熊本の装置メーカーが、台中の工場向けに検査装置を出荷しました。契約書には装置代金とは別に、据付け、試運転、オペレーター研修の対価が並んでいます。技術者は5か月ほど現地に詰める予定です(架空の例です)。台湾側の経理担当者から届いた質問は一つでした。どの金額から源泉徴収すればよいのでしょうか。
装置代金と現場の役務は、別々に判断されます
財政部の所得源泉認定原則(所得稅法第八條規定中華民國來源所得認定原則)(2023年10月13日改正)第10点第4項によると、外国企業の本社が台湾の顧客へ直接販売した物品は、一般の国際貿易(一般國際貿易)として扱われます。台湾支店があっても結論は同じです。財政部の解釈台財稅第7575300號(1987年1月9日)は、1987年1月1日から本社の直接販売を支店の営業収入として課税しないとしました。この取引で本社が支店に送る補助経費や手数料は支店の収入です。本社が台湾で直接提供した役務の報酬は台湾源泉の所得とされ、支店が納税します。
据付け、試運転、研修はどうでしょうか。全部を台湾で行い完了した役務の報酬は、台湾源泉の所得です(所得税法第8条第3号、認定原則第4点第1項)。装置メーカーの本業に属する役務であれば、台湾での営業利益(第8条第9号)として認定されます(第4点第6項)。
一つの契約に性質の違う対価が混ざっている場合、税務機関はまず所得の種類を見極め、それぞれの規定で判断します。認定原則第13点の定めです。
据付費の源泉徴収、20%と3%
台湾に固定の営業場所も営業代理人も持たない日本企業へ据付費を払うとき、台湾の顧客は支払額の20%を源泉徴収します。2026年10月時点の根拠は各類所得扣繳率標準第3条第1項第10号(2021年6月30日最終改正)です。納付期限と源泉徴収票の手続は、台湾子会社が日本の親会社に払う役務提供料と源泉徴収で説明しました。
総額の20%が重いときに検討されるのが、所得税法第25条です。建設工事の請負や技術サービスの提供で、原価・費用の配分計算が難しい外国企業は、財政部の承認を受ければ台湾での営業収入の15%を所得額とすることができます。欠損金の控除は使えません。台湾に支店も営業代理人もなければ、顧客が支払時にその所得額の20%を差し引きます(第98条の1第3号、扣繳率標準第9条)。計算上は収入の3%です。
対象になる役務の範囲は、財政部の第25条審査原則(2023年5月29日改正)第7点が示しています。技術サービスには据付け、検査、修理、試運転、人員訓練が含まれます。研修の教材や内容が専属的な技術情報や秘密の方法の提供にあたる場合、その部分は使用料として切り分けられ、承認の対象から外れます。
技術者を実質的に貸し出すだけの契約なら、どうなるでしょうか?審査原則第8点は人材派遣サービスに第25条を適用しないとし、派遣された人員が主に台湾側の受入機関の指揮・監督や業績評価を受けているかを判断の指標の一つに挙げています。台湾に固定の営業場所も代理人もない場合の申請先は、支払者の所在地を管轄する国税局です。署名済みの契約書の写しと中国語訳を添えます(第4点、第5点)。2023年5月29日以後の承認は5年が上限で、契約期間がそれより短ければその期間までです(第11点)。
設計から装置の調達、据付け、試験、研修までを一社が引き受けるターンキー契約もあります。範囲はさらに広がります。第7点は据付工事(安裝工程)や機電工事も建設工事に含めます。そして材料・設備・技術者・設計が一体で分けられず、工事の進み具合に応じて代金が支払われる取引を「統包交易」とし、国内外の設備調達を含む収入全体で第25条を申請するよう求めています。下請けに回した部分の収入も差し引けません。
日台民間租税取決めの「6か月」と「183日」
日台民間租税取決めは、公益財団法人交流協会と亜東関係協会が2015年11月26日に結んだ民間の取決めです。両団体は2017年にそれぞれ公益財団法人日本台湾交流協会、台湾日本関係協会へ名称を変えています(国税庁の説明)。取決めは2016年6月13日に発効し、台湾では2017年1月1日から適用されています(財政部の発表)。
基準は二つあります。取決めの中国語訳本第5条第3項によれば、建築工事現場、建設・組立て・据付けの工事やその監督活動は、6か月を超えて続く場合に恒久的施設(常設機構、PE)となります。従業員などを通じた役務の提供は、同じ計画か関連する計画のために、その課税年度に始まるか終わる12か月の間で合計183日を超えるときです。関連企業の期間を合算する規定は、日本との取決めの第5条にはありません。
工事の期間は、準備作業を含めて作業を始めた日から、完了または永久的な中止の日までです。適用所得稅協定查核準則第8条は季節的・一時的な中断や下請けの工事期間も含めます。役務の日数は従業員の実際の滞在日数を合算し、複数人が重なる日は1日と数えます。12か月は、関係する年度の初日から遡る12か月から、同じ年度の末日から先の12か月までの間で、連続する任意の12か月をとります(第9条)。技術者本人の給与と183日は、台湾で働く半導体技術者の税務で取り上げました。
