AIで生成した架空の場面です。夜明けのコンテナターミナルを遠くから見た風景で、くすんだ色のコンテナとガントリークレーンが静かな水面に沿って並び、文字や人の姿はありません。
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台湾で日本ブランドの模倣品が出回ったら:税関への登録、刑事告訴、民事請求の使い分け

約9分

AIで生成したイメージ画像です。実在の港、会社、事件を写したものではありません。

日本のスキンケアブランドの担当者が、台湾のECモールで自社製品の半額以下の出品を見つけました。取り寄せてみると、容器の印刷が粗く、成分表示も違います。台北の夜市でも同じものが売られているという情報が、台湾の取引先から届きました。会社は台湾に法人を持たず、商標は日本と台湾で登録済みです(架空の例です)。

このとき台湾で使える手段は、大きく三つあります。国境で止める税関の手続、警察と検察に動いてもらう刑事告訴、差止めと損害賠償を求める民事請求です。どれか一つではなく、順番と組み合わせを決めるのが、実務の中心になります。

前提:台湾で登録していることが出発点

台湾の商標法第2条は、商標権を取得しようとする者は商標法に基づいて登録を申請しなければならないと定め、権利は登録公告の日から生じ、存続期間は10年です(第33条)。日本で有名なブランドでも、台湾で登録していなければ、ここで説明する手続のほとんどが使えません。登録の受付と審査は、経済部が指定する専責機関である経済部智慧財産局が担います。

台湾に子会社や支店がないことは、障害になりません。第99条は、台湾で認許を受けていない外国法人や団体も、商標法に定める事項について告訴、自訴、民事訴訟ができると明記しています。日本の本社の名義で手続を進められます。

登録済みであっても、台湾の代理店が先にブランド名を自分の名義で登録していた、という事例は少なくありません。その場合の異議・評定・取消しの手順は、代理店による商標の先取り登録を扱った記事にまとめています。

どの行為が侵害になるか:施行中の第68条と第70条

商標権の侵害に当たる行為は、商標法第68条が定めています。商標権者の同意を得ずに、営業上の目的で、同一の商品・サービスに登録商標と同一の商標を使う行為、類似の商品・サービスに同一の商標を使って消費者に混同誤認のおそれを生じさせる行為、同一・類似の商品・サービスに近似する商標を使って混同誤認のおそれを生じさせる行為の三つです。

第70条は、侵害とみなされる行為を追加しています。他人の著名な登録商標と知りながら同一・近似の商標を使ってその識別力や信用を損なうおそれを生じさせる行為、著名商標の文字を会社名やドメイン名に使う行為のほか、第68条の侵害のおそれがあることを知りながら、まだ商品と結合していないラベル、タグ、包装容器などを製造、所持、陳列、販売、輸出入する行為も含まれます。模倣品の容器やシールだけが別ルートで運ばれている場合に使う条文です。

一つ注意があります。全国法規資料庫の商標法のページには2023年5月24日の改正版が表示されますが、第68条、第70条、第95条から第97条については、2022年5月4日に改正された条文の施行日が行政院の決定待ちで、まだ施行されていません。本稿で引用しているのは、現在施行中の2016年11月30日改正版の条文です。改正条文が施行されると、ラベルや包装容器に関する規定の位置づけが変わりますので、提訴や告訴の時点で施行状況を確かめる必要があります。

国境で止める:税関への提示保護と差止め

模倣品が海外から輸入される場合には、税関の手続が早い段階で流通を止める手段になります。手続は二層になっています。

第一層が提示保護です。海関執行商標権益保護措置実施弁法の第2条は、商標権者が商標権の存続期間内に税関へ保護資料を提示し、税関の知的財産権データベースに登録する仕組みを提示保護と定めています。申請は商標の登録番号ごとに一件とし、真正品と模倣品の特徴を見分けるための文字説明、その画像の電子ファイル、商標権の証明書、連絡先を添えます(第3条)。保護期間は承認の日から商標権の満了日までで、更新登録をすれば延長を申請できます(第4条)。財政部関務署の案内では、申請は関港貿単一窓口(関港貿單一窗口)のオンライン手続で行います。

