台湾の相続登記(繼承登記)の申請期間は、相続開始の日から6か月です。日本の不動産登記法は、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請を義務づけ(第76条の2)、正当な理由なく怠ったときは10万円以下の過料としていますが(第164条)、台湾は期間が短いうえに、過ぎたあとの進み方も違います。登記をしなくても相続人の権利がすぐに消えることはありません。その代わり、放置した期間に応じて次の順に手続きが進みます。
| 相続開始の日から | 起こること | 土地法 |
|---|---|---|
| 6か月まで | 相続登記の申請期間 | 第73条 |
| 6か月を過ぎると | 1か月ごとに登記費の1倍、最高20倍までの過料を科すことができる | 第73条 |
| 1年を過ぎると | 地政機関が3か月以内に登記するよう公告・通知し、それでも申請がなければ列冊管理ができる | 第73条の1 |
| 列冊管理が15年を過ぎると | 財政部国有財産署が公開入札で売却する | 第73条の1 |
例えば、台湾出身のお母さまが5年前に亡くなり、高雄のマンションが今もお母さまの名義のままだとします。お父さまはすでに他界しており、相続人は、その部屋に住んでいる兄と、日本で暮らす妹の二人です。この兄妹の不動産は、すでに表の3行目、つまり公告と列冊管理の段階に入っている可能性があります。
登記をしていなくても、相続はすでに始まっています
台湾の民法では、相続は被相続人の死亡によって開始し(第1147条)、相続人はその時から被相続人の財産上の権利と義務を承継します(第1148条)。登記簿が母の名義のままでも、マンションはすでに兄妹のものです。ただし民法第759条は、相続によって登記の前に不動産の物権を取得した人は、登記をしてからでなければその物権を処分できないと定めています。売るにも担保に入れるにも、まず相続登記が要ります。
相続人が複数いるときは、遺産を分割するまで、相続人全員が遺産全体を公同共有します(第1151条)。公同共有の物を処分したり、そのほかの権利を行使したりするには、法律に別の定めがない限り、公同共有者全員の同意が必要です(第828条第3項)。部屋に住んで管理してきた兄であっても、一人の判断で売ることはできません。
6か月を過ぎたときの過料
土地法第73条第2項は、相続登記を相続開始の日から6か月以内に申請できるとし、申請が遅れた場合は1か月遅れるごとに、納めるべき登記費の1倍の過料(罰鍰)を科すことができると定めています。上限は登記費の20倍です。登記費は第76条により申告地価(申報地價)または権利価値の1000分の1ですから、条文どおりに計算すると、過料はどれだけ遅れてもその額の1000分の20を超えません。
計算から除かれる期間もあります。土地登記規則第50条第2項は、過料を計算するときに、申請人の責めに帰することができない期間を差し引くとしています。どの期間がこれに当たるかは、申請の際に不動産所在地の地政事務所(日本の法務局にあたる窓口)で確認してください。
過料とは別に、不動産そのものに関わる手続きが、1年を過ぎたところから進みます。
1年後の公告と列冊管理、その15年後の公開入札
土地法第73条の1第1項によると、相続開始の日から1年を過ぎても相続登記がされていない土地・建物について、管轄の地政機関は事実を確認したうえで、相続人に対し3か月以内に登記を申請するよう公告し、書面でも通知しなければなりません。それでも申請がなければ、地政機関はその不動産を台帳に載せて管理することができます。これが列冊管理です。申請人の責めに帰することができない事由があった期間は、ここでも差し引かれます。
列冊管理の期間は15年です。15年を過ぎても登記の申請がなければ、地政機関は相続人に書面で通知し、不動産の目録を財政部国有財産署(國有財產署)に送って、公開入札による売却(標售)に付します(第2項)。売却に進むのは、この期間が終わるまで登記を申請しなかった不動産ですから、それまでに相続登記を済ませれば、この段階には至りません。
売却の前には3か月の公告があります。相続人、適法な使用者、ほかの共有者は、それぞれが使用している範囲について、この順で優先購入権を持ちます。ただし、落札決定後30日以内に優先購入の意思を示さなければ、放棄したものとみなされます(第3項)。相続人が占有している場合や、第三者が適法な使用権なしに占有している場合は、売却後に占有する権利を失い、賃貸借の期間が5年を超えるものは売却後5年までに限られます(第2項)。先の例でいえば、母の部屋に住んでいる兄が、この「占有している相続人」です。
売却代金は国庫の専用口座に保管され、相続人は法定相続分に応じて受け取ることができます。10年たっても受領を申請する相続人がいなければ、代金は国庫に帰属します(第4項)。応札者がいないとき、または最高価格が最低売却価額に届かないときは、国有財産署が最低価額を引き下げてもう一度売却にかけますが、引下げ幅は20%を超えられません。5回売却にかけても売れなければ、不動産は国有として登記されます。その場合も、もとの権利者は国有登記の完了日から10年以内であれば、証明書類を添えて、法定相続分に応じた代金の支給を国有財産署に申請できます。審査と90日間の公告を経て異議がなければ、5回目の売却の最低価額を基準に按分した額が支払われます(第5項)。
権利がある日突然なくなる仕組みではありません。ただ、最後まで放置すれば不動産は落札者か国のものになり、相続人に残るのは、期限内に請求しなければ受け取れない代金だけです。
相続登記の書類と遺産税
