TSMCなどの台湾上場株や、0050などの現地ETFを直接保有する場合、税金は台湾と日本の両方にまたがります。台湾で売却時にかかる税金と配当への源泉徴収を押さえたうえで、日本の居住者として申告する金額も計算することになります。
楽天証券は、2026年12月からTSMCなど約50銘柄の台湾株式(現物取引)の取扱いを始める予定と発表しています(楽天証券のお知らせ)。この発表は商品の案内であり、税法の根拠にはなりません。
前提は、日本の居住者が台湾上場の証券を直接持ち、台湾では非居住者にあたる場合です。米国など台湾以外の市場に上場する台湾関連の商品や預託証券は、仕組みが異なる場合があります。台湾に長く滞在したことがある方は、先に台湾の所得税上の居住者の判断も確かめる必要があります。日本での個別の申告については、税理士や税務署に確かめるのがよいでしょう。
台湾の証券口座と名義
外国人投資家には、台湾証券取引所への登録が求められます。根拠となるのは、台湾の「華僑及外國人投資證券管理辦法」第10条です。台湾証券取引所の案内によると、投資家の登録番号を取得してから、現地の証券会社で取引口座を開きます。
登録の窓口は、投資家がどこにいるかによって異なります。台湾にいる外国人は現地の証券会社を通じて登録し、海外にいる外国人は台湾内の代理人または代表者を通じて登録します。口座開設に必要な本人確認や居住関係の書類、口座名義については、証券会社への確認が必要です。
日本の証券会社のアプリで台湾株を売買できても、台湾に本人名義の口座が開かれているとは限りません。投資家登録の書類、口座約款、取引履歴、配当明細を保管しておけば、後で誰にいくら支払われたかをたどれます。
台湾では売却益に所得税がなくても、証券取引税はかかる
台湾の証券取引税条例に基づく証券取引税は、利益ではなく売却金額にかかります。一般的な株式を売却する際の税率は0.3%です(台湾財政部の株式の税率案内)。該当する投資信託の受益証券については、0.1%とされています(受益証券の税率案内)。
0050などのETFは、法的な分類と特別な取引規定の有無を見て、税率を当てはめます。証券取引税を負担するのは売る側です(財政部の案内)。
これに対し、台湾の所得税法第4条の1では、証券取引による所得に対する台湾の所得税の課税が停止されています。同時に、証券取引で生じた損失も課税所得から差し引けないと定められています。台湾では売却益に所得税がかからなくても、売却そのものには証券取引税がかかります。
だからといって、日本の税金までなくなるわけではありません。 売買の約定記録と手数料、両替の記録を残しておけば、日本での計算に備えられます。
配当の源泉税と日台民間租税取決め
台湾の国内法では、台湾の非居住者である個人が会社から受け取る配当の源泉徴収率は21%です。「各類所得扣繳率標準」第3条第1号に定められています。ただし、ETFの現金分配は、支払う主体や分配の中身によっては、会社配当の税率をそのまま使えません。源泉徴収の内訳が載った明細は、受け取ったら残しておきます。
日本の居住者には、日台民間租税取決めが適用される場合があります。結んだのは民間の窓口どうしで、日本側が公益財団法人交流協会、台湾側が亜東関係協会です。台湾財政部の租税協定の一覧には、日本との協定の締結日が2015年11月26日と記載されています。
国税庁は、台湾に住所等を持つ人が受ける一定の日本国内源泉所得について、外国居住者等所得相互免除法(台湾関係)により課税の軽減や非課税を受けられると案内しています。同庁によると、対象は2017年(平成29年)1月1日以後の支払いです。これは日本での課税の話であり、日本の居住者が台湾から受け取る配当への課税については、台湾側の手続きを確認する必要があります。
台湾財政部の源泉徴収率の表では、日本との協定による配当の税率は上限10%です。また、日本の組合への協定適用に関する財政部の案内は、協定第10条第2項により、配当の受益者が相手側の居住者であれば、課税額は配当総額の10%を超えないと説明しています。適用には、居住者であることと、配当の受益者であることを示す資料が必要だとしています。
この上限は、要件を満たす日本の居住者に適用されるもので、日本国籍だけで自動的に適用される税率ではありません。台湾財政部は、相手国居住者の居住者証明について、申請時点より前の6か月以内に相手国が発行した証明であれば、柔軟に認めると説明しています。
配当の前には、必要な証明書、受益者の確認、申請の方法について、証券会社と支払会社への確認が必要です。日本で居住者証明をどう取るかは、税務署や証券会社に確かめることになります。すでに国内法の税率で源泉徴収されたときは、台湾で還付できるか、必要な書類は何かを、別に確かめることになります。
日本での申告と、円への換算
日本の居住者が台湾株をNISA口座以外で保有している場合、配当や売却益は、日本でも申告を検討することになります。税率や、源泉徴収口座で済むか確定申告になるかは、口座の種類とほかの所得で変わります。
台湾の証券取引税を日本の税額から差し引けるとは限りません。また、台湾で証券取引による所得への課税が停止されていても、日本の申告まで不要になるわけではありません。円に換算する際は、約定日、受渡日、手数料、為替レートの資料をそろえて確認します。
