冷たい灰色の長い実験台の左寄りに、無地の透明な小さいガラス瓶が3本、ゆるく並んでいる。手前の1本にだけ淡いサフラン色の液体が入り、台の右側には何も置かれていない。
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台湾へ送る評価サンプルは「少量だから対象外」か――半導体材料と化学物質登録

約4分

AIで生成した架空の情景です。実在の企業、施設、人物を写したものではありません。

仮の場面です。日本の材料メーカーの営業担当が、台湾の半導体メーカーから新しい洗浄液の評価を頼まれ、サンプル瓶を3本用意しました。英語のSDS(安全データシート)も付けたので、あとは送るだけです。そこへ先方の購買担当から返信が届きます。「成分のCAS番号と、台湾での化学物質登録の状況を教えてください」。

商品名は開発陣の自慢でも、台湾の制度は商品名を読んでくれません。見るのは瓶の中の化学物質と、それを台湾で製造または輸入する者です。条文と公表資料は2026年10月5日時点のものです。

登録は物質ごと、申請するのは台湾の輸入者

毒性及關注化學物質管理法第30条は、新規化学物質を製造・輸入する者に、90日前までに環境部へ資料の登録(登錄)を申請するよう求め、承認(核准)を受けるまで製造も輸入も認めていません。既有化学物質清冊(既存物質のリスト)に載る物質でも、年100キログラム以上を製造・輸入するなら、その事実が生じた日から6か月以内に第一段階の登錄を申請しなければなりません(新化學物質及既有化學物質資料登錄辦法第15条)。

同辦法は、互いに反応しない2種類以上の物質を含む「混合物」そのものを対象外としつつ、個々の成分は除外していません(第3条、第4条)。配合品は成分ごとに清冊と照らすことになります。

「少量なら対象外」という条文もありません。新規化学物質は、年100キログラム未満でも原則として「少量登錄」の対象です(第5条)。科学研究開発用途なら年1トン未満は登録不要ですが、事業場で使う場合は事前に環境部へ届け出ます。製品・プロセスの研究開発用途は、年1トン未満でも少量登錄です(附表一)。

申請する「登錄人」は製造・輸入する者で、代理人も中華民国国籍の個人か、法令に基づき設立・登記された法人などに限られます(第2条)。顧客が輸入者になれば、申請するのも顧客です。配合を明かしたくないメーカーにとって、誰を輸入者にするかは物流より先に決める話で、成分情報を渡す範囲は材料開発契約のNDAとも重なります。

なお、環境部が公告で指定する毒性化学物質・關注化学物質などは同辦法の対象外で、それぞれの法律が管理します。その原料となる物質には同辦法が及びます(第4条)。

フッ化水素酸は濃度10%で扱いが変わる

第一類から第三類の毒性化学物質は、原則として製造・輸入・販売に許可証、使用・貯蔵に登記、廃棄・輸出にロットごとの登記が要り(同法第13条)、關注化学物質の取扱いには地方政府の承認(核可)が要ります(第25条)。

冒頭の洗浄液にフッ化水素酸が入っていたとします。環境部化学物質管理署の一覧では、氟化氫(氫氟酸、CAS 7664-39-3)は危害性のある關注化学物質として掲載されています。含有量が重量比0.1%以上10%未満なら容器・包装の表示と安全資料表の規定だけが及び、10%以上になると製造、輸入、販売、運送、使用、貯蔵が同法の規制を受けます。同じ酸でも、希釈率ひとつで法律上の顔つきが変わるわけです。

英語のSDSにも続きがあります。職業安全衛生法第10条は、製造者・輸入者・供給者に、危害性のある化学品を事業者などに提供する前の表示とSDSの提供を義務づけ、危害性化學品標示及通識規則は表示もSDSも中国語を主とすると定めています(第5条、第11~13条)。営業秘密を理由に成分名やCAS番号を伏せるには勞動部の承認(核定)が要り、発がん性物質など一定の危害分類の成分は伏せられません(第18条、第18条の1)。

新規化学物質には勞動部への登記もありますが(同法第13条)、環境部で登録の承認を得た製造者・輸入者は、この申請を省略できます(新化學物質登記管理辦法、2025年8月8日改正後の第6条第3項)。

台湾で造るなら、環境影響評価は工程と立地で決まる

環境影響評估法第5条は、環境に悪影響を及ぼすおそれのある工場の設立に環境影響評価(環評)を求め、その範囲を認定標準第3条(2026年2月5日改正)が業種、立地、面積で定めています。

顧客が半導体メーカーでも、材料工場が「半導體工業」になるわけではありません。附表二の半導體工業は、集積回路のウエハ製造、ウエハの封止、エピタキシャル、フォトマスク、リードフレームの製造です。無機酸を造れば「酸鹼工業」、重合反応で樹脂を造れば「樹脂製造工業」で、重合を伴わない調合・加工だけなら後者から外れます。附表二の業種は、ダムの集水区域などに立地するか、都市土地で5ヘクタール以上といった開発面積に当たると、環評の対象になります。

評価が必要な計画では、審査が終わる前に出た開発許可は無効とされます(第14条)。着工日は、環評の進み具合が決めることになります。

購買担当の質問は的を射ていました。瓶の中身がどの物質で、誰が輸入し、どの濃度でどれだけ動かすのか。そこが決まって初めて、どの条文の話かが決まります。

台湾での化学品の輸入・製造について相談をご希望の場合は、昊鼎国際法律事務所のパートナー弁護士、曾雋崴(Wei Tseng)へ、まず機密情報を含まない概要をwei@hoveringlaw.com.twにお送りいただけます。台北事務所:103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2。

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参考資料

資料確認日:2026年10月5日(台湾時間)。指定物質の一覧と数量・濃度の基準は公告で変わるため、個別の物質は申請時点の公表で確認が必要です。

本稿は一般的な情報であり、個別案件への法律意見ではありません。資料最終確認日:2026年10月5日(台湾時間)。

よくある質問

評価用サンプルを少量だけ台湾へ送る場合、化学物質の登録は不要ですか。
少量という理由だけでは不要になりません。既有化学物質清冊にない新規化学物質は、年100キログラム未満でも原則として「少量登錄」の対象です。科学研究開発用途で年1トン未満なら登録は不要とされていますが、事業場で使う場合は事前に環境部へ届け出ます。製品・プロセスの研究開発用途は、年1トン未満でも少量登錄です。申請するのは台湾の輸入者で、毒性化学物質・關注化学物質などは別の法令で管理されます。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。