駐在中に台北で買ったマンションを、帰任後は賃貸に出している。例えばそういう日本人の所有者に、管理委員会(管理委員會、略して管委會)から書面が届いたとします。管理費が3か月分入っていないという催告かもしれませんし、階下の天井に水が漏れているという連絡かもしれません。
誰が費用を負担し、管理委員会がどこまで要求できるかは、公寓大廈管理條例(2022年5月11日最終改正。以下「管理条例」)が定めています。日本の分譲マンションの管理組合や管理規約を思い浮かべると仕組みはつかみやすいのですが、決議の要件や滞納後の手続きは台湾の条文で決まります。第3条の定義は、区分所有者を国籍や住んでいる場所で区別していません。
決めるのは区分所有者会議、実行するのが管理委員会
建物に関する事項は、区分所有者全員で構成する区分所有者会議(區分所有權人會議)が決め、会議は毎年少なくとも1回開かなければなりません(第25条)。管理委員会は、その決議を執行し、建物の管理・維持を行う組織です(第3条)。管理委員会の決議は、管理条例、規約、区分所有者会議の決議に反することができません(第37条)。
規約は、区分所有者会議が決議した共同の遵守事項です。建物や付属施設の管理・使用、住人どうしの関係を定めることができ、動物の飼育の禁止や違反したときの処理方法は、規約に書かれていなければ効力がありません(第23条)。
決議の要件は第31条にあります。規約に別の定めがなければ、区分所有者の3分の2以上、かつ区分所有権の割合の合計3分の2以上が出席し、出席者数の4分の3以上、かつ出席者の区分所有権の割合の4分の3以上が同意することが必要です。決議に至らず、または定足数に届かずに再び招集した会議では、区分所有者3人以上かつ5分の1以上、割合の合計5分の1以上が出席すれば、出席者数とその割合の過半数で決議します。この場合、区分所有者は議事録が届いてから7日以内に書面で反対でき、反対が区分所有者全体とその割合の合計の半数を超えなければ、決議は成立したものとみなされます(第32条)。
会議の通知は開会の10日前までに書面で行い、急を要する臨時会は2日以上の公告で行うことができます(第30条)。公告は建物の掲示板で行い、掲示板がなければ主な出入口の見やすい場所で行います(施行細則第13条)。議事録は会議後15日以内に各区分所有者に送られます(第34条)。出席できない区分所有者は書面で代理出席を委任できますが、第27条が挙げる受任者は、配偶者、行為能力のある直系血族、他の区分所有者、賃借人です。
規約は買った人にも、借りて住む人にも及びます
区分所有権を譲り受ける人は、その前に、規約、議事録、滞納の状況などの閲覧やコピーを管理委員会に請求しなければなりません。譲り受けた後は、前の所有者が管理条例と規約に基づいて有していた権利と負っていた義務を、すべて守ることになります(第24条)。購入の条件と税金は台湾のマンションを買う――外国人の購入条件と所有・売却の税金で説明しています。
借りて住む人も、条文上の「住戶」に含まれます。第3条は住戶を、区分所有者、賃借人、区分所有者の同意を得て専有部分を使用する人と定義し、第6条は住戶に規約の定める事項を守るよう求めています。駐在員として部屋を借りている場合も、動物の飼育や共用部分の使い方は、その建物の規約が基準になります。区分所有者でない住戶も、区分所有者会議の決議や規約に別の定めがなければ、管理委員に選ばれることができます(第29条)。
管理費の負担と、滞納したときの手続き
第10条は、共用部分の修繕・管理・維持を管理委員会が行い、費用は公共基金から支払うか、区分所有者が共有持分の割合で分担すると定めています。区分所有者会議や規約に別の定めがあれば、それに従います。賃貸借契約で管理費を賃借人の負担としていても、それは貸主と借主の間の約束ですから、賃借人が払わなかった管理費の請求が所有者に来ることがあります。
区分所有者または住戶が、公共基金や分担すべき費用を2期を超えて滞納し、または滞納額が相当の金額に達したときは、管理委員会は相当の期間を定めて書面で催告し、それでも支払いがなければ、滞納額と遅延利息の支払いを求めて裁判所に訴えることができます(第21条、第54条)。条文にあるのは「2期」と「相当の期間」で、日数は書かれていません。
