台湾の資遣費:会社都合・懲戒解雇・自己都合で何が変わるか
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台湾の資遣費:会社都合・懲戒解雇・自己都合で何が変わるか

約7分
面談の席で書類を返す場面右側に座る人が、向かいの人へ紙を滑らせて返します。紙から手を離し、ペンの横に戻します。架空の情景

台湾の勞動基準法には、日本でいう退職金に当たる制度が二つあります。一つは毎月積み立てる労工退休金で、もう一つは契約が終わるときに雇用主が一括で払う資遣費です。この記事で扱うのは後者で、日本語の「退職金」の感覚で台湾の会社に入ると最初に戸惑う部分です。退職すれば必ず支払われるものではありません。誰がどの理由で契約を終えたか。それで受け取れるかどうかが決まります。

雇用主が解雇できるのは第11条の五つの場合だけ

勞動基準法第11条は、次の事由がない限り雇用主は予告をしても労働契約を終了できない、と書いています。廃業または事業の譲渡、赤字または業務の縮小、不可抗力で1か月以上仕事を止めざるを得ないとき、業務の性質が変わって人員を減らす必要があり適当な配置先もないとき、そして労働者がその仕事を確かに遂行できないときの五つです。

この条文で解雇するときは、雇用主に二つの義務が付きます。一つは第16条の予告で、勤続3か月以上1年未満なら10日前、1年以上3年未満なら20日前、3年以上なら30日前に告げなければなりません。予告せずに終了した場合は、その期間分の賃金を支払います。もう一つが資遣費です。「会社の都合で辞めてもらう」のだから、不利益を金銭で埋め合わせる、という構造です。

成績不振を理由にする五番目の事由は、雇用主にとって使いにくい条文として知られています。条文が「確不能勝任」、つまり確かに遂行できないと書いているためで、数字が未達というだけで直ちに該当するわけではありません。会社側から見た解雇の手順は台湾子会社で従業員を解雇するにはで扱っています。

第12条の懲戒解雇では予告も資遣費もない

第12条は、労働者側に問題がある六つの場合に、雇用主が予告なしで契約を終えられると定めます。契約を結ぶときに嘘を言って雇用主に損害を与えるおそれがあったとき。雇用主やその家族、代理人、同僚に暴行を加えたり重大な侮辱をしたとき。有期徒刑以上の刑が確定し、執行猶予も罰金への換刑も認められなかったとき。労働契約や就業規則への違反が重大なとき。機械や原料、製品などを故意に損耗させたり、技術上・営業上の秘密を故意に漏らして損害を与えたとき。正当な理由なく3日続けて、または1か月に合計6日、無断欠勤したときです。

この解雇では、第18条により、労働者は予告期間分の賃金も資遣費も請求できません。資遣費はゼロです。同じ第18条は、期間の定めのある契約が満了して離職した場合にも資遣費がないことを定めています。

ただし第12条には期限があります。虚偽、暴行・侮辱、重大な契約違反、故意の損耗・漏洩、無断欠勤を理由にする場合、雇用主はその事情を知った日から30日以内に契約を終えなければなりません。30日を過ぎてから「あのときの件で懲戒解雇する」ことはできない、という意味です。期限は短いのです。

自分から辞めても資遣費が出る第14条

自己都合退職の労働者には、原則として資遣費がありません。第15条により、期間の定めのない契約を労働者から終える場合も第16条と同じ日数で予告する義務はありますが、雇用主が支払うものはありません。

例外が第14条です。雇用主が契約時に虚偽を述べた、雇用主側が暴行や重大な侮辱をした、健康を害するおそれのある業務を改善要求にもかかわらず放置した、法定伝染病の同僚がいて重大な危険がある、契約どおりの賃金を払わない、労働契約や労働法令に違反して労働者の権益を害するおそれがある。この六つの場合、労働者は予告なしに契約を終えることができ、同条の末項が第17条を準用しているため、資遣費を請求できます。どの場合に当たり、いつまでに終了を告げる必要があるかは、自己都合でも資遣費が出る六つの場合と30日の期限で条文ごとに説明しています。

例えば、賃金の不払いは第5号に、労働保険・健康保険の未加入は第6号の「労働法令違反」に当たり得ます。そのため、会社が「自己都合で辞めた」と主張しても、労働者が第14条を根拠に契約を終えていれば資遣費の問題が残ります。

新制は半月分、旧制は1か月分

資遣費の計算は、その労働者にどちらの退職金制度が適用されているかで変わります。

2005年7月1日に施行された勞工退休金條例の新制では、同条例第12条により、勤続1年ごとに平均賃金の2分の1か月分、1年未満の端数は比例計算、上限は6か月分です。新制施行前から同じ事業単位に勤め、旧制のまま、または新制を選んで旧制分の年数を保留している労働者については、その年数分を勞動基準法第17条で計算します。こちらは勤続1年ごとに平均賃金1か月分です。上限はありません。1か月未満の端数は1か月として数えます。勞工退休金條例は、台湾国籍の労働者、台湾国民と婚姻して居留が許可された外国人、永住が許可された外国人など(同条例第7条第1項)に加え、2026年からは専門的な仕事に従事する外国専門人材にも適用されます(外國專業人才延攬及僱用法第24条)。それ以外の労働者や、同条例の適用前の勤続期間は勞動基準法第17条で計算します。

