TSMC高雄工場の死亡事故、台湾で動き出す通報・検視・刑事手続き
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TSMC高雄工場の死亡事故、台湾で動き出す通報・検視・刑事手続き

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ニュースをきっかけに執筆した記事です。公開日以降に状況や法令が変わっている可能性があります。

「工地為交付承攬範圍」。現場は請負に出した範囲だ、という意味です。中央通信社(CNA)の10月20日の記事によると、TSMCは高雄の建設現場で起きた事故についてこう説明し、関連工事を自主的に止め、同社の現場安全チームが関係機関の原因調査に協力すると述べました。施工業者の事後処理も促し、支援するとしています。

事故の中身は、同じ日のCNAの続報が南部科学園区管理局の説明として伝えています。F22工場の新設工事で、請負業者(承攬商)の作業員4人が鉄骨の吊り上げ・取付け中に転落しました。3階外側の鉄骨連結板のボルトが破断した疑いがあり、その夜までに3人が亡くなり、1人が集中治療室に移されました。この作業員も助からず、21日午前、南部科学園区管理局は死者が4人になったと確認しています(CNAの21日の記事)。該当する鉄骨の吊り上げ作業は止まっています。Focus Taiwanによれば、F22は2ナノ以下のプロセスを担う工場で、第4期の工事は2027年に完了する予定です。

原因はまだ分かっていません。それでも法律上の期限は、事故の直後から進みます。日本から据付けや工事の責任者を台湾に送っている会社では、まず誰が通報し、現場をどう保つかが問われます。

8時間以内の通報と、現場を動かさない義務

期限は8時間です。死亡災害、被災者3人以上の災害、1人以上が入院を要する災害が起きると、雇主は8時間以内に労働検査機関へ通報しなければなりません(職業安全衛生法第37条第2項)。それとは別に、救護などの措置をとり、労働者代表と一緒に調査・分析して記録を作る義務もあります(同条第1項)。通報を受けた労働検査機関は、死亡や重傷の災害であれば職員を送って検査します。救護に必要な場合を除き、司法機関か労働検査機関の許可がなければ、現場を動かしたり壊したりできません。故意に違反すれば3年以下の懲役などの対象です(第41条第1項第4号)。現場の写真を撮り、作業記録を残すことと、現場そのものに手を付けないことは、分けて考える必要があります。

労働検査機関は、災害が起きたときや起きるおそれがあるとき、作業の全部または一部の停止を命じることができます。停止期間中の賃金は雇主が払い続けます(第36条)。停止の通知に従わなければ、それ自体が3年以下の懲役などの対象です(第41条第1項第3号)。今回、南部科学園区管理局は、調査結果と職業安全衛生の規定に従って処分を進めるとしています。

検察官の相験と、取調べを受ける人の権利

病死でない、またはその疑いがある死亡があれば、検察官は速やかに相験(検視)を行わなければなりません(刑事訴訟法第218条)。犯罪の疑いがあれば、検察官は続けて必要な検証と調査を行います。10月21日朝の「知新聞」は、検察側の説明として、警察が遺族・請負業者・現場関係者らの供述調書を作成した後、同日の担当検察官が相験を行う予定だと報じています。同日夕方のCNAによると、橋頭地方検察署は現場検証と相験を行い、取調べの後、鉄骨工事会社とその下請け(上昊機械)の現場責任者2人について過失致死などの嫌疑が重大だとして、それぞれ100万台湾ドルの保釈金(交保)と住居制限を命じました。検察は事故原因と関係者の刑事責任の有無を引き続き調べるとしています。

日本から派遣された現場の責任者が、参考人や被疑者として話を聞かれることも考えられます。通訳や弁護人、身柄の拘束、出国制限については台湾で日本人が警察の取調べや逮捕を受けたらで扱いました。

刑事責任の枠組み

職業安全衛生法は、雇主を「事業主または事業の経営責任者」と定めています(第2条第3号)。その雇主が、墜落防止などの必要な安全設備・措置の義務(第6条第1項)や危険性のある機械の検査義務(第16条第1項)に違反し、死亡災害が起きた場合、5年以下の懲役、拘役(短期の自由刑)または150万台湾ドル以下の罰金などに処せられます。法人の場合は、責任者を罰するほか、法人にも罰金を科します(第40条)。同じ義務違反で被災者が3人以上になった場合には、3年以下の懲役などの規定もあります(第41条第1項第1号)。これとは別に、刑法の過失致死罪があり、5年以下の懲役、拘役または50万台湾ドル以下の罰金と定められています(第276条)。

どの規定が誰に当てはまるのか。それは捜査と裁判で判断されます。今の時点では、何も決まっていません。判決が確定するまで、関係者はみな無罪と推定され、第一審の判決にも上訴ができます。

請負の連鎖の中での立ち位置

事業単位が自らの事業を請負に出したとき、請け負った部分について雇主の責任を負うのは請負人(承攬人)です(第25条)。その元の事業単位(原事業單位)も、職業災害の補償では請負人と連帯し、自らが法令や安全衛生の規定に違反して災害が起きれば、損害賠償でも連帯します。再請負でも同じです。

