スクーターにGPS発信機を付ける行為は何の罪か 台湾、コメディアン襲撃の疑いで5人起訴
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スクーターにGPS発信機を付ける行為は何の罪か 台湾、コメディアン襲撃の疑いで5人起訴

約7分

ニュースをきっかけに執筆した記事です。公開日以降に状況や法令が変わっている可能性があります。

7月25日から8月にかけて、一台のスクーターに付けられたGPS発信機が、尾行とあわせて、持ち主の日々の動きや出入り先の記録に使われていた。新北地方検察署は、そう見ています。

中央通信社(CNA)の10月21日の記事によると、新北地検はこの日、中国の習近平国家主席を風刺するネタを演じてきた台湾のコメディアンが9月に車にはねられた件で、5人を重傷害未遂などの罪で起訴しました。日本でも産経新聞(共同通信配信)が同じ日に報じています。検察の説明では、「K」と呼ばれる中国の人物が、コメディアンの個人情報を集めて重傷を負わせ、9月20日の公演に出られないようにすることを、45万台湾ドルの報酬で台湾国内の男に頼みました。前金は25万台湾ドルでした。

GPS発信機を付けたのは、この男だとされています。起訴の内容では、男は生活の時間帯や出入り先を記録し、自宅やナンバープレートなどの情報をKに渡したうえで、別の男と「交通事故」を計画しました。9月11日の午後5時前、自宅近くに戻ったコメディアンに車がぶつかったのは、この計画によるものだというのが検察の見方です。運転していた男は悲鳴を聞いて車を止め、けがは右骨盤の打撲にとどまったとされます。検察はさらに、3人が保険金の請求を手伝うと装って、氏名や生年月日、身分証番号が載った診断書を手に入れ、画像をKに送ったと指摘しています。軽傷にとどまったことに不満を持ったKは、残りの20万台湾ドルを払わなかったといいます。

これらはすべて検察官の主張です。起訴された事実について、裁判所の審理はこれからです。

5人に問われた罪

検察は5人全員を、刑法の重傷害未遂罪と、個人資料保護法の不法な個人データ収集・利用の罪で起訴しました。GPS発信機を付けたとされる男には、刑法の「正当な理由なく電磁的記録で他人の非公開の活動をひそかに記録した罪」も加わっています(CNA)。Focus Taiwanによると、5人は裁判所の許可を得て勾留されています。検察は5人それぞれに具体的な刑を求めており、最も重いのはGPS発信機を付けたとされる男への有期徒刑5年6月以上です。

重傷害罪の法定刑は5年以上12年以下の有期徒刑で、未遂も罰せられます(第278条第1項・第3項)。ここでいう重傷には、手足の一本以上の機能を失わせたり、ひどく損なったりすることが含まれます(第10条第4項第4号)。検察は、手足を折って公演に出られなくする計画だったと説明しています。

それでも、有罪かどうかを決めるのは裁判所です。有罪判決が確定するまで被告人は無罪と推定され(刑事訴訟法第154条第1項)、第一審の判決にも上訴ができます。

GPS発信機と「竊錄」の罪

日本語で言えば「盗み録り」にあたる罪です。刑法第315条の1第2号は、正当な理由なく、録音・写真・録画または電磁的記録によって、他人の公開されていない活動や言論、会話、身体のプライベートな部位をひそかに記録した者を、3年以下の有期徒刑、拘役または30万台湾ドル以下の罰金に処すると定めています。

では、声も映像も残さないGPS発信機はどうでしょうか。最高法院はこの問いに答えています。公務員が法律上の根拠のないまま他人の車の底部にGPS追跡器を取り付けた事件で、最高法院の2017年11月30日の判決(106年度台上字第3788號)は、追跡器で得られる位置、移動方向、移動速度、停留時間を電磁的記録とし、声や映像を捉えるものでなくても「竊錄」に当たると述べました。何日も続けて正確に行動を把握でき、集めた位置情報を分析すれば日々の生活パターンまで分かる、という点も重く見ています。この判決は、追跡器の設置を正当な捜査行為だとする検察官の上告を退けました。

「正当な理由なく(無故)」に当たるかどうかは、事件ごとに判断されます。この判決の事件では、法律上の根拠も上司の書面による同意もないまま取り付けていたことから、正当な理由はないとされました。

ストーカー規制法とは別の線

台湾には跟蹤騷擾防制法(ストーカー規制法)もあります。ただ、同法第3条第1項が対象とするのは、特定の人に対して、本人の意思に反し、性または性別に関係する形で反復・継続して行う監視や行動の把握などで、相手を恐れさせ、日常生活や社会活動に影響しうるものです。性や性別と関係のない動機で本人の行動を追われた場合、この項には当たりません。一方で第2項は、本人の配偶者や直系血族、同居の親族、社会生活上の関係が密接な人に向けた同じような行為を、性や性別と関係がなくてもつきまといに当たるとしています。どちらにも当たらない場合でも、刑法第315条の1や個人資料保護法の罪は別に検討できます。性や性別に関係するつきまといへの対応は、台湾のストーカー対策:跟蹤騷擾防制法の書面告誡・保護令・告訴で扱いました。

