議を述べなければ、夜間や日曜日その他の休日に期日を開くことができます(第436条の11)。双方が同意したとき、または証拠調べに必要な時間や費用が請求と明らかに釣り合わないときは、裁判所は証拠調べをせず、一切の事情を考慮して事実を認定することができます(第436条の14)。判決書には主文だけを記載することができ、争いのある事項については必要なときに理由の要旨を加えます(第436条の18)。被告が敗訴する判決では、裁判所が職権で仮執行を宣言します(第436条の20)。

控訴できるのは法令違反を理由とするときだけ

第一審の判決に対しては地方法院の合議体に控訴できますが、判決が法令に違反していることを理由とする場合に限られます(第436条の24)。控訴状には、原判決が違反した法令とその具体的な内容、訴訟資料から違反があると認められる具体的な事実を記載しなければなりません(第436条の25)。控訴期間は判決の送達後20日です(第440条。第436条の32で準用)。第二審では、原審の法令違反のために提出できなかった場合を除いて新しい主張や証拠を出せず(第436条の28)、第二審の裁判に対してはさらに上訴や抗告をすることができません(第436条の30)。

法令違反とは、判決が法規を適用しなかった場合、または適用を誤った場合をいいます(第468条)。裁判官が相手の言い分を信じたことに納得できない、というだけでは控訴の理由になりにくいため、事実と証拠は第一審の期日にすべて出しておく必要があります。

日本に帰国した後に訴える場合の訴訟費用の担保

原告が台湾に住所、事務所、営業所のいずれも持たない場合、裁判所は被告の申立てにより、原告に訴訟費用の担保を立てるよう命じなければなりません(第96条第1項)。基準は国籍ではなく、台湾に住所や事務所・営業所があるかどうかです。被告が争っていない部分と、原告が台湾に訴訟費用をまかなえるだけの資産を持つ場合には、この規定は適用されません(第2項)。

被告は本案について弁論をする前に申し立てる必要があり(第97条)、申立てが退けられるか原告が担保を立てるまで、本案の弁論を拒むことができます(第98条)。担保の額は、被告が各審級で支出することになる費用の総額を基準に裁判所が定めます(第99条)。原告が定められた期間内に担保を立てなければ、裁判所は訴えを却下します(第101条)。担保は現金、または裁判所が相当と認める有価証券を供託するのが原則で、保険会社や保証業務を行う銀行の保証書で代えることもできます(第102条)。

訴訟代理人を立てる場合は、原則として弁護士に委任します。弁護士でない人は、裁判長の許可があるときに限り代理人になれます(第68条)。日本から委任状を用意するときの注意点は、海外から台湾の弁護士に仕事を頼むときにまとめています。

判決の後の強制執行と、支払命令

勝訴判決は強制執行の根拠になる文書(執行名義)で、相手が任意に支払わなければ、債権者が執行裁判所に強制執行を申し立てることになります(強制執行法第4条、第5条)。

相手が債務そのものを争わない見込みなら、支払命令(支付命令)を先に検討できます。一定額の金銭の支払請求であれば申し立てることができ(第508条)、申立ての裁判費は500元です(第77条の19)。債務者が送達後20日以内に異議を出さなければ支払命令は執行名義になり(第516条、第521条)、異議が出れば、その申立ては訴えの提起または調停の申立てとみなされます(第519条)。支払命令を外国で送達しなければならない場合や公示送達による場合には、この手続は使えません(第509条)。

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どの手続によるか迷うときは、昊鼎国際法律事務所へメール(wei@hoveringlaw.com.tw)で、請求額、相手方の住所、手元にある証拠をお知らせください。この記事は一般的な説明であり、個別の事案の結論は契約の内容と証拠によって変わります。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日

よくある質問

台湾の少額手続では、訴えるときにいくら納めますか?
司法院の裁判費一覧表(2026年10月6日確認)では、請求額10万台湾元以下の第一審は1,500元です。民事訴訟法第77条の13が定める額は1,000元ですが、高等法院が第77条の27に基づいて10分の5を加算しており、2025年1月1日から1,500元になりました。10万元を超え100万元までの部分は1万元ごとに130元で、30万元の請求なら4,100元です。
少額手続の判決に不服があれば控訴できますか?
判決が法令に違反していることを理由とする場合に限り、地方法院の合議体に控訴できます(民事訴訟法第436条の24)。控訴状には、違反した法令とその具体的な内容、違反があると認められる具体的な事実を書かなければなりません(第436条の25)。第二審では原則として新しい主張や証拠を出せず(第436条の28)、第二審の裁判に対してはさらに上訴や抗告をすることができません(第436条の30)。
日本に帰国した後でも、台湾で少額手続の訴えを起こせますか?
起こせます。ただし、原告が台湾に住所、事務所、営業所のいずれも持たない場合、裁判所は被告の申立てにより訴訟費用の担保を命じなければならず(民事訴訟法第96条第1項)、定められた期間内に担保を立てないと訴えは却下されます(第101条)。被告が争わない部分や、原告が台湾に訴訟費用をまかなえる資産を持つ場合には、この規定は適用されません(第96条第2項)。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。