台湾子会社の日本人出向者と現地採用者の給与:源泉徴収と労工保険・全民健康保険
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台湾子会社の日本人出向者と現地採用者の給与:源泉徴収と労工保険・全民健康保険

約9分

4月1日付の人事異動で、名古屋の本社から台中の子会社へ技術者が3年の予定で出向しました。給与はこれまでどおり日本の本社が円で支払っています。同じ月、子会社は日本人の営業担当者を現地で採用し、台湾元で給与を払い始めました(架空の例です)。

親会社の年度は4月に始まります。台湾の個人の所得税は、1月から12月までの暦年が一つの課税年度です。二人の給与にかかる台湾の税金は、この暦年の中で台湾に何日いたかと、誰が給与を払うかで決まります。

暦年で数える183日と90日

台湾に住所のない外国人は、一つの課税年度に台湾に合計183日以上滞在すると居住者になります(所得税法第7条)。日数はパスポートの出入国スタンプか、内政部移民署の入出国日期証明書で数えます。入国した日は数えず、出国した日は数えます。一年に何度出入りしても合計します(財政部税務入口網「居留日数の計算」)。

給与の出どころも問題になります。所得税法第8条第3号は、台湾で提供した役務の報酬を台湾源泉の所得としています。日本の本社が日本で払った給与でも、台湾で働いた分は台湾の所得です。例外は、その年の台湾滞在が合計90日以下の非居住者が、台湾国外の雇用主から受け取る報酬です。手当、賞与、各種の補助も給与に含まれます(第14条)。

財政部の外国人向けの案内は、次の三つに分けています。境目は90日と183日です。

その年の台湾滞在台湾の会社が払う給与国外の雇用主が払う台湾勤務分の報酬
90日以下非居住者の税率で源泉徴収課税されない
90日超183日未満非居住者の税率で源泉徴収本人が出国前に申告・納税
183日以上(居住者)居住者の方法で源泉徴収翌年5月の確定申告に合算

居住者判定の細部は年の途中で台湾に来た・帰るときの所得税で取り上げました。

子会社が払う給与の源泉徴収

現地採用の営業担当者のように子会社が給与を払う場合、源泉徴収義務者は子会社です。居住者の毎月の給与は、源泉徴収税額表による方法と、月の支給総額の5%を差し引く方法のどちらかを本人が選びます(各類所得扣繳率標準第2条)。夏と冬の賞与のように毎月払いでない給与は、1回の支給額が起扣標準(2026年は90,501台湾元)に達すると5%を差し引き、翌月10日までに国庫に納めます。高雄国税局が2026年1月28日の案内で示した扱いです。

非居住者の給与は18%です。同標準の第3条により、月の支給総額が行政院の定める基本工資の1.5倍以下なら6%になります。2026年1月1日から基本工資は月29,500台湾元となり、6%で済む上限は44,250台湾元に上がりました(高雄国税局の2026年3月26日の案内)。労働部は同じ金額を「最低工資」と呼んでいます。最低工資法第18条は、他の法令にある基本工資の規定に最低工資の規定を適用するとしています。

着任した時点では、その年に183日を超えるかどうかは分かりません。どう源泉徴収すればよいのでしょうか?財政部の税務Q&A 1514によると、雇用契約やビザ、居留証の期間から同じ年に183日以上滞在すると見込まれれば、最初から居住者の税率で源泉徴収できます。出国して戻らず、結果として183日に届かなければ、非居住者の税率で計算し直して差額を追加で徴収します。記載された期間が183日に届かないときや証明がないときは、非居住者の税率です。

納付期限は所得税法第92条にあります。居住者分は翌月10日までに納め、1年分の扣繳憑單(源泉徴収票にあたる書類)は翌年1月末までに税務機関へ提出し、2月10日までに本人に交付します。2025年分は1月31日が土曜日だったため、提出期限は2026年2月2日でした(賦税署の2026年1月15日の案内)。非居住者分は、源泉徴収した日から10日以内に納付と提出を済ませなければなりません。就業許可は税務とは別の手続です(就業服務法第43条)。

