台湾子会社の研究開発・設備投資と税額控除:産業創新条例の15%・5%・25%
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台湾子会社の研究開発・設備投資と税額控除:産業創新条例の15%・5%・25%

約9分

研究開発費60億台湾元。台湾の産業創新条例(產業創新條例)で控除率が最も高い研究開発控除を使うには、1年でこれだけの研究開発費を計上していることが条件の一つになります。

この水準に届かない会社にも、控除は残っています。研究開発費に対する第10条の控除と、スマート機械やAIなどへの投資に対する第10条の1の控除です。財政部も、第10条の2の要件を満たさない会社がこの二つの要件を満たせば、それぞれの控除を使えると説明しています(財政部賦税署の2024年6月18日の発表)。

三つの控除に共通するのは、その年の法人税額の30%という上限です。適用期間を定める第72条と各条文によれば、2026年10月時点の内容は次のとおりです。

条文対象控除率上限適用期間
第10条台湾で行う研究開発の支出その年に15%、または3年間で10%各年度の税額の30%2017年11月24日~2029年12月31日
第10条の1スマート機械・5G・サイバーセキュリティ・AI・省エネの新規投資引渡年度に5%、または3年間で3%30%、他の控除と合わせて50%2025年1月1日~2029年12月31日
第10条の2前瞻(先端)研究開発の支出/先端プロセス用の新規設備25%/5%(その年のみ)それぞれ30%、合わせて50%2023年1月1日~2029年12月31日

15%を一度に使うか、10%を3年に分けるか

第10条の対象は、直近3年間に環境・労働・食品安全の法令の重大な違反がない会社または有限パートナーシップ(有限合夥事業)です。支出額の15%をその年の税額から控除するか、10%をその年から3年間で控除するかを選びます。選択は確定申告書で行い、申告期間が過ぎると変更できません(研究開発控除辦法第11条)。上限計算の基になる「その年の税額」には、国税局が決定した前年度の未処分利益への加算税額も含まれます(同第12条)。

どちらが有利でしょうか。研究開発費3,000万台湾元、その年の法人税800万台湾元という装置メーカーの台湾子会社で計算してみます(架空の計算例です)。15%なら控除額は450万台湾元ですが、上限は240万台湾元です。10%を選ぶと、300万台湾元を3年に分けて使います。翌年の税額が同程度でほかの控除がなければ、1年目に240万、2年目に60万台湾元を控除できる計算です。

対象となる支出にも線引きがあります。認められるのは台湾で行う研究開発で、主管機関が認めた海外への委託・共同研究が例外です(辦法第7条)。既存の製品や工程の改良は対象外です(第4条)。政府補助金と研究開発部門の収入は支出から差し引きます(第13条)。

グループ内の取引にも条件があります。辦法第10条によれば、研究開発の成果は子会社自身が使うか、他社に製造・使用させるなら合理的なロイヤルティーその他の合理的な対価を受け取らなければなりません。子会社が研究開発と受注・販売を担い、国内外の関係会社が生産を担う形であれば、対価がなくても、合理的な利益が台湾に残っていることを移転価格文書で示し、国税局が確認すれば認められます。日本の親会社との共同研究は主管機関の個別認定を受ける必要があり、台湾国内に適当な共同研究の相手がいない理由も説明します(第8条)。

スマート機械・AI投資の5%、年20億台湾元まで

2025年5月7日公布の改正で、第10条の1にAIと省エネ・炭素削減が加わり、控除対象となる年間支出の上限が10億台湾元から20億台湾元に引き上げられました(改正の沿革、経済部の2025年4月18日の発表)。2025年から2029年までに自社で使う新規のハードウエア、ソフトウエア、技術などへ投資し、同じ課税年度の支出合計が100万台湾元以上20億台湾元以下であることが条件です。辦法は2025年11月27日に全面改正され、2025年1月1日から施行されています(辦法の沿革)。

手続上の要件もあります。一定の効果がある投資計画を主管機関が案件ごとに承認し、申請は課税年度ごとに1回です(第10条の1第8項)。発注日の翌日から2年以内に引渡しを受けなければならず、延長は1回、最長2年です(辦法第8条)。設置場所は台湾国内の自社所有または賃借の生産・営業拠点に限られます(第17条)。

では、AI検査装置を購入した子会社が、2年後にその装置を顧客へ貸し出したらどうなるでしょうか(架空の例です)。引渡しの翌日から3年以内の貸出し、転売、用途変更などがあれば、控除した税額に利息を加えて納め直します(第18条)。なお、2024年末までに旧規定で発注し、2025年以降に引き渡された設備も対象ですが、その分の上限は10億台湾元です(第9条第2項)。

第10条の2:研究開発費、研究開発比率、実効税率

第10条の2は、台湾で技術革新を行い、国際サプライチェーンで中核的な地位にある会社のための控除です。中核的な地位とは、製品やサービスが二つ以上の国・地域にまたがるサプライチェーンで使われ、そのいずれかの段階で顕著な影響力を持つことをいいます(前瞻研究開発控除辦法第2条)。同第3条の要件は、すべて満たさなければなりません。

  • 同一課税年度の研究開発費が60億台湾元以上
  • 純営業収入に対する研究開発費の比率が6%以上(いずれも会計師が監査した個別財務諸表の金額による)
  • その年の実効税率が、2023年度は12%以上、2025年度以降は15%以上
  • 直近3年間に環境・労働・食品安全の法令の重大な違反がないこと

