暗いチャコール色の石のベンチの左側に、小さな透明の三角柱のガラスが置かれている。石の上には細い紫色の光が差し、隣にも何も置かれていないベンチが続く。奥の明るい窓はぼけている。
← コラム一覧へ台湾法律情報

台湾の半導体特許訴訟――侵害認定と賠償額は別に決まる

約14分

AIで生成した架空の情景です。実在の企業、施設、人物や裁判の現場を写したものではありません。

台湾の智慧財產及商業法院は2026年3月、義隆電子と敦泰電子のタッチ制御チップをめぐる訴訟で、特許請求項への該当と有効性について中間判決を出しました。原告は1億台湾ドルの支払いも求めていますが、113年度民專訴字第48號・2026年3月18日中間判決は賠償を命じていません。排除・予防、廃棄、損害賠償の請求は後の審理に残されました。

日本の装置・材料メーカーが台湾で権利を行使する場合も、侵害の立証、無効抗弁、金額、販売を一時的に止める必要性は別々に問われます。以下の事件の判断は、それぞれ記載した審級と時点のものであり、別の製品への侵害認定や確定した賠償額を示すものではありません。

チップの動作を請求項に結び付けた中間判決

義隆電子の事件で対象となったのは、敦泰電子の「FT3437」チップと、それを搭載したタッチパッドモジュールです。原告の台湾発明特許I662460は、タッチパッドが手のひらから指へ接触物を再識別するとき、実際には指が離れていなくても、いったん接触が離れたとOSに通知してから指として通知する手順を請求項に含みます。裁判所は、購入したノートパソコンに当該チップが搭載されていること、テスト時の出力、先行技術との違いなどを検討し、請求項1・6への該当と、被告の有効性に関する抗弁を退ける判断を示しました。同中間判決が扱ったのは、このチップとモジュールです。搭載先のノートパソコンのメーカーについて責任を認定した判決ではありません。

台湾の專利法第58条は、特許権の範囲を請求項によって定め、解釈に当たって明細書と図面も考慮できるとしています。製品名が似ている、同じ工程で使う、といった説明だけでは、請求項の各構成要件との対応は示せません。外から見えにくいチップの動作や装置の内部構造であれば、どの製品のどの版を、どの条件で試験したかが争点になります。技術資料は日本本社にだけあり、試料や販売記録は台湾にあるという場合、訴訟前に双方の記録を同じ製品型番と期間で照合する必要があります。

無効抗弁は民事事件の中で審理される

現行の智慧財產案件審理法第41条では、当事者が特許に取消しの理由があると主張・抗弁したとき、民事裁判所がその理由の有無を自ら判断します。理由があると判断すれば、権利者はその民事訴訟で相手方に権利を主張できません。これは、その判決だけで登録特許を行政上取り消すという意味ではありません。義隆電子の中間判決は、先行技術の組合せを検討したうえで、当該請求項に取消しの理由はないと判断しました。2023年改正の施行日は2023年8月30日です。

同じ法院でも、結論は対象の特許と資料で変わります。印能科技と毅力科技の半導体関連装置の事件では、2022年の第一審が、圧力処理装置に関する発明特許I494162の侵害を認める一方、別の実用新案M450049の請求項には取消しの理由があると判断し、その実用新案に基づく請求を認めませんでした。108年度民專訴字第35號・2022年7月29日判決は改正前の同法第16条に基づく判断です。後の控訴・差戻審では発明特許の解釈と製品への該当が再び争われています。実用新案に関する第一審の判断を、発明特許の最終的な帰結と混同できません。

日本企業が台湾特許と日本特許の対応関係を整理する際も、まず台湾で登録された請求項、出願時の記載、関連する先行技術を台湾の権利ごとに分ける必要があります。日本や米国で同族の特許が認められたことだけで、台湾の請求項の有効性や侵害が決まるわけではありません。

賠償の計算は売上高から始まっても、そこで終わらない

專利法第96条は、侵害の排除・予防と、故意または過失による侵害についての損害賠償を分けています。賠償額は第97条により、権利者の損害、侵害によって得た利益、合理的な実施料を基礎とする方法から一つを選んで計算します。故意の場合は権利者の請求を受け、裁判所が侵害の事情に応じて増額できますが、証明された損害額の3倍が上限です。売上全額や請求書に記した金額が、そのまま認容額になる制度ではありません。

印能科技の事件の第一審は、争いのある製品の販売額を絞り、粗利益率24%と当該発明の寄与率35%を用い、一部の期間について故意の侵害を認めて1.5倍を適用しました。その結果、毅力科技と当時の責任者との各連帯債務について、343万6981台湾ドルと96万8347台湾ドルの支払いをそれぞれ命じました。2022年第一審判決に記載された計算であり、現在の確定賠償額ではありません。

実際、2023年の第二審判決は発明特許の請求項を製品が満たさないとして第一審の認容部分を覆し、賠償の計算には進みませんでした。最高法院113年度台上字第460號・2025年5月21日判決は、第二審が採用した請求項解釈について当事者に十分な弁論の機会を与えなかったとして、この部分を破棄・差し戻しました。最高法院自身が侵害や賠償額を決めたわけではありません。

