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日本企業が台湾企業を買収するとき:経済部投資審議司の許可、公平交易委員会への結合申報、株式譲渡の順序

約10分

AIで生成したイメージ画像です。実在の会社、取引、事件を写したものではありません。

日本の電子部品メーカーが、10年来の取引先である台湾の非上場の株份有限公司から、創業者の引退を機に株式の70%を取得する話を持ちかけられました。価格はおおむね合意し、日本側は「株式譲渡契約に署名して代金を送れば終わり」と考えていました。ところが台湾側の会計士から、「送金の前に経済部の許可が要る」「公平会への届出が要るかもしれない」と言われ、スケジュールの組み直しになりました(架空の例です)。

台湾企業の買収では、株式譲渡契約の中身と同じくらい、手続の順序が日程を左右します。株式取得を中心に、許可、申報、譲渡の三つの手続がどう噛み合うかを順に追います。

外国人投資条例:送金前の許可が原則

日本企業の台湾への投資は、外国人投資条例の枠に入ります。主管機関は経済部で、所属機関への委任が認められています(第2条)。実際の審査は、経済部処務規程第9条が華僑・外国人投資の審査を所掌事項として定める投資審議司(Department of Investment Review)が担います。以前は投資審議委員会と呼ばれていた組織で、日本側の資料には旧称が残っていることがあります。

外国法人も外国人に含まれ(第3条)、台湾の会社の株式や出資額の保有、支店・個人事業・組合の設立、投資先への1年以上の貸付が「投資」に当たります(第4条)。既存株主からの株式取得も、新株の引受けも、ここに入ります。

手続の骨格は第8条から第10条にあります。投資人は投資申請書に投資計画と関係書類を添えて主管機関に申請し、許可を受けます。主管機関は申請手続が完備した後1か月以内に、他の目的事業主管機関の権限に関わる案件では2か月以内に決定します(第8条第3項)。許可された出資は定められた期限内に全額到達させ、到達状況を報告して、出資の実行後に投資額の審定を申請します(第9条)。既存の投資人が持分を譲渡するときは、譲渡人と譲受人が共同で許可を申請します(第10条第2項)。冒頭の例のように創業者から株式を買い取る場合、創業者が台湾人であれば日本企業側の初回投資の申請、売り手も外国人投資人であれば共同申請という形になります。

この順序を守る意味は、第12条にあります。投資人は、投資から毎年生じる利息や分配された利益について結匯(外貨への交換と送金)を申請でき、株式譲渡、撤資、減資が許可されたときは審定を受けた投資額を一括で、投資による資本利得もあわせて送金できます。審定を受けていない資金には、この保証が付きません。将来の配当の受領と出口(売却)のために、入口の手続を正規に通しておく必要があります。

禁止・制限業種と、投資先の転投資

第7条は、国家安全、公共秩序、善良な風俗、国民の健康に不利な影響を与える事業と、法律で投資が禁じられた事業への投資を禁じ、法律や法律に基づく命令で投資が制限された事業への投資には目的事業主管機関の許可または同意を求めています。禁止・制限業種の一覧(いわゆる負面表列)は行政院が定め、定期的に見直されます。買収対象の会社が複数の事業を営んでいる場合、その中に制限業種が一つでも入っていれば、投資許可の前に別の官庁の同意が要ることになり、第8条の審査期間も2か月に延びます。

また、投資人の保有が投資先の株式総数または資本総額の3分の1を超えると、その投資先が行う転投資(さらに別会社へ出資すること)に主管機関の許可が必要になります(第5条)。買収後に台湾の子会社を通じて東南アジアに出資する計画があるなら、この条文を見込んでおきます。

一方で、外国人投資人には公司法上の恩恵もあります。第15条により、取締役や監察人の国内住所・国籍・出資額に関する公司法の制限を受けず、資本総額の45%以上を保有する場合には、株式の公開発行や現金増資時の従業員引受け枠に関する規定の適用を外せます。