同じ年に先端プロセス用の新規の機械・設備を100億台湾元以上購入すれば、その5%も控除できます。引換えに、25%控除の承認を受けた年は研究開発費の全額が第10条の対象外になり、5%の設備控除を受けた年は機械・設備の支出全額が第10条の1の対象外になります(第10条の2第3項)。このため申請時に、要件を満たさないと判断された場合に第10条や第10条の1への切替えに同意するかを表明しておきます。表明がなければ切り替えられません(第19条)。

初年度の2023年度に申請したのは4社でした(賦税署の2024年6月18日の発表)。

申請は2段階、期限は確定申告に連動します

最初の段階は主管機関の審査です。研究開発控除では、確定申告期間が始まる3か月前から申告期限までに審査意見を申請します(辦法第14条)。経済部産業発展署(產業發展署)は、暦年決算の会社なら2月から5月までで、期限後の申請は受理しないと案内しています(申請注意事項)。申請書の附件1から3は紙と電子ファイルの両方で提出します(辦法説明資料)。

スマート機械・AIなどの投資控除は、申告期間開始の4か月前から期限まで、経済部のオンラインシステムでのみ受け付けます。期限後の登録も、紙での申請もできません(辦法第12条、第14条)。第10条の2は3か月前から期限までです(前瞻研究開発控除辦法第13条)。親会社が3月決算でも、窓口を決めるのは台湾子会社自身の申告期間です。

次の段階が確定申告です。所定の様式を申告書に入れないまま申告期間が終わると、投資控除と第10条の2の控除は適用されません(投資控除辦法第16条、前瞻研究開発控除辦法第17条)。研究開発控除の記載漏れは申告期限までに補正でき、補正しなければ国税局が受理しないことがあります(研究開発控除辦法第15条)。主管機関の審査意見は、申告期限から7か月以内に国税局へ送られます。

未処分利益の5%と設備投資

第23条の3は、未処分利益に対する5%の加算税(所得税法第66条の9)を軽くする制度です。ある年の利益を翌年から3年以内に自社の生産・営業用の建物、設備、技術に投資し、合計が100万台湾元以上になれば、その額を未処分利益から差し引けます(第23条の3、実質投資辦法第3条)。土地は対象外です(第2条)。未処分利益の申告後に投資を終えた場合は、完了日から1年以内に更正を申請して還付を受けます。未処分利益の申告期間が終わった翌日(還付を申請した場合はその申請の翌日)から3年以内に転売、貸出し、用途変更をすると、減った税額に利息を付けて納めます(第6条)。加算税の申告時期は台湾子会社の法人税の年間スケジュールで取り上げました。

ミニマム税と支店の扱い

控除額が大きい年は、ミニマム税(所得基本税額)も計算に入れます。投資税額控除後の一般所得税額が基本税額を下回ると差額を納め、この差額は投資税額控除で減らせません(所得基本税額条例第4条、第6条)。2026年度の基本税額は、基本所得額から60万台湾元を差し引いた額に税率を掛けて求めます。法定の範囲は12~15%で(第8条)、中区国税局の2026年5月8日の発表では現行の徴収率は12%です。

株主が日本企業でも控除は使えるのでしょうか。条例と辦法に株主の国籍による制限はなく、辦法が求める形式は「会社法に基づいて設立された会社」です(研究開発控除辦法第3条、投資控除辦法第7条)。

支店は別途確認が要ります。台湾の会社法は外国の法律に基づいて設立された会社を外国会社と定義し、外国会社は支店登記をしなければ台湾で営業できません(会社法第4条、第371条)。支店で研究開発をしている場合は、申請前に所轄の国税局と主管機関に対象となるかを確認してください。進出形態の比較は半導体部品企業の台湾進出にまとめています。台湾で税額が減ったことが日本側の外国税額控除などにどう響くかは、日本の税理士にご確認ください。

研究開発の契約形態や進出形態が控除の要件に合うかを検討したい場合は、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)に、決算月、年度ごとの研究開発費、設備の発注・引渡しの予定をお知らせください。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日

よくある質問

日本の親会社が100%出資する台湾子会社も控除を受けられますか?
産業創新条例と下位の辦法(規則)は、株主の国籍で対象を分けていません。研究開発控除の辦法が求めるのは、台湾の会社法に基づいて設立された会社(または有限パートナーシップ)であることと、直近3年間に環境・労働・食品安全の法令の重大な違反がないことです。外国会社の台湾支店が対象になるかは現行の公式解釈を確認できていないため、支店の場合は申請前に所轄の国税局と主管機関に確認してください。
3月決算の親会社のスケジュールに合わせて準備すればよいですか?
申請の窓口は台湾子会社自身の法人税確定申告期間で決まります。研究開発控除は申告期間が始まる3か月前から申告期限までで、暦年決算の会社なら産業発展署の案内では2月から5月までです。スマート機械・AIなどの投資控除は申告期間開始の4か月前から期限まで、経済部のオンラインシステムでのみ申請でき、期限後の登録や紙での申請は受け付けられません。
ミニマム税(所得基本税額)で控除の効果が減ることはありますか?
投資税額控除を差し引いた後の一般所得税額が基本税額を下回ると、その差額を追加で納めます。この差額は投資税額控除で減らせません(所得基本税額条例第4条)。2026年度の基本税額は、基本所得額から60万台湾元を差し引いた額に、2026年5月時点で12%とされる徴収率を掛けて計算します。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。