第二層が、税関が疑わしい貨物を見つけたときの流れです。商標法第75条により、税関は職務の執行中に輸出入貨物が商標権を侵害しているおそれが明らかなときは、商標権者と輸出入者の双方に通知し、期限を定めて商標権者に侵害の認定と証拠の提出を、輸出入者に非侵害の証明を求めます。実施弁法第7条はこの期限を具体化していて、空輸の輸出貨物なら通知から4時間以内、空輸の輸入貨物と海上貨物なら24時間以内に、税関の事務所または税関が認めるオンラインの仕組みで侵害かどうかの認定に着手し、3営業日以内に書面か電子データで証拠を提出します。正当な理由があれば、期限内に申請して一度だけ3営業日の延長が認められます。日本の本社だけで対応しようとすると、時差と言語の壁でこの期限を落としやすいので、台湾側に連絡を受ける窓口を置いておくことが提示保護の前提になります。

商標権者が侵害と認定して証拠を出し、輸出入者が期限内に非侵害の証明を出さなかった場合、税関は第95条または第97条の違反の疑いがあるとして事件を司法機関に送致します(実施弁法第8条)。輸出入者が非侵害の証明を出してきた場合は、商標権者は通知から3営業日以内に、第72条の差止め(査扣)を申請するかどうかを決めなければなりません。申請は書面で行い、侵害の事実を疎明したうえで、税関が査定した輸入貨物の課税価格または輸出貨物のFOB価格に相当する保証金か担保を提供します。差し止められた側は、その2倍の保証金を積んで解除を求めることができます。

差止めを申請したら、税関の受理通知の翌日から12日以内に、第69条に基づく訴えを提起して税関に通知しなければならず、しなければ差止めは取り消されます。税関は必要に応じて12日延長できます(第73条)。訴訟で侵害が否定されて確定すると、申請者は差止めによって相手に生じた損害を賠償する責任を負います(第74条)。差止めは強い手段ですが、提訴の準備ができていない段階で申請すると自分の首を絞めることになります。

税関からは、差止めや留置の後、輸出入者と荷送人・荷受人の名称、住所、疑わしい貨物の数量の提供を申請できます(第76条)。得た情報は侵害事件の調査と提訴の目的に限って使えます。現物を見ないと判定できないときは、課税価格と関連税費の120%相当の保証金(3,000台湾ドル以上)を積んで貨物サンプルの貸出しを申請する制度もあります(第77条)。

刑事告訴:警察と検察に動いてもらう

施行中の第95条は、商標権者の同意なく営業上の目的で第68条と同じ三つの類型の使用をした者に、3年以下の有期徒刑、拘役、または20万台湾ドル以下の罰金(併科あり)を定めています。模倣品を製造する側、模倣品にブランドを付けて売る側がこれに当たります。

第97条は流通の側を対象にします。第95条・第96条の商品であることを知りながら販売し、または販売の目的で所持、陳列、輸出入した者は、1年以下の有期徒刑、拘役、または5万台湾ドル以下の罰金で、電子メディアやインターネットを通じて行った場合も同じです。ECモールの出品者はこの条文で問われることが多く、「知りながら」の要件を満たすために、権利者側から出品者に警告を送って記録を残す手順がよく取られます。侵害商品と文書は、犯人の所有かどうかを問わず没収されます(第98条)。

告訴は、犯罪の被害者が行うことができ(刑事訴訟法第232条)、書面または口頭で検察官か司法警察官に対して行います(第242条)。実務では、模倣品の購入記録、真正品との対比写真、商標登録証、委任状をそろえて、販売地を管轄する地方検察署か警察に提出します。第一審は地方法院で、通常・簡式審判または協商程序による第一審判決への上訴は智慧財産及商業法院が扱います(同法院組織法第3条第2号)。簡易判決への上訴は地方法院の合議庭が扱います。

刑事手続の利点は、捜索と押収を国家の権限で行えることです。倉庫の在庫量や仕入れ元が分かれば、民事の損害額の立証にも使えます。一方で、起訴や判決までの時間は権利者が制御できません。

民事請求:差止め、廃棄、損害賠償

第69条は、商標権者が侵害者に対して侵害の除去を、侵害のおそれがある者に対して防止を請求できると定め、あわせて侵害商品と、侵害に使われた原料や器具の廃棄を請求できるとしています。故意または過失による侵害に対しては損害賠償を請求できます。損害賠償請求権は、損害と賠償義務者を知った時から2年、侵害行為から10年で消滅します。

