「税関が審査する対象はあくまで『課税価格』であり、移転価格の審査は引き続き国税局が行います。」台湾の財政部関務署が、一回性移転価格調整のFAQの問8で示した答えです。日本の親会社が台湾子会社に部品や製品を供給し、年度末に目標利益率に合わせて価格を精算するなら、同じ調整を国税局は所得の問題として、税関は輸入貨物の課税価格の問題として見ることになります。
親子会社というだけで申告価格は否認されません
関税法(關稅法)第29条によると、従価税の輸入貨物の課税価格(完稅價格)は取引価格、すなわち輸出国から台湾へ販売される際に実際に支払った、または支払うべき価格を基礎にします。価格に含まれていなければ、買い手が負担する手数料や梱包費、買い手が売り手に無償または値引きで提供した部品・金型・海外での設計などの合理的な配分額、取引条件として買い手が支払うロイヤルティー、台湾の港までの運賃と保険料などを加算します。子会社が親会社に商標の使用料を別建てで払っている場合や、子会社が用意した金型を親会社の工場で使っている場合は、ここに当たるかどうかを確かめることになります。
第30条第1項第4号は、売り手と買い手に特殊関係(特殊關係)があり、それが取引価格に影響した場合、その価格を課税価格の基礎にできないと定めています。同条第2項は特殊関係を8つ挙げており、一方が他方の議決権株式の5%以上を直接または間接に保有・支配する場合や、一方が他方を直接・間接に支配する場合も含まれます。日本の親会社と台湾子会社は、まず当てはまるでしょう。それでも、関係があるだけで価格が否認されるわけではありません。条文の要件は「致影響交易價格」、つまり関係が価格に影響したことです。
審査の手順は関税法施行細則第14条にあります。税関は価格に疑いがあれば取引の状況を審査しなければならず、必要に応じて詳しい資料を求めることができます。特殊関係が価格に影響したと判断するときは理由を説明し、合理的な弁明の機会を与えなければなりません。輸入者は、その理由を書面で示すよう請求できます。申告価格が、税関が核定した次の三つの価格のいずれかと「相接近」していれば、特殊関係は価格に影響しなかったものとみなされます。
- 特殊関係のない売り手と買い手の間の、同種・類似貨物の取引価格
- 同種・類似貨物の国内販売価格
- 同種・類似貨物の計算価格
比べる貨物は、一つ目と三つ目なら輸出日の前後30日以内に輸出されたもの、二つ目なら輸入日の前後30日以内に輸入されたものに限られます。
どこまで近ければ「相接近」と言えるのでしょうか。確認した公的資料に、数値の基準はありません。関務署のFAQには、親子会社の間で輸入した自動車の申告価格が前年より20%超下がったのに、装備はむしろ大きく向上していた例が載っています。輸入者は上の価格との近接を証明できず、FAQは特殊関係が価格に影響したと結論づけています。20%は事例の中の事実です。
取引価格が使えないときは、同種貨物の取引価格(第31条)、類似貨物の取引価格(第32条)、国内販売価格(第33条)、計算価格(第34条)、合理的な方法(第35条)の順に下りていきます。第33条第2項により、国内販売価格と計算価格の順序は納税義務者の請求で入れ替えられます。
年度末の価格調整は、輸入申告の時点で決まります
財政部は2019年11月15日の解釈令(台財稅字第10804629000號)で、2020年度から、決算前に行う一回性の移転価格調整について要件を定めました。取引の当事者が取引条件と価格に影響するすべての要素について事前に合意し、調整後の債権債務を帳簿に計上していること、相手方も同時に対応する調整をすること、そして調整後の価格で関係する税を納めることです。税関側の手続は関務署の作業要点が定めています。2019年12月31日に制定され、最後の改正は2022年4月22日です。
- 輸入時:貨物を引き取る前に、保証金を納めて先に放行を受ける申請(押款放行)をし、「預估(見積り)」と記載したインボイスと貨價申報書(価格申告書)を添付します(関税法第18条第3項第3号)。輸入申告書には、特殊関係欄にコード「138」、納税方法欄に「65」(見積り税額)を記入し、その他申告事項欄に一回性移転価格作業である旨と対象の会計年度を書きます。通関は書類審査か貨物検査の方式で行われます。
