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JASM熊本第2工場を台湾の対外投資制度から読む

約11分

AI生成の架空の工業風景です。実在の企業、工場または人物を写したものではありません。

TSMCは2025年の年次報告書で、熊本のJASM第1工場が2024年末に量産を始め、第2工場の建設が2025年に始まったと報告しています。同報告書は第2工場に3ナノメートル製造技術を使う計画も示しています。2026年10月時点でこれは会社が公表した計画であり、工場での生産開始や個々の取引先への技術提供を示すものではありません。

JASMは2021年11月のTSMCとソニーセミコンダクタソリューションズの発表で設立方針が示され、TSMCが過半数を持つ日本の製造子会社です。2024年2月の第2工場に関する発表には、TSMCのほかソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車が名を連ねています。日本にある工場でも、台湾の会社が出資し、設備や技術を持ち込む局面では、台湾側の投資手続と情報管理が別々に問題になります。

日本への出資と装置の販売は、台湾法上の入口が違う

台湾の国外投資に関する規則『公司國外投資處理辦法』第3条がいう「国外投資」には、会社が外国会社の株式・持分を取得すること、外国に支店などを設けること、そうした投資先に1年以上の貸付けをすることが含まれます。短期の国外有価証券の購入は、この規定の持分取得から除かれます。台湾企業が日本企業に単に装置を売り、その代金を受け取る取引を、持分取得と同じ対外投資申請として扱う規定ではありません。

一方、同辦法第4条は、国外投資の出資財産として現金のほか、機械・部品、原材料、専門技術、特許権その他の知的財産権を挙げています。装置を「販売」するのか、日本の事業に「出資」するのかで、契約書に同じ装置名が書かれていても法的な意味は変わります。技術についても、対価を得て一定範囲の利用を認めるライセンスと、出資財産として拠出する取引を分けて読む必要があります。同条は出資を認める形を列挙した規定であり、そこに挙がる技術を無条件で国外へ移せるという許可ではありません。

この区別は、日本の装置・材料メーカーにも関係します。自社が台湾の許可申請者でなくても、取引相手の台湾企業が日本の関連会社に現物出資する計画なら、納入先、資産の移転時期、据付けの主体を契約で確認する必要があります。反対に、発注者が通常の売買をしているだけなら、その発注を理由に台湾の対外投資許可が必要だと決めつけることはできません。日本企業自身の輸出管理や契約上の義務は、台湾側の対外投資制度とは別に検討します。

現行の境目は15億新台湾ドル

2026年10月時点の台湾の現行制度では、会社による国外投資額が15億新台湾ドルを超える場合、投資の実行前に経済部へ核准(事前承認)を申請しなければなりません(產業創新條例第22条の従前規定、公司國外投資處理辦法第5条)。15億新台湾ドル以下なら、事前に核准を申請するか、投資実行後6か月以内に所定の資料を添えて備查(投資実行後の届出)を行えます(同辦法第9条)。事前核准を受けた場合も、投資実行後6か月以内の備查が必要です(同辦法第8条)。経済部投資審議司の対外投資に関する公式Q&Aも、この区分を案内しています。

核准が必要な案件でも、申請しただけで認められるわけではありません。同辦法第6条は、国家安全への影響、国家経済への不利益、知的財産権の侵害などがある場合、主管機関が核准しないことができると定めています。「できる」という裁量の規定であり、該当する疑いがあれば必ず不許可になるという文言ではありません。

2024年のTSMC発表は、2工場を合わせたJASMへの投資額を200億米ドル超と見込み、日本政府の支援にも言及しています。この事業全体の数字だけから、台湾の会社1社の申請上の投資額や、個別の核准・備查の経過を確定することはできません。公開発表を契約の前提に使う際は、工場全体の投資規模と、取引相手が実行する個別の出資を区別する必要があります。

2025年改正の「特定技術」基準は、まだ施行されていない

台湾では2025年5月に產業創新條例第22条を改正し、特定の国・地域、特定の産業・技術、または一定の金額に該当する国外投資について事前核准を求める条文を設けました。ただし法務部の現行条文ページは、改正第22条と第67条の3の施行日を行政院が定めるとして「未定」と表示しています。したがって、2026年10月3日時点の投資手続を説明する際、改正後の「特定技術に当たれば事前核准」という文言を、すでに適用される要件として使うことはできません。

この施行時期は、契約期間が長い案件では無視できません。合意から増資、技術拠出、据付けまで年をまたぐ場合、どの行為をいつ行う予定かによって参照すべき制度が変わり得ます。契約で行政手続を条件にするなら、単に「必要な許可を取得する」と書くより、誰の投資について、どの時点の法令に基づく核准または備查を指すのかを定める方が、履行時期を判断しやすくなります。これは手続を要する取引を想定した契約上の提案であり、JASMの実際の契約条件を述べるものではありません。

14ナノメートル以下の技術と営業秘密の問題

対外投資の条文とは別に、台湾は国家核心重要技術(國家核心關鍵技術)の営業秘密を保護しています。國家核心關鍵技術認定辦法第6条・第10条によれば、技術項目は行政院が公告し、所管機関が毎年見直します。国科会による2023年12月の説明によれば、行政院が最初の技術項目を公告しました。その後も一覧は改訂され、2026年2月13日改訂の公告が2026年10月時点の参照先です。経済部智慧財產局は、この改訂後の一覧を42項目と説明しています。

