「其他營利事業,未與中華民國境外之關係企業(包括總機構及分支機構)交易者」。台湾の財政部が2008年11月6日の令(台財稅字第09704555160號)で定めた、移転価格報告書をほかの文書で代替できる基準の一節です。年間の収入総額が3億台湾元以上5億台湾元未満の会社がこの代替を使うには、台湾域外の関係企業(本店・支店を含みます)と取引していないことが条件の一つです。日本の親会社から製品を仕入れる台湾子会社は、ここで外れます。
移転価格の文書は三つあります。ローカルファイルにあたる「移轉訂價報告」、マスターファイルにあたる「集團主檔報告」、そして国別報告書(國別報告)です。日本企業の台湾子会社がまず向き合うのはローカルファイルで、残りの二つは規模の大きいグループの話です。
持株20%で関係企業になります
根拠は所得税法第43条の1です。国内外の他の営利事業と従属関係にある会社や、直接・間接に所有・支配されている会社が、通常の取引条件に合わない取引で納税義務を免れたり減らしたりすると、税務機関は財政部の承認を得て、通常の条件に引き直して所得を計算できます。細かなルールは、同法第80条第5項に基づいて財政部が定めた「營利事業所得稅不合常規移轉訂價查核準則」(以下「査核準則」)にあります(第1条)。現行は2020年12月28日改正の版です。
関係の有無は査核準則第3条で判断します。議決権のある株式や資本を直接・間接に20%以上持つ場合、筆頭株主として10%以上を持つ場合、取締役の半数以上が同じ場合などが並んでいます。支店も対象です。同条第7号が外国の本店とその台湾支店の関係を挙げているため、本店との取引はそのまま関連取引になります。子会社と支店の違いは台湾進出:子会社と支店の違いで取り上げました。
ローカルファイルは申告時に用意し、求められたら1か月
査核準則第22条第1項は、関連取引(受控交易)を行う営利事業に、その年度の確定申告をする時点で移転価格報告書を「備妥」、つまり用意しておくよう求めています。申告書に添付して出す書類ではありません。出すのは、求められたときです。国税局から書面の調査通知が届くと、その日から1か月以内に提示します。特別な事情があれば期間内に延長を申請でき、延長は1回、最長1か月です(同条第4項)。審査の途中で裏付け資料を求められたときも、1か月以内に出します。
提示する資料には目次と索引を付け、外国語の部分には中国語訳を付けます。英語版は、税務機関の承認があれば訳なしで提示できます(同条第5項)。日本語の資料なら翻訳の時間も見込んでおく必要があります。
ほかの文書で代替できる会社
査核準則第22条第3項は、収入総額と関連取引の金額が財政部の基準以下の会社について、価格が通常の取引条件に合うことを示すほかの文書(替代文據)で移転価格報告書に代えることを認めています。基準を定めるのは冒頭の2008年の令で、2008年度の申告から適用されています。財政部賦税署の案内ページ(2026年5月26日更新)も、この令とその改正令を現行の基準として掲げています。
| 区分 | 年間の基準(台湾元) |
|---|---|
| 1 | 収入総額(営業収入純額と営業外収入の合計)が3億未満 |
| 2 | 収入総額が3億以上5億未満で、租税減免も欠損金控除も受けておらず(少額の例外あり)、かつ台湾域外の関係企業と取引していない |
| 3 | 1にも2にも当たらないが、関連取引の年間総額が2億未満 |
日本の親会社と取引のある子会社が使えるのは、実際には1か3です。3の総額は、取引の種類を問わず、収入と支出を絶対値で足し上げて計算します(同令第3点)。事前確認(APA)を結んだ取引の金額は、この計算から除きます(査核準則第22条第3項)。
では、代替文書には何を用意すればよいのでしょうか。同令第4点は、まず非関連者との内部比較取引の資料を挙げています。それがなければ、公開入札の資料、鑑定評価書、取引相手である国外関係企業が所在地国の移転価格法令に従って作成した移転価格報告書などのいずれかで足ります。日本の親会社の報告書もこれに当たります。台湾の規定と明らかに合わない部分は修正しなければなりません。
確定申告書で開示する関連取引
