日本の勤務先に籍を置いたまま台湾で働き始めた。給与も引き続き日本の口座に振り込まれている。この場合、振込先だけを見ても台湾の所得税は判断できません。帰任を控えている人も、給与から税が引かれていたから出国前の手続きはない、と決めつけないほうがよいでしょう。
まず課税年度ごとの出入国日、実際の就労場所、雇用主と給与の支払者を整理します。ここでいう「居住者」は、査証や外国人居留証(ARC)の名称ではなく、台湾の所得税法上の区分です。
183日未満なら必ず非居住者ですか?
所得税法第7条には、居住者となる道筋が二つあります。一つは台湾に住所があり、台湾に常時居住する人。もう一つは台湾に住所がなく、一課税年度に台湾での滞在日数が合計183日以上となる人です。このどちらにも当たらない人が同法上の非居住者です。183日に達しないというだけで、住所と常時居住に関する一つ目の条件まで否定できるわけではありません。
財政部の第7条に関する説明は、台湾の戸籍や、場合によっては生活・経済の中心などを踏まえて住所と常時居住を判断する考え方を示しています。台湾に戸籍のない日本人は、住所がない人の滞在日数から検討することが多いでしょう。ただし個別の事情を省いてよいわけではありません。ARCは入出国・居留の資格を示す文書であり、第7条の判定そのものではありません。長期滞在後の在留資格は永久居留の案内で扱います。
何度も出入国した年は、日数をどう数えますか?
財政部臺北國稅局の滞在日数の説明では、旅券の出入国記録または内政部移民署の「入出國日期證明書」を使います。入国当日は数えず出国当日は数え、同じ課税年度の複数回の滞在を合計します。同局の申告時期に関するFAQが示す課税年度は1月1日から12月31日です。
年をまたいで滞在したら、暦年ごとに分けて計算します。年内に一度出国し戻ってきた場合も、各滞在を足します。90日や183日の境目にいるなら、航空券の予約日ではなく公式の出入国記録を確認してください。
国外の雇用主から受ける給与も台湾源泉所得ですか?
所得税法第2条は個人の台湾源泉所得に関する課税を定め、非居住者については原則として源泉徴収による扱いを置いています。第8条第3号では、台湾で提供した労務の報酬が台湾源泉所得です。ただし、非居住者が一課税年度に台湾に滞在する日数が合計90日以下で、台湾外の雇用主から受け取る当該報酬は例外とされています。
二つの条件を一緒に見ます。日本の口座に入金されたことは、雇用主の所在地や就労場所を証明しません。滞在が90日を超えた非居住者については、この例外は使えません。臺北國稅局の国外雇用主からの報酬に関するFAQは報酬額を示す資料にも触れています。日本で働いた日と台湾で働いた日が混じる場合は、勤務記録と給与明細を残して事実関係を分けてください。
居住者はいつ申告し、途中で帰国するときはどうしますか?
通常の年次申告は第71条により、前年分を翌年の5月1日から31日までに行います。居住者の年間所得がその年の免税額と標準控除額の合計以下なら申告を省ける場合がありますが、源泉徴収税額の還付を求める場合などは別です。金額は該当年度の公式案内を確認してください。
居住者が年の途中で台湾の住所または居所を廃止して出国する場合、第71条の1はその年の所得について出国前の確定申告を定めています。台湾に引き続き住む居住者の配偶者がいる場合の例外も条文にあります。臺北國稅局のFAQも年の途中で帰国する外国人居住者への案内を載せています。一時的な出張と台湾での生活を終えて帰国することは違うため、出国の予定を正確に伝えましょう。
非居住者なら源泉徴収だけで終わりますか?
第73条によれば、非居住者の法定の源泉徴収対象所得は支払時に徴収され、第71条の年次申告は適用されません。一方、源泉徴収の対象外にある台湾源泉所得があり、その年度の申告期間が始まる前に出国する場合は、出国前の申告・納付が必要です。申告期間中も台湾にいるなら、その期間内の申告になります。財政部の申告省略に関する説明は、その課税年度の台湾滞在が90日を超える人が、台湾で働いて国外雇用主から受ける報酬を例示しています。
非居住者という言葉を「申告不要」と読み替えることはできません。臺北國稅局は実務上、90日以下、91~182日、183日以上に分けて申告時期を説明しますが、この区分も第7条の二つの法定経路を消すものではありません。
相談前に何を用意するとよいですか?
年度ごとの出入国日と台湾の住所、雇用主・支払者、仕事をした場所、給与明細、台湾の源泉徴収票を一枚の時系列にまとめてください。台湾の関連会社が給与を負担している場合も記しておきます。日本側の課税や外国税額控除などは、日本側の適用法と事情を別に確認する必要があります。
台湾側の検討は昊鼎国際法律事務所の弁護士・曾雋崴に相談できます。最初のメールには時系列、出国予定日、確認したい所得を簡潔に書き、wei@hoveringlaw.com.twへ送ってください。所在地は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2です。この記事は一般的な案内です。申告前に本人の資料をもとに所轄の国税局へ確認してください。
参照した公式資料
- 所得税法第2条、第7条、第8条、第71条、第71条の1、第73条。
- 財政部:所得税上の居住者判定。
- 財政部:外国人の申告省略。
- 臺北國稅局:滞在日数の計算。
- 臺北國稅局:申告時期。
- 臺北國稅局:国外雇用主からの報酬。
確認日:2026年9月29日
よくある質問
- 居留証があれば台湾の所得税上も居住者ですか?
- 居留証だけでは決まりません。所得税法第7条は、台湾に住所があり常時居住する人と、住所はないが一課税年度に合計183日以上滞在する人を分けて規定しています。
- 日本の会社から日本の口座へ入る給与は台湾で課税されませんか?
- 口座の所在地だけでは判断できません。台湾で提供した労務の報酬は原則として台湾源泉所得です。非居住者で、同年度の台湾滞在が90日以下、かつ台湾外の雇用主から受ける報酬なら、第8条第3号の例外を確認します。
- 帰国前に申告が必要ですか?
- 非居住者に源泉徴収の対象外となる台湾源泉所得があり、年間申告期間の開始前に出国する場合は、第73条の出国前申告が問題になります。台湾の住所・居所を廃止して出国する居住者には第71条の1も適用され得ます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



