稼働中の設備の外側で、点検記録を確かめる作業者。
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台湾の工場で装置は動いているのに、検収が終わらない

約7分

架空の情景

残金の支払条件が「現地検収の完了」となっている装置取引では、台湾の工場が生産に使い始めた日と、請求できる日が一致するとは限りません。検収試験を通過したのに署名だけが止まっているのか、まだ約束した試験を終えていないのかで、供給者が求めるべき対応は変わります。

例えば、連続稼働試験に必要な材料を顧客が用意せず、別の製品の生産だけを続けている場合です。稼働記録は使用の事実を示しますが、その記録だけでは、合意した材料・速度・精度で試験を通過したことまでは証明できません。使用状況と未実施の試験を並べると、どこで手続が止まっているかが見えてきます。

出荷前の合格と、現地で確認する性能

出荷前の工場受入試験をFAT、据付先で行う現地受入試験をSATと呼ぶ取引があります。ただし、略称だけでは、試験項目も代金との関係も決まりません。FAT合格が出荷の条件で、SAT合格が残金の条件なのか。どちらか一方を通過すれば足りるのか。基本契約、注文書、仕様書、試験手順書の記載をそろえて読みます。

試験時の材料、試料数、処理速度、連続稼働時間、許容する誤差が文書ごとに違うと、同じ測定値を見ても合否の判断が分かれます。装置の型式・製造番号とソフトウェアの版も合わせ、どの条件で測った結果なのかを特定します。現地担当者のメールで条件を変えている場合は、その変更を合意した経緯と承認権限も確認することになります。

台湾民法では、意思表示の解釈に当たり、使われた文言だけに拘泥せず、当事者の真意を探るとされています(第98条)。「検収完了」の一語だけで結論を出さず、何を確かめれば支払う約束だったかを、交渉時の資料まで含めて読み取る理由です。

引渡し後に別品種の追加試験を求められた場合も、当初の仕様を満たすための試験なのか、新たな依頼なのかを分けます。評価段階から続く追加試験の問題は、AI実証実験の費用を扱った記事も参照できます。既に正式注文に基づいて装置を納めているなら、評価用の条件をそのまま使わず、納入契約で引き受けた範囲に戻って考えます。

検収書がない間、請求の根拠をどう示すか

以下は、契約に台湾法が適用される場合の説明です。日本企業と台湾企業の取引でも、準拠法は当事者の合意などによって判断します(涉外民事法律適用法第20条)。

装置取引が一定の仕事の完成を約束する「承攬」に当たる場合、台湾民法第505条は、引渡しを要する仕事では引渡し時、引渡しを要しない仕事では完成時を報酬の支払時期としています。部分ごとに引き渡し、報酬も部分ごとに定めた場合には、その部分の引渡し時に支払う規定もあります。ただし、別に合意した検収・支払条項と、仕事の完成・引渡しの実態を確かめる必要があります(第490条、第505条)。

既製装置の売買に据付や調整が付く契約もあります。納入したという一事で承攬と決めず、当事者が何を給付する合意だったかを確認します。日本の契約書で使っていた「請負」という名称だけで、台湾法上の扱いが確定するわけでもありません。

請求の説明は、契約の支払条項に、対応する実施記録を添えると具体的になります。

支払条件に書かれた事項照合する記録
指定条件による性能試験の合格合意した試験手順、測定値、使用材料、試験日、立会者
据付・操作説明の完了設置記録、説明の受講記録、未完了項目とその理由
検収書の発行・署名提出日、受領者、署名を保留する理由、回答の経緯
分割された工程の引渡し工程別の成果物、引渡し記録、その工程に対応する金額

試験担当者の「問題ありません」という返答と、代金支払いを承認する権限も同じとは限りません。誰が技術結果を確認し、誰が検収書を発行する約束だったかを確かめます。

顧客が材料や試験時間を用意しない場合

供給者が試験の準備を終えていても、顧客の協力がなければ進められない工程があります。必要な材料の量や品質、工場を使える時間、電源・配管などを、顧客の作業として合意していたかが出発点です。「試験に協力してほしい」という一般的な依頼だけでは、何をいつ提供すればよいかが伝わりません。

承攬で、注文者の行為がなければ仕事を完成できず、注文者がその行為をしない場合、請負人は相当の期限を定めて履行を催告できます。その期限内に行為がなければ、契約の解除と、それによって生じた損害の賠償を求めることができるのが民法第507条の規定です。協力が遅れたら直ちに検収済みになる、あるいは残金全額が当然に支払われる、という規定ではありません。

通知には、未実施の試験、相手に求める行為、供給者が準備した事項、提案する実施日を具体的に記載します。期限の長さや送付先は契約と現場の状況を踏まえて決め、通知が届いた記録も残します。解除を選ぶか、試験を終えて取引を継続するかは、その後の回収や保守対応にも関わる判断です。

また、条件の成立で不利益を受ける当事者が、不正な行為でその成立を妨げた場合、条件が成立したものと扱う規定があります(民法第101条)。検収に関する合意がこの規定の対象となる条件なのか、何が不正な妨害に当たるのかは個別に検討します。社内決裁が遅いというだけで、この規定による請求が認められるとはいえません。

使っている事実と、残っている不具合

量産への投入、運転時間、生産した数量、顧客が変更した設定は、装置の状態を確かめる資料になります。ただ、供給者が取得できるのは、契約やアクセス権限の範囲内の記録です。顧客のシステムから無断でログを持ち出す方法は採れません。

稼働していても、仕様に達していない項目が残ることはあります。未完了項目を一つずつ挙げ、合意した性能に関わる不具合、顧客側の未準備、後から求められた機能を区別します。承攬では、仕事に瑕疵があれば注文者が相当の期限を定めて修補を求める規定があります(民法第493条)。使用中という理由で不具合の申出を取り合わなければ、支払交渉も技術的な解決も進みません。

売買については、買主に通常の手順で速やかに検査し、売主が担保責任を負う瑕疵を見つけたら直ちに通知する義務があります。通知を怠った場合の承認扱いには、通常の検査では分からない瑕疵や、売主が故意に告げなかった瑕疵に関する規律があります(民法第356条、第357条)。この売買の規律を、そのままSAT合格や契約上の残金支払条件の充足と読み替えることはできません。

残った作業と支払額を合意して処理するなら、修補内容・期限、留保する金額、その解除条件を文書にします。保証期間の起算日も、検収日や稼働日との関係を契約で確認します。支払いを受けるために検収日をさかのぼらせると、実際の試験記録や保証期間との食い違いを残すおそれがあります。

支払条件と金額を確かめた後の手続は、台湾の未払代金の回収で扱っています。検収未了を理由に残金が止まっている案件について相談する場合は、契約の概要、未完了とされる項目、残金額、直近の回答期限を相談窓口へお知らせください。仕様書や生産記録の原文は、共有方法を確認してからご準備ください。

参照した公的資料

  • 台湾・全國法規資料庫:民法および沿革。本文では契約の解釈、条件、売買の検査・通知、承攬の報酬・修補・注文者の協力を参照しています。
  • 同:涉外民事法律適用法第20条。契約の準拠法。

法令確認日:2026年10月10日。本稿は台湾法に関する一般情報です。個別の契約類型、検収の成立、支払期日、請求の可否は、合意内容と実際の履行状況によって異なります。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。