確定申告書には、査核準則第21条により関係企業・関係者の情報、支配関係と持株構成の図、関連取引の内容を開示します。多国籍企業グループの一員なら、マスターファイルを提出する台湾の構成員、最終親会社、国別報告書を提出する構成員や代理で提出する構成員も記載します。開示の範囲は財政部の2007年1月9日の令が定めています(2006年度の申告から)。収入総額が3,000万台湾元以上で台湾域外に関係者がいる会社は、一つの関係企業との年間取引が1,200万台湾元以上、またはすべての関係企業との合計が5,000万台湾元以上であれば開示の対象です。台北国税局が掲載する2025年度分の申告書様式にも、「關係人交易明細表及跨國企業集團成員揭露資料」が独立した書式として入っています。
マスターファイルと国別報告書(2017年度分から)
マスターファイルは査核準則第21条の1が定めています。確定申告の時点で用意し、会計年度終了後1年以内に所轄の税務機関へ提出します。台湾に構成員が2社以上あれば、そのうち1社を指定して提出できます。財政部の2019年12月10日の令(2017年度の申告から適用)は、収入総額が30億台湾元未満、または国外の構成員との関連取引総額が15億台湾元未満の会社を免除しています。基準は二つです。両方に達して初めて提出義務が生じます。英語で作成した場合は、中国語訳を求める書面通知が届いてから1か月以内に訳を出します。
国別報告書の扱いは、最終親会社の所在地で分かれます。台湾の会社が最終親会社であれば、前年度の連結収入総額が270億台湾元(2015年1月のレートで7億5,000万ユーロに相当する額)以上のグループで提出義務を負います(第22条の1、上記2019年の令第2点)。
日本の親会社が最終親会社のグループはどうでしょうか。台湾子会社が台湾で提出するのは、同条第2項の三つの場合に限られます。最終親会社の居住地国の法令で国別報告書の提出が不要な場合、提出期限までにその国と台湾との間で国別報告書の情報交換ができる協定が発効していない場合、協定はあっても台湾の税務機関が実際に入手できない場合です。いずれかに当たっても、台湾子会社自身がマスターファイルの免除基準を満たしていれば提出は不要です(同令第2点)。
免除で話が終わるとは限りません。同令第4点によると、グループがほかの国の規定でマスターファイルや国別報告書を提出しなければならないときは、台湾の税務機関も調査で必要があれば、書面でその提示を求められます。二つの報告書は財政部の電子送交システムで、年間を通じてオンライン提出ができます(財政部高雄国税局の2019年11月4日の発表)。日本の親会社側でどの文書が必要になるかは日本の制度で決まりますので、日本の税理士にご確認ください。
文書を出せなかったとき
ローカルファイルも代替文書も提示できない会社については、税務機関が自ら入手した資料で通常の取引結果を決めます。資料もなければ、関係する売上・原価・費用の部分について、同業利潤標準によって所得を決めることができます(査核準則第33条)。査核準則に従って出すべき所得関係の資料を出さないと、同条第3号により稅捐稽徵法第46条の過料(罰鍰)を科されることがあります。金額は3,000台湾元以上30,000台湾元以下です。財政部の過料の参考表(稅務違章案件裁罰金額或倍數參考表、2026年5月6日改正)は、1回目3,000台湾元、続けて拒んだ2回目9,000台湾元、3回目以降は毎回30,000台湾元としています。
調整後の過料は、税額に連動します。査核準則第34条は、通常の取引結果に基づかない申告で納税額が減り、移転価格の調整で所得が増額された場合に、次のいずれかに当たると所得税法第110条を適用するとしています。
- 申告価格が、税務機関の決めた通常の取引価格の2倍以上か50%以下
- 調整で増えた所得が、決定所得の10%以上で、かつ営業収入純額の3%以上
- 移転価格報告書を提示せず、ほかの文書でも価格が通常の取引結果に合うことを示せない
- 申告書や移転価格文書で開示しなかった関連取引について、調整で増えた所得が決定所得の5%以上で、かつ営業収入純額の1.5%以上
所得税法第110条第1項は、確定申告をしたうえで課税所得の申告漏れや過少申告があった場合、過少申告税額の2倍以下の過料を科すと定めています。参考表は営利事業所得税について、過少申告税額が10万台湾元以下なら0.5倍、10万台湾元超なら0.8倍、故意と認められれば1倍を目安にしています。移転価格だけを扱う欄はありません。