差戻審は114年度民專上更一字第4號・2026年2月26日中間判決で、対象をPCS型の圧力処理装置に絞って発明特許の請求項1への該当を認め、賠償、排除・予防、廃棄の審理を続けるとしました。少なくとも2026年5月25日の訴訟記録閲覧制限に関する裁定時点で、販売数量・価格など賠償計算に必要な資料と、顧客名など秘匿すべき情報の扱いが審理対象でした。裁判所は不要な部分を伏せた資料を代理人が照合する方法を定めています。この事件は2023年改正前から係属しており、同法第75条の経過規定により旧法の適用が問題になります。現行条文の手続を過去の裁判にそのまま当てはめることはできません。

大型装置の証拠保全と販売停止は別の申立て

訴訟前に装置を調べたいとき、証拠保全は一つの手段です。民事訴訟法第368条は、証拠が失われる・利用しにくくなるおそれ、または物の現状を確定する法律上の利益と必要性などを定めています。装置を購入できないという事情だけで、相手の工場内の装置や帳簿に広くアクセスできる制度ではありません。

友威科技が凌嘉科技のプラズマ処理装置について工場内での撮影や契約書・売上資料の保全を求めた事件では、法院は114年度民專抗字第2號・2025年7月31日裁定で抗告を退けました。展示会の資料と申立人側の対比表からは、特許請求項が指定する処理室内の電極配置を対象装置が備えるとの疎明が足りず、装置や文書が失われるという客観的な事情も示されていないと判断したためです。これは証拠保全の必要性に関する裁定であり、本案の侵害訴訟を終わらせた判決ではありません。装置の外観写真、技術発表、型番、内部構造を推測した対比表の間に何が欠けているかが、申立ての範囲を左右します。

一方、相手の台湾での販売を判決前に止める「定暫時狀態之處分」は、証拠を残す申立てとは目的も要件も違います。現行の智慧財產案件審理法第52条は、争いのある法律関係に加え、重大な損害の防止、急迫した危険の回避など、暫定的な処分を必要とする事実の疎明を求めます。不足すれば法院は申立てを却下し、疎明があっても担保を命じることがあります。処分が送達された日から14日以内に本案訴訟を提起したことを示さなければ、法院は処分を取り消せます。一定の理由で処分が取り消された場合、申立人には相手方の損害を賠償する義務も生じます。

研磨液に関するCMC Materialsの申立てを退けた111年度民暫抗字第1號・2022年2月18日裁定では、対応する米国特許についての米国ITC資料が主に提出されました。法院は、台湾特許に関する侵害の見込みや台湾での重大な損害、処分の必要性を示す資料として足りないとし、担保で疎明不足を補えないと判断しました。この裁定は2023年改正前の法令に基づくもので、現行第52条を適用した先例ではありません。ただし、外国の手続で得た資料を台湾の請求項、対象製品、台湾での事業への影響に結び付けなければならないという証拠上の問題は、日本企業にも共通します。

台湾で権利行使を検討する日本本社は、台湾特許の請求項と対象製品の型番・版、試験条件、台湾での製造・販売・輸入の記録を対応させることになります。賠償を求めるなら、どの取引がどの製品に関係し、利益または合理的な実施料をどう示せるかも別に整理します。資料に顧客名や製造条件が含まれる場合、開示範囲と閲覧方法を訴訟の早い段階で検討する余地があります。装置の内部を確認したいのか、販売を暫定的に止めたいのかによって、申立てに必要な証拠も異なります。

台湾の特許紛争について相談をご希望の場合は、昊鼎国際法律事務所のパートナー弁護士、曾雋崴(Wei Tseng)へ、まず機密情報を含まない概要をwei@hoveringlaw.com.twにお送りいただけます。台北事務所:103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2。

半導体企業向けのほかのコラム

参考資料

資料確認日:2026年10月4日(台湾時間)。裁判の審級と、その後に確認できた手続を区別して記載しました。

本稿は一般的な情報であり、個別案件への法律意見ではありません。資料最終確認日:2026年10月4日(台湾時間)。

よくある質問

台湾で特許の無効を抗弁として主張すると、民事裁判所が特許を取り消しますか。
智慧財產案件審理法第41条により、裁判所はその訴訟で取消しの理由があるかを自ら判断します。理由があると判断した場合、権利者はその民事訴訟で相手方に権利を主張できません。この判断と、行政手続で特許そのものを取り消すことは区別されます。
侵害を認める中間判決が出れば、賠償額も確定しますか。
確定しません。2026年の義隆電子・敦泰電子事件、印能科技・毅力科技事件の中間判決は、対象製品と特許請求項の関係を判断する一方、損害賠償などの請求を後の審理に残しています。賠償には故意・過失と損害額について別の検討が必要です。
台湾で販売をすぐ止めたい場合、担保を積めば仮処分を得られますか。
担保だけでは足りません。現行の智慧財產案件審理法第52条は、争いのある法律関係と重大な損害・急迫した危険など処分を必要とする事実の疎明を求め、疎明が不足すれば申立てを却下すると定めています。2022年の研磨液事件でも、当時の法令の下で、米国特許に関する資料だけでは台湾での必要性を示せないとして申立てが退けられました。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。