日本で作った遺言は台湾のマンションと預金に効くのか:方式の準拠法と、台湾での遺言の開示と執行
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日本で作った遺言は台湾のマンションと預金に効くのか:方式の準拠法と、台湾での遺言の開示と執行

約8分

日本で作った遺言は、方式の点では台湾でも有効です(涉外民事法律適用法第61条)。台北のマンションと台湾の銀行口座をその遺言どおりに子どもへ渡せるかは、遺言の内容を判断する法律と、台湾での手続しだいです。

方式は四つの法律のどれかに合っていればよい

台湾で外国の要素がある民事事件にどの国の法律を使うかは、涉外民事法律適用法が決めています。遺言の方式については第61条が、遺言者の本国法だけでなく、遺言を作った地の法律、遺言者が死亡したときの住所地の法律、不動産に関する遺言ならその不動産の所在地の法律のいずれに従っていてもよい、と定めています。

本国法と作成地法。日本の方式で作った日本人の遺言は、この二つに合っています。台湾民法の方式を満たしていないことだけを理由に、その遺言が方式上無効になることはありません(第61条)。提出書類の要件は別で、後の節で説明します。逆もまた同じです。日本に住む日本人が台北で台湾民法の方式に従って遺言を作っても、作成地法に合っているので方式上は有効です。

五つの方式が台湾民法の第1189条にあります。全文を自書し日付と署名を書く自書遺囑(第1190条)、2人以上の証人を立て、公証人の前で口述する公證遺囑(第1191条)、署名して封をし、2人以上の証人とともに公証人に提出する密封遺囑(第1192条)、3人以上の証人のうち1人が筆記する代筆遺囑(第1194条)、生命の危急その他の特別な事情で他の方式をとれないときの口授遺囑(第1195条)です。証人には制限があり、第1198条により、相続人とその配偶者や直系血族、受遺者とその配偶者や直系血族は証人になれません。台湾で作るなら、財産を受け取る家族を証人に立てない、というところで最初に引っかかります。

内容は「作ったときの本国法」、相続は「死亡時の本国法」

方式が有効でも、中身は別です。その遺言で何ができるかは、別の法律が決めます。第60条は、遺言の成立と効力は作成時の遺言者の本国法によるとし、撤回は撤回時の本国法によるとしています。日本人が作った遺言なら、有効に成立しているか、どの範囲で効力があるかは日本法で判断されます。

相続そのものは第58条で、被相続人が死亡したときの本国法によります。日本人が亡くなれば、誰が相続人で、相続分がいくらで、遺言で動かせない部分がどれだけあるかは、台湾の裁判所でも日本法で判断されるのが原則です。台湾民法の相続順位や特留分は、この原則の下では出番がありません。

ただし第58条には但書があります。条文は、台湾の法律によれば台湾国民が相続人となる場合、その人は台湾にある遺産を相続できる、と定めています。この記事では、これを台湾法による相続を認める規定として説明します。日本人の夫と台湾人の妻の例で言えば、妻は台湾のマンションと預金について、日本法ではなく台湾法での相続を主張できます。台湾法が適用されれば、第1223条の特留分(配偶者と直系卑属は法定相続分の2分の1)が働き、第1225条により、特留分に足りない分を遺贈から差し引くことができます。「全部子どもに」という遺言は、台湾内の財産について、妻がこの但書を使うかどうかで結果が変わります。

遺言が日本法でどう扱われるかは、この記事の範囲外です。弁護士や公証人と、台湾側の扱いを踏まえて内容を決めるのが順序です。

台湾には日本の検認に当たる一律の手続がない:保管者の交付義務と執行人

検認は日本の手続です。公正証書以外の遺言書は、保管者や発見した相続人が家庭裁判所に提出して検認を請求し、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人またはその代理人が立ち会わなければ開封できません(日本民法第1004条)。法務局で保管された自筆証書遺言は検認が不要です(遺言書保管法第11条)。台湾民法には、このように遺言書の提出を一律に求める手続はありません。代わりに第1212条が、保管者は相続が始まったことを知ったらすぐに遺言執行人に交付し、知っている相続人に適当な方法で通知すること、執行人がいなければ相続人、債権者、受遺者その他の利害関係人に通知することを定めています。相続人が遺言を見つけた場合も同じです。例外が二つあります。口授遺囑は、遺言者の死亡後3か月以内に、証人の1人か利害関係人が親族会議に提出して真偽の認定を受け、異議があれば裁判所に判定を求めます(第1197条)。封緘のある遺囑は、親族会議の場か法院公証処でなければ開けず、開けるときは封緘の状態を記録して在場者が署名します(第1213条)。

以上は台湾民法の遺言と遺言執行の規定です。日本人の遺言の効力は第60条により日本法で判断されるため、執行人の指定や資格がどこまでこの規定に従うかは、登記や銀行の窓口で確認します。効力が生じるのは死亡時です(第1199条)。台湾民法では、第1209条により、遺言で執行人を指定するか、指定を第三者に委ねることができます。未成年者や監護・輔助宣告を受けた人は第1210条により執行人になれません。日本に住む家族を執行人にした場合、台湾の登記や銀行の手続を誰が現地で進めるかは、執行人からの委任で手当てすることになります。