日本の本社が払う給与

出向者が日本の本社から受け取る給与は、台湾では源泉徴収の対象外の所得です。申告するのは本人です。財政部の案内は、居住者であればこれを確定申告に含めるよう求めています。4月に着任した技術者は2026年に183日を超えるので、2027年5月1日から31日までの間に、台湾で得たほかの所得と合わせて申告します(所得税法第71条)。

90日超183日未満の滞在者は、出国前に申告・納税します。その年の申告期間にまだ台湾にいれば、申告期間内です。税率は同じ種類の所得の源泉徴収税率によります(所得税法施行細則第60条)。

申告を怠ればどうなるでしょうか?中区国税局は2026年5月8日の案内で、課税所得が見つかれば税額を追徴し、漏れた税額の3倍以下の過料(罰鍰)を科すと説明しています。居住者が年の途中で台湾の住所・居所を引き払って出国するときは、出国前にその年の所得を申告・納税しなければなりません。配偶者が台湾の居住者として残る場合は、配偶者が合わせて申告します(第71条の1第2項)。

2026年分の金額は、財政部が2025年11月27日に公告しました。免税額は1人101,000台湾元、給与所得特別控除は227,000台湾元です。標準控除は136,000台湾元で、配偶者がいれば272,000台湾元になります。税率は5%から40%までの5段階で、40%は課税所得5,190,001台湾元以上にかかります。

日台民間租税取決めの183日

出向期間の短い人や出張の多い人には、日台民間租税取決め第15条第2項が関わります。日本側の公益財団法人日本台湾交流協会(締結時は公益財団法人交流協会)と、台湾側の台湾日本関係協会(同じく亜東関係協会)の間の民間の取決めで、国税庁は日本国が締結した条約・協定ではないと説明しています(国税庁の案内)。

台湾勤務分の報酬が日本でだけ課税されるのは、その暦年に開始または終了するどの12か月の期間をとっても台湾滞在が183日を超えず、台湾の居住者でない雇用主が(またはその雇用主に代わって)支払い、しかも雇用主が台湾に持つ恒久的施設や固定的施設がその報酬を負担しない場合に限られます。三つともそろう必要があります(取決めの中国語訳本、英文)。国内法の183日は暦年ごとに数えるので、年をまたぐ12か月で数える取決めとは結果が食い違うことがあります。台湾側では2017年分から適用されています(財政部の2016年6月15日の発表)。

免除は自動では受けられません。適用所得稅協定查核準則第26条により、申告の際に日本の税務当局が発行した居住者証明、パスポート、雇用契約などを添え、支払者と金額、台湾の恒久的施設が負担していないことを示す資料を出します。出向とPEの関係は台湾で働く半導体技術者の税務で扱いました。

労工保険・就業保険・労工退職金・全民健康保険

外国籍の社員も労工保険に入ります。労工保険条例第6条は、5人以上を雇用する会社の15歳以上65歳以下の従業員を加入対象とし、在職中の外国籍の従業員を含めています。労働部によれば、2026年の保険料率は就業保険の1%を含めて12.5%です(労働部FAQ)。普通事故の保険料は会社70%、本人20%、政府10%の割合で負担します(第15条)。

対象が狭いのは就業保険です。就業保険法第5条が認める外国人は、台湾に戸籍のある国民と結婚し、居留を許可されて台湾で働く人です。2026年1月1日からは、永住許可を受けた外国人専門人材が加わりました(外国専門人材延攬及雇用法第25条)。

2026年に大きく変わったのは労工退職金です。労工退職金条例第7条が対象とする外国人は、国民の配偶者や永住許可を受けた人などです。さらに外国専門人材延攬及雇用法第24条により、2026年1月1日から、専門的な仕事に就く外国専門人材と外国特定専門人材は永住許可の有無を問わず新制度の対象になりました。会社は毎月の賃金の6%以上を、労工保険局の個人口座に積み立てます(労工退職金条例第14条)。改正前から同じ会社に勤めていた人は、2026年6月30日までに書面で旧制度の継続を選ぶことができました(労工保険局の2025年12月29日の案内)。