半導体や特定の先端技術に関わる会社の買収では、国家安全法に基づく核心関鍵技術の規制が別に関わります。概要は国家安全法の核心関鍵技術と日系雇用主の記事にあります。

公平交易法:結合申報が要る買収とその基準

台湾の競争法である公平交易法は、企業結合の事前申報制度を持っています。第10条は、他の事業との合併、他の事業の議決権株式総数または資本総額の3分の1以上の株式・出資額の保有または取得、他の事業の全部または主要部分の営業・財産の譲受けまたは賃借、経常的な共同経営や受託経営、他の事業の業務経営または人事任免に対する直接・間接の支配を、結合と定義しています。70%の株式取得は、3分の1以上の取得と支配の両方に当たります。株式の計算では、取得者と支配従属関係にある事業の保有分も合算されます。

結合に当たるからといって、すべてが申報の対象になるわけではありません。第11条は、結合により市場シェアが3分の1に達する場合、参加事業の一つの市場シェアが4分の1に達する場合、参加事業の前会計年度の売上高が主管機関の公告する金額を超える場合の三つに限って、事前の申報を義務づけています。売上高には、参加事業と支配従属関係にある事業の売上高も合算します。

売上高の基準は、公平交易委員会の2026年1月28日の公告で引き上げられ、同日から施行されています。参加するすべての事業の前会計年度の全世界売上高の合計が500億台湾ドルを超え、かつ少なくとも二つの事業の国内売上高がそれぞれ30億台湾ドルを超える場合。非金融機関では、参加事業の国内売上高が200億台湾ドルを超え、かつ相手方の国内売上高が30億台湾ドルを超える場合。金融機関では、400億台湾ドル超と30億台湾ドル超の組み合わせです。日本の親会社グループの売上高が大きい場合、台湾側の対象会社が中規模でも、全世界売上高の基準と「二つの事業の国内売上高30億超」の組み合わせで申報が要ることがあるので、グループ全体の台湾での売上高を早い段階で集計しておきます。

申報が必要な場合、公平会が完全な申報資料を受理した日から30営業日は結合を実行できません。公平会は必要に応じてこの期間を短縮または延長でき、延長は60営業日を超えられません(第11条第7項・第8項)。期間内に延長の通知も決定もなければ結合を実行できますが、申報内容に虚偽があった場合などは別です。第13条により、結合の経済全体への利益が競争制限の不利益を上回るときは公平会は結合を禁止できず、条件や負担を付けることができます。

申報を怠って結合を実行すると、第39条により、結合の禁止、期限を定めた事業の分割、株式の全部または一部の処分、営業の一部譲渡、役職の解任などの処分と、20万台湾ドル以上5,000万台湾ドル以下の罰鍰を受けることがあります。すでに50%以上を保有する会社との結合や、100%子会社の新設など、第12条の適用除外に当たるかどうかも、申報の要否を決める段階で確認します。

株式譲渡の実行:契約、名簿、対価

台湾の株份有限公司の株式は、公司法に別段の定めがある場合を除き、定款で譲渡を禁止・制限できません(公司法第163条)。ただ、譲渡を会社に対抗するには、譲受人の名称と住所を株主名簿に記載する必要があります(第165条)。株主総会の前の一定期間と、配当基準日前の5日間は名簿の変更ができないので、クロージングの日程はこの閉鎖期間を避けて組みます。

実務の順序は、株式譲渡契約の署名、投資審議司への許可申請、必要なら公平会への結合申報と待機期間の経過、許可後の送金と出資到達の報告、株主名簿の書換えと会社変更登記、投資額の審定、という流れになります。契約には、投資許可と結合申報の完了をクロージングの前提条件として書き、許可が下りない場合の解除条項を入れておきます。

実務上、投資許可の申請では、投資計画書の事業内容と対象会社の登記上の営業項目、資金の出所などについて説明を求められることが多く、資料を先にそろえておくと手続が滞りにくくなります。許可書には出資の到達期限が記載されるので、送金の時期は契約の支払日とこの期限の両方に合わせます。許可、送金、名簿書換え、変更登記、審定の各段階で発行される書類は、将来の配当送金や売却時の結匯申請でそのまま使うことになるため、原本をまとめて保管しておきます。

売り手の税金も契約条件に関わります。株式の譲渡では、売り手が成約価格の0.3%の証券取引税を負担します(証券取引税条例第2条)。有価証券の譲渡益に対する所得税は1990年1月1日から停止されていますが(所得税法第4条の1)、最低税負担制度など売り手側の税務は、台湾の会計士に個別に確かめてもらうべき領域です。