逆の場合:台湾人の配偶者が先に亡くなったら

裏側もあります。台湾人の配偶者が先に亡くなる場合です。このときは第58条により、相続は台湾法によります。台湾民法の法定相続分と特留分がそのまま働き、台湾人の配偶者が日本の方式で遺言を残していても、方式は第61条で有効、内容は第60条により台湾法で判断されます。日本人の配偶者は、台湾民法第1223条の特留分(法定相続分の2分の1)を、遺言の内容にかかわらず主張できます。遺言がない場合に誰がどれだけ相続するかは台湾で遺言なく亡くなったときで扱っています。

作り直すときの注意:後の遺言と、遺言に反する行為

撤回については、第60条第2項により撤回時の本国法が台湾法になる場合にだけ台湾法が判断します(日本人の遺言の撤回には日本法が適用されます)。第1219条の規定はこうです。第1219条により、遺言者はいつでも、遺言の方式に従って全部または一部を撤回できます。前後の遺言が食い違えば、第1220条により食い違う部分について前の遺言は撤回されたものとみなされ、遺言の後に遺言と矛盾する行為(例えば遺言で子どもに渡すとしたマンションを生前に売る)をすれば、第1221条により矛盾する部分は撤回とみなされます。

もっとも、日本人の遺言の撤回は第60条第2項により撤回時の本国法、つまり日本法で判断されます。上の台湾民法の規定が直接働くのは、台湾人が遺言者である場合です。日本と台湾の両方で遺言を作っている人は、どちらが後か、内容が重なっていないかを、両方の法律で確かめることになります。前の遺言が後の遺言と抵触するとき、日本法ではその抵触する部分は後の遺言で撤回したものとみなされます(日本民法第1023条第1項)。例えば、日本で作った遺言を台湾の財産だけ書き直すつもりで台湾で新しい遺言を作ると、この規定により、意図せず前の遺言の一部を撤回したことになる場合があります。

不動産の相続登記は6か月、預金は銀行への確認から

登記の期限は6か月です。台湾の不動産は土地法第73条により、相続登記を相続開始の日から6か月以内に申請します。相続人の1人が全員のために申請でき、遅れると、1か月ごとに登記費の1倍、最大20倍までの罰鍰が科されることがあります。預金は、払戻しに必要な書類が銀行ごとに異なるため、口座のある銀行に先に確認します。登記を先延ばしにしたときに何が起こるかは台湾の親名義のままの土地・家屋で、外国人が台湾の不動産を相続するときの準拠法と登記は外国人が台湾の不動産を相続するときで扱っています。

遺言や戸籍など日本で作られた文書を台湾の地政事務所や銀行に出すときは、翻訳や認証を求められることがあります。どの文書にどの認証が要るかは提出先によって違うので、申請前に地政事務所と銀行にそれぞれ確認することになります。遺産税の申告は、遺言の有無にかかわらず台湾の遺産税2026年で説明した期限で必要です。海外に住んでいた人の台湾内財産にどこまで遺産税がかかるかは海外に住んでいた人が台湾の財産を残したときが扱っています。

財産の一覧(登記簿謄本、口座のある銀行名)、家族構成と国籍、日本で作成済みの遺言の写しを、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)へ日本語でお送りください。方式の問題なのか、内容の問題なのか。その資料を見て整理します。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日(台湾時間)。

よくある質問

日本の公正証書遺言は、台湾でそのまま使えますか?
方式の点では使えます。涉外民事法律適用法第61条は、遺言の方式について、遺言者の本国法のほか、作成地法、死亡時の住所地法、不動産については所在地法のいずれかに従っていればよいと定めています。日本法の方式で作った遺言は、この条文により台湾でも方式上有効です。内容が誰にどう効くかは別の問題で、第60条により作成時の遺言者の本国法が決めます。
台湾人の妻と日本人の夫の場合、夫の遺言で台湾の家を全部子どもに渡せますか?
夫が日本人なら、第58条により相続は日本法によります。ただし同条の但書で、台湾法上相続人となる台湾人(この例では妻)は、台湾にある遺産について台湾法で相続できます。台湾民法第1223条は配偶者の特留分を法定相続分の2分の1と定め、第1225条により不足分を遺贈から差し引けるので、妻が台湾法による相続を主張すれば、遺言どおりにならない部分が残ることがあります。
遺言があれば、台湾で相続の手続は簡単になりますか?
台湾民法には、日本の検認のように遺言書の提出を一律に求める裁判所の手続はなく、第1212条により遺言の保管者や発見した相続人が遺言執行人に交付し、相続人に通知します。口授遺囑は死亡後3か月以内に親族会議の認定を受け(第1197条)、封緘遺囑は親族会議の場か法院公証処でなければ開けません(第1213条)。不動産は土地法第73条により相続開始の日から6か月以内に相続登記を申請し、遅れると月ごとに登記費の1倍、最大20倍の罰鍰が科されることがあります。遺言があっても、遺産税の申告は別に必要で、外国文書には提出先から翻訳や認証を求められることがあります。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。