平均賃金は第2条第4号が定義していて、事由が発生した日の前6か月の賃金総額をその期間の総日数で割った額です。賞与や手当であっても、仕事の対価として経常的に支払われるものは同条第3号の賃金に含まれます。基本給だけで計算して提示された金額が条文どおりかどうかは、給与明細の内訳で確かめられます。

支払期限は30日です。どちらの制度でも契約終了から30日以内に支払われます(勞動基準法第17条第2項、勞工退休金條例第12条第2項)。

契約が終わる理由根拠予告資遣費
雇用主の都合(廃業・赤字・人員削減・不適格)第11条雇用主が第16条の日数で予告支払われる
労働者の重大な非違行為第12条不要(知った日から30日以内に解雇)支払われない
労働者の自己都合第15条労働者が第16条の日数で予告支払われない
雇用主側の落ち度を理由に労働者が終了第14条不要(事由により30日の期限)支払われる

「自分から辞めた」ことにされないために

勤続が長く資遣費が高くなる人に、会社が自己都合退職の形を求めることもあります。当事務所が扱った事例では、台湾各地に支店を持つ会社の経営陣が交代した後、給与の高い長期勤続の営業担当者が面談に呼ばれ、「会社が苦しいので自発的に職位と給与を下げる」と自筆で書くよう求められました。本人は断り、会社を去ることになりましたが、面談の全過程を録音していたため、自己都合ではないことを示すことができ、資遣費の支払いにつながりました。同じ扱いに耐えられず、自分から辞めた従業員もいました。

録音や面談のメール、勤怠と業績の記録、就業規則は、こうした場面で「誰がどの理由で契約を終えたのか」を後から確かめる材料になります。会社が提示する書面に署名する前に、その書面が第11条の資遣なのか、合意による終了なのか、自己都合の辞職届なのかを読み分けることが、資遣費の有無を分けます。

離職の際には、第19条により、労働者が求めれば雇用主は服務證明書(在職証明)を交付しなければなりません。次の就職先や居留関係の手続で必要になることがあります。

解雇の理由や資遣費の計算に納得できないときは、昊鼎国際法律事務所(曾雋崴弁護士、wei@hoveringlaw.com.tw)で日本語で相談できます。相談のときは、労働契約書、直近6か月の給与明細、会社から受け取った通知や面談の記録があると話が早く進みます。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日(台湾時間)。

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よくある質問

台湾では、自分から退職すると資遣費はもらえないのですか?
原則としてもらえません。資遣費は勞動基準法第11条の事由(廃業、赤字・業務縮小、不可抗力による1か月以上の休業、業務の性質変更による人員削減、業務を遂行できないこと)で雇用主が契約を終えたときに支払われます。ただし第14条が定める雇用主側の落ち度(賃金不払い、暴行・重大な侮辱、健康を害する業務の放置など)を理由に労働者が契約を終えた場合は、自分から辞めても資遣費を請求できます。
懲戒解雇されたら、何も受け取れないのですか?
第12条の事由(契約時の虚偽、暴行や重大な侮辱、有期徒刑以上の確定判決、契約・就業規則への重大な違反、会社財産の故意の損耗や秘密漏洩、正当な理由のない3日連続または月6日の無断欠勤)で解雇された場合、第18条により予告手当と資遣費は請求できません。ただし雇用主はその事実を知った日から30日以内に解雇しなければならず、期限を過ぎた解雇は第12条の解雇として扱われません。勞工退休金條例が適用される労働者の場合、毎月積み立てられている個人口座の退休金は、解雇の種類に関係なく労働者のものです。
資遣費はいくらになりますか?
2005年7月1日以降の新制(勞工退休金條例第12条)が適用される勤続年数については、勤続1年ごとに平均賃金の2分の1か月分、1年未満は比例計算で、上限は6か月分です。新制施行前から同じ会社に勤めていて旧制(勞動基準法第17条)が適用される年数については、1年ごとに平均賃金1か月分で上限はありません。勞工退休金條例は、台湾国籍の労働者、台湾国民と婚姻して居留が許可された外国人、永住が許可された外国人など(第7条第1項)に加え、2026年からは専門的な仕事に従事する外国専門人材にも適用されます(外國專業人才延攬及僱用法第24条)。それ以外の労働者や、同条例の適用前の勤続期間は勞動基準法第17条で計算します。平均賃金は事由発生日前6か月の賃金総額をその期間の総日数で割った額です。資遣費は契約終了から30日以内に支払われます。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。