台湾で振込先を間違えた場合の返還範囲
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台湾で振込先を間違えた場合の返還範囲

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生活費に使っただけでは、免責されません。民法第182条第1項が免責の条件とするのは、法律上の原因がないことを知らず、しかも受けた利益がすでに存在しない場合です。

台北で事業を営む日本人が、債務も契約上の支払義務もない相手の口座へ、仕入代金を誤って振り込んでしまいました(架空の例です)。明細には金額、入金時刻、振込先口座が記載されています。返還を求めると、名義人から生活費に使ったという一行の返信が届きました。

口座に入った利益は誰のものか

返還請求の根拠となる台湾民法第179条は、法律上の原因なく利益を受け、それによって他人に損害を与えた人に、その利益を返還する義務を課しています。原因が当初は存在し、あとでなくなった場合にも同じ規定が適用されます。上の例では、振込の時点から名義人にお金を支払う原因がなかったという設定です。

例のとおり名義人が入金によって利益を得たとすれば、その利益に対応する振込人の損失と、名義人への債務や契約がないことを結び付けて考えます。第179条の利益、損害、法律上の原因の不存在という要件です。明細に知らない名前があるだけで、この要件がすべて満たされるわけではありません。同条は振込人が会社か個人かで扱いを分けず、受取口座が商店名義か個人名義かという名称だけでも返還義務者を決めていません。

この架空の例で、名義人が「家族に引出しを頼みました」と返信したら、請求先は家族になるのでしょうか?第179条で返還義務を負うのは利益を受けた人なので、その説明だけを理由に請求先を家族へ変更することはできません。引出しと利益の帰属を分けて調べることになります。

請求書には予定していた振込先が、明細には実際の振込先が残っています。番号が違います。ここまでは二つの書類で比較できます。家族が引き出したという話は、誰からどんな文面で届いたのかを記録しておけば、書類で確認できる内容と相手の説明を分けて読めます。裁判所が誰の説明を採用するかは、この架空の設定からは判断しません。

仕入先との代金の処理も残ります。第179条が定めるのは利益を受けた人からの返還であり、別の契約の債務まで誤振込によって消滅させる規定ではありません。仕入先への支払義務については、その契約に即して考える必要があります。

払う理由と、払ったときの認識

返還が認められない給付を定めるのが第180条です。四つあります。第一号は道徳上の義務を履行するための給付です。第二号が扱うのは、支払うべき債務はあるものの、まだ期限が来ていない段階で、債務者がその弁済のために給付した場合です。番号の入力ミスだけでは、道徳上の義務を果たす支払だったかは分かりません。先の例では名義人に対する債務そのものがないため、第二号の期限前の弁済には当たりません。

第三号では認識が問題になります。債務の弁済として給付し、そのときに給付義務がないと知っていた場合には返還を請求できません。第180条第3号は、支払時の認識を条件にしています。誤入力があったというだけでは、この条件を満たしません。あとから誤振込に気付いたことをもって、振込時から義務がないと知っていたことにはできないのです。

第四号は不法な原因による給付です。不法な原因が受領人の側にだけある場合は、返還を請求できないという制限から除かれます。これも第180条第4号の一部です。原因がどちら側にあるのかを落とさずに読む必要があります。どの取引が不法な原因に当たるかは、この誤振込の例では扱いません。

四つの除外事由を踏まえると、振込先を間違えたと分かっただけでは返還の可否は決まりません。第180条を当てはめるには、何のために支払ったか、支払う際に何を知っていたかという取引の事情も必要になります。

元の金額以外に返すものはあるか

第181条は、不当利得の受領人に、受けた利益と、その利益をもとにさらに得たものをあわせて返還させ、利益の性質やその他の事情により返還できないときは、その価額を償還する義務を課しています。返せない利益を金銭で評価して支払うという規定です。

明細だけでは、入金に利息が付いたか、そのお金で別の利益を得たかは分かりません。そうした利益も、得ていれば第181条による返還の対象になります。預金利息は一例です。条文は利息だけに対象を絞っていないため、元の振込額に加えて何を得たのかを調べる意味があります。

生活費ならどうでしょうか?使ったことだけでは、第182条第1項がいう利益の不存在を認定できません。支出の詳細は不明です。利益がなお残っていれば、法律上の原因がないと知らなかった人でも同項の免責を受けず、第179条と第181条に従って返還することになります。

