ニュースをきっかけに執筆した記事です。公開日以降に状況や法令が変わっている可能性があります。
梁や柱の写真から住宅の損傷リスクを調べるAIを、台湾の政府系研究機関が発表しました。10月21日付の中央社日本語版は、国家実験研究院による前日の発表を伝えています。公開は近日中の予定でした。専門家の評価が要るかを考えるための、初期判断の道具です。
日本から台湾の住まいや社宅を管理する人にとっても、写真で分かる範囲には限界があります。同研究院の発表では、一般向けAIが評価するのは個々の部材(梁・柱・壁)です。自宅の部材の損傷が軽くても、同じ棟の他の住戸に大きな損傷があれば、建物全体の安全に影響することがあります。
行政の緊急評価には別の手続
台湾の「災害後危險建築物緊急評估辦法」は、第2条により、中央または地方の災害対応センター(災害應變中心)が設置されたときに実施されます。日常の壁のひび割れ相談すべてに、この手続が適用されるわけではありません。
平時にも、建築法第77条は所有者と使用者に、建物の適法な使用と構造・設備の安全を維持する義務を課しています。AIの画像判定は、この義務を免除する仕組みにはなっていません。
緊急評価を行うのは、建築師や土木・構造・地盤分野の技師といった所定の資格を持ち、直轄市・県・市政府に登録した評価員です。資格と登録の両方が必要です。第3条が定めています。
評価員が作成した評価表などに基づき、地方政府が結果を決め、所有者や使用者、マンションの管理委員会・管理責任者に書面で通知します(第5条)。AIが写真から返した判定だけで、この行政判断が出たことにはなりません。
異議があるときは通知の翌日から10日
危険のおそれがあると評価された建物には、地方政府が危険標識を掲示し、一定期限内の修繕・補強・撤去を求める書面を出します。第6条の手続です。
その結果に異議がある場合、第7条により、所有者・使用者・管理委員会・管理責任者は地方政府へ再評価を申請できます。期限は10日で、緊急評価結果の通知を受けた日の翌日から数えます。台湾へ行って現地を確かめた日が起算日になるわけではないので、通知書と受領日の記録が、申請を検討する際の基礎になります。再評価の結果も、書面で通知されます。
標識を外すには修繕後も政府の同意
補修が終われば、管理側だけで標識を外せるのでしょうか。第6条第2項は、指定期限内に修繕・補強・撤去を終えた後、関係する証明資料を添えて地方政府に報告し、その同意を得て危険標識を解除すると定めています。補強の証明には、専門家が署名・証明した補強設計図と監理証明、施工業者の竣工証明が求められます。
今回発表されたAIは、写真からリスクを知る手掛かりを増やすものです。行政から既に通知が届いている建物では、その書面の内容と受領日、工事完了の証明、標識解除についての政府の同意が、それぞれの手続を進める根拠になります。
住宅の柱と壁をイメージして制作した架空の画像です。実際の被災建物や安全性の評価結果を示すものではありません。
参照資料
- 中央社日本語版、住宅の耐震性評価AI、2026年10月21日
- 国家実験研究院、AI防災技術の発表、2026年10月20日
- 災害後危險建築物緊急評估辦法:第2条、第3条、第5条、第6条、第7条、沿革
- 建築法:第77条、沿革
確認日:2026年10月28日
よくある質問
- AIで損傷が軽いと表示されれば、建物全体が安全だと判断できますか?
- 国家実験研究院の説明では、一般向けのAIが判断するのは写真に写った個々の部材(梁・柱・壁)です。同じ棟の他の住戸に大きな損傷があれば建物全体の安全性に影響するため、建物全体についての専門家の評価や、行政による緊急評価を代替するものではありません。
- 災害後の危険判定に異議がある場合、申請期限はいつですか?
- 災害後危險建築物緊急評估辦法第7条では、第6条に基づく緊急評価結果に異議がある所有者・使用者・管理委員会・管理責任者は、結果の通知を受けた翌日から10日以内に、直轄市・県・市政府へ再評価を申請できます。地震発生日やAIの判定日から数えるのではありません。
- 補修した後、所有者が危険標識を外してよいのですか?
- 同辦法第6条は、指定期限内の修繕・補強・撤去の完了後、関係する証明資料を添え、直轄市・県・市政府の同意を得て標識を解除する手続を定めています。補強については専門家が署名・証明した補強設計図と監理証明、施工業者の竣工証明が必要です。AIの結果だけでは解除できません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。