土地登記規則第119条は、登記申請書と既存の所有権状(所有權狀)のほかに提出する書類として(第34条)、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本、相続人の現在の戸籍謄本、相続系統表(繼承系統表)、遺産税の納付(免除)証明書を挙げています。戸籍謄本は、コンピュータ処理で照会できる場合には提出を省略できます。相続系統表は申請人が民法の規定に従って自分で作成し、漏れや誤りで他人に損害が生じたときは法的責任を負う旨を記して署名します。相続放棄をした人がいる場合は、相続開始が1985年6月5日以降であれば裁判所が放棄を備査(准予備查)したことの証明書類を、1985年6月4日以前であれば相続権の放棄に関する書類を添えます。
登記の前に、台湾の遺産税(遺產稅)の手続きを済ませておく必要があります。遺産及び贈与税法第8条は、遺産税を完納する前は遺産の分割、遺贈の交付、移転登記ができないと定め、免税証明書や移転同意証明書などがある場合だけを例外としています。第42条は、これらの証明書の副本が提出されないときは、地政機関は移転登記をしてはならないとしています。納める税額がないと決定された場合にも免税証明書が発行されますから(第41条)、この書類を受け取ってから登記に進むことになります。遺産税の申告期限は死亡日の翌日から6か月で(第23条)、第44条は、期限内に申告しなかった場合について、決定された納付税額の2倍以下の過料を定めています。
兄弟姉妹の一人が協力しない、または海外にいるとき
相続登記は、相続人全員がそろわなくても申請できます。土地法第73条第1項は、相続登記はどの相続人からでも相続人全員のために申請できるとし、その申請は、ほかの相続人が相続放棄や限定承認(限定繼承)をする権利に影響しないと付け加えています。土地登記規則第120条も、相続人の一部が事情により共同で申請できないときは、そのうちの一人または数人が相続人全員の利益のために、被相続人の土地について公同共有の登記を申請できると定めています。登記が終わると、登記機関がほかの相続人に結果を通知します。このとき、一緒に申請できなかった相続人の現在の戸籍謄本は、その人がかつて台湾に戸籍を置いていたときの謄本と、現在の謄本を添付できない理由を書いた書面で代えることができます(第119条第2項)。
先の例では、兄が一人で申請し、兄妹の公同共有として登記しておくことができます。ただし、それぞれの持分を記載する分別共有の登記には、相続人全員の同意が必要です(第120条)。誰が何を取得するかで話がまとまらないという問題は、登記の期限とは別の話です。相続人は原則としていつでも遺産分割を請求でき(民法第1164条)、遺産分割をめぐる争いは家事事件として裁判所が扱います(家事事件法第3条)。
日本に住む相続人は、台湾に行かずに代理人に任せることもできます。土地登記規則第41条第7号は、外国人または海外に住む国民が第三者に土地登記を委任し、その委任状が台湾の在外公館の認証(驗證)を受けている場合には、本人が出頭しなくてよいとしています。相続人が日本国籍である場合に加わる外国人の土地取得制限や書類の認証は、外国人が台湾の不動産を相続するときで説明しています。相続放棄や遺言を含む相続全般は台湾の相続と親権にまとめてあります。台湾の財産を相続することで日本側の税務や届出がどうなるかは、税理士など日本側の専門家にご確認ください。
亡くなった親御さんの名義のまま残っている台湾の不動産について、登記の進め方を相談したいときは、昊鼎国際法律事務所までメール(wei@hoveringlaw.com.tw)でご連絡ください。その際、死亡日、不動産の所在地、相続人の構成を書き添えてください。この記事は一般的な説明であり、個別の事案の結論は実際の書類によって変わります。
参考にした公的資料
- 民法 第759条、第828条、第1147条、第1148条、第1151条、第1164条
- 土地法 第73条、第73条の1、第76条
- 土地登記規則 第34条、第41条、第50条、第119条、第120条
- 遺産及び贈与税法 第8条、第23条、第41条、第42条、第44条(2026年9月11日改正公布後の現行条文)
- 家事事件法 第3条
- 日本の不動産登記法 第76条の2、第164条(e-Gov法令検索)
確認日:2026年10月5日
よくある質問
- 台湾で相続登記をしないままにすると、土地は国に取られてしまいますか?
- すぐにそうなるわけではありません。土地法第73条の1によると、相続開始の日から1年を過ぎても登記されていない不動産は、地政機関が3か月以内に登記するよう公告・通知し、それでも申請がなければ15年間、列冊管理ができます。この期間を過ぎても申請がないと、財政部国有財産署が公開入札で売却します。代金は相続人が法定相続分に応じて受け取れますが、10年間申請がなければ国庫に帰属します。
- 相続登記が遅れた場合の過料はどのくらいですか?
- 土地法第73条は、相続開始の日から6か月の申請期間を過ぎると、1か月ごとに登記費の1倍、最高20倍までの過料を科すことができると定めています。登記費は第76条により申告地価または権利価値の1000分の1です。土地登記規則第50条により、申請人の責めに帰することができない期間は計算から差し引かれます。
- 相続人の一人が協力しない、または海外にいても登記できますか?
- できます。土地登記規則第120条は、相続人の一部が共同で申請できないとき、一人または数人が相続人全員の利益のために公同共有の登記を申請できると定めています。それぞれの持分を記載する分別共有の登記には、相続人全員の同意が必要です。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



