ニュースをきっかけに執筆した記事です。公開日以降に状況や法令が変わっている可能性があります。
労働部が2026年9月24日に発表した審議結果では、2027年1月1日からの最低賃金を月額3万900台湾元、時給205台湾元としました。この調整案は、労働部が行政院へ送り、核定を求めるとしています。
行政院の2026年10月1日の院会議案も同じ額を記しています。ただし、参照した労働部と行政院の資料では、行政院の核定後に労働部が出す公告を確認できません。2026年10月14日の時点で、現行の下限として扱うのは月額2万9,500台湾元と時給196台湾元です。どちらも、両資料が調整前の額として記しています。
日本の本社が台湾子会社の来期予算を組むときは、いま払っている額と、審議で示された額を分けて残します。法定の下限は、施行日まで現行額です。新しい下限を給与に反映する時期は、核定後の公告と施行日を確認して決めます。
対象は、労働基準法が適用される労働者
最低工資法第3条の対象は、労働基準法が適用される労働者です。労働者、使用者、賃金、事業単位の定義は、労働基準法第2条に従います。
家庭で看護をする労働者は、労働部の2026年9月24日の発表とジェトロの2026年10月6日の記事だけでは、適用の有無を一律には決められません。最低工資法第3条の基準は、その労働者に労働基準法が適用されるかどうかです。
ジェトロの2026年10月6日の記事によると、引き上げによる恩恵を受ける見込みの約261万人のうち、台湾の労働者は約220万人、外国人労働者は約41万人です。国籍別の内訳は示されていません。法の適用は国籍ではなく、最低工資法第3条にいう労働基準法の適用によって決まります。
合意額が最低賃金を下回った場合
合意額が法定の最低賃金を下回っても、契約全体は無効になりません。最低工資法第5条は、その場合の賃金額を法定の最低賃金とすると定めています。
2026年10月14日時点の最低賃金は月額2万9,500台湾元、時給196台湾元です。月額3万900台湾元は、2027年に向けた審議で示された額です。
労使が3万900台湾元を今から合意して支払うことと、その額が法定の最低賃金として施行されることは別です。将来の最低額を契約に書くなら、任意の賃上げ額なのか、公告後の法定下限に連動する条項なのかを、適用開始日とあわせて書いておきます。
給与実績と来期の見積り
最低工資法第13条では、中央主管機関が審議通過の翌日から10日以内に行政院へ核定(案を認める決定)を求め、核定後に公告して実施します。行政院が核定しなかった場合は、その旨の書面を受け取った日から30日以内に審議会を改めて開きます。再審議の結果も、審議通過の翌日から10日以内に行政院へ送り、核定後に公告して実施します。
施行日の原則は、翌年1月1日です。最低工資法第14条では、行政院が核定した最低賃金は、審議会が別の施行日を必要と認め、その日も行政院が核定した場合を除き、翌年1月1日から施行されます。参照した資料では、別の施行日について行政院が核定したことは確認できません。労働部の2026年9月24日の発表と行政院の2026年10月1日の院会議案が挙げているのは、2027年1月1日です。
労働部の2026年9月24日の発表にも行政院の2026年10月1日の院会議案にも、行政院へ案を送った日は書かれていません。10月1日は院会議案の掲載日です。実際の送付日は不明です。
ジェトロの2026年10月6日の記事は月額最低賃金の引き上げが11年連続で決まったと報じています。一方、労働部の2026年9月24日の発表は、行政院の核定を経て実施されれば11年連続となり、2016年からの累計で月額は20,008台湾元から3万900台湾元(54.4%増)、時給は120台湾元から205台湾元(70.8%増)になると説明しています。
労働部の2026年9月24日の発表では、月額を1,400台湾元(4.745%)引き上げる審議結果が示されています。時給も月額の引き上げ率を踏まえ、現行の196台湾元から205台湾元とされました。ジェトロの2026年10月6日の記事は、月額の引き上げ率を約4.75%と表記しています。
各従業員と合意した賃金額と実際の支給額は、給与記録に残します。最低賃金の管理表には、労働部の2026年9月24日の発表と行政院の2026年10月1日の院会議案が調整前の額として示す現行の法定下限(月額2万9,500台湾元・時給196台湾元)と、両資料が2027年の額として示す審議結果(月額3万900台湾元・時給205台湾元)を記します。労働部の公告確認日と施行日も欄を設け、公告確認日は確認するまで空欄にします。