工場を建てさせた発注者が、そのまま元の事業単位になるわけではありません。ポリエステル繊維のメーカーが自社工場で使う蒸気ボイラーの建設を発注し、請負業者の作業員が転落してけがをした事件があります。台湾高等法院台中分院の2019年6月18日の判決(107年度勞上字第16號)は、ここでいう事業を、登記された営業の範囲と、それに合理的に関連する付随・補助的な活動と捉えました。ボイラー工事はたまに行う工場の増設にすぎず、会社の事業ではないとして、労働基準法第62条・第63条と職業安全衛生法第26条による責任を認めませんでした。半導体工場の新設がTSMC自身の事業に含まれるかは、別の問題です。今回の調査と、争いになれば裁判所が判断します。

2026年7月1日からは、2025年12月19日公布の改正法が施行されています。第26条は、請負に出す前にリスク評価を行い、その結果を請負人に伝え、請負期間中きちんと実行させるよう求めます。請負人がさらに再請負に出すときも同じです。同じ現場で一緒に作業する場合、元の事業単位は協議組織を置いて現場責任者を指定し、作業の連絡・調整、巡視、教育訓練の指導、機械や人員の入場管理を行います。請負人と再請負人は、それに協力しなければなりません(第27条)。この改正で加わった第27条の1は、「自らの事業」という要件を置かずに、一定規模以上の工事を二つ以上の施工者に出す事業単位に対し、そのうち一つを指定して工事全体の安全衛生の統合管理を担わせるよう求めています。規模の基準は工程安全設計及整體工程統合管理辦法第3条にあります。今回の現場がこれに当たるのか、統合管理を担う施工者が指定されていたのかは、報道からは分かりません。

日本企業の側から見れば、自社がこの連鎖のどこにいるかで、負う義務が変わります。出発点はそこです。協議組織にどう関わったか、指示や点検の記録が残っているかは、事故の後に義務を果たしていたことを示す材料にもなります。台湾子会社の董事や経理人個人の責任については、台湾子会社の董事長・経理人になったらで整理しています。

遺族への賠償は別の手続き

刑事の結論とは別に、遺族は民事で損害賠償を求めることができます。台湾民法では、他人を不法に死亡させた者は、葬儀費用を支出した人と、被害者が法律上の扶養義務を負っていた人に対して賠償しなければなりません(第192条)。父母・子・配偶者の慰謝料もあります(第194条)。従業員が職務の執行で他人の権利を不法に侵害した場合、会社も原則として連帯して責任を負います。選任・監督に相当の注意を尽くしたとき、または注意を尽くしても損害を避けられなかったときは、免責されることがあります(第188条第1項)。

労働者側の補償もあります。労働基準法は、労働者が業務上の災害で亡くなった場合、雇主が平均賃金5か月分の葬祭費と40か月分の死亡補償を遺族に支払うと定めています(第59条第4号)。同じ事故について、労工保険条例などの法令に基づき雇主の費用負担による補償がすでになされていれば、雇主はその分を充当できます(同条柱書ただし書)。事業単位が自らの事業を請負に出し、それがさらに再請負に出されていれば、請負人や中間の請負人も最後の請負人と連帯してこの補償を負います(第62条)。

今回の事故で、南部科学園区管理局が示した次の段階は、原因の解明と、その結果に基づく処分です。

昊鼎国際法律事務所へのご相談

昊鼎国際法律事務所では、曾雋崴弁護士が、台湾で工場建設や装置の据付けに関わる日本企業の契約や事故後の対応についてのご相談を担当しています。現場の書類や契約書の写しをwei@hoveringlaw.com.twにお送りいただければ、請負の連鎖の中での貴社の立ち位置の確認から始めます。

  • Taipei 103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2
  • Taichung 40453 臺中市北區館前路19號6樓之1

参照した資料

確認日:2026年10月22日

よくある質問

台湾の工事現場で死亡事故が起きたら、会社はまず何をしなければなりませんか。
台湾の職業安全衛生法第37条により、雇主は救護などの措置をとり、死亡災害は8時間以内に労働検査機関へ通報しなければなりません。救護に必要な場合を除き、司法機関か労働検査機関の許可なく現場を動かしたり壊したりできず、故意に違反すると3年以下の懲役などの罰則があります(第41条第1項第4号)。
日本企業が台湾の工場で据付工事を請け負っている場合、安全上の雇主責任は誰が負いますか。
職業安全衛生法第25条によれば、事業単位が自らの事業を請負に出した場合、請負人(承攬人)が請け負った部分について同法の雇主責任を負います。その元の事業単位(原事業單位)も、職業災害の補償では請負人と連帯し、自らの法令違反で災害が起きれば損害賠償でも連帯します。工事を発注しただけで元の事業単位になるとは限らず、発注した仕事がその会社自身の事業に属するかが問われます。同じ現場で一緒に作業する場合は、元の事業単位が協議組織の設置や現場責任者の指定などを行い、請負人はそれに協力する義務があります(第27条)。
今回の事故で、誰かが刑事責任を問われることは決まっていますか。
決まっていません。原因は調査中です。検察は10月21日、現場責任者2人に過失致死などの疑いで保釈金の納付と住居制限を命じましたが、これは捜査段階の処分で、起訴や刑事責任が決まったわけではありません。台湾法には、必要な安全措置の義務違反で死亡災害が起きた場合の罰則(職業安全衛生法第40条)や過失致死罪(刑法第276条)がありますが、誰に適用されるかは捜査と裁判で判断され、それまで関係者は無罪と推定されます。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。

台湾の工事現場の死亡事故:通報義務・相験・職業安全衛生法の刑事責任 | 昊鼎国際法律事務所