健康保険で基準になるのは居留証です。全民健康保険法第9条は、居留証明文書を持つ人のうち、台湾に6か月居留した人と、一定の雇用主に雇われている人に加入を義務づけています。居留証を持つ社員は6か月待たずに加入するわけです。2026年1月1日からは、専門的な仕事に雇われた外国専門人材の配偶者や未成年の子なども、居留証明文書があれば6か月の制限なく加入します(外国専門人材延攬及雇用法第23条)。

一般保険料率は2026年で5.17%、補充保険料率は2.11%です(中央健康保険署の2026年の資料)。一般保険料は本人30%、会社60%、政府10%で負担します(全民健康保険法第27条)。賞与の年間累計が月の投保金額の4倍を超えると、超えた部分の2.11%を会社が支給時に差し引きます(第31条)。会社自身も、毎月の給与支払総額が従業員の投保金額の合計を上回る差額に2.11%を負担します(第34条)。

日本の本社籍のままの出向者と日本側の社会保険

日本の本社とだけ雇用契約を結び、本社からだけ給与を受ける出向者について、台湾の子会社がこれらの保険の加入義務を負うかどうかは、台湾で誰が雇用主にあたるかによります。出向契約と、実際の指揮命令や給与負担の形を見て、個別に検討することになります。

年金の二重加入についても見ておきます。日本年金機構が公表する社会保障協定の発効状況には24か国が並び、台湾は含まれていません。同機構は、二重加入の防止と加入期間の通算はこれらの国との間でだけ可能だと説明しています(日本年金機構 "Status of Agreements in Force")。出向中の厚生年金・健康保険や住民税の扱いは、日本の年金事務所や税理士にご確認ください。

日本と台湾のどちらで出向者の給与を払うか検討している場合は、昊鼎国際法律事務所へメール(wei@hoveringlaw.com.tw)で、出向契約と滞在予定をお知らせください。

4月1日に着任した技術者は、一度も帰国しなければ10月1日に183日目を迎えます。休暇で帰国すれば、その分だけ後ろにずれます。合計が183日に達すれば2026年は居住者となり、日本の本社が払った給与のうち台湾で働いた分も2027年5月の申告書に入ります。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日

よくある質問

日本の本社が日本で払っている出向者の給与にも、台湾の所得税がかかりますか?
台湾で働いた対価であれば、原則として台湾源泉の所得です(所得税法第8条第3号)。国内法上の例外は、その年の台湾滞在が合計90日以下の非居住者が国外の雇用主から受ける報酬だけです。日本払いの給与は台湾の源泉徴収の対象外なので、本人が申告します。183日以上滞在した居住者は翌年5月の確定申告に含め、90日超183日未満なら出国前に申告・納税します。日台民間租税取決めの三つの条件をすべて満たす場合は、申告の際に居住者証明などを添えて免除を求めることができます。
4月に着任した出向者は、いつ台湾で確定申告をしますか?
台湾の課税年度は1月から12月の暦年です。4月1日に着任してそのまま年末まで台湾にいれば、その年の滞在は183日以上となり居住者です。2026年分は2027年5月1日から31日までに申告し、日本の本社が払った給与のうち台湾勤務分も含めます。年の途中で台湾の住所・居所を引き払って出国する場合は、出国前に申告・納税します。
日本人社員にも労工退職金の6%を積み立てる必要がありますか?
2026年1月1日から、専門的な仕事に就く外国専門人材と外国特定専門人材は、永住許可の有無を問わず労工退職金の新制度の対象で、会社は毎月の賃金の6%以上を積み立てなければなりません。改正前から同じ会社に勤めていた人は、2026年6月30日までに書面で旧制度の継続を選ぶことができました。それ以外の外国人では、台湾の国民の配偶者として居留許可を得て働く人や、永住許可を得て働く人などが対象です。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。