台湾子会社とグローバル・ミニマム課税:国別実効税率15%を計算するのは日本の親会社です
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台湾子会社とグローバル・ミニマム課税:国別実効税率15%を計算するのは日本の親会社です

約8分

台湾にはグローバル・ミニマム課税の法律がないので、台湾子会社には関係がない。そう受け止められがちですが、計算を担うのは日本の親会社です。

法人税法の「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」は、所得合算ルール(IIR)を法制化したものです(国税庁「グローバル・ミニマム課税関係」)。現行の法人税法第82条の3は、所在地国が日本でない構成会社等の所得に応じて国際最低課税額を計算すると定めています。台湾子会社の数字が、日本の親会社の申告書に入るということです。

日本の親会社に適用される時期と範囲

対象は「特定多国籍企業グループ等」で、直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロ以上のグループです(法人税法第82条第4号)。IIRは令和5年法律第3号で創設され、内国法人の2024年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されています(国税庁パンフレット「改正のあらまし」、令和5年改正法附則第11条)。3月決算のグループなら、2024年4月に始まる2025年3月期が最初の年です。

続いて令和7年度改正で、軽課税所得ルール(UTPR)にあたる国際最低課税残余額に対する法人税と、国内ミニマム課税(QDMTT)にあたる国内最低課税額に対する法人税が設けられました。いずれも2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されます(国税庁パンフレット(2)、令和7年法律第13号附則第13条)。国内最低課税額は日本にある構成会社等の税ですから、台湾子会社に直接かかわるのは主にIIRです。

最終親会社等が米国にあるグループは扱いが変わります。2026年1月1日以後に開始する対象会計年度から、財務大臣が指定する国に最終親会社等があればグループ国際最低課税額を零とする適用免除の規定(第82条の3第7項、財務省「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」)が置かれ、財務省告示第89号(2026年3月31日)がアメリカ合衆国を指定しました。

2026年10月時点の台湾の公式な立場

2026年10月7日までに確認した財政部・賦税署の公的資料には、台湾がIIR、UTPR、QDMTTを導入したという内容はありません。最新の政策説明は賦税署の2023年8月30日の発表です。財政部はそこで、台湾はOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」の参加国ではないものの国際動向を把握していると述べました。短期には所得基本税額(AMT)の徴収率を15%に引き上げる業界の提案を検討し、中期には国際基準に合うQDMTTを導入するかを計画し、長期には各国の実施状況を見てグローバル・ミニマム課税の導入を評価する、という内容です。期限は設けていません。

翌年、15%の草案が出ました。財政部は2024年8月28日、114年度(2025年度)から、グローバル・ミニマム課税の適用基準に当たる多国籍企業グループの台湾の営利事業には15%、それ以外には12%の徴収率を適用する草案を予告しています。基準は原則として、前4会計年度のうち2年度の連結財務諸表上の年間収入が7.5億ユーロに達するグループです。財政部は、引き上げで増える税額がそのグループの台湾の構成員の実効税率の分子に算入され、他国にトップアップ税を納めるリスクを減らすと説明しました。

草案は草案のままです。中区国税局の2026年5月8日の発表は、115年度(2026年度)の営利事業の基本税額を「現行徴収率12%」で計算すると説明しています。草案を採用した行政院の命令も見つかりませんでした。所得基本税額条例第8条によれば、徴収率は12%以上15%以下の範囲で行政院が定めます。15%への引き上げに条例の改正は要りません。

税率20%の台湾で、実効税率が15%を下回る理由

営利事業所得税は、課税所得が12万台湾元を超えると全額に20%です(所得税法第5条第5項)。それなのに、なぜ15%を下回るのでしょうか?税額控除があるからです。産業創新条例第10条の研究開発控除は支出額の15%までをその年の法人税から差し引けますが、上限はその年の税額の30%です。上限まで使えば、税額は課税所得の14%程度になります(20%×70%の単純計算です)。

ミニマム税は下支えにとどまります。投資税額控除後の一般所得税額が基本税額を下回れば差額を納め、この差額は投資税額控除で減らせません(所得基本税額条例第4条)。現行の徴収率は12%です。GloBEの実効税率は会計上の利益と税金費用から計算し直すので、この単純計算と同じ数字にはなりません。それでも、控除で減った台湾の法人税は、実効税率の分子を小さくする方向に働きます。

