架空の情景です。窓の光が入る会議室の長机に、無地の書類の束が離れて二つ置かれています。人の姿はありません。
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台湾企業との合弁会社で株式の譲渡を縛るには、会社の形から選ぶ

約8分

架空の情景

出資比率51対49の合弁会社で董事会が真っ二つに割れたとき、会社を動かす手段は残っているでしょうか。日本の合弁実務で細かな約束を書き込む株主間契約は、台湾でも使えます。ただ、会社法がその約束をどこまで会社の仕組みとして受け止めるかは、選んだ会社の形によって変わります。

通常の股份有限公司は、定款で譲渡を制限できない

公司法第163条によると、股份有限公司の株式の譲渡は、法律に別段の定めがある場合を除き、定款で禁止も制限もできません。ここで日本の感覚とずれます。

株主間契約で優先買取権やロックアップを約束することは、実務で広く行われています。ただ、第163条が禁じているのは定款による制限で、契約の効力までは定めていません。契約の効力は原則として当事者の間にとどまると考えられ、譲渡を長期間全面的に禁じるような約束は、第163条の趣旨との関係で争われる余地もあります。台湾側パートナーが約束に反して第三者に株式を譲ったとき、譲渡そのものを止められるとは限りません。

閉鎖性股份有限公司という選択肢

定款で譲渡を制限したいなら、閉鎖性股份有限公司があります。鍵は株主の数と定款です。株主が50人以下で、定款に株式譲渡の制限を定めた、公開発行していない会社です(第356条の1)。譲渡制限は定款に載せ、株券を発行するなら株券に明記し、発行しないなら譲渡人が譲受人に渡す書面に記載します(第356条の5)。

特別股の設計も柔軟です。複数議決権や特定事項への拒否権、一定数の董事の席を得る権利を、定款で特別股に持たせられます(第356条の7)。董事の選び方も、定款に別段の定めを置けば累積投票によらずに決められます(第356条の3第7項)。

閉鎖性でない会社でも、公開発行していなければ拒否権付きの特別股は発行できます(第157条第1項第4号、第3項)。株主が表決権の行使方法を書面で約束する契約や、表決権信託も認められています(第175条の1)。信託を会社に対抗するには、株主常会の30日前、臨時会の15日前までに契約書などを会社に送って登記しておく必要があります。

有限公司は1人1票が原則

小規模な合弁では有限公司も選ばれます。落とし穴は表決権です。株式会社と同じ感覚で設計すると、出資比率の大きい日本側が、株主の表決で思うように決められない事態が起こりえます。

第102条によると、有限公司の株主は出資額にかかわらず1人1票で、出資比率に応じた表決権にするには、定款にそう定める必要があります。90%を出資した日本側と10%の台湾側が、何も定めなければ同じ1票ずつになる計算です。

出資の譲渡には、他の株主の表決権の過半数の同意が要ります(第111条)。董事である株主が譲るときは3分の2以上です。同意しない株主には優先的に買い取る権利があります。買わなければ同意扱いです。

董事会が割れたとき

通常の股份有限公司の董事は累積投票で選ばれ、定款でこれを外すことはできません(第198条)。外せるのは、前に述べた閉鎖性股份有限公司です。49%の株主も、計算上は董事の半数近くを確保できます。業務の執行は、法律や定款で株主会の決議事項とされたものを除き、董事会の決議で行います(第202条)。同数で割れれば、決議は止まります。出口が要ります。

行き詰まりが長引けば、最後の手段として裁判所による解散があります。経営に顕著な困難や重大な損害があるとき、6か月以上継続して発行済株式の10%以上を持つ株主が申し立てます(第11条)。ただ、解散は会社をなくす手続です。事業を続けたい側にとっては、株主間契約の買取り条項のほうが役に立ちます。

株主間契約の準拠法を日本法にしたら

契約の準拠法は当事者が選べます(渉外民事法律適用法第20条)。株主間契約を日本法で書き、紛争は東京で仲裁すると定めてもかまいません。

会社の側は別です。台湾法に基づいて設立した会社の本国法は台湾法です(第13条)。同法第14条は、外国法人について、機関の組織、代表権の制限、定款の変更、解散・清算などの内部事項を本国法によらせています。台湾の合弁会社の董事会や定款、株式の譲渡の扱いは、台湾の公司法で考えるのが出発点です。日本法の契約で約束した拒否権を会社の中で働かせたいなら、定款と特別股に落とし込む作業が別に要ります。

日本企業が台湾の会社に出資するには投資審議の手続も必要で、その流れは日本企業が台湾企業を買収するときの投資審議と結合申報にまとめました。

買取り条項では、誰が、どの事由が起きたときに、どの方法で算定した価格で買い取るのかを書いておきます。価格の決め方が空欄のままだと、対立した後に合意するのは難しくなります。

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参考にした公的資料

確認日:2026年10月24日。条文は中国語の原文を基準にしています。

よくある質問

株主間契約で台湾側パートナーの株式に優先買取権を定めました。会社の定款にも書けますか。
通常の股份有限公司では、公司法第163条により定款で株式の譲渡を禁止・制限できません。株主間契約で約束することはできますが、その効力は原則として当事者の間にとどまると考えられ、会社の定款として第三者に示すことはできません。定款で譲渡を制限したい場合は、株主50人以下の閉鎖性股份有限公司にして、制限を定款に記載します(第356条の1、第356条の5)。
出資比率が少ない日本側に、重要事項の拒否権を持たせることはできますか。
公開発行していない股份有限公司なら、特定事項に拒否権を持つ特別股を定款で定めることができます(公司法第157条第1項第4号、第3項)。閉鎖性股份有限公司でも同様です(第356条の7)。株主が表決権の行使方法を書面で約束する契約や表決権信託も認められています(第175条の1、第356条の9)。
合弁相手と対立して会社が動かなくなったら、解散させることはできますか。
公司法第11条により、会社の経営に顕著な困難や重大な損害があるとき、股份有限公司では6か月以上継続して発行済株式の10%以上を持つ株主が、裁判所に解散を申し立てられます。裁判所は主管機関の意見を聴き、会社の答弁を経て判断します。対立が始まる前に、株主間契約で買取りの方法や価格の決め方を定めておくほうが、実際には使いやすい手段です。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。