冒頭の二つの条件がそろった場合には、第182条第1項は利益の返還義務だけでなく、価額の償還義務も免除します。

知った時点で返還の基準が変わります

受領時から法律上の原因がないと知っていた人は、受領時に得た利益に利息を加えて償還します。あとで知った人は、知ったときに現存していた利益に利息を加えて償還します。第182条第2項が、この二つを定めています。損害があれば賠償も必要です。

利率も、振込日や入金時刻を利息の起算日とする規定も、第182条にはありません。同条の「知ったときに現存する利益」という基準から、すべての誤振込に振込日から利息が付くと結論付けることはできません。

ここで認識の時点を考える材料になるのが、相手の返信と、それに先立つ返還依頼です。生活費に使ったという文面だけを抜き出さず、返信が届いた日付と、その前にこちらが何を伝えていたのかを一緒に残しておくと、やり取りの順序や内容をたどれます。ただし、第182条第2項は返信が届いた日を自動的に認識の時点とする規定ではありません。明細の入金時刻と、相手が原因の不存在を知った時点は、それぞれの資料から考えます。

銀行への問い合わせに使う資料

銀行に誤りの調査と訂正を依頼する際は、どちらが請求書の番号でどちらが実際の振込先なのかを示したうえで、金額と処理時刻を伝えると、問い合わせの対象を具体的に説明できます。原本は保管します。相手の返信を要約して伝えるときも、元の文面があれば、あとから表現を確かめられます。

銀行ごとの手続は、その銀行に確認することになります。第179条、第180条、第181条、第182条には、銀行が振込を取り消したり預金情報を開示したりする義務は定められていません。これらの返還規定を根拠に、銀行が必ず取り消してくれると約束することはできません。

書面での連絡は存證信函の説明、請求の手続は少額・簡易の民事手続で詳しく扱っています。ここで取り上げたのは最初に利益を受けた人に対する民事上の返還です。詐欺、口座の支払停止、刑事手続、外国為替の申告、日本の裁判所で適用する法律は対象に含めていません。

振込記録についての問い合わせは、昊鼎国際法律事務所のwei@hoveringlaw.com.twへ送れます。

例の明細からは、仕入先とは別の口座へ入金されたことが分かります。一行の返信で分かったのは、名義人が生活費に使ったと説明していることまでです。返信に支出日が加われば、この例で空白になっている時系列を一つ埋められます。

参考にした公的資料

よくある質問

相手がお金を使ってしまったら、誤って振り込んだ分は戻ってきませんか?
[民法第182条第1項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0000001&flno=182)による免責には、法律上の原因がないことを受領人が知らず、受けた利益もすでに存在しないという二つの条件が必要です。そろえば返還と価額償還の責任を免れますが、使ったという説明だけでは足りません。[第2項](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0000001&flno=182)では、受領時から知っていた人はそのときに得た利益を、あとから知った人は知ったときに残っていた利益を、それぞれ利息とともに償還します。いずれの場合も、損害があれば賠償します。この条文自体には利率や利息の起算日は書かれていません。
払う義務がないと知りながら送ったお金も、不当利得として返還を請求できますか?
債務の弁済として支払い、その時点で支払義務がないと知っていた場合は、[民法第180条第3号](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0000001&flno=180)により返還を請求できません。口座番号の見間違いだけでは、この条件を満たしません。同条のほかの制限も関係しますが、第四号は不法な原因が受領人の側にだけある場合を制限から除いています。[第181条](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0000001&flno=181)は、受けた利益とそこからさらに得たものの返還、返還できないときの価額償還を定めています。[第182条](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0000001&flno=182)による責任は、原因がないと知った時点や利益が残っているかによって変わるため、誤振込でも全額を回収できるとは限りません。
銀行がその振込を取り消してくれますか?
[民法第179条](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0000001&flno=179)から[第182条](https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawSingle.aspx?pcode=B0000001&flno=182)は、銀行が振込を戻す義務や、預金情報を開示する義務を定めていません。銀行に連絡するのは、誤りを確認し、訂正を頼む実務上の経路です。民事上の返還を求める相手は、利益を受けた人です。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。