損害額の計算は、第71条が四つの方法を用意していて、権利者がどれかを選びます。民法第216条による実際の損害(証明が難しければ、通常得られた利益と侵害後の利益の差額)、侵害者が侵害行為で得た利益(侵害者が原価を立証できなければ売上全額)、押収した模倣品の小売単価の1,500倍以下の金額(押収品が1,500個を超えるときはその総額)、または使用許諾料に相当する金額です。賠償額が著しく不相当なときは、裁判所が減額できます。模倣品の販売実績が分からない事件では、小売単価の1,500倍以下の方法が計算しやすく、押収数が少なくても一定の金額を請求できる設計になっています。

商標法に基づく民事事件の第一審は、原則として智慧財産及商業法院の専属管轄です(智慧財産案件審理法第9条、組織法第3条)。合意管轄や応訴管轄(民事訴訟法第24条・第25条)が成立すればその裁判所も管轄を持ちますが、通常は新北市板橋区にあるこの専門の裁判所が第一審と第二審を扱います。

並行輸入の真正品は止められない

模倣品対策を進めるうちに、「正規代理店を通さずに日本から持ち込まれた本物」も止めたい、という相談に発展することがあります。これは別の問題です。第36条第2項は、登録商標を付した商品が商標権者またはその同意を得た者によって国内外の市場で取引され流通したものであれば、商標権者はその商品について商標権を主張できないと定めています。商品の変質や損傷、無断の加工や改造を防ぐ場合などの例外はありますが、日本で正規に販売された真正品を台湾の第三者が輸入して売る行為そのものは、原則として商標権の侵害になりません。税関への提示保護の資料にも、真正品の並行輸入を模倣品と混同しないよう、見分け方を正確に書く必要があります。

進め方の順番

多くの事案で、順番はこうなります。まず台湾の登録状況と、相手が誰かを確認します。並行して税関に提示保護を申請し、台湾側の連絡窓口を決めます。ECモールの出品には、出品者への警告と記録の保全を先に行い、第97条の「知りながら」を固めます。製造元や大口の流通元が特定できれば刑事告訴で押収を狙い、押収数と小売単価が分かった段階で第71条の計算方法を選んで民事請求に進みます。差止め(査扣)は、12日以内の提訴と保証金の準備ができているときに限って使います。

最初に拝見するのは、台湾の商標登録証(登録番号と指定商品)、模倣品を見つけた場所と購入記録、真正品との対比ができる写真、そして相手が代理店や元代理店など取引関係のある先かどうかです。昊鼎國際法律事務所では、税関への提示保護の申請書類、告訴状、民事訴状の作成と、台湾側の連絡窓口の対応についてご相談を受け付けています。初回相談は1時間NT$3,000で、オンラインでも受け付けています。ご連絡の際は、ご希望の言語をお知らせください。連絡先はwei@hoveringlaw.com.tw、所在地は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2です。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月7日(台湾時間)。条文は中国語の原文を基準にしています。本稿は一般的な情報であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

よくある質問

台湾に子会社も代理店もありません。日本の本社の名義で告訴や提訴ができますか。
できます。商標法第99条は、台湾で認許を受けていない外国法人も、商標法に関する事項について告訴、自訴、民事訴訟ができると定めています。ただし、前提は台湾での商標登録で、日本の登録だけでは台湾での商標権は生じません(第2条、第33条)。
税関に商標を登録しておくと、何が変わりますか。
海関執行商標権益保護措置実施弁法に基づく提示保護を申請すると、税関の知的財産権データベースに真正品と模倣品の見分け方が登録され、税関が疑わしい貨物を見つけたときに権利者に連絡が届きやすくなります。通知を受けたら、空輸の輸入貨物と海上貨物は24時間以内、空輸の輸出貨物は4時間以内に侵害かどうかの確認に着手し、3営業日以内に証拠を出す必要があります。保護期間は商標権の存続期間の満了日までです。
損害額をどう証明すればよいですか。模倣品の売上は分かりません。
商標法第71条は四つの計算方法から選ぶことを認めています。実際の損害、侵害者が得た利益、模倣品の小売単価の1,500倍以下の金額、または使用許諾料相当額です。模倣品の販売数が分からないときは小売単価の1,500倍以下の方法がよく使われますが、押収品が1,500個を超えるときはその総額が基準になり、金額が著しく不相当なら裁判所が減額できます。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。