株式取得以外の形:株式転換と事業譲渡

対象会社を100%子会社にしたいが少数株主が多い、という場合には、企業併購法の株式転換が選択肢になります。第29条により、会社は株主総会の決議(発行済株式総数の3分の2以上を代表する株主の出席と、出席株主の議決権の過半数)で、既存または新設の他社に全株式を譲渡してその100%子会社となることができ、対価は株式、現金、その他の財産で支払えます。ただし、企業併購法の「公司」は台湾の公司法で設立された股份有限公司を指すため(第4条第1号)、受け皿になる会社も台湾の会社である必要があり、日本企業が使う場合は台湾に設立した子会社を受け皿にする形になります。第4条は、他社の株式・営業・財産を取得して対価を支払う行為を収購、全株式を他社に譲渡して株主が対価を受ける行為を株式転換と定義しています。

事業そのものを買う形では、対象会社が全部または主要部分の営業・財産を譲渡するために、公司法第185条の特別決議(3分の2以上の出席、過半数の同意)が必要です。企業併購法第27条は、この形の収購について債権譲渡の通知を公告で代えられること、債務引受けに債権者の承認を要しないこと、債権者に30日以上の異議期間を知らせること、外国会社との間でも準用されることを定めています。事業譲渡では従業員の承継についても同法に別の手続があり、株式取得とは異なる段取りになりますので、形を決める前に確認が必要です。

日本側で最初にそろえるもの

買収の形(株式取得か、株式転換か、事業譲渡か)を決める前に、次の情報を集めておくと、手続の順序と日程が描けます。対象会社の登記事項と営業項目、直近3年の財務諸表と台湾内売上高、日本側グループの台湾内売上高、対象会社の株主構成と定款、既存の外国人投資人がいるかどうか、対象会社が制限業種や核心関鍵技術に触れていないか、そして取引先・従業員・許認可の承継に関わる契約です。

最初に拝見するのは、株式譲渡契約の案と、対象会社の登記謄本(公司變更登記表)、株主名簿、直近の財務諸表です。そのうえで投資許可の申請書類、結合申報の要否の判定、クロージングの前提条件と日程表を作ります。昊鼎國際法律事務所では、台湾企業の買収に関する投資許可・結合申報・株式譲渡契約のご相談を受け付けています。初回相談は1時間NT$3,000で、オンラインでも受け付けています。ご連絡の際は、ご希望の言語をお知らせください。連絡先はwei@hoveringlaw.com.tw、所在地は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2です。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月7日(台湾時間)。条文は中国語の原文を基準にしています。本稿は一般的な情報であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

よくある質問

買収代金を先に送金してから投資許可を申請してもよいですか。
順序が逆で、外国人投資条例第8条は投資申請書と投資計画を提出して許可を受けることを、第9条は許可された出資を期限内に到達させて報告し、出資後に投資額の審定を申請することを求めています。許可前に送金すると、審定を受けた投資額として扱われず、将来の配当や売却代金の送金(結匯)の権利に影響します。売り手も外国人投資条例上の投資人である場合は、譲渡人と譲受人が共同で許可を申請します(第10条第2項)。
公平交易委員会への結合申報は、どんな買収で必要になりますか。
公平交易法第10条は、他の事業の議決権株式の3分の1以上の取得や、業務経営・人事任免の支配を結合と定めています。そのうえで第11条は、結合により市場シェアが3分の1に達する、参加事業の一つのシェアが4分の1に達する、または前会計年度の売上高が公平会の公告額を超える場合に、事前の申報を義務づけています。公告額は2026年1月28日から、非金融業では国内売上高200億台湾ドル超の事業が国内売上高30億台湾ドル超の事業と結合する場合などで、公平会が完全な申報資料を受理した日から30営業日は結合を実行できません。
売り手が負担する税金はありますか。買い手に影響しますか。
株式の譲渡では、売り手が成約価格の0.3%の証券取引税を負担します(証券取引税条例第2条)。有価証券の譲渡益に対する所得税は1990年以降停止されています(所得税法第4条の1)。ただし最低税負担制度の適用など売り手側の税務は個別に確認が必要で、買い手にとっては価格交渉と契約の表明保証に関わります。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。