第22条はその先を定めています。強制執行の後に再び滞納し、その額が区分所有権の総価の1%に達した場合、管理委員会が改善を促し、3か月以内に改善がなければ、区分所有者会議の決議に基づいて、裁判所に強制退去を求めることができます。滞納者が区分所有者であれば、区分所有権と敷地の持分の譲渡を命じる判決を求めることができ、判決確定後3か月以内に譲渡と移転登記を済ませなければ、管理委員会は競売を申し立てることができます。総価は、改善を促した時点の建物の評定標準価格と土地の公告現値の合計です(施行細則第6条)。
階下に水が漏れたとき
修繕費の負担は、漏れている場所によって三つに分かれます。専有部分であれば、その区分所有者が修繕し、費用を負担します。共用部分であれば管理委員会が修繕し、公共基金または区分所有者の分担で賄いますが、区分所有者や住戶の責めに帰すべき事由で生じた修繕費は、その人が負担します(第10条)。専有部分の間の共同壁や床スラブ、その内部の配管については第12条が別に定めていて、壁の両側または床の上下の区分所有者が共同で負担します。一方の区分所有者の責めに帰すべき事由による場合は、その区分所有者の負担です。濡れた家具や内装の賠償は、第12条が定める範囲ではありません。
原因を調べるには、上の階の部屋に入る必要が出てきます。他の住戶が自分の専有部分を修繕するため、または管理委員会が共用部分を修繕するために立ち入る必要があるとき、住戶は拒むことができません。立ち入る側は損害が最も少ない場所と方法を選び、生じた損害は修復するか補償しなければなりません(第6条)。話し合っても応じない場合は、主管機関に処理を求めるか裁判所に訴えることができ、主管機関が定めた期限までに改善しなければ、3,000台湾元以上15,000台湾元以下の過料(罰鍰)の対象になります(第47条)。部屋を貸している場合、ドアを開けるのは賃借人、修繕費を負担するのは所有者です。冒頭の所有者は、賃借人と管理委員会の両方と連絡が取れなければ、修繕の段取りを進められません。
用途の変更、騒音、廊下の荷物、内装工事
住戶は、使用許可証(使用執照)に記載された用途と規約に従って専有部分を使わなければなりません(第15条)。第16条は、ごみの投棄、悪臭・騒音・振動、階段や共用廊下に物を置いたり扉を設けたりすること、建築主管機関の許可なく建物の主要構造を壊したり変更したりする工事を禁じています。動物の飼育は公共の衛生・安寧・安全を妨げてはならず、規約が飼育を禁じていれば規約に従います。外壁や屋上の構造・色の変更、鉄やアルミの窓の設置は、地方政府に届け出た規約や区分所有者会議の決議の制限を受けます(第8条)。
違反があれば、まず管理委員会が制止し、従わなければ直轄市・県(市)政府に処理を求めます。過料は次のとおりで、期限までに改善しなければ繰り返し科されることがあります(2026年10月6日時点の条文)。
| 違反 | 過料 |
|---|---|
| 騒音・悪臭・汚染物、動物の飼育による妨害(第16条第1項・第4項) | 3,000〜15,000台湾元(第47条) |
| 廊下・階段への物の放置、主要構造の無断変更(第16条第2項・第3項) | 40,000〜200,000台湾元(第49条) |
| 用途の無断変更(第15条) | 40,000〜200,000台湾元(第49条) |
表のうち第49条が適用される違反で過料を受けても改善しない、または繰り返す場合は、第22条の強制退去・譲渡請求の事由になります。
旅行者に数日単位で貸す場合
規約が宿泊営業を禁じていれば、管理委員会は第15条に基づいて制止し、地方政府に処理を求めることができます。
