台湾のジム事故損害賠償:一審事例・期限・証拠・賠償項目
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台湾のジム事故損害賠償:一審事例・期限・証拠・賠償項目

約10分
バーベルを下ろして運動を止める場面成人男性がバーベルを床に下ろし、立ち上がって腰に手を当てます。音声のない6秒の映像です。架空の情景

台湾のジムでトレーナーの指導中にけがをしたとき、外国人の利用者も、台湾の消費者保護法に基づいてジムの運営会社に賠償を求められます。台中地方法院が2022年1月24日に言い渡した一審判決は、留学生の会員がデッドリフトで腰を痛めた事件で、ジムの運営会社の賠償責任を認めました。裁判所が何を基準に責任を判断し、外国人の逸失利益をどう計算したかは、台湾で運動を続ける人にとって具体的な手がかりになります。

台中のジムで何が起きたか

判決(臺灣臺中地方法院109年度消字第7號)によると、原告は台湾の居留証を持つ韓国籍の大学生でした。2020年4月にジムの運営会社と1年間の会員契約を結び、同年6月30日、台中の店舗でトレーナーの個人指導を受けていました。トレーナーが指示したメニューは、30キロ、70キロと重量を上げ、3セット目からは90キロでした。原告は通算6セット目の2回目でバーベルを下ろし、腰に不調が出ました。トレーナーが体をほぐしたあと、店舗の受付が呼んだ救急車で病院に運ばれています。診断は、腰椎の靱帯捻挫、腰背部の筋挫傷、第5腰椎・第1仙椎の椎間板破裂などでした。

曾雋崴弁護士(Wei Tseng)は、この訴訟で原告の訴訟代理人を務めました。判決は運営会社に対し、157万9,589台湾元と、2020年8月29日から支払済みまで年5%の利息を払うよう命じ、それ以外の請求は退けています。その後、当事者が控訴審で和解したと報道されましたが、一審判決からは控訴審の結果や和解の額を確認できないため、一審の金額をそのまま確定した結果とみることはできません。

裁判所が見たのは、安全性と「過失がないこと」の証明

根拠は消費者保護法第7条です。サービスを提供する事業者は、提供の時点で、当時の科学技術や専門水準から合理的に期待される安全性を確保しなければならず、これに反して消費者に損害を与えれば連帯して賠償責任を負います。事業者が自分に過失がないことを証明できたときに限って、裁判所は賠償を減らすことができます(同条第3項)。

裁判所は、トレーニング中に負傷したという客観的な事実を踏まえ、運営会社の側が「過失がないこと」を証明すべきだと整理しました。運営会社はトレーナーの資格や経歴を示しましたが、原告の体力に合わせてメニューを組んだことを示す資料は出せず、裁判所は無過失の証明がないとして責任を認めています。分かれ目は、指導の内容が利用者の状態に合っていたかを、事業者の側が説明できるかどうかでした。負傷の事実だけでは決まりません。

運営会社は、原告が不調を訴えなかったことなどを挙げて、原告にも過失があると主張しました。裁判所はこの主張を退けました。運営会社が事前に無料の体力測定と相談をしたことを認めており、原告の状態を把握していたはずであること、トレーナーの方が専門的な判断ができる立場にあることが理由です。

この事件では、留学生の逸失利益が韓国の基本賃金で計算された

外国人の利用者にとって参考になるのは、労働能力の減少による損害の計算です。原告の労働能力は8%減少したと鑑定され、運営会社は台湾の基本賃金で計算すべきだと主張しました。裁判所は、原告が台湾で学ぶために合法的に居留している外国人で、卒業後に台湾で就業のための居留や雇用許可を得られるとは限らず、帰国して働く予定だという説明は信用できるとして、韓国の基本賃金を基礎に計算しました。額は79万5,964元でした。

日本から台湾に来ている留学生や短期の滞在者がけがをした場合も、帰国後にどこでどう働く見込みだったかを示す資料が、この損害額を左右し得ます。もっとも、どの国の賃金を基準にするかは個別の事情で判断されるもので、この一審判決の結論がそのまま当てはまるとは限りません。

認められた金額の内訳は、医療費1万8,716元、介護費6万4,000元、通院の交通費909元、労働能力の減少79万5,964元、慰謝料20万元、懲罰的損害賠償50万元です。

懲罰的損害賠償

消費者保護法第51条は、同法に基づく訴訟で、事業者の故意による損害には損害額の5倍以下、重大な過失には3倍以下、過失には1倍以下の懲罰的損害賠償を請求できるとしています。請求どおり50万元が認められました。判決は、事故の後に運営会社が保険や休会の手続を約束しながら対応せず、負傷を知りながら月会費の支払いを求める存証信函を送ったという原告の主張に対し、運営会社が反論しなかったことにも触れています。

告訴と損害賠償の期限

トレーナーの過失で負傷したとして刑事責任を問う場合、過失傷害罪(刑法第284条)は告訴がなければ起訴されない罪です(第287条)。期限は6か月です。告訴できる人が犯人を知った時から数え、その期間内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法第237条)。

民事の損害賠償では、不法行為に基づく請求権は、損害と賠償義務者を知った時から2年、行為の時から10年で時効により消滅します(民法第197条)。契約に基づく請求など別の根拠を使うときは、期限の数え方も変わり得るので、事故日や診断日だけで期限を決めつけず、請求の根拠ごとに確かめる必要があります。

証拠は、消えやすいものから

この事件では、警察を通じて取り寄せた店内の防犯カメラ映像を裁判所が検証し、トレーナーが組んだメニューの各セットと、原告が6セット目の途中でバーベルを下ろした場面が確認されています。防犯カメラの映像は保存期間が過ぎると上書きされることがあるので、事故の日時と場所、カメラの位置を特定して、早めにジムへ保存を求める書面を送っておくと、何をいつ求めたかの記録になります。書面を送っても、相手に法的な保存義務が当然に生じるとは限りません。映像が残っていないことだけを理由に、裁判所が自動的にジムに不利な判断をするわけでもありません。

自分で保存できる資料もあります。会員契約書、レッスンの予約と出席の記録、トレーナーとのメッセージ、事故の後のジムとのやり取り、救急搬送と診療の記録、領収書です。負傷した部位や現場の写真、目撃した人の連絡先も、時間が経つほど集めにくくなります。

保険があっても金額は争われる

ジムが賠償責任保険に入っていても、それだけでジムやトレーナーの責任が認められたり、支払額が決まったりはしません。補償の上限や免責の条項、負傷と運動との因果関係、それぞれの損害の必要性と金額をめぐって、保険会社との間で争いになることもあります。労働能力の減少や慰謝料のように資料と評価が要る項目では、保険会社の提示額も被害者の請求額も、そのまま裁判所の認める額になるとは限りません。

ジム以外でも、店の床での転倒やサービスを受けている間の負傷では、安全性、因果関係、損害、証拠が同じように争点になります。とはいえ、結論は事故ごとに変わります。

この事件の報道

本件は台湾のメディアやインターネット上でも取り上げられました。以下は、その見出しを日本語にしたものです。リンク先の記事や投稿を紹介するためのもので、この記事がその内容を独自に事実認定するものではありません。

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法律解説:男子大学生、デッドリフト中に椎間板破裂…一審で有名ジム側に157万台湾ドルの賠償命令

判決を読む:ジム初心者に90キロのデッドリフトを指示し、急性椎間板破裂が生じた事例

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一審判決は一つの事件の判断です。同じジムで同じ重量を扱っても、次の事件で同じ結論になるとは限りません。

参考にした公的資料

確認日:2026年10月6日(台湾時間)

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。