台湾で配当から源泉徴収された税金については、日本で外国税額控除を受けられる場合があります。居住者が外国で所得税に相当する税を納めたときは、控除限度額の範囲で日本の所得税から差し引けます(国税庁の外国税額控除の案内)。確定申告には、明細書や外国税の納付を証明する書類を添付します。
ただし、国税庁は、納税者が任意に還付を請求できる税は、控除対象となる外国所得税に含まれないとしています。10%を超えて源泉徴収された分について台湾で還付を請求できる場合、その部分の扱いは個別の確認が必要です。配当明細、源泉徴収の証明、台湾での還付・承認の書類も残しておきます。
NISAでも残る台湾の源泉税
NISAで非課税になるのは日本の税金です。2024年以降のNISAでは、配当等と上場株式等の売却による譲渡益が非課税になります(国税庁のNISA制度の案内)。配当等が非課税になるのは、非課税口座を開いている金融商品取引業者等を通じて交付されるもの(株式数比例配分方式を選んだもの)に限られます。
台湾の源泉税は、台湾の法令に基づいて課されます。国税庁の外国税額控除の案内によると、NISAの非課税口座内の上場株式等の配当等に課される外国所得税額は、外国税額控除の対象になりません。NISAで持っていると、台湾で引かれた源泉税は、日本の外国税額控除では差し引けません。
台湾で税率の上限10%が適用されるか、還付を受けられるかは、NISAとは別に、台湾側の手続きで確認します。
楽天証券は、台湾株をNISA成長投資枠でも取り扱う予定としています(お知らせ)。この予定も商品情報であって、税法の根拠ではありません。NISAで台湾株を買えるかどうかも、台湾側の軽減手続きをどう扱うかも、証券会社によって違います。
台湾株の相続
相続は、売買や配当とは別の話です。台湾の遺産・贈与税法第9条第8号では、株式の所在地は、発行機関または投資先の事業の主たる事務所の所在地で判断されます。台湾に本店を置く会社の株式は、投資家が日本に住んでいても、台湾にある財産とされる場合があります。
ETFの持分については、発行主体と法的な形を別に確かめる必要があります。外国に住んでいた方の台湾の遺産の申告については、台湾の遺産税と外国での死亡にも説明があります。
台湾での手続きに関するご相談
昊鼎国際法律事務所では、口座の実際の名義や、どのような形で証券を保有しているか、台湾での証券の法的分類に加え、配当の源泉徴収や相続に関する台湾側の書類も、あわせて確認できます。
弁護士・曾雋崴に初めてご相談いただく際は、居住地、銘柄名とコードをお知らせいただき、口座約款、取引履歴、配当・源泉徴収の明細を、簡単な説明とともにwei@hoveringlaw.com.twへお送りください。台湾での案件について、具体的な見通しは資料を拝見したうえでお伝えします。
日本での申告、外国税額控除の計算、居住者証明の取得などについては、日本の税理士とあわせて確認すると安心です。事務所の所在地は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2です。
参照した公式資料
- 台湾「華僑及外國人投資證券管理辦法」第10条、台湾証券取引所の概要、台湾内の投資家、海外の投資家の案内。
- 台湾「證券交易稅條例」、財政部の株式の税率、受益証券の税率、納税者の案内。
- 台湾所得税法第4条の1、「各類所得扣繳率標準」第3条、遺産・贈与税法第9条。
- 台湾財政部の租税協定の一覧、配当の源泉徴収率の表、日本の組合への協定適用の案内、居住者証明の案内。
- 国税庁の外国居住者等所得相互免除法による課税の特例(台湾関係)、居住者に係る外国税額控除、NISA制度。
- 商品情報のみ(税法の根拠ではありません):楽天証券の台湾株式取扱いのお知らせ。
確認日:2026年9月30日
よくある質問
- 台湾株を売って利益が出たら、台湾で所得税がかかりますか?
- 台湾の所得税法第4条の1では、証券取引で得た所得に対する所得税の課税が停止されています。ただし、売却時には売却金額に対する証券取引税が別にかかります。商品や取引の種類ごとに扱いを確認することになります。
- 台湾株の配当は、日本の居住者でも21%が源泉徴収されますか?
- 台湾の国内法では、台湾の非居住者である個人が会社から受け取る配当の源泉徴収率は21%です。一方、日台民間租税取決めの要件を満たす日本の居住者への配当は、税率の上限10%が定められています。日本国籍だけで自動的に適用されるわけではありません。配当の前に、居住者証明などの書類と手続きを証券会社と支払会社に確かめる必要があります。
- NISA口座で台湾株を持てば、台湾で引かれた税金も戻りますか?
- NISAで非課税になるのは日本の税金です。国税庁によると、NISA口座内の配当等に課された外国所得税額は外国税額控除の対象になりません。台湾の源泉税の軽減や還付を受けられるかは、NISAとは別に台湾側の手続きで確認します。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