事前確認(APA)
申請できる会社の条件は査核準則第23条にあります。対象取引の総額が5億台湾元以上、または年間の取引額が2億台湾元以上で、過去3年度に重大な脱税がなく、必要書類と移転価格報告書がそろっていることです。申請は、対象取引にかかる最初の会計年度が終わる前に行います。その年度末の3か月前までなら、予備会議を書面で申し込めます。税務機関の審査は書類を受け取ってから1年以内が原則で、6か月ずつ2回まで延びることがあります(第26条)。適用期間は申請年度から3~5年(第27条)、延長は5年以内です(第32条)。二国間の事前確認を望むなら、適用される所得税協定に基づく相互協議を別に申請します(第23条第7項)。
台湾子会社の収入総額や国外関連取引の総額が、上のどの基準に当たるのか判断がつかないときは、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)に直近年度の数字をお送りいただいても構いません。
台湾子会社が暦年決算なら、2025年度分の確定申告は2026年5月1日から31日まででした(所得税法第71条)。ローカルファイルはその時点で用意されているはずのものです。マスターファイルや国別報告書の提出義務がある会社なら、2025年度分の期限は2026年12月31日です。
参考にした公的資料
- 台湾 所得税法(所得稅法、2026年9月11日最終改正)第43条の1、第71条、第80条、第110条
- 營利事業所得稅不合常規移轉訂價查核準則(2020年12月28日最終改正)第1条、第3条、第21条、第21条の1、第22条、第22条の1、第23条、第26条、第27条、第32条、第33条、第34条
- 稅捐稽徵法(2021年12月17日最終改正)第46条
- 財政部の令:ローカルファイルの代替基準(2008年11月6日、台財稅字第09704555160號)、マスターファイル・国別報告書の免除基準(2019年12月10日、台財稅字第10804651540號)、関連取引の開示範囲(2007年1月9日、台財稅字第09604503530號)
- 財政部 稅務違章案件裁罰金額或倍數參考表(2026年5月6日改正。所得税法・稅捐稽徵法の附表)
- 財政部賦税署 移轉訂價報告避風港標準の案内(2026年5月26日更新)
- 財政部高雄国税局の発表(2019年11月4日)、台北国税局 2025年度分の営利事業所得税確定申告書様式(2026年2月9日更新)
確認日:2026年10月6日
よくある質問
- 日本の親会社が作った移転価格の資料を、台湾でそのまま提示できますか?
- 査核準則第22条第5項により、提示する資料が外国語であれば中国語訳を付けます。英語版は税務機関の承認があれば訳なしで提示できます。なお、収入総額などが財政部の基準以下の会社は、取引相手の国外関係企業が所在地国の移転価格法令に従って作成した報告書を、ローカルファイルに代わる文書として使える場合があります。台湾の規定と明らかに合わない部分は修正が必要です。
- 日本の親会社が国別報告書を出していれば、台湾子会社は何もしなくてよいですか?
- 最終親会社が台湾の外にある場合、台湾子会社が台湾で国別報告書を提出するのは査核準則第22条の1第2項の三つの場合に限られます。ただし、確定申告書では最終親会社や国別報告書を提出する構成員などを開示します(同準則第21条)。日本側の義務は日本の税理士にご確認ください。
- ローカルファイルがないと、どのような不利益がありますか?
- 税務機関は自ら入手した資料で通常の取引結果を決め、資料がなければ同業利潤標準で所得を決めることができます。所得に関係する資料を出さなければ稅捐稽徵法第46条の3,000~30,000台湾元の過料(罰鍰)の対象になり得ます。移転価格の調整で所得が増え、報告書も他の証明文書も出せなかった場合は、査核準則第34条により所得税法第110条(過少申告税額の2倍以下の過料)が適用されます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