関連する計画がほかになければ、5か月の日程はどちらの基準にも届きません。それでも免税は自動では受けられません。取決め第7条第1項により、PEを通さない事業利得は日本でだけ課税されますが、日本企業は居住者証明書、台湾にPEがないことの資料、所得の資料をそろえ、支払者の所在地の税務機関に減免の承認を申請する必要があります。承認されると、税務機関は顧客に源泉徴収をしないよう通知します(查核準則第23条)。
PEがあれば、台湾はそのPEに帰属する利得に課税できます(取決め第7条第1項)。2026年9月16日の財政部令台財稅字第11500617350號は、外国企業の台湾支店や工事現場(工程場所)が確定申告で国外の原価・費用を計上する際、本社所在地の資格ある会計士が簽證(証明)した本社の財務報告か外国税務当局の証明で認めるとし、在外公館などの認証を不要にしました。
営業税は、税関と台湾の顧客が納めます
装置が輸入されるときの営業税は、税関が代わりに徴収します(営業税法第41条)。課税標準は関税の課税価格に輸入税を加えた額で(第20条)、納税義務者は輸入貨物の荷受人か所持人です(第2条第2号)。財政部は1988年3月28日の解釈で、外国の請負業者が台湾の建設工事を請け負い、国外で調達して供給した材料・機械設備の代金にも、第41条により営業税を課すとしています(GL007616)。
据付けの営業税は、顧客が納めます。第36条第1項により、台湾に固定の営業場所を持たない外国企業から役務を買った顧客は、対価を支払った次の期の開始から15日以内に、支払額に税率を掛けて納付します。顧客が一般税額計算の営業人で、その役務を課税事業だけに使うなら免除です(同項ただし書)。財政部の税務ポータルのQ&A(9105)も、外国企業が技師を派遣して台湾で機械を修理する場合を同じ枠組みで説明しています。台湾で差し引かれた税額を日本の法人税でどう扱うかは、日本の税理士にご確認ください。
契約上の対価の区分や第25条の申請書類について検討が必要でしたら、契約の範囲と現場の日程をまとめて、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)へお送りください。
5か月の予定が6か月を超えれば、経理担当者の質問はもう一つ増えます。台湾にできたPEに、どの利得が帰属するのかという問いです。
参考にした公的資料
- 台湾 所得税法(所得稅法、2026年9月11日最終改正)第8条、第25条、第98条の1
- 各類所得扣繳率標準(2021年6月30日最終改正)第3条、第9条
- 適用所得稅協定查核準則(2025年4月8日最終改正)第8条、第9条、第23条
- 営業税法(加值型及非加值型營業稅法、2025年5月28日最終改正)第2条、第20条、第36条、第41条
- 財政部 所得稅法第八條規定中華民國來源所得認定原則(2023年10月13日改正)、外國營利事業申請適用所得稅法第二十五條第一項規定計算所得額案件審查原則(2023年5月29日改正)
- 財政部の解釈・令 台財稅第7575300號(1987年1月9日)、外國包商在我國境內承包工程而於境外購料者由海關代徵營業稅(1988年3月28日)、台財稅字第11500617350號令(2026年9月16日)
- 財政部税務入口網 Q&A 外國公司派技師來我國修理機器,其修理費要不要繳稅?(9105)(2024年7月23日更新)
- 財政部国際財政司 我國所得稅協定一覽表(2026年9月4日更新)、日台民間租税取決めの発効・適用に関する発表(2016年6月15日)、取決め中国語訳本・英文本
- 国税庁 日台民間租税取決めに定める相互協議手続について
確認日:2026年10月7日
よくある質問
- 装置代金からも、台湾の顧客は源泉徴収をしますか?
- 台湾財政部の所得源泉認定原則第10点は、外国企業の本社が台湾の顧客へ直接販売した物品を一般の国際貿易と認定します。台湾に支店があっても、1987年1月1日以降は本社の直接販売を支店の営業収入として課税しません。源泉徴収が問題になるのは、台湾の現場で提供した据付け・試運転・研修の対価です。ただし、設計・装置調達・据付け・試験・研修を不可分に組み合わせたターンキー工事として第25条の承認を申請する場合は、装置調達を含む収入全体が計算の対象です。
- 据付工事が6か月を超えると、どうなりますか?
- 日台民間租税取決め第5条第3項では、建築工事現場、建設・組立て・据付けの工事またはその監督活動が6か月を超えると、台湾に恒久的施設(PE)があるものとされます。期間は準備作業を含めて作業を始めた日から完了または永久的な中止の日まで数え、一時的な中断や下請けの工事期間も含みます。PEがあれば、台湾はそのPEに帰属する利得に課税できます。
- 据付けの役務にかかる営業税は、誰が納めますか?
- 台湾に固定の営業場所を持たない外国企業から役務を買った台湾の顧客が、対価を支払った次の期の開始から15日以内に、支払額をもとに計算して納めます(営業税法第36条第1項)。顧客が一般税額計算の営業人で、その役務を課税事業だけに使う場合は納付が免除されます。輸入される装置の営業税は税関が徴収します。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



