台湾の親が残した借金と日本に住む子の相続放棄:3か月の期間と代表処の認証
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台湾の親が残した借金と日本に住む子の相続放棄:3か月の期間と代表処の認証

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台湾の民法にも相続放棄(拋棄繼承)があり、期間は日本と同じ3か月です。ただし、放棄の書面を出す先は台湾の裁判所です。また、日本の民法第915条第1項ただし書のような期間の伸長の定めは、台湾民法の放棄の条文(第1174条)にはありません。日本にある台湾の窓口で書類の認証を受けている間も、期間は進みます。

例えば、高雄に住んでいた台湾籍の母が亡くなり、カードローン、知人の借入れの保証、滞納していた税金が残ったとします。一人息子は横浜で働いており、数年前に日本国籍を取得しました。受け取る財産はほとんどなく、借金は引き継ぎたくありません。

子が日本国籍でも、適用されるのは台湾の民法

台湾の渉外民事法律適用法第58条(涉外民事法律適用法)は、相続は被相続人の死亡時の本国法によると定めています。基準になるのは亡くなった親の国籍で、相続人の国籍や住所は準拠法を変えません。日本の法の適用に関する通則法第36条も「相続は、被相続人の本国法による」としています。

日本の家庭裁判所への相続放棄の申述は、日本の民法第938条が定める方式です。一方、台湾民法第1174条は放棄を書面で「法院」(裁判所)にするよう求め、家事事件法第127条は相続放棄の事件を、相続開始時の被相続人の住所地の裁判所の専属管轄としています。日本で申述をしただけで台湾法上の放棄になるとは考えないほうがよいでしょう。日本にある財産や日本側の手続をどうするかは、日本の専門家に確認してください。

放棄しなくても責任は遺産の範囲、それでも放棄を選ぶ理由

台湾民法第1148条第2項は、相続人は相続によって得た遺産を限度として被相続人の債務を弁済する責任を負う、と定めています。亡くなる前2年以内に親から贈与を受けた財産は、この「得た遺産」とみなされます(第1148条の1)。

ただし、相続人のままでいると守るべき手順があります。第1156条は、相続できることを知った時から3か月以内に遺産目録(遺產清冊)を作って裁判所に提出するよう定めています。こちらの3か月は、相続人が申し立て、裁判所が必要と認めれば延ばせます。目録を出さなかった相続人も、債権者全員に対し、債権額に応じた按分で遺産から弁済しなければなりません(第1162条の1)。これに反すると、債権者が受けるべきだったのに受けられなかった部分について、遺産の限度を超えて責任を負います。行為能力のない相続人と制限行為能力の相続人だけが例外です(第1162条の2)。

日本にいながら台湾の債権者を調べ、按分で弁済していくのは容易ではありません。受け取る財産もないのであれば、相続放棄を選ぶほうが話は簡単です。放棄の効力は相続開始の時にさかのぼります(第1175条)。

3か月は、親が亡くなったことを知った日から

台北地方法院は112年度司繼字第3207号裁定(2024年1月30日)で、「相続できることを知った時」とは、被相続人が死亡し、自分が民法第1138条により相続人になったことを知った時をいうと述べました。子は第1順位の相続人ですから、通常は親の死亡を知った日が起算点になります。

新北地方法院は114年度家聲抗字第120号裁定(2025年12月29日)で、相続する遺産があるかどうかまで知る必要はなく、法律を知らなかったことや誤解していたことも影響しないとしました。借金の額を調べ終えてから動くのでは、間に合わないおそれがあります。

放棄の書面には、放棄する人、被相続人の氏名と最後の住所、死亡の年月日時と場所、相続を知った時期、他の相続人の氏名・性別・生年月日・住所(居所)を記載します(家事事件法第132条)。放棄が適法であれば、裁判所はこれを備査(記録にとどめること)とし、放棄した人と判明している他の相続人に通知して、公告します。適法でなければ裁定で却下(駁回)します。

代表処の認証を経ても、期間は延びない

海外に住む相続人は、台湾に行かなくても放棄できます。繼承登記法令補充規定の第54点は、自ら帰国して裁判所に提出できない海外の相続人が、裁判所あての放棄の書面を作り、在外公館の認証(驗證)を受けたうえで、台湾にいる代理人に送って裁判所に提出させることができる、としています。

日本には、東京の台北駐日経済文化代表処(台北駐日經濟文化代表處)のほか、横浜、大阪、福岡、那覇、札幌に窓口があります(代表処の案内)。認証は、文書を作成した地を管轄する窓口に申請するのが原則です(文書証明条例第10条)。外交部領事事務局の案内によると、東京の代表処の管轄は東京都と、青森、岩手、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、山形、山梨、長野の14県です。

上の新北地方法院の事件の相続人は、米国に住んでいました。台湾の窓口が遠く、現地の公証人が書類に疑問を示したため認証に時間がかかったと主張しましたが、裁判所は、第54点は自ら出向けない海外の相続人の便宜を図る定めにすぎず、放棄の期間について特別の定めをしたものではないとして、抗告を棄却しました。