サプライチェーンの中核企業向けの25%控除は、反対に下限を設けています。第10条の2は、条例が定義するその年の有効税率が一定比率以上であることを要件とし、その比率は2023年度が12%、2025年度以降は15%です。賦税署は、この要件がG20・OECDの第2の柱を考慮したものだと説明しています(2024年6月18日の発表)。控除ごとの要件は台湾子会社の研究開発・設備投資と税額控除にまとめています。

親会社は台湾を「国」単位で計算します

OECDのGloBEモデルルール第5.1条では、国別実効税率はその国にあるすべての構成会社等の調整後対象租税の合計を、その国の純GloBE所得で割って求めます。第5.2条は15%との差をトップアップ税率とし、これを超過利潤に掛けます。超過利潤は、人件費と有形資産に基づく実質ベースの所得除外額(第5.3条)を純GloBE所得から差し引いた額です。台湾の実効税率が13%なら、トップアップ税率は2ポイントです(架空の数字です)。台湾に法人が二つあれば合算します。

QDMTTができれば計算は変わります。第5.2条は、その国の適格国内ミニマム課税で納付すべき額を国別のトップアップ税から差し引くからです。財政部が2023年にQDMTTの検討を挙げた理由も、台湾が減免した税収を他国に徴収されないようにすることでした。

台湾の経理担当者に届く依頼

親会社は何を求めてくるでしょうか。出発点は台湾の法人税申告書ではありません。モデルルール第3.1条は、所得を最終親会社の連結財務諸表を作るときの構成会社等の純損益から計算し、第4.1条は、税額を財務諸表に計上した当期税金費用から計算します。会計年度も、最終親会社が連結財務諸表を作成する期間です(第10.1条)。

ここで決算期のずれが表に出ます。台湾の会計年度は、税務当局の承認を得て変更しない限り1月1日から12月31日までです(所得税法第23条)。3月決算の親会社は、4月から3月で区切った台湾子会社の純利益、法人税・ミニマム税の費用と繰延税金、使った税額控除、人件費と有形資産の額を求めてくると考えられます。決算期をそろえるかどうかは台湾子会社の法人税は5月申告・9月暫繳でも取り上げました。

期限も決まっています。国際最低課税額確定申告書は、対象会計年度終了の日の翌日から1年3月以内に提出し、最初の年は一定の場合に1年6月以内です(国税庁パンフレット「改正のあらまし」)。日本側の計算と申告の方法は、日本の税理士などに確認してください。

条文や財政部の発表がグループの計算にどうつながるかを確認したい場合は、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)に、グループの決算月と台湾の法人構成をお知らせください。

法改正なしに動きうるのは徴収率です。行政院が基準に当たるグループに15%を定めれば、財政部の説明どおり、増えた税額は日本の親会社が計算する台湾の実効税率の分子に入ります。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月7日

よくある質問

台湾にグローバル・ミニマム課税の法律がないなら、台湾子会社が追加で税金を払うことはありますか?
所得合算ルール(IIR)による「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」を納めるのは日本の親会社です。この制度のために台湾子会社が台湾で追加の税金を払うことはありませんが、台湾の国別実効税率が15%を下回れば、その差に応じて親会社の税額が生じます。2026年10月7日までに確認した台湾の公的資料では、台湾はIIR・UTPR・QDMTTを導入していません。
台湾の所得基本税額(ミニマム税)は15%に上がりましたか?
財政部は2024年8月28日、前4会計年度のうち2年度の連結財務諸表上の年間収入が7.5億ユーロに達するグループの台湾の営利事業に、114年度(2025年度)から15%を適用する草案を予告しました。しかし中区国税局の2026年5月8日の発表は、2026年度の徴収率を現行12%と説明しており、草案を採用した行政院の命令は確認できていません。所得基本税額条例第8条により、行政院は条例を改正せずに12~15%の範囲で徴収率を定めることができます。
3月決算の親会社から、暦年決算の台湾子会社にはどんな数字が求められますか?
OECDのGloBEモデルルールでは、計算の単位となる会計年度は最終親会社が連結財務諸表を作成する期間で、所得は連結財務諸表の作成に用いる純損益から、税額は財務諸表に計上した当期税金費用から出発します。そのため台湾の法人税申告書の数字ではなく、4月~3月で区切った連結パッケージ上の純利益、法人税・ミニマム税の費用と繰延税金、使った税額控除、人件費と有形資産の額が求められやすくなります。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。