仮の場面です。日本の特殊ガスメーカーの台湾子会社が、南部の工業区に第2工場を計画し、設計事務所との打合せで契約容量の話になりました。「5,000kW以上になると、再エネの宿題がつきます。それと先月、法律が変わってもう一つ増えました」。担当者は手帳に「宿題×2」と書きました。二つの宿題は別の法律から来ています。
契約容量5,000kW以上なら、10%分の再エネを5年以内に
再生能源發展條例第12条第3項は、契約容量が一定以上の電力用戶(電力の需要家)に、用電場所か適当な場所で再エネ発電設備または蓄電設備を自ら置くか、場所を提供して置かせるか、一定量の再エネ電力と憑證(再エネ証書)を買うかを求め、どれもしなければ、代わりに代金(義務を履行しない場合の納付金)を納めるよう定めています。「一定」の中身を決めるのが一定契約容量以上之電力用戶應設置再生能源發電設備管理辦法で、対象は公用售電業と結んだ用電契約の経常契約容量が5,000kW以上の需要家です(第3条)。
義務の量は前年度の平均契約容量の10%で(第4条)、経済部の通知があった年の1月1日から5年以内に、再エネ発電設備の設置、再エネ電力と憑證の購入、蓄電設備の設置を択一または組み合わせて履行します(第6条)。急ぐと割引があり、3年以内に終えれば通知された容量の20%、4年以内なら10%が差し引かれます(第7条)。期限内に終わらなければ改善か代金の納付を求められ、代金の料率は経済部が公告します(第6条第4項・第5項)。増設で前年度の平均契約容量が前回通知より10%以上増えると、その分の義務容量が追加で通知され、追加分は通知の年から改めて5年を数えます(第5条、第6条)。同一法人に属する複数の義務対象の需要家は、経済部の審査を経て義務容量を合算できます(第4条第3項)。
2026年9月の改正で、新設・増設には自家発電か蓄電の設置義務
もう一つの宿題は能源管理法第10条です。2026年9月23日の総統令で改正・公布されました(法令沿革)。同法第30条は公布日施行と定めており、中央法規標準法第13条により、公布日から数えて3日目の同月25日に効力が生じています。新しい第4項は「能源用戶新設或增設用電之契約容量達規定容量者,應於期限內設置一定裝置容量以上之自用發電設備或儲能設備」と定めます。能源用戶とはエネルギーの需要家のことで、規定容量、期限、装置容量、設備の種類と方式は経済部が辦法(下位法令)で定めます(第5項)。
この条文は審議の途中で二つの点が変わりました。行政院が2026年5月14日に通した草案は、契約容量が一定以上の需要家すべてに、自家発電設備「及」蓄電設備の設置を求めていました。既存の工場には置く場所がないという業界の声を受け、立法院経済委員会は2026年8月5日の委員会審査(初審)で対象を「新設または増設」に絞り、「及」を「或」に改めました(中央社、2026年8月5日、自由時報、2026年8月5日)。この内容で2026年8月21日に三読を通過しました。
閾値はまだ決まっていません。龔明鑫経済部長は2026年7月22日の立法院経済委員会で、5MW(5,000kW)を議論の基礎とし、猶予期間は当面5年を想定、下位法令は改正後半年以内に定めると説明しましたが(環境資訊中心、2026年7月23日)、2026年10月5日時点で下位法令は公布されていません。経済部は三読後、下位法令の改正を速やかに始めるとしています(中央社、2026年8月24日)。設置しないか、下位法令の種類・方式に合わない場合は期限付きの改善命令を受け、それでも改善しなければ15万~75万台湾元の罰鍰(過料)、以後は回数ごとに処罰されます(第24条)。
二つの義務は、別々に数える
既存の工場も契約容量5,000kW以上なら再エネ10%の義務を従来どおり負いますが、能源管理法の新しい義務は新設・増設に限られます。逆に、新工場は両方の対象になり得ます。再生能源發展條例の側は蓄電設備でも履行でき、能源管理法の側も蓄電設備を選べますが、一つの蓄電池を両方の履行に数えられるかどうかは、これから出る下位法令を読むまで分かりません。
冒頭の子会社が今決められるのは、契約容量をどの水準で申し込むか、屋根と敷地のどこに太陽光パネルと蓄電池の場所を残すか、建物を借りるなら設置の権利と費用負担を賃貸借契約にどう書くか、下位法令が出る前に契約するなら将来の義務を誰が負うかです。科学園区に入るなら、用地の制約は入居審査と一緒に考えることになります。
手帳の「宿題×2」の横に「別の法律、別の期限」と書き足せば、次の設計会議は少し短くなるはずです。
台湾での工場新設・増設と電力義務について相談をご希望の場合は、昊鼎国際法律事務所のパートナー弁護士、曾雋崴(Wei Tseng)へ、まず機密情報を含まない概要をwei@hoveringlaw.com.twにお送りいただけます。台北事務所:103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2。
参考資料
資料確認日:2026年10月5日(台湾時間)。能源管理法第10条第5項の下位法令(規定容量、期限、装置容量、設備の種類・方式)は未制定のため、公布後に内容の確認が必要です。
- 法務部・全國法規資料庫、再生能源發展條例(最終改正2025年6月11日。第12条は2023年6月21日改正):第12条、沿革。
- 法務部・全國法規資料庫、一定契約容量以上之電力用戶應設置再生能源發電設備管理辦法(最終改正2023年10月17日):第3条、第4条、第5条、第6条、第7条。
- 法務部・全國法規資料庫、能源管理法(最終改正2026年9月23日、総統華總一經字第11500093321號令):全文、第10条、第24条、第30条、沿革。
- 法務部・全國法規資料庫、中央法規標準法:第13条。
- 行政院、新聞「政院通過『能源管理法』部分條文修正草案 強化能源需求面管理 提升使用效率」(2026年5月14日)。
- 経済部、新聞稿「因應能源需求面管理及深度節能 行政院通過『能源管理法部分條文修正草案』」(2026年5月14日)。
- 環境資訊中心、「《能管法》修法要求用電大戶設儲能 經部:以5MW為討論基礎、約700家業者」(2026年7月23日)。
- 中央社、「立院初審 新增用電設備應設自用發電或儲能」(2026年8月5日)。
- 自由時報、「既有場址空間有限 用電大戶2.0縮小至新設、增設才適用」(2026年8月5日)。
- 聯合新聞網、「能源管理法修法三讀 新用電大戶未設發電或儲能最高罰75萬元」(2026年8月21日)。
- 中央社、「能管法修法三讀通過 經部:助強化需求管理提升電網韌性」(2026年8月24日)。
本稿は一般的な情報であり、個別案件への法律意見ではありません。資料最終確認日:2026年10月5日(台湾時間)。
よくある質問
- 台湾ですでに稼働している工場も、2026年9月の能源管理法改正で自家発電や蓄電設備を置かなければなりませんか。
- 改正後の能源管理法第10条第4項の対象は、新設または増設する用電の契約容量が規定容量に達する需要家です。既存の工場をそのまま使い続けるだけなら対象になりません。ただし、既存工場でも増設する契約容量が規定容量に達すれば対象になり得ます。規定容量、期限、装置容量は経済部の下位法令で定められますが、2026年10月5日時点ではまだ公布されていません。契約容量5,000kW以上の工場が再生能源發展條例に基づいて負う再エネ10%の義務は、これとは別で、既存の工場にも従来どおり及びます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。