台北地方法院の第3207号事件の相続人も、海外で死亡証明書を取り寄せ、現地の台湾の窓口で証明を受けるのに時間がかかったと説明しました。裁判所はこの3か月を除斥期間とし、死亡の当日に知らせを受けた子が11か月余り後に出した申立てを却下しています。同じ裁判所の115年度司繼字第236号裁定(2026年3月11日)では、在外公館の認証を受けた放棄の声明書と授権書がそろっていたのに、声明書に書かれた「相続を知った日」から3か月を過ぎて裁判所に届いたことを理由に、申立てが却下されました。

三つとも地方法院の判断です。いずれの事件でも、裁判所は申立書に押された裁判所の受付日を基準にしています。

日本で準備するときの順序

まず、親の死亡を知った日から3か月後の日付を確かめます。第236号裁定は、9月17日に知った相続人は12月17日までに裁判所へ提出すべきだったと計算しました。

次に、台湾で書類を提出する代理人を決め、放棄の声明書(拋棄繼承權聲明書)と、代理人に渡す授権書(委任状)を管轄の窓口で認証してもらいます。横浜分処の案内は、原則として本人が窓口に出向く必要があり、審査には通常3〜5営業日かかるとしています(2026年10月5日確認)。在外窓口のサイトにある声明書の見本には「知悉得繼承日期」(相続できることを知った日)の欄があり、第236号事件で裁判所はこの欄の日付を起算点にしました。

認証を受けた書類は代理人に送り、代理人が戸籍関係の書類とあわせて裁判所に提出します。上の台北の二つの事件では、申立人は戸籍謄本、除戸謄本(除戶謄本)、相続系統表(繼承系統表)を提出していました。日本国籍で台湾に戸籍のない相続人が親子関係を何で証明するかは、管轄の裁判所か代理人に先に確認し、日本の戸籍書類の取得と認証にかかる日数も日程に入れておきます。海外で署名した文書の認証については、海外から台湾の弁護士に仕事を頼むとき、先に確認することでも取り上げています。

自分が放棄すると、次に誰が相続人になるか

放棄した子の相続分は、一緒に相続する他の人に帰属します(民法第1176条第1項)。子が全員放棄すると孫が相続人になり(第5項)、先の順位の全員が放棄すると、被相続人の父母、兄弟姉妹、祖父母の順に移ります(第6項)。横浜の息子に子どもがいれば、次はその子どもたちです。配偶者はこの順位とは別に相続人になるので(第1138条)、父が健在であれば、父の放棄は別に行います。

こうして相続人になった人は、相続できることを知った日から3か月以内に放棄できます(第7項)。先に放棄した人は、自分の放棄によって相続人になる人に書面で知らせなければならず、知らせることができない場合だけが例外です(第1174条第3項)。次に誰が相続人になるかを先に書き出し、台湾と日本の家族で日程を合わせておくとよいでしょう。相続の順位と相続分は台湾の相続と親権にまとめています。

日本から台湾の裁判所への相続放棄を準備している場合は、昊鼎国際法律事務所にメール(wei@hoveringlaw.com.tw)で、亡くなった日と亡くなったことを知った日、親の最後の住所地、相続人の構成をお知らせください。この記事は一般的な説明であり、個別の事案の結論は実際の書類と日付によって変わります。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月5日

よくある質問

日本の家庭裁判所で相続放棄の申述をすれば、台湾の親の借金も引き継がずに済みますか?
台湾の渉外民事法律適用法第58条は相続を被相続人の死亡時の本国法によるとしており、台湾籍の親の相続には台湾の民法が適用されます。台湾民法第1174条は、相続できることを知った時から3か月以内に書面で裁判所に放棄するよう求め、家事事件法第127条はこの事件を被相続人の住所地の裁判所の専属管轄としています。日本の手続だけで台湾法上の放棄になるとは考えないほうがよく、日本側の扱いは日本の専門家に確認してください。
代表処での認証に時間がかかった場合、3か月の期間は延びますか?
新北地方法院の114年度家聲抗字第120号裁定(2025年12月29日)は、在外公館の認証を経て台湾の代理人が提出する方法は、自ら裁判所に出向けない海外の相続人の便宜のためのもので、放棄の期間について特別の定めをしたものではないと判断しました。台北地方法院も、海外での書類の準備が遅れたという事情で起算点を遅らせませんでした。いずれも地方法院の判断で、事案ごとに事実関係は異なります。
3か月を過ぎてしまったら、親の借金をすべて負うことになりますか?
台湾民法第1148条第2項により、相続人は相続によって得た遺産を限度として被相続人の債務を弁済する責任を負います。ただし相続人のままなので、第1156条の遺産目録の提出や第1162条の1の按分弁済の決まりに従う必要があります。按分弁済に反すると、第1162条の2により、その部分は遺産の限度を超えて責任を負うことがあります。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。