台湾の販売代理店が、保証金を現金で入れる代わりに本票を差し入れたいと言ってきました(架空の例です)。金額欄には500万台湾ドル、署名欄には会社の印と負責人の名前があります。この紙一枚で、何ができるのでしょうか。
本票は、振出人が受取人や所持人に一定の金額を無条件で支払うと約束する手形です。台湾の取引では、代金や前渡金の担保としてよく使われます。強みは、訴訟を経ずに強制執行に進める点にあります。
有効な本票の記載事項
票據法第120条は、記載事項を八つ挙げ、振出人が署名するとしています。本票であることを示す文字、一定の金額、受取人、無条件の支払いの約束、振出地、振出年月日、付款地、満期日です。
欠けても補われる事項があります。満期日がなければ一覧払い、受取人がなければ所持人、振出地がなければ振出人の営業所や住所地、付款地がなければ振出地となります。補充の規定がない事項が欠ければ、本票は無効になりえます(第11条)。金額以外は、交付前なら記載者が書き直して署名できます。金額は書き直せません。
署名は押印でもかまいません(第6条)。
署名した人の責任
署名した人は、記載された文言どおりに責任を負います。2人以上が共同で署名すれば連帯責任です(第5条)。
冒頭の本票で、負責人の名前が会社の代表者として書かれているだけなら、振出人は会社です。負責人個人にも責任を負わせたいなら、会社とは別に個人として振出人の欄に署名してもらう必要があります。ここは受け取る日に確かめておくところです。
本票裁定:訴訟なしで執行へ
所持人が振出人に請求するときは、裁判所の裁定を得て強制執行できます(第123条)。管轄は本票の付款地の裁判所です(非訟事件法第194条)。
この裁定は、振出人に対してしか使えません。相手を選ぶ手続です。裏書人や保証人に対しては、別に支払命令や訴訟が要ります。
満期が来たら所持人は支払いのための提示をし、本票に「拒絶証書作成免除」と書かれていても、提示は期限内にしなければなりません。ただし、振出人が「提示を受けていない」と言うなら、その証明は振出人の負担です(第95条、第124条による準用)。
この手続は非訟事件で、執行を許すかどうかを審査するものであり、債務が本当にあるかを確定する効力はないとされています。不服がある側は、送達から10日の不変期間内に、裁定をした裁判所に抗告状を出します(非訟事件法第42条、第43条)。抗告は地方法院の合議体が判断します(第44条)。
振出人が争う方法
振出人が偽造や変造を主張するなら、裁定の送達から20日以内に、裁定をした裁判所に確認訴訟を起こせます。訴訟を起こしたと証明すれば、執行は停止します。ただ、所持人の申立てにより、裁判所が担保を条件に執行の続行を認めることもあります(非訟事件法第195条第1項、第2項)。
偽造以外の理由、たとえば「担保として渡しただけで、債務はもうない」という主張はどうでしょうか。この場合も確認訴訟は起こせますが、執行が止まるのは、裁判所が認めて振出人が相当な担保を立てたときに限られます(同条第3項)。
時効は3年
振出人に対する本票の権利は、満期日から3年で時効にかかります。一覧払いの本票は振出日から数えます(第22条第1項)。担保として長く預かる一覧払いの本票なら、振出日から3年が過ぎていないかを、契約を更新するたびに確かめることになります。時効で本票の権利が消えても、振出人が受けた利益の限度では償還を求められます(同条第4項)。
担保として受け取るときに書いておくこと
券面には、何の担保なのかは書かれません。後で振出人が「債務はもうない」と争ったとき、所持人が示せるのは別の書面です。代理店契約や売買契約に、本票を受け取ったこと、担保する債務の範囲、債務がなくなったときの返還の方法を書いておけば、確認訴訟になっても説明の材料になります。
返還も記録に残します。契約が終わって本票を返すときは、受領書をもらってください。
回収の手段として、本票は一つの選択肢にすぎません。売掛金そのものの回収手続は台湾の取引先が売掛金を払わないにまとめています。
申し立てでは、本票の原本の提出を求められることがあります。保管場所が日本の本社なら、台湾に送る手順まで決めておけば、相手の財産が動く前に申し立てられます。
受け取る前の点検も申立ても、昊鼎国際法律事務所(wei@hoveringlaw.com.tw)で相談できます。台北事務所は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2、台中事務所は40453 臺中市北區館前路19號6樓之1です。
参考にした公的資料
確認日:2026年10月24日。条文は中国語の原文を基準にしています。
よくある質問
- 本票に満期日や受取人が書かれていません。無効ですか。
- 票據法第120条により、満期日の記載がなければ一覧払い、受取人の記載がなければ所持人が受取人とみなされます。振出地や付款地にも補充の規定があります。一方、本票であることを示す文字、一定の金額、無条件の支払いの約束、振出年月日など補充規定のない事項が欠けていれば、第11条により無効になりえます。
- 取引先の負責人個人にも責任を負わせることはできますか。
- 負責人が会社とは別に個人として振出人の欄に署名すれば、票據法第5条により署名者は記載の文言に従って責任を負い、2人以上が共同で署名したときは連帯して責任を負います。会社の印と負責人の署名が、会社の代表としてのものか個人としてのものかは、署名の形式で争いになりやすいため、受け取る前に確認します。
- 日本にある本社が本票を保管しています。手続のときに原本が必要ですか。
- 本票裁定は本票上の権利を行使する手続で、裁判所から本票の原本の提出を求められることがあります。原本の保管場所と、台湾の代理人に送る方法を事前に決めておくと、相手の財産の動きに合わせて早く申し立てられます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