現行公告の第29項には「14奈米以下製程之IC製造技術及其關鍵氣體、化學品及設備技術」が載っています。製造技術だけでなく、その工程に関わる重要なガス、化学品、装置の技術も文言に含まれるため、日本の材料・装置メーカーが台湾側の共同開発情報や工程データを受け取る場合にも、情報の内容と権限を確かめる理由があります。ただし、TSMC年次報告書の3ナノメートル計画と、この一覧の数字を並べただけでは、特定の装置、文書、データが規制対象の営業秘密かどうかも、誰がその情報を保有しているかも分かりません。

國家安全法第3条第1項は、外国、中国大陸、香港、マカオ、域外の敵対勢力、またはそれらが設立・実質的に支配する組織・機関・団体や派遣者のために、公告された国家核心重要技術に関する営業秘密を不正に取得したり、無権限・権限外で複製・使用・開示したりする行為などを禁じています。第2項は、外国、中国大陸、香港またはマカオでその営業秘密を使用する意図をもって、第1項に列挙された行為のいずれかをすることを別に禁じています。いずれも技術項目の公告だけで適用が決まる規定ではありません。同条の「営業秘密」は營業秘密法第2条の定義によります。その種の情報に通常接する人々に一般に知られていないこと、秘密性による現実または潜在的な経済的価値、所有者による合理的な秘密管理措置の三つが必要です。第3条の要件を満たさない行為も、別の規定による評価が必要です。營業秘密法第10条は、不正取得や、法律行為で得た秘密の不正使用・開示を侵害行為としています。

技術項目の公告そのものが、適法な国際共同開発や許諾を一律に禁止するわけではありません。国科会も2023年の発表で、保護の対象を不法な営業秘密の流出と説明し、適法な商取引や技術交流には影響しないと述べています。ただし、許諾があるかどうかは実際の権利者、契約、秘密管理の状況を見なければ判断できません。

日本の取引先が契約で区別したい情報

装置の据付けや材料の評価では、製品仕様書だけでなく、製造条件、歩留まりに関わるデータ、調整手順などが双方を行き来することがあります。そうした資料がすべて台湾法上の営業秘密とは限りませんが、台湾側の会社やその子会社から受け取る際は、資料の所有者、提供を認めた人、利用目的、アクセスできる部署、再委託先や関連会社への共有範囲を文書に残しておくと、許諾範囲を後から確認できます。クラウド上で閲覧させるだけなのか、複製を認めるのかでも取扱いは違います。

仮に台湾の装置開発会社が日本の子会社に技術を現物出資し、その子会社から日本の材料メーカーへ評価資料を渡すとします。これは架空の例です。最初の出資が台湾の国外投資手続に当たるか、拠出した技術の権利が誰に移るか、材料メーカーへの再提供を誰が許諾できるかは、別々の問いです。出資に関する行政手続が終わっても、契約や営業秘密に関する権限まで自動的に移るとは限りません。

反対に、日本のメーカーが自社開発の装置を台湾企業へ通常の売買として納めるなら、台湾企業による国外出資の有無と、自社が提供する設計情報の権利・使用範囲を混ぜずに契約できます。台湾への拠点設置を日本企業自身が検討する場合は、半導体部品企業の台湾進出形態で扱う現地子会社・支店・代理店の区別が別の出発点になります。

台湾側の投資形態、予定額、契約で扱う情報の種類について相談する場合は、機密資料を添えずに概要からお送りください。昊鼎国際法律事務所の曾雋崴(Wei Tseng)弁護士への連絡先はwei@hoveringlaw.com.tw、台北事務所は103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2です。

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参考資料

一般的な法制度情報であり、個別案件への法律助言ではありません。資料は2026年10月3日(台湾時間)に確認しました。

よくある質問

台湾企業が日本の会社に出資する場合、必ず事前許可が必要ですか。
2026年10月時点の台湾の現行制度では、会社による国外投資額が15億新台湾ドルを超えると投資前の核准(事前承認)が必要です。15億新台湾ドル以下なら事前承認を申請するか、投資実行後6か月以内に備查(投資実行後の届出)を行えます。個別案件の投資額と取引形態を確認する必要があります。
日本の装置・材料メーカーがJASM向けに販売するだけで、台湾の対外投資申請者になりますか。
台湾の『公司國外投資處理辦法』は、台湾の会社による外国会社の持分取得、国外拠点の設立、投資先への1年以上の貸付けなどを対象とします。日本企業による通常の製品販売だけを、この制度上の台湾側投資と同一視することはできません。取引に出資や知的財産の現物出資が加わる場合は別に確認します。
国家核心重要技術の一覧に半導体があれば、日本への技術提供は一律に禁止されますか。
一律禁止ではありません。日本で使用する意図をもって、公告された国家核心重要技術に関する営業秘密を不正に取得したり、無権限・権限外で複製・使用・開示したりする行為などは、台湾の國家安全法第3条第2項が禁じています。第1項は、外国等またはそれらが設立・実質的に支配する組織等や派遣者のために、同条所定の行為をする場合を別に定めています。資料が営業秘密に当たるか、誰がどこまでの使用を許諾したかを個別に確認する必要があります。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。