住所、ナンバー、診断書と個人資料保護法

個人資料保護法がいう個人資料には、氏名、生年月日、身分証番号のほか、病歴や医療、社会活動など、直接または間接に本人を特定できる情報が広く含まれます(第2条第1号)。民間の人や会社が個人資料を集めるには、特定の目的と、法律の規定や本人の同意などの条件が必要です(第19条)。病歴や医療、健康診断に関する資料は、原則として集めること自体が禁じられています(第6条第1項)。

刑事罰は第41条にあります。自分や第三者の不法な利益を図り、または他人の利益を害する目的で、これらの規定に違反し、他人に損害を生じさせるおそれがある場合、5年以下の有期徒刑に処せられ、100万台湾ドル以下の罰金を併科されることがあります。リンク先の画面に出るのは2025年11月11日に改正された条文で、この改正はまだ施行されていません。2026年10月22日時点で効力のある2023年5月31日改正の版の第41条でも、目的、損害を生じさせるおそれ、刑の重さは変わりません。

事故の後に保険会社を名乗る連絡が来たら、本当に契約している保険会社か、手元の保険証券に書かれた窓口へ自分からかけ直して確かめる方法があります。

告訴の期限と、発信機を見つけたとき

ここで期限の問題が出てきます。刑法第315条の1の罪は親告罪で(第319条)、告訴権者が犯人を知った時から6か月以内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法第237条第1項)。起算点は発信機を見つけた日ではなく、犯人を知った時です。一方、個人資料保護法第41条の罪は親告罪から外されています(同法第45条ただし書)。告訴の取下げや示談との関係は、台湾の傷害と示談:告訴取下げの期限で取り上げています。

見つけた発信機は、誰が付けたかをたどる手がかりになります。取り付けられていた位置の写真、気づいた日時、最近の不審な出来事を書き留めておくと、警察で説明しやすくなります。

刑事とは別に求められる損害賠償

処罰とは別に、民事で賠償を求める道もあります。故意または過失で他人の権利を不法に侵害した者は、損害を賠償しなければなりません(民法第184条第1項)。プライバシー(隱私)は、身体や名誉と並んで、財産以外の損害についても相当の金額を請求できる権利として条文に挙げられています(第195条第1項)。民間の人や会社が個人資料保護法に違反して個人資料を不法に集めたり使ったりした場合も、故意や過失がなかったことを証明しない限り、賠償の責任を負います(個人資料保護法第29条第1項)。

刑事事件が起訴されていれば、その手続の中で附帯民事訴訟を起こすこともできます(刑事訴訟法第487条第1項)。賠償の項目と附帯民事訴訟の進め方は、台湾の傷害被害の賠償:治療費・休業損害と刑事附帯民事でも説明しています。

検察が追跡の始まりとしたのは7月25日、車がぶつかったのは9月11日でした。起訴された5人が有罪かどうか、発信機が残したとされる記録をどう評価するかは、これから裁判所が判断します。

昊鼎国際法律事務所へのご相談

昊鼎国際法律事務所では、曾雋崴弁護士が、台湾で暮らす日本の方からの、つきまといや位置情報の追跡、個人情報の不正な取得についての告訴、警察での手続、その後の刑事・民事の手続に関するご相談を担当しています。いつ何に気づいたか、手元にある写真や記録をwei@hoveringlaw.com.twにお送りいただければ、告訴の期限を含めて取るべき手続を一緒に確認します。

  • Taipei 103 臺北市大同區承德路一段35號7樓之2
  • Taichung 40453 臺中市北區館前路19號6樓之1

参照した資料

確認日:2026年10月22日

よくある質問

台湾で自分のバイクや車にGPS発信機を付けられていたら、犯罪になりますか。
台湾の刑法第315条の1第2号は、正当な理由なく、電磁的記録によって他人の公開されていない活動などをひそかに記録する行為を、3年以下の有期徒刑、拘役または30万台湾ドル以下の罰金としています。最高法院は2017年11月30日の判決(106年度台上字第3788號)で、GPS追跡器で集めた位置・移動方向・速度・停留時間は電磁的記録であり、声や映像でなくても「竊錄」に当たると判断しました。「正当な理由なく」に当たるかどうかは、事件ごとに判断されます。
その罪で処罰を求めるには、いつまでに告訴が必要ですか。
刑法第315条の1の罪は親告罪です(刑法第319条)。告訴権者が犯人を知った時から6か月以内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法第237条第1項)。個人資料保護法第41条の罪は、同法第45条ただし書により親告罪ではありません。
コメディアン襲撃の疑いで起訴された5人の有罪は、もう決まったのですか。
決まっていません。2026年10月21日に検察官が起訴し、求刑の意見を示した段階です。台湾の刑事訴訟法第154条第1項により、被告人は有罪判決が確定するまで無罪と推定されます。第一審の判決が出ても、上訴することができます。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。

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