- 会計年度終了後1か月以内:申告書番号・項目ごとの暫定価格と正式インボイス価格、価格決定の理由または計算方法を記載した申請書、照合表、契約書・正式インボイス・支払証憑を税関に出します。期限を過ぎると受理されず、税関が職権で課税価格を核定します。補正の通知を受けたら、15日以内に補います。
- 税関の核定:申請書を受け取った翌日から4か月以内に核定し、1回に限り最長2か月延長できます。保証金は利息なしで返還されます。不服があれば関税法第45条の復査(再審査)を申し立てます。期限は、税款繳納証を受け取った翌日から30日です。
台湾子会社が親会社に合わせて4月から翌年3月までを会計年度にしているとしましょう(架空の例です)。3月31日の年度末から1か月以内なので、申請は4月中に済ませなければなりません。親会社の決算作業と重なる時期です。
税関が見るのは課税価格だけです。移転価格の審査は国税局が行い、移転価格報告書は申請時に参考資料として出せますが、課税価格は関税評価の規定に従って決まります(FAQ問7・問8)。調整は申告書と項目ごとに前後の金額を示して行い(問6)、輸出申告は対象外です(問13)。この手続で税関が代理徴収した営業税の還付を受けた場合は、仕入税額の減少として扱います(解釈令第2点)。
法人税の側でも、この方式を使った年度の申告には所得税法第43条の1と移転価格の査核準則がそのまま適用されます(解釈令第4点)。移転価格文書の基準は台湾子会社の移転価格文書で整理しました。日本側で同じ調整をどう扱うかは、日本の専門家にご確認ください。
では、コードを記入せずに通関した輸入分はどうなるのでしょうか。FAQ問2は、後から記入してこの制度に加えることはできないと答えています。年度末を過ぎてから決めた価格調整や、国税局の調査で変わった価格を税関がどう扱うかについては、公的な指針を見つけられませんでした。FAQが示すのは、放行の翌日から6か月以内に行う一般的な申告訂正だけです(進出口報單申報事項更正作業辦法第6条)。
評価の事前審査で確かめられること
関税法第36条の1によれば、納税義務者は輸入前に関務署へ、実際の支払価格に第29条第3項の加算要素やその他課税価格に含めるべき費用があるかどうかの事前審査を申請できます。親会社への商標使用料や、子会社が用意した金型が絡む取引では使い道があります。関務署は2021年6月のプレスリリースで、基隆関に申請するよう案内しています。2026年1月23日に改正された進口貨物估價預先審核實施辦法第7条では、回答は申請書の受領(補正があれば補正完了)の翌日から45日以内に書面で届き、外部の専門家の意見を聞く場合は90日まで延びます。結果は変更されない限り、通知日から3年間有効です(第9条)。仮定の取引や、1年以内に行う予定のない取引は受け付けられません(第6条)。
範囲はそこまでです。関係会社間の価格が受け入れられるか、どの移転価格の方法が適切かを事前に確認する制度は、公的資料には見当たりませんでした。品目分類(第21条)と原産地(第28条)の事前審査は、それぞれ独自の規則で運用されています。
過少申告と判断されたとき
海関緝私条例(海關緝私條例)第37条第1項は、価値などを偽って輸入申告した場合、情状に応じて、ほ脱した輸入税額の5倍以下の罰鍰(行政上の制裁金)、貨物の没収、またはその両方を科すことができると定めています。財政部の2008年の解釈によれば、過失でも処罰の対象です。実際の倍数は、2023年6月に改正された財政部の参考表では次のとおりです(財政部令)。
| ほ脱した輸入税額 | 基本の倍数 | 処分前の納付などがある場合 |
|---|---|---|
| 10万台湾元以下 | 2倍 | 1.5倍 |
| 10万台湾元超50万台湾元以下 | 2.5倍 | 2倍 |
| 50万台湾元超 | 3倍 | 2.5倍 |
低いほうの倍数は、処分の核定前に税額を納付するか十分な保証金での充当に同意した場合、または放行前に積戻しの許可を受けるか書面で放棄した場合に使われます。ほ脱税額が20万台湾元なら、罰鍰は2.5倍の50万台湾元です。処分前に納めていれば2倍、40万台湾元になります(参考表に当てはめた計算例です)。
自ら訂正する道もあります。同条例第45条の3によれば、税関・税務機関などが通報を受けたり調査を始めたりする前に訂正を申請して税関が認め、すでに放行された貨物なら事後調査の通知を受ける前であれば、訂正した範囲では処罰されません。不足税額に利息を付けて納めることが条件です。