規約とは別に、發展觀光條例(2025年11月28日最終改正)があります。同条例は、不特定の人に日または週単位で宿泊・休憩を提供して料金を受け取る営利事業を旅館業と定義し(第2条)、地方の主管機関に登記して登記証を受けてから営業するよう定めています(第24条)。登記証なしに旅館業務を営むと10万台湾元以上200万台湾元以下、登記証なしに民宿を営むと10万台湾元以上100万台湾元以下の過料が科され、営業をやめるよう命じられます(第55条)。登記証がないままインターネットなどに営業の情報を掲載した場合は、10万台湾元以上150万台湾元以下の過料と、期限を定めた削除命令の対象です(第55条の1)。
日本にいる所有者に書面が届くまで
議事録と催告書は書面で届きます。台湾の外に住む所有者は、郵便物の送付先と連絡先を管理委員会に知らせ、台湾で郵便物を受け取って知らせてくれる人を決めておかないと、反対できる7日間や催告の期間を過ぎてしまいます。規約、議事録、財務諸表、滞納の状況は、利害関係人が必要なときに閲覧やコピーを請求でき、管理委員会は拒めません(第35条)。管理費を口座振込など記録の残る方法で払っておけば、催告を受けたときに支払いの記録で答えられます。
過料の対象となる違反があるとき、他の区分所有者や利害関係人は、事実と証拠を示して直轄市・県(市)政府に通報できます(第59条)。地方政府は紛争の調停委員会(調處委員會)を置くことができます(第59条の1)。台湾に行かずに訴訟を任せる方法は、海外から台湾の弁護士に仕事を頼むとき、先に確認することにまとめています。日本側の税務や手続きは、日本の専門家にお尋ねください。
管理委員会から催告書や訴状が届いたときは、昊鼎国際法律事務所へメール(wei@hoveringlaw.com.tw)で、建物の所在地、届いた書面、規約の写しをお送りください。この記事は2026年10月6日時点の一般的な説明であり、個別の事案はその建物の規約や議事録によって結論が変わります。
参考にした公的資料
- 台湾 公寓大廈管理條例(2022年5月11日最終改正)第3条、第6条、第8条、第10条、第12条、第15条、第16条、第21条、第22条、第23条、第24条、第25条、第27条、第29条、第30条、第31条、第32条、第34条、第35条、第37条、第47条、第49条、第54条、第59条、第59条の1
- 台湾 公寓大廈管理條例施行細則(2005年11月16日最終改正)第6条、第13条
- 台湾 發展觀光條例(2025年11月28日最終改正)第2条、第24条、第55条、第55条の1
確認日:2026年10月6日
よくある質問
- 賃借人が管理費を払わないと、日本にいる所有者に請求が来ますか?
- 来ることがあります。公寓大廈管理條例第10条は、共用部分の修繕・管理・維持の費用を公共基金から支払うか、区分所有者が共有持分の割合で分担すると定め、区分所有者会議や規約に別の定めがあればそれに従うとしています。賃借人が払うという取決めは賃貸借契約上の約束です。滞納が2期を超え、または相当の金額に達し、書面の催告後も支払いがなければ、管理委員会は第21条により滞納額と遅延利息の支払いを裁判所に求めることができます。
- 部屋を借りて住んでいるだけでも、規約を守る義務がありますか?
- あります。同条例第3条は、区分所有者、賃借人、区分所有者の同意を得て専有部分を使用する人を「住戶」と定義し、第6条は住戶に規約の定める事項を守るよう求めています。騒音や共用廊下への物の放置などの違反には、第47条・第49条の過料があります。
- 台北のマンションを旅行者に数日単位で貸してもよいですか?
- 發展觀光條例は、不特定の人に日または週単位で宿泊を提供して料金を受け取る営利事業を旅館業と定義し(第2条)、登記証を受けてから営業するよう定めています(第24条)。登記証なしに旅館業務を営むと10万台湾元以上200万台湾元以下の過料が科されて営業をやめるよう命じられ、登記証がないままインターネットなどに営業の情報を載せると10万台湾元以上150万台湾元以下の過料の対象になります(第55条、第55条の1。2026年10月6日時点の条文)。建物の規約が宿泊営業を禁じていないかも、別に確かめる必要があります。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



