下向きの検査カメラの下に金属試料が置かれ、作業者が別の試料を載せたトレーを隣に添えています。
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台湾向けAI実証実験、「もう一度試したい」の費用は誰が負担するか

約7分

架空の情景

台湾の工場でAI検査の試験を終えた後、「別の品種でも試してほしい」と頼まれたら、その試験まで当初の料金に含まれるのでしょうか。見積書では品種を限定していても、試験計画やメールで対象を広げていれば、見積書だけでは費用負担を判断できません。

別の製品の画像を集め直すには時間がかかりますし、他工場へ移れば照明条件に合わせた調整も必要になります。試験を依頼した技術者が、追加料金まで承認できる立場とは限りません。

台湾の民法第153条では、明示の合意だけでなく、黙示の合意でも契約が成立し得ます。変更契約書に署名していないから追加作業の約束もない、とまではいえません。着手前のやり取りに、何を追加するのか、その理由と料金、納期への影響、双方の承認者を残しておけば、後になって依頼と見積りを一から結び直さずに済みます。新たな品種を試す場合なら、画像を用意する側、再学習・再試験の回数、追加料金の請求時期まで含めた記録が考えられます。

以下の契約・報酬の説明は台湾法が適用される場合のものです。台湾企業との取引でも、それだけで準拠法が決まるわけではなく、当事者の合意などによって判断します(涉外民事法律適用法第20条)。

試験を終える約束と、性能を実現する約束

PoCは、技術の実現可能性を確かめる実証実験です。ただ、同じPoCでも、所定の試験を行って結果を報告する仕事と、指定の検出性能を備えたシステムを完成させる仕事とでは、引き受けている責任が違います。報告書の提出で仕事が終わるのか、性能が届かなければ調整を続けるのか。この違いが曖昧なままだと、開発会社が追加試験だと考えた作業を、顧客は約束した仕事の続きだと受け止めることになります。

台湾民法が「承攬」と呼ぶのは、一定の仕事を完成させ、その完成に対して報酬を支払う契約です。日本語の請負に相当しますが、個々の規律まで同じではありません(第490条)。事務処理を委ねる契約には「委任」があり、他の法定類型に属さない労務提供契約にも、委任の規定を適用します(第528条、第529条)。試験と開発が混在する案件を、「PoCだから委任」「装置を納めるから請負」と名称だけで分類することはできません。

契約書と仕様書に試験する品種、使用するデータ、試験環境、調整回数、提出する報告を定めておけば、追加の依頼がその範囲に含まれるかを比べられます。顧客からのデータ提供や工場の試験時間の確保が遅れれば、同じ作業でも日程と費用が変わり得ます。その場合の日程変更と追加費用を誰が承認するかも、あらかじめ契約で定められます。

「評価が終わるまで対応する」という一文では、顧客の社内検討が続く限り調整を重ねるのかが分かりません。例えば予定した試験の報告日を区切りに、そのまま終了する、期間を延ばす、別の検証を発注する、という選択を設けられます。延長や追加検証の対象と金額をその時点で合意すれば、無償の提案と有償の作業の境目も説明しやすくなります。

量産採用を待つ間の支払い

PoCを低額で引き受け、量産販売で開発費を回収する計画には、不採用になった場合の費用が残ります。評価費は採用の有無にかかわらず支払うのか、採用時には購入代金へ充当するのか。これは法律で一律に決まる料金方式ではなく、金額と条件を交渉する問題です。

その交渉では、試験の合格を何につなげるのかも問われます。「合格後に採用を検討する」という記載がどの程度の購入約束になるかは、数量、価格、注文方法などを含む合意内容によります(民法第153条)。評価結果の受入れと量産設備・本番システムの購入を別々の合意にするなら、量産注文の際に発注法人、対象工場、台数、本番用ソフトウェアの利用範囲、保守料金を改めて確定する手順を設けられます。評価用に認めた利用が、全工場での本番利用まで含むのかも、そこで曖昧にはできません。

支払いの約束も、この購入判断とそろえて読む必要があります。有償の委任で、契約に別段の定めがなければ、報酬の支払いを請求できるのは、委任関係が終了し、処理の経過を明確に報告した後です(民法第548条)。着手時や試験の各段階で支払いを受けたい場合には、その請求条件と支払期限を契約で定めます。顧客の量産採用の社内決裁までPoC報酬の支払条件に含めるのかは、さらに別の選択です。

評価を打ち切る場合に残る報酬と損害

試験の途中で案件が終わった場合にも、委任と承攬の違いが表れます。委任では、受任者に責任のない理由で事務処理が終わる前に契約が終了したとき、既に処理した部分の報酬を請求できる規定があります(第548条)。

委任は各当事者が終了できる一方、相手に不利な時期に終了すれば、損害賠償責任を負うのが第549条の定めです。ただし、終了する側に責任のない事情で終了せざるを得ない場合は例外になります。終了できるという規定が、そのまま費用を負担しなくてよいという答えにはなりません。実際の適用には、契約内容も関わります。

承攬に当たる場合には、注文者は仕事の完成前に契約を終了できても、それによって請負人に生じた損害を賠償しなければなりません(第511条)。仕事の実質を確かめずに、委任の精算規定だけを当てはめることはできません。

実施済みの試験と、まだ行っていない作業、外部に手配した費用が分かる記録は、こうした精算の材料になります。作業を止めた日も残します。終了の手順には、預かったデータの返却・削除や評価用アカウントの停止も含められます。

追加試験の返答を求められている段階で台湾法上の契約確認を相談する場合は、取引の概要、PoCの進捗、回答期限を相談窓口へお知らせください。機密資料の原文を送る前に、共有方法をご確認ください。

参照した公的資料

法令確認日:2026年10月8日。本稿は台湾法に関する一般情報であり、個別のPoC契約の分類や請求の可否を判断するものではありません。日本法が適用される事項は、別途その確認が必要です。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。