輸入時の営業税も別に動きます。2026年10月現在、税関は課税価格に関税と貨物税などを加えた額の5%を、営業税として代理徴収しています(営業税法第20条、第41条、関務署FAQ)。没収されず罰鍰だけが科された事件では営業税も追徴され、営業税法第51条第1項第7号により別に処罰されます(海関代徴営業税稽徴作業手冊)。
調査の期限も決まっています。税関が放行の翌日から6か月以内に事後調査(事後稽核)を通知すれば、放行から2年以内に調査でき、その結果による還付や追徴は放行から3年以内に限られます(関税法第13条)。輸入関係の記録や帳簿は、放行の翌日から5年間保存しなければなりません(第98条)。価格調査(第42条)を拒んだり妨げたりすると、3,000〜30,000台湾元の罰鍰が科されます(第75条)。
台湾子会社の会計年度の終わりと、今年の輸入申告書に138・65のコードを記入したかどうかをまとめて、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)にお送りいただければ、関税面の論点を一緒に確認します。コードなしで通関した分は、放行の翌日から6か月という訂正期限をまず確かめてください。
参考にした公的資料
- 関税法(關稅法、2022年5月11日最終改正。課税価格の第29条〜第35条は2004年の全面改正以降変更なし)第13条、第18条、第21条、第28条、第29条、第30条、第31条、第32条、第33条、第34条、第35条、第36条の1、第42条、第45条、第75条、第98条
- 関税法施行細則(關稅法施行細則、2024年12月23日最終改正)第14条
- 海関緝私条例(海關緝私條例、2018年5月9日最終改正)第37条、第45条の3
- 進口貨物估價預先審核實施辦法(2026年1月23日最終改正)第6条、第7条、第9条
- 進出口報單申報事項更正作業辦法(2024年4月10日最終改正)第6条
- 営業税法(加值型及非加值型營業稅法、2025年5月28日最終改正)第20条、第41条、第51条
- 財政部解釈令台財稅字第10804629000號(2019年11月15日、核釋跨國集團於會計年度結束前進行一次性移轉訂價調整規定)
- 関務署海關實施會計年度一次性移轉訂價核定完稅價格作業要點(2019年12月31日制定、2022年4月22日最終改正)
- 関務署一次性移轉訂價之關稅估價專區のFAQ、特殊関係に関するFAQ(2026年7月6日掲載)、輸入営業税に関するFAQ(2026年7月9日掲載)
- 関務署プレスリリース(2021年6月2日)
- 財政部令台財關字第1121014906號「緝私案件裁罰金額或倍數參考表」第37条第1項部分の改正(2023年6月20日)
- 財政部解釈台財關字第09700557340號(2008年12月18日)
- 財政部海關代徵營業稅稽徵作業手冊(2018年5月22日改正)
確認日:2026年10月7日
よくある質問
- 年度末に移転価格を調整した場合、すでに納めた台湾の関税も精算されますか?
- 輸入申告のときに一回性移転価格調整の方式を選び、特殊関係欄に138、納税方法欄に65を記入して保証金を納めた輸入分だけが対象です。会計年度終了後1か月以内に税関へ課税価格の核定を申請すると、関税と税関が代理徴収する税を追加で納めるか、還付を受けます。記入せずに通関した申告は後から加えられず、関務署のFAQが示すのは放行の翌日から6か月以内の一般的な訂正申請だけです。
- 親子会社間の取引価格は、それだけで否認されますか?
- 関税法第30条が取引価格を使えないとするのは、特殊関係が取引価格に影響した場合です。税関は疑いがあれば理由を説明し、弁明の機会を与えなければなりません。申告価格が、税関の核定した同種・類似貨物の比較価格のいずれかに近接していれば、影響はなかったものとみなされます。「近接」を数値で定めた公的資料は確認できませんでした。
- 関係会社間の価格が妥当かどうか、輸入前に事前審査を受けられますか?
- 関税法第36条の1の評価事前審査は、ロイヤルティーなどの加算要素を課税価格に含めるべきかを扱う制度で、回答は原則45日以内、結果は通知日から3年間有効です。関係会社間の価格そのものや移転価格の算定方法を事前に確認する制度は、公的資料には見当たりませんでした。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



