ニュースをきっかけに執筆した記事です。公開日以降に状況や法令が変わっている可能性があります。
日本統治時代に建てられ、国定古跡に指定されている台中州庁が、10月15日に再び公開されました。修復工事は6年に及びました。同日付のフォーカス台湾は、元の姿の保存と現代の利用に必要な機能との両立が、修復上の課題だったと伝えています。
日本企業が台湾の古い建物を店舗や展示会場として使う場合、建築年代だけでは適用される手続は決まりません。台湾法上の「古蹟」に指定された建物には、修復と再利用に特有の規定があります。『歷史建築』など別の文化財区分もあり、その建物の指定・登録区分によって、検討すべき規定が異なります。
掲載画像は歴史ある建物の再利用をイメージした架空のものです。台中州庁や実在する文化財建築の写真ではありません。
元の用途を優先しながら、新しい使い方を考える
古蹟管理維護辦法第8条は、古跡の使用・再利用について、元の目的や、元の用途に関連し、または適合する使い方を優先して考慮するよう求めています。元の用途と違えば一律に禁止されるという条文ではありませんが、新しい事業の都合だけで用途を決められるわけでもありません。
同条第2項によると、元と異なる用途に変更し、かつ内部改修や付属設備の増設を行う場合、所有者・使用者・管理者は古蹟修復及再利用辦法の規定に従わなければなりません。両方が要件です。用途変更だけの場合や、用途を変えずに改修する場合を、それぞれ独立した要件として列挙した規定ではありません。
建物の姿にも制約があります。文化資產保存法第24条は、古跡の元の形状・外観と工法の保存を求める一方、再利用計画では元の形状・外観を変えないという原則の下で、必要な設備を追加することを認めています。外から見えない工事なら自由に行える、という基準ではありません。
例えば店舗としての利用を検討するなら、予定する営業内容と、実現に必要な工事や設備を一緒に考えることになります。「既存の建物を借りる」という契約の説明だけでは、どこに手を加え、どの部分を残す計画なのかは分かりません。設備ごとの判断も必要です。設置の可否は、建物と計画によります。
所有者の承諾と、計画に対する行政の承認
古蹟修復及再利用辦法第13条は、古跡の修復または再利用について、所有者・使用者・管理者が計画を主管機関に提出し、承認を受けてから実施することを求めています。主管機関は、文化資産の審議会を開いて審査します。賃貸借契約に改修を認める条項があっても、この行政手続を置き換えることはできません。
すでに再利用されている建物でも、借主が想定する使い方や工事が、承認された計画と一致しているとは限りません。所有者から「利用できる」と説明された範囲と、行政が承認した範囲を比べるには、契約案だけでは足りません。承認された計画の内容も必要です。過去に使われていたという事実だけで、今回の改修まで認められていると結論づけることはできません。
日常管理の計画も別にあります。文化資產保存法第23条は、古跡の指定後、所有者・使用者・管理者に管理・維持計画を作成し、主管機関へ「備查」として提出することを求めています。日常の手入れや定期修繕、運営管理などを扱う計画で、修復・再利用計画の「核准」、すなわち承認とは同じ手続ではありません。
借主と所有者の間では、誰が計画の提出を担うか、承認に合わせて工事を変更する場合の費用を誰が負担するかが契約上の論点になります。賃料の発生日や営業開始予定日を決めても、その日までに計画が承認されることは保証されません。利用の合意と行政手続の進み方がずれた場合の負担は、建物を使えるかという問題とは別に残ります。
今回の台中州庁の報道は施設の再公開を伝えるもので、民間店舗の新たな募集や、特定の商業用途への承認を示したものではありません。
ニュース・法令確認日:2026年10月18日。台湾の古跡の再利用に関する一般情報であり、個別建物の改修の可否を判断するものではありません。
参照資料
よくある質問
- 台湾の古跡は、元と違う用途には使えないのですか?
- 古蹟管理維護辦法第8条は、元の目的や元の用途に関連し、または適合する使い方を優先して考慮するよう求めています。違う用途を一律に禁止する規定ではありません。ただし、元と異なる用途への変更に加えて内部改修や付属設備の増設を行う場合、同条第2項により古蹟修復及再利用辦法に従う必要があります。
- 所有者が改修に同意すれば、古跡の再利用を進められますか?
- 所有者の承諾だけでは足りません。古蹟修復及再利用辦法第13条は、所有者・使用者・管理者が修復または再利用の計画を主管機関に提出し、承認を受けてから実施することを求めています。賃貸借契約などによる私法上の合意と、行政の承認は別です。
- 古い建物なら、すべて同じ再利用手続が必要ですか?
- 本文は台湾法上の古蹟に指定された建物を対象にしています。建築年代だけでは指定の有無や区分は決まりません。歷史建築など別の文化財区分もあるため、古蹟の規定を古い建物すべてにそのまま当てはめることはできません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