月額2万9,500台湾元以上、3万900台湾元未満の合意は、新しい下限が施行されるまで最低工資法第5条によって法定額へ置き換わりません。施行後は、そのときの法定額を下回る合意だけが置き換わります。今回の審議結果だけで、施行前の賃上げ義務は生じません。
聯合報(倡議家)の2026年10月13日付記事が伝えた労働部の同月2日の推計では、月給引き上げに伴う社会保険・賃金・労工退休金(労退)の年間増加額は計280.6億台湾元で、内訳は労働者12.4億、使用者261.46億、政府6.74億台湾元です。時給引き上げ分は計75.3億台湾元で、労働者6.05億、使用者65.48億、政府3.84億台湾元と推計されています。負担者別の年間増加額は、使用者326.94億台湾元、労働者18.45億台湾元、政府10.58億台湾元です。
聯合報(倡議家)の2026年10月13日付記事が伝えた労働部の推計では、対象者は月給制182.7万人、時給制78.46万人です。これは国籍別の集計ではありません。
行政院の核定を経て実施される場合、引き上げによる恩恵を受ける労働者は約261.16万人、うち台湾の労働者は約219.72万人という見込みです。労働部の2026年9月24日の発表と行政院の2026年10月1日の院会議案は、同じ人数を挙げています。
改定された保険料率は、聯合報(倡議家)の2026年10月13日付記事には見当たりません。同記事が伝えるのは、賃金引き上げに伴う年間費用の推計です。
本社向けの見積りでは、現行の法定下限と2027年に向けた審議結果を分け、労働部の公告を確認した日も記録します。聯合報(倡議家)の2026年10月13日付記事が伝えた326.94億台湾元は使用者全体の年間増加額の推計です。自社の人件費は、各従業員との合意額と実際の支給額を基に見積もります。
昊鼎国際法律事務所へのご相談
台湾子会社の給与記録と雇用契約を確認し、来期の人件費の見積りに審議額をいつから入れるかを検討します。
ご相談は弁護士の曾雋崴が担当します。メールはwei@hoveringlaw.com.twです。台北事務所は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2、台中事務所は40453 臺中市北區館前路19號6樓之1です。
このページだけでは、個別の雇用契約が適法かどうかは判断できません。見積りには台湾法人名、月給制・時給制それぞれの従業員数、契約上の賃金額が必要です。給与実績はその時点の合意額と実際の支給額で確認します。審議で示された額を法定下限として反映する時期は、労働部の公告と施行日が判明してから判断します。
参照した資料
- 労働部「最低工資連11漲」発表、発表日2026年9月24日、ページの更新日2026年9月29日
- ジェトロ ビジネス短信、2026年10月6日
- 行政院 院会議案「最低工資」、2026年10月1日、出典は内政衛福労働処
- 聯合報・倡議家、2026年10月13日
- 最低工資法第3条(2026年10月14日確認)
- 最低工資法第5条(2026年10月14日確認)
- 最低工資法第13条(2026年10月14日確認)
- 最低工資法第14条(2026年10月14日確認)
確認日:2026年10月14日
よくある質問
- 2026年10月14日現在、月額3万900台湾元は現行の最低賃金ですか。
- いいえ。現行額は月額2万9,500台湾元、時給196台湾元です。3万900台湾元と205台湾元は、労働部の審議結果と行政院の院会議案が2027年1月1日からの額として示した数字です。行政院の核定後に労働部が出す公告は、参照した資料では確認できません。最低工資法第14条では、行政院が核定した最低賃金は、審議会が別の施行日を必要と認め、その日も行政院が核定した場合を除き、翌年1月1日から施行されます。
- 外国人の従業員は全員、この最低賃金の対象ですか。
- 最低工資法第3条の対象は、労働基準法が適用される労働者です。ジェトロが2026年10月6日に示した外国人労働者約41万人は、引き上げによる恩恵を受ける見込みの人数で、国籍別の内訳は示されていません。9月24日の労働部の発表も同記事も、外国籍というだけで従業員全員が対象になるとは述べていません。家庭で看護をする労働者についても、外国籍というだけでは適用の有無は決まりません。
- 聯合報が報じた使用者側の年間増加額326.94億台湾元は、自社の追加コストですか。
- 自社の額ではありません。聯合報(倡議家)が2026年10月13日に伝えた労働部の推計で、月給と時給の引き上げに伴う使用者側の年間増加を合わせた全国の数字です。一社の給与や社会保険の